名古屋市立大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、米航空宇宙局(NASA)などの研究チームは、宇宙に長期滞在する際に問題となる尿路結石の予防に、骨粗しょう症治療薬が有効だとする研究成果をまとめ、米学会誌に掲載された。
宇宙では、重力がかからないため骨からカルシウムが溶け出して尿に混じり、尿路結石になるリスクが高い。結石の激痛は宇宙飛行士のミッション失敗や人命に関わる事故につながりかねず、予防法の研究が続いている。
名市大の岡田淳志准教授(腎・泌尿器科学)らは、2009~16年に国際宇宙ステーション(ISS)に約半年滞在した国内外の宇宙飛行士17人を対象に研究した。うち7人は骨を溶かす働きを抑制する「ビスホスホネート製剤」の服用と骨密度低下を防ぐ運動を併用し、残る10人は運動のみ行った。その結果、結石の原因となる尿内のカルシウムやシュウ酸、尿酸の数値が、薬を未服用の宇宙飛行士は1・1~1・5倍に増えたが、服用した飛行士は0・6~0・8倍に下がり、尿路結石のリスクを抑えることが分かった。
岡田准教授は「宇宙飛行時の予防に加え、地上での研究を進めれば寝たきりや閉経期の女性、ステロイド薬服用者に多い尿路結石の予防や治療にも生かせる可能性がある」と話した。【川瀬慎一朗】