東京都台東区浅草の浅草寺の前を通る「伝法院通り」で、区道を不当に占有し店舗を建てて営業しているとして、台東区議会は20日、32店舗の店主らを相手取り、店舗の撤去や土地の明け渡しなどを求めて東京地裁に提訴する議案を賛成多数で可決した。区は近く提訴する。この場所で40年以上にわたり店を続けてきた店主らは「なぜ今頃になって撤去を要求するのか」と反発している。(禰宜雄一)
「伝法院通り」は、仲見世商店街と交差して東西に延びる約300メートルの通り。飲食店や洋品店などが軒を連ね、多くの観光客でにぎわう。
区が立ち退きを求めているのは、この通りの一角にある商店街「浅草伝法院通り商栄会」の32店舗の所有者ら。区側の説明によると、これらの店舗は1970年代後半、伝法院通りの区道上に建てられたが、所有者らは区に対し、道路法に基づく道路占用許可の申請をしておらず、占用料も支払っていないという。
この状態を問題視した区は2014年6月、商栄会の役員を集めて説明会を開き、「道路法違反の状態にある」と指摘した、と主張。以来、10回以上にわたり、個別訪問や文書で店舗の撤去や道路の原状回復を通告してきたとする。
しかし、商栄会の主張は異なる。西林宏章会長(60)によると、商栄会は戦後直後から営業を開始した。1977年に「浅草公会堂」が建設された際、当時の区長から「伝法院通りを整備したいのでいったん立ち退いてほしい。整備が終われば営業を続けられるようにする」と頼まれた、と主張。店主たちが同じ場所に新たな店舗を構えた際には、店に住居表示板が設置された。商栄会側は「区は営業を認めてきた」として、立ち退き問題が浮上した経緯の説明を要求してきたが、区側が応じることはなかったという。今年8月には約1万2000人分の署名を区に提出し、協議の場を設けるよう訴えた。
当時の経緯を記録した資料はなく、双方の主張は平行線をたどり、区は提訴に踏み切ることにした。裁判では土地の明け渡しや店舗の撤去のほか、過去にさかのぼって占用料相当額の支払いも求める予定だ。議案可決を受け、区道路管理課の斉藤洋課長は「これまで十分に説明を尽くしてきた。解決に努めたい」と述べた。西林会長は「話し合いの場を設けてもらえないまま裁判になり、本当に残念だ。対応については検討していきたい」と話した。
不動産問題に詳しい東京弁護士会の西田穣弁護士は、「区道を占有している以上、区の立ち退き要求があれば、店舗を撤去しなければならない可能性が高い」と指摘。占用料相当額の支払いについては、「区が長年にわたり店舗の営業を黙認していたといえるかが争点になる」としている。