【ニュースの核心】自民党総裁選、不用意な発言でにじむ「危うさ」 河野氏「年金の最低保証」に消費税 岸田氏「新自由主義との決別」主張 高市氏は意外に安定

自民党総裁選は、河野太郎行革担当相と、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相の戦いに絞られてきた。野田聖子幹事長代行も善戦しているが「いまひとつ及ばず」といった感じである。
選挙戦が進むにつれて「予想外の論戦」も起きた。例えば、年金問題だ。仕掛けたのは、河野氏だった。
河野氏は「いまの基礎年金は本当に最低保証になっているのか。最低保証部分は保険料ではなく、税でやるしかない。(財源は)消費税がいいと思っている」(読売新聞20日)と主張し、テレビでも論戦を挑んだ。
確かに、政府の「100年安心」というセリフには、私も違和感を覚える。現在の基礎年金は満額でも月に6万5000円だ。それが給付額の減額調整が終わる2058年度には、5万1000円程度に減るという試算もある(みずほ総合研究所)。これでは、とても生活できない。
ただ、だからといって「消費税で基礎年金を」と言われると、「ちょっと待て」と言わざるを得ない。
そもそも、「年金は保険」だ。給付額を増やすなら、税負担を言う前に、なぜ「保険料引き上げ」を言わないのか。英語で「ペンションタックス」と言うように、納付義務があるので、普通の人にとっては、保険料も税と同じだ。違いは、保険料なら納めた記録が残って、自分の負担と給付の関係がはっきり見える点である。
税で納めて、この関係が分からなくなったら、もはや保険とは言えないだろう。
現在の税負担部分を増やすにしても、私は消費税の負担増に反対だ。社会的公正を保つには、高所得者の負担が重い累進構造を持つ所得税を活用した方がいい。
大問題に果敢に挑戦する姿勢は高く評価したいが、いかにも話が生煮えで、かえって「危うさ感」を出してしまったのではないか。
岸田氏の「新自由主義との決別」という主張もそうだ。そもそも、「新自由主義」とは、何を意味するのか。私の知る限り、およそまともな経済学の教科書や国際会議の声明に、そんな言葉は出てこない。
それが喧伝されたのは、もっぱら政治や社会思想の世界である。しかも、多くは左翼だった。彼らは分配を重視するあまり、成長志向の人々を「新自由主義者」などとレッテル貼りした。
私は岸田氏が左翼とは思わないが、こんな言葉を不用意に使うあたりに、やはり「危険な匂い」を感じてしまう。立憲民主党や共産党が喜びそうなセリフなのだ。
一方で、岸田氏の評論家的な言動は、衆院選の比例復活の見直しをめぐっても飛び出した。「世論がおかしいとなれば、われわれも受け止める」(BSフジLIVEプライムニュース20日)などと語る。私は「アナタの意見を聞きたいのだ」とテレビに向かって、つい声を上げてしまった。
そんななか、高市氏は、意外にと言っては失礼だが、安定している。彼女が提起した敵基地攻撃能力問題は選挙戦を通じて、大きな焦点の1つになった。彼女の功績である。
投開票日まで、まだ何が飛び出すか、分からない。さらなる論戦を期待しよう。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。