新型コロナウイルスで夫が急死した後、大学生の長男と高校生の長女を包丁で刺して無理心中を図ろうとしたとして、殺人未遂罪に問われた母親の女性被告(47)に対する裁判員裁判で、東京地裁は9日、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役5年)の判決を言い渡した。神田大助裁判長は「一歩間違えれば既遂に至る危険なものだったが、社会内において子どもらとの関係性の修復に努めていく機会を与えるのが相当」と述べた。
判決によると、被告は4月24日午前7時40~44分ごろ、東京都大田区の自宅で、長男(当時19歳)と長女(同16歳)の胸を包丁で刺し、殺害しようとした。長女は全治約1カ月の重傷を負い、長男は全治約11日間のけがをした。
被告は、事件の6日前に夫が急死した精神的ショックに加え、財産管理などの事務処理に困惑。さらに自身のコロナ感染で次第に憔悴(しょうすい)して不安を募らせ、「自分が死んだ後、子どもに同じ思いを味わわせたくない」と考え、無理心中を図ろうとした。
神田裁判長は判決で「混乱した心理状態にあったことは想像するに難くない」としつつ、「子どもの生命をないがしろにした行為は短絡的かつ身勝手」と指摘。その一方、子どもたちが刑事処罰を望まず、「一緒に生活したい」などと話していることを考慮して実刑を回避した。
判決言い渡し後、神田裁判長が「罪に向き合うことは言葉で言うほど簡単ではなく悩むこともあると思う。子どもとの絆は切れないと思うので、これからは絶対に逃げないように」と説諭すると、被告は小さくうなずいた。【木原真希】