「2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」目標など、気候変動問題では積極的な対策を打ち出してきた菅義偉首相。実現に向けてはこれからが正念場だが、自民党新総裁に選出された岸田文雄氏は、この問題にどう取り組んでいくのだろうか。
菅首相は「50年実質ゼロ」表明に加え、30年度までの削減目標を「13年度比26%減」から「同46%減」へと大きく引き上げた。これらの削減目標は初めて改正地球温暖化対策推進法に明記され、首相が交代しても方向性は引き継がれることになる。
岸田氏は12年12月から17年8月まで外相を務め、その間、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」採択や、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」の批准などに関わった。ジョン・ケリー米気候変動問題担当大統領特使とは、オバマ政権の国務長官時代に40回以上会談している。ある環境省幹部は「国際潮流における気候変動対策の重要性を理解している方。菅首相が進めた政策と同じ方向性で進めていくのではないか」と期待する。
別の環境省幹部は「気候変動対策はこの先5年、10年が勝負で、時間の猶予がない。菅政権の約1年間で急ピッチに進めてきた対策を堅持し、更に強化することが今後の重要課題になる」とし、岸田氏については「官僚の意見をしっかり聞く印象がある。環境省からどれだけ対策の重要性を訴え、理解してもらえるかが、今後の政策を左右する」と話す。
総裁選4候補による党主催の討論会「オープンタウンミーティング」で、岸田氏は「再生可能エネルギーが重要であることは論を待たないが、(電力の)安定供給や価格についてもしっかり考えていかなければいけない。原子力や水素などさまざまなメニューを組み合わせて、課題を乗り越えていく姿勢が大事だ」と述べた。
政府が改定作業を進める政策指針「エネルギー基本計画」の修正案では、30年度の電源構成の見通しで、再生エネ36~38%▽原子力20~22%▽火力41%(うち石炭19%)――などとしている。環境NGO「気候ネットワーク」の伊与田昌慶主任研究員は「このままでは30年度までの『46%減』目標達成は難しいのではないか。新政権では大排出源である石炭火力の議論を進める必要がある」と指摘する。
民間シンクタンク「自然エネルギー財団」の大林ミカ事業局長は「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)宣言は菅政権のレガシー(政治的遺産)。進めてきた政策を後退させることはあってはならない。岸田さんの人柄の良さを生かして、レガシーを守り育てていってほしい」と話す。【信田真由美、鈴木理之】