最初から「死ぬ気」だったのだろう。
大阪・北新地の雑居ビルで25人が殺害された放火事件。住所職業不詳の谷本盛雄容疑者(61)は受診を装って診療内科クリニックを訪れ、わずか1~2分の間に紙袋を蹴り飛ばし、しゃがみ込んでガソリンにライターで火を付けた。一瞬にして火の手が天井近くまで上がる中、谷本容疑者は逃げようともせず、燃えさかる火の中を奥へ突き進み、診察室に向かう姿が防犯カメラに写っていた。
世間を震撼させた「無差別テロ」から3日が経過。放火犯の入念な準備と周到な計画性、動機が徐々に明らかになってきた。
谷本容疑者は11月下旬、大阪市西淀川区の自宅近くのガソリンスタンドで約10リットルのガソリンを購入。プラスチック容器2つに入れて保管していた。
「谷本容疑者が34年前に購入した自宅は長年空き家になっていて、つい最近、1人で戻ってきた。ただ電気やガスは通っておらず、犯行の30分前に住宅の床にガソリンをまいて火を付けるなど、事前に手順を確認していた。ポケットには催涙スプレー2缶が入っていて、クリニックの関係者を狙うつもりだったのか、あるいは邪魔をされたら、それで抵抗を試みようとしていたのか……」(捜査事情通)
谷本容疑者はガソリンを白い袋に入れ、自転車の荷台にヒモで固定させ、自宅から犯行現場まで3.5キロの道のりを最短距離で移動。自身もクリニックに通院していたことから、犯行当日は休職者が復帰するための集団治療「リワークプログラム」が行われ、多くの患者が院内にいることを知っていた。大量殺人を狙い、自宅に火を放った約30分後、診察開始の時間に合わせて現場に直行している。自宅からは犯行を裏付けるような内容のメモが見つかった。
谷本容疑者は2008年に妻と離婚。その後、元妻に復縁を迫り、拒否されると、ギャンブルにのめり込むなどすさんだ生活を送るように。10年8月に板金工場を退職。11年4月、長男の自宅で酒を飲んでいる際、口論になり、長男の頭部を包丁で刺し、殺人未遂容疑で逮捕されている。
「もともと長男は谷さんが引き取ることになっとったらしいんやが、結局、別々に住んどった。自慢の息子やったんやが、家族にも相手にしてもらえず、ひとり暮らしの寂しさから絶望感を抱くようになったみたいやで。それで長男を道連れに無理心中しようとしたらしいんや。職人かたぎで人付き合いはとにかくヘタ。酒を飲むと人が変わったように感情を抑えきれんようになり、わめいたり暴れたりするんやが、一方で『誰も相手にしてくれへん』『皆に縁を切られてもうた』とコボすこともあった」(知人)
そんな勝手極まりない理由で何も関係のない人を巻き添えにし、尊い命を奪ったとしたら、犠牲者も遺族もたまったものじゃない。
谷本容疑者宅に「京アニ」記事、模倣か
この事件は京都アニメーション放火殺人との類似点が指摘されていたが、やはり模倣していたようだ。谷本容疑者が生活拠点としていた住宅に、2019年7月の京アニ事件を報じる新聞紙面が残されていたことが分かったからだ。
谷本容疑者は事件の3週間ほど前の11月末に大阪市西淀川区内のガソリンスタンドでガソリン10リットルを購入。その際、店員に「バイクに使う」などと虚偽の理由を告げていたことも判明。大阪府警は京アニ事件を参考にして犯行計画を練っていた可能性があるとみて経緯を調べている。