党運営の中心は二階派から麻生派に…副総裁に就任の麻生氏、「重し役」としてにらみ?

自民党は8日の総務会で、副総裁に麻生太郎・前副総理兼財務相を充てる人事を了承した。麻生氏は、麻生派の甘利幹事長とともに「重し役」として党内ににらみをきかすことになりそうだ。5年以上幹事長を務めた二階俊博氏が率いる二階派の勢いが衰え、麻生派が存在感を高めるなど、党内力学の変化が浮き彫りとなっている。
「(副総裁のポストに)重みをつけていただく。ご指導いただきながら、安定的な党運営ができればいい」
福田総務会長は8日、総務会後の記者会見で、こう期待感を示した。
岸田首相(党総裁)の党内基盤は第5派閥の岸田派(46人)だ。このため、重鎮の麻生氏と甘利氏の起用で、党運営の安定を目指す。麻生氏は第3派閥の麻生派(52人)を率いるほか、最大派閥・細田派(96人)に影響力を持つ同派出身の安倍元首相とも盟友関係で、党内で大きな力をもってきた。首相経験者が副総裁に就任するのは初めてだ。
一方、二階派出身の党四役はゼロとなった。
甘利氏は、麻生氏について「党で不協和音がある時に説得にお出ましいただきたい」と語る。衆院選に向け、自民は10程度の選挙区で候補者が競合するが、各派閥の利害が絡み、解決の糸口が見いだせていない。調整役を期待しているとみられる。
ただ、副総裁の役割は曖昧だ。党則は「総裁を補佐」と定めるが、具体的な権限を記していない。過去には様々なタイプの副総裁が存在した。
麻生氏の前任の高村正彦氏は安全保障関連法案の取りまとめに奔走し、実務型とされた。実力型の代表格は、金丸信・元副総裁だ。最大派閥の竹下派会長として、絶大な力をふるった。
麻生氏が党運営にどのようにかかわるかは不透明だ。二階氏は老練な政治手腕で党内を安定させたが、強権的で異論を差し挟みにくいとの不満も出た。党内からは「『二階支配』が『麻生・甘利支配』に変わるだけなら、首相の掲げた党改革の機運がしぼむ」(中堅)と危惧する声もある。
◆「べらんめえ」口調は健在
副総理と戦後最長の財務相として、8年9か月にわたり安倍、菅両政権の屋台骨を支えた。7月の主要20か国・地域(G20)の会議で、国際課税の新ルール作成を主導し、国際社会でも存在感を発揮した。81歳となった今も毎朝散歩をこなし、体力維持に余念がない。安倍元首相とは「盟友」だ。「べらんめえ」口調は健在だが、失言を懸念する向きもある。祖父は吉田茂・元首相。(自民、麻生派)