「優しい人が増えて、事件が起こらないような社会になってほしい」。2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件で犠牲になった36人の1人、渡辺美希子さん(当時35歳)の遺族が29日、滋賀県警本部(大津市)で講演した。「想(おも)いと願い」と題し、事件から2年を経てもなお癒えぬ悲しみや、再発防止への思いを語った。
講演したのは、美希子さんの母達子さん(71)と兄勇さん(42)。県警や自治体などで犯罪被害者支援に取り組む関係者ら約50人が参加した。
美希子さんは大学卒業後にアニメの専門学校に通い、08年に京アニへ入社。「境界の彼方」や「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」などの作品で背景画を担当する美術監督を務めた。講演会場には作品のパネルも飾られた。
達子さんは事件後、最愛の娘を失った悲しみに打ちひしがれた。京都府内の美希子さんの部屋を訪れ、「だんだんと遠くに行ってしまうようで、片付けるのがしんどかった。自分より先に子どもが亡くなるのは、想像していたよりもずっときつかった」と振り返る。県警の被害者支援の担当者によるカウンセリングを受け、少しずつ気持ちの整理が進んだといい、「すごくありがたかった」と話した。
自らもアニメが好きな勇さんにとって、美術監督として活躍する美希子さんは「自慢の妹」だった。「妹のファンで、作品が出るたびに見ていた。彼女に負けないようにと頑張ってきた」。今でも、夢に美希子さんが出てくるという勇さん。「僕らは一生、悲しみを抱えて生きていく。それを感じ取ってくれる優しい人が増えてほしい」と願った。【菅健吾】