立憲民主党に代わって、国民に選択肢を与えてくれる“マトモな野党”はどこか。「第一候補は日本維新の会だが……」と日本近現代史の専門家である憲政史家・倉山満氏は語尾を濁す――(以下、倉山満氏による寄稿)。
◆立憲民主党に勝つなら今しかない
今回の衆議院選挙で日本維新の会は11議席から41議席に躍進しました。もっとも、前の11議席がありえないほどの低迷なのですが。
公明党を抜いて第三党。野党第二党になりました。いつもの野党の立憲民主党が100議席を切る惨敗、今しかないぞ!!!と叫びたくなる状況です。
今の衆議院の制度は小選挙区制です。1つの選挙区で1人しか当選できない。だから与党に勝つには野党でまとまるしかない。この原理を最大限に利用したのが枝野幸男、前立憲民主党代表。
他の野党に「お前らは候補者を降ろせ」「自民党が鉄板で勝ち目がない選挙区はお前の方が出せ」と要求。
しかし、立民を野党第一党から引きずりおろせば、それができなくなる。「お前の方こそ降りろ!」と言える。
◆どうすれば立民を野党第一党から叩き落せるか
さて、議席数。
立憲民主党 95
日本維新の会 41
国民民主党 11
維新と国民は同盟関係を深めているところ。どうやれば立民を野党第一党から叩き落せるか?
立民から衆議院議員28人が維新に移籍すれば簡単。しかし、それは数字の話で、今の制度では簡単に政党を移籍できない。
ただし、国会には「会派」がある。政党は別でも会派で上回れば、事実上の野党第一党。維新と国民が組めば52。立民の衆議院議員23人が離党、いっしょに会派を組めば第一会派。
この23人という数字が大きい。なんでもいいから、「出てきなよ」と立民にささやけば、一気にあのふざけた党を崩壊させられたかもしれない。
◆いきなり「同盟国」を挑発し始めた維新・松井一郎代表
ところが、そんな動きはまるでなかった。投票日、維新の松井一郎代表が「国民民主党と組むなんてふざけた話はない!」とか、いきなり「同盟国」を挑発し始めた。
この人、気でも狂ったかと思ったが、後の状況を見るとそんな話ではなかった。
国民民主党との連携は進めることになったけど、そんなこととは全く関係なく、起こったのが文通費騒動。国会議員には文書交通費があって、1日でも在職すれば満額もらえる。それを当選1回の小野泰輔議員(東京1区)が問題視した。
そらあ、その通りで、自民党や公明党もそうだそうだと応じた。
◆日本維新の会での国会議員の立場
ここでやめとけばいいのに、維新の創業者の橋下徹さんが「今の国会議員団は金に汚い」とまで言い出した。
これに同党の足立康史衆議院議員が応戦。延々とツイッターでバトルをしていた。最後は橋下徹さん、「領収書原理主義」としか言いようがない、「領収書は全部公開しろ!」みたいな話で部外者にはまったく興味が持てない、維新の党運営批判を繰り広げていた。「お前なんか国家から消えろ」と言われた足立議員には同情するしかない。
そして橋下さん、「維新の国会議員は大阪市議府議の下だ!」まで言い切った。
唖然……。
よくわからないけど、「身を切る改革」というのがこの党の一丁目一番地らしい。
まあ、「無駄を削れ」「議員はぜいたくするな」はともかく、それが最優先事項?その是非を判断するには、この党の歴史を知らねばならない。
今回、衆議院選挙で大阪は、維新15勝0敗 公明党4勝0敗。自民と立民は選挙区で全敗、自民は2人、立民は比例で1人復活しただけ。有名な辻元清美さんも落選した。
◆自民と立民を足しても公明に敵わない
大阪での力関係は、
維新>公明>>>超えられない壁>>>自民>>>>>>>立民
自民と立民を足しても公明にかなわない。
じゃあ、なぜ維新が大阪限定とはいえ、こんなに力を持つのか。それくらい大阪の政治がひどかったからです。細かいことを抜かして一言で言うと、大阪に住んでいるとたいていの人は維新が好きになる。それくらい、大阪市と大阪府の行政はひどかった。それを維新が正した。
ちなみに公明党は大阪では維新の「連立与党」で、国政とは構図が違う。維新の方も、国政で自民が気を遣うように、公明に気を遣う。
だから大阪では維新と公明だけが勝つ、なんて結果になる。
◆大阪以外の有権者が日本維新の会に投票する意味
こういう力関係、それを勝ち取ってきた歴史があるので、維新の大阪市議と府議は自負心が強い。それが橋下さんが言ってしまった「大阪市議府議が他を支配する」という党の構造につながる。
そもそも日本維新の会は、大阪での改革を実現する為に国政にも進出した、という歴史がある。
だから橋下さんの発言は「どっちが上かわかってんのか?」とのマウンティングの意味もある。事実、国会議員と地方議員は同じ一票なので、党の運営に関して決める時、数が多い大阪の市議府議の意向で決まる。
ここで問題。大阪以外の有権者が日本維新の会に投票する意味ってなんでしょう?
大阪の市政府政なんて、他の都道府県の人に関係ないし。どれくらい関係ないかというと、東京どころか京都の人は維新を嫌っている。「そっちで勝手にやって!」って感じ。
◆「既得権益の打破」から既得権益集団へ
ただ、「自民に不満、しかし立民は論外」と思っている人の支持で維新は躍進した。大阪以外でも票を伸ばし議席をとった。
だから、ここで全国政党への改革をすべき時だったけど、大阪の市議府議が党を支配する構造を変えなかった。維新の売りは「既得権益の打破」で、大阪では実現したけど、実は自分たちが既得権益集団だった、というシャレにならないオチ。
東京の小野議員が文通費100万円を問題視したのも、大阪に対して「私は1000%の忠誠心を示します」とアピールしたようにしか見えないんですよね。こうなると。
◆大阪ファーストな日本維新の会は今後伸びるのか……
日本維新の会は、大阪の行政改革が目的で大阪の地方議員団が支配する政党だと天下に示した。
さて、これを続けるか、やめるか。
こんなんで今後も伸びるのかなあ。
そもそも政権を獲る意思がない野党第一党に国民は辟易している。続く維新も???
まだ最終的な結論を出すのは早いけど、しばし冷淡に見守る。
【倉山 満】
’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、「倉山塾」では塾長として、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交についてなど幅広く学びの場を提供している。著書にベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』のほか、9月29日に『嘘だらけの池田勇人』を発売
―[倉山満の政局速報]―