殺人未遂の指名手配だった「お遍路さん」逮捕、「幸月事件」にみる四国遍路の本質

四国の遍路で生活する人たちは、どのような事情を抱えながら、生きているのか。 彼らを密着取材したノンフィクション作家・上原善広氏が四国遍路に興味をもつきっかけとなったのは「幸月事件」と呼ばれる事件だった。 たびたびメディアで取り上げられていた「幸月」と呼ばれる有名な「お遍路さん」は、実は殺人未遂容疑で大阪府警に指名手配されていた容疑者だった。 「幸月」は、1991年に大阪市西成区の路上で、仕事の同僚とけんかになり、包丁で胸などを刺して重傷を負わせたとして、12年間逃げ続けた。2003年7月に逮捕されたきっかけは、「お遍路さん」としてのテレビ出演だった。もう80歳になっていた。 以下、上原氏の新著「四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼」(KADOKAWA)から、一部を抜粋してお届けする(小見出し、注釈は編集部が修正・追記)。 ●「伝説の草遍路」逮捕はどう受け止められたか 6年間も遍路を回りつづけていた幸月は「伝説の草遍路」と評判になり、NHKのドキュメンタリーで取り上げられるほどになっていく。 しかし、この「幸月伝説」は6年で呆気なく終わることになる。 2003年7月、高知で幸月を世話していた横矢年夫の元に、刑事が訪ねてきた。テレビ番組を偶然見ていた千葉県警から連絡を受けた大阪西成署の刑事が、幸月を追って高知まで聞き込みにやってきたのだ。 「最初に事件を知ったのは、その大阪からきた刑事さんから聞いたんだと思う。初めはびっくりしたけど、遍路はもともと何かわけがあって回っているから、そういうこともあるだろうとは思ってました」 幸月が逮捕されたのは、新居浜の将棋会館だった。 鵜川(編集部注:将棋会館を主宰する人物)たちと石鎚山へ参拝登山して、帰ってきた翌日のことだった。事件は新聞だけでなく、週刊誌の記事にもなって大きく報じられた。 ・「指名手配犯がNHKにお遍路で出演、捕まった不覚」(週刊朝日、2003年) ・「NHK出演で逮捕されたマヌケ男の『お遍路美談』は大ウソ」(週刊新潮、2003年) ・「テレビ出演で逮捕 80歳お遍路さん 逮捕までの八十八札所巡り 白髪束に白いひげ、風格漂う『幸月』さんは91年、仕事仲間を刺した殺人未遂犯だった!」(女性セブン、2003年) 幸月逮捕のとき、鵜川はちょうど畑に出ていた。 警察から電話で「田中幸次郎を連れていきます」と聞いただけで、幸月はそのまま大阪へ移送されてしまう。「田中幸次郎」は幸月の本名だった。
四国の遍路で生活する人たちは、どのような事情を抱えながら、生きているのか。
彼らを密着取材したノンフィクション作家・上原善広氏が四国遍路に興味をもつきっかけとなったのは「幸月事件」と呼ばれる事件だった。
たびたびメディアで取り上げられていた「幸月」と呼ばれる有名な「お遍路さん」は、実は殺人未遂容疑で大阪府警に指名手配されていた容疑者だった。
「幸月」は、1991年に大阪市西成区の路上で、仕事の同僚とけんかになり、包丁で胸などを刺して重傷を負わせたとして、12年間逃げ続けた。2003年7月に逮捕されたきっかけは、「お遍路さん」としてのテレビ出演だった。もう80歳になっていた。
以下、上原氏の新著「四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼」(KADOKAWA)から、一部を抜粋してお届けする(小見出し、注釈は編集部が修正・追記)。

6年間も遍路を回りつづけていた幸月は「伝説の草遍路」と評判になり、NHKのドキュメンタリーで取り上げられるほどになっていく。
しかし、この「幸月伝説」は6年で呆気なく終わることになる。
2003年7月、高知で幸月を世話していた横矢年夫の元に、刑事が訪ねてきた。テレビ番組を偶然見ていた千葉県警から連絡を受けた大阪西成署の刑事が、幸月を追って高知まで聞き込みにやってきたのだ。
「最初に事件を知ったのは、その大阪からきた刑事さんから聞いたんだと思う。初めはびっくりしたけど、遍路はもともと何かわけがあって回っているから、そういうこともあるだろうとは思ってました」
幸月が逮捕されたのは、新居浜の将棋会館だった。
鵜川(編集部注:将棋会館を主宰する人物)たちと石鎚山へ参拝登山して、帰ってきた翌日のことだった。事件は新聞だけでなく、週刊誌の記事にもなって大きく報じられた。
・「指名手配犯がNHKにお遍路で出演、捕まった不覚」(週刊朝日、2003年) ・「NHK出演で逮捕されたマヌケ男の『お遍路美談』は大ウソ」(週刊新潮、2003年) ・「テレビ出演で逮捕 80歳お遍路さん 逮捕までの八十八札所巡り 白髪束に白いひげ、風格漂う『幸月』さんは91年、仕事仲間を刺した殺人未遂犯だった!」(女性セブン、2003年)
幸月逮捕のとき、鵜川はちょうど畑に出ていた。
警察から電話で「田中幸次郎を連れていきます」と聞いただけで、幸月はそのまま大阪へ移送されてしまう。「田中幸次郎」は幸月の本名だった。