女子プロレスラーの木村花さんが自殺に追い込まれるなど、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化している。 被害を受けるのはテレビの有名人だけでなく、キャラクターのアバター(外見)で配信するVTuberや匿名のツイッターユーザーなど、顔出ししていない人であることも珍しくなくなってきた。 ところが、このような「ベールに包まれた人たち」が裁判を起こしても、被害回復は容易ではないという。一体なぜなのか、正体を明かしていない人が名誉を回復するためにはどうしたら良いのか、ネット中傷問題にくわしい中澤佑一弁護士に聞いた。 ●「生身の人間や法人」が原則 ――どうして正体を明かしていないと名誉毀損で争うのが難しいのですか? 現在の判例・裁判例の枠組みでは、生身の人間(自然人)や実在の法人が名誉権の帰属主体(名誉毀損の被害者になり得る)とされています。 よって、ネットのハンドルネームが独立して名誉毀損の被害者になることはなく、生身の人間や実在の法人を示すもの(あだ名のようなもの)としてハンドルネームが使われる場合に名誉毀損が認められます。 ●「中の人」のリアルでの活動の有無がポイント ――正体は非公表でも、出版などをしているツイッターユーザーもいますし、VTuberの多くも事務所に所属していて、実世界の人間ともつながっていそうです ネット以外の現実世界で、ハンドルネームを名乗って活動している実績がある場合には、名誉毀損が認められます。事務所に所属しているVTuberであれば多くの場合要件を満たすと思われます。 ――裏を返すと、実世界とのつながりを持っていない「アルファツイッタラー」や「野良VTuber」には、名誉毀損は成立しないのでしょうか? 有名人でなく一般の方の趣味のアカウントなどでも、ハンドルネームを名乗ってオフ会に参加している、顔写真をネットに公開しており現実の知り合いが見れば誰のことかわかる、などの事情を主張して名誉毀損が認められた事例は経験があります。 しかし、そのようなリアルの活動が一切なく、完全に自分一人でかつネット人格とリアル人格を切り離している場合には、現在の裁判所の判断枠組みでは名誉毀損の成立は否定されるでしょう。 ●「ネット人格にも名誉権を」 ――2021年末、あるVTuberが別のVTuberを訴える準備をしていると発表しました 報道で原告の方のコメントを見ました。「中の人」に対する悪口ではなくVTuberのキャラに対する中傷で深く傷ついているようです。この事例はまさにこの点が被害の本質であろうと思います。
女子プロレスラーの木村花さんが自殺に追い込まれるなど、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化している。
被害を受けるのはテレビの有名人だけでなく、キャラクターのアバター(外見)で配信するVTuberや匿名のツイッターユーザーなど、顔出ししていない人であることも珍しくなくなってきた。
ところが、このような「ベールに包まれた人たち」が裁判を起こしても、被害回復は容易ではないという。一体なぜなのか、正体を明かしていない人が名誉を回復するためにはどうしたら良いのか、ネット中傷問題にくわしい中澤佑一弁護士に聞いた。
――どうして正体を明かしていないと名誉毀損で争うのが難しいのですか?
現在の判例・裁判例の枠組みでは、生身の人間(自然人)や実在の法人が名誉権の帰属主体(名誉毀損の被害者になり得る)とされています。
よって、ネットのハンドルネームが独立して名誉毀損の被害者になることはなく、生身の人間や実在の法人を示すもの(あだ名のようなもの)としてハンドルネームが使われる場合に名誉毀損が認められます。
――正体は非公表でも、出版などをしているツイッターユーザーもいますし、VTuberの多くも事務所に所属していて、実世界の人間ともつながっていそうです
ネット以外の現実世界で、ハンドルネームを名乗って活動している実績がある場合には、名誉毀損が認められます。事務所に所属しているVTuberであれば多くの場合要件を満たすと思われます。
――裏を返すと、実世界とのつながりを持っていない「アルファツイッタラー」や「野良VTuber」には、名誉毀損は成立しないのでしょうか?
有名人でなく一般の方の趣味のアカウントなどでも、ハンドルネームを名乗ってオフ会に参加している、顔写真をネットに公開しており現実の知り合いが見れば誰のことかわかる、などの事情を主張して名誉毀損が認められた事例は経験があります。
しかし、そのようなリアルの活動が一切なく、完全に自分一人でかつネット人格とリアル人格を切り離している場合には、現在の裁判所の判断枠組みでは名誉毀損の成立は否定されるでしょう。
――2021年末、あるVTuberが別のVTuberを訴える準備をしていると発表しました
報道で原告の方のコメントを見ました。「中の人」に対する悪口ではなくVTuberのキャラに対する中傷で深く傷ついているようです。この事例はまさにこの点が被害の本質であろうと思います。