琵琶湖の水位低下で「普段は見えない城」が出現“喜び”一方で深刻な水不足に危機感も

滋賀県にある琵琶湖。その水位が14年ぶりに低水準となっていて、市民への影響もジワリと広がっています。 滋賀県・琵琶湖は、湖国のみならず関西の『水』を支える頼もしい存在です。しかし、湖から明智光秀が築城した幻の水城『坂本城』の石垣がひょっこり顔を出しています。普段は湖に沈んでいますが、降水量が例年より少なく、水位が下がったため姿を現したといいます。 滅多にない機会、多くの歴史好きな人たちが集まっていました。 (石垣を見に来た人) 「(明智光秀が)ここから見た風景を思って、日本のこと、これからの思いをここでなんか決意したのかなと思うと何とも言えない気持ちになる」 「前回見に来たときは、水中にあって全然見えなかったです。ここが本丸跡だったと思いますし、うれしいです」 普段からこの場所で「見えない城」をガイドしている「坂本城を考える会」の山本正史さんを取材しました。 (坂本城を考える会 山本正史事務局長) 「私もこれだけの石垣が見えているのは初めてです。明智光秀の造ったお城の石垣が本当にここで見られたというのはそりゃあ感動しました」 水位が下がるほど石垣が見えるようになるため、期待する気持ちもありますが複雑です。 (坂本城を考える会 山本正史事務局長) 「(水位が下がって)あんまり石垣が見えすぎると滋賀県の人が困ります。水不足で節水しないといけないでしょ。だからあんまり減るのもあかんし。しかし私はちょっと減って(石垣が)しっかりと見えたらいいんだけど」 実は、琵琶湖の水位の低下はこれまでに何度も問題となってきました。 (記者リポート 1994年の放送より) 「今私が立っている所はもちろん普段は湖の底です。ところが最近の雨不足で、すっかり干上がってしまいました」 1994年には、水位が観測史上最低の-123cmに。松尾芭蕉が愛した景勝地『浮御堂』はもはや、湖に浮かんでいません。坂本城の石垣も完全に姿を現しています。 干上がった湖では、普段はできない「潮干狩り」を楽しむ人の姿が。また、ビーチパラソルが、なんと琵琶湖の上に立っていました。優雅にくつろぐ様子はまるでリゾート地のようです。この年は近畿各地で最大20%の取水制限が行われました。 2002年には水位が-94cmを記録、約3か月間にわたって取水制限が行われたことも。そして今、水位は-65cmとなっていて、このままでは、滋賀・大阪・京都・兵庫に住む人ら約1450万人の生活に再び影響を及ぼす可能性があります。 そして、すでに影響がでているところが、琵琶湖でしか獲れない『瀬田しじみ』漁を行う瀬田町漁協です。水位が下がった影響で大きい船を出せず、1回の漁獲量が普段の半分ほどの約1kgになっているといいます。そもそも、環境の変化で「瀬田しじみ」自体、年々減っていることもあり、危機感を募らせています。 (瀬田町漁協 吉田守組合長) 「漁に支障をきたしているのは事実ですね。今はあかんとこにまた余計あかんから『泣きっ面に蜂』っていう感じやね。自然界がうまいこと循環するように願うしかないですよね」 国や滋賀県は、琵琶湖から放流する水の量を毎秒15tに抑えるなど対策を進めていますが、今も水位は1日1cmのペースで下がり続けています。こうした状況に“湖国”の長・滋賀県の三日月大造知事は…。 (滋賀県 三日月大造知事 11月16日) 「降雨・降雪は天候によるところ、天によるところが大ですので、私どもではいかんともしがたいところがあると思うんですけど、使う意識を少し変える、『過去にないレベルの水位低下が起こっています』という情報発信をしっかりとやっていきたい」 いつも私たちを支えてくれている琵琶湖のためにも、水を大切に使うよう心掛ける日々が続きそうです。