大阪市北区の雑居ビルに入るクリニックで院長の西沢弘太郎さん(49)らが死亡した放火殺人事件で、意識不明の重体だった谷本盛雄容疑者(61)=職業不詳=が30日夜、大阪市内の病院で死亡した。大阪府警が発表した。煙を吸い込んだことに伴う重度の一酸化炭素(CO)中毒が死因とみられる。容疑者への取り調べが不可能になったことで、事件の真相究明は極めて困難になる。事件の死者は計26人になった。
大阪府警は今後、客観的な証拠の収集で動機などの解明を目指すとともに、谷本容疑者を現住建造物等放火と殺人の疑いで書類送検する方針。
府警によると、クリニックの患者だった谷本容疑者は事件後、院内で心肺停止状態で見つかった。谷本容疑者は救急搬送された大阪市内の医療機関の集中治療で蘇生したが、CO中毒の影響で脳に重大な障害を負い、意識不明の状態になった。顔などの重度のやけど治療も続いていたが、30日午後7時5分に入院先で死亡が確認された。31日に遺体を司法解剖して詳しい死因を調べる。
谷本容疑者は17日午前10時20分ごろ、雑居ビル4階の「西梅田こころとからだのクリニック」の出入り口付近で、ガソリンにライターで火を付けて放火。西沢さんら25人を殺害した疑いが持たれている。
谷本容疑者は放火後、患者らが避難できないよう院内の奥に追い込み、出入り口に比較的近い場所で倒れたとされる。このため救急隊に最も早く搬送されたとみられている。
事件では、4階から運ばれた被害者26人は全て院内奥の診察室周辺で心肺停止状態で見つかり、うち25人がCO中毒で死亡したとされる。残る30代くらいの女性1人は今も重篤な状態が続いている。
府警は19日未明、院内の防犯カメラ映像などから谷本容疑者が関与した疑いが固まったと判断。健康であれば逮捕が可能として、逮捕状請求前の異例の氏名公表に踏み切った。自宅とされる大阪市西淀川区の民家からは「大量殺人」と手書きされたメモや、36人が死亡した「京都アニメーション」放火殺人事件関連の新聞紙面も押収された。
この民家には事件の約1カ月前から滞在していたとされ、谷本容疑者は11月下旬、付近で約10リットルのガソリンを購入。事件当日は民家から自転車で出発し、ガソリン入りの紙袋を積んでクリニックに向かったとされることも判明している。事件の綿密な計画性や強烈な殺意をうかがわせる物証などはそろいつつあるが、動機は今も浮かんでいない。【安元久美子、郡悠介】