1967年に茨城県で起きた強盗殺人事件「布川(ふかわ)事件」で再審無罪が確定した桜井昌司さん(74)が、国と県に損害賠償を求めた訴訟は、国と県に計約7400万円の賠償を命じた東京高裁判決(8月27日)が確定した。国と県が上告期限の10日までに上告しなかった。
桜井さんは13日に東京都内で記者会見し、「真実を真実と認めない組織と闘うむなしさ、つらさがあった。やっと重荷を下ろすことができて、ほっとしている」と語った。県警や水戸地検からの謝罪はないといい、「反省をしていないのに謝罪するのは無理で、謝罪をしてもらいたいとも思わない」と突き放した。その上で「冤罪(えんざい)で理不尽な苦しみを受ける人が出ないよう、法律を整備する活動を続けていきたい」と話した。
高裁判決は、県警の取り調べに加え、1審が違法性を認めなかった水戸地検の取り調べも違法と認定。桜井さんにうその事実を伝えるなどして虚偽の自白を強要したとし、「自白がなければ逮捕・起訴され、有罪となることはなかった」と結論付けた。1審・東京地裁判決(2019年5月)は県警の取り調べと、証拠開示を拒んだ検察官の公判活動を違法として国と県に計約7600万円の賠償を命じ、国と県が控訴した。【遠山和宏、森永亨】