Ritsuko Shimizu
[東京 22日 ロイター] – 赤沢亮正経済産業相は22日の就任会見で、茂木敏充外相と協力して、関税措置に関する日米合意の実施に取り組むと述べた。
赤沢経産相は「日米関税交渉でも(高市早苗首相から)指示を受けている。外相が全体を総括する。米国との調整には引き続き私も当たっていく」と述べ、城内実成長戦略相を加えた3閣僚で対応する体制だと説明した。
日米間で合意した内容は誠実に、速やかに実施することが重要と指摘、80兆円の投資についても「経産省として、半導体やAI(人工知能)の分野で案件組成に向けて積極的に取り組んでいく」とした。
トランプ米大統領が推進するアラスカ州の液化天然ガス(LNG)開発計画については「主導権は米国にある。米国がどういう考えをまとめてくるか、最終的にどういう提案がなされるかを見ながら考えていく」とし「全額日本が負担するような話ではない」と述べた。
経産相就任にあたっては「これまで携わってきた日米関税交渉を含む経済再生の経験も生かしながら、経済産業政策のさらなる推進を期待されていると認識している」とし、高市首相からは「力仕事をしっかりとやってほしい」との言葉があったという。
また、昨晩のうちにラトニック米商務長官から電話で経産相就任への祝意を伝えられたことを明らかにした。
投稿者「F.Krueger」のアーカイブ
政治の地殻変動:中道・保守再編がもたらす安定
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2025#412025年10月20-26日・高市早苗内閣の成立は、自民党が維新と組む必然的な流れで「自然な結果」だった・参院選後の政治的空白は、主要政党が中道・保守に再編され、新たな地殻変動となった点で無駄ではなかった・内政の安定こそ日本に最も重要で、「クネセット化(不安定な小政党連立政治)」しなかったことは朗報10月21日、高市早苗内閣が発足した。先週と先々週、次期首相に関する専門家の予測はジェットコースター、というか、猫の目のように変わり続けた。先週は「これこそ、事前の『まあ、ないだろう』といった希望的観測が、事後の『なるほど言われてみればね・・・』という現実認識に変わる典型例」だと書いたが、今でも筆者はそう思う。古今東西、庶民生活が苦しくなり、内外情勢の不確実性が高まり、予測可能性が低下する状態が続けば、人心は基本的に保守化していく。これを「右傾化」と呼ぶか否かは「好き好き」だが、振り返ってみれば、そのような中で自民党と公明党が連立を組んできたこと自体、不自然というか、奇跡的なことだったと筆者は思っている。専門家ではないので無責任なことを言うかもしれないが、振り返ってみれば今回の結果は実に「自然」だった。立憲民主党に政権奪還の覚悟はなく、連合の反対もあるので国民民主党は自民党との「連立」に踏み切れない。参政党や保守党では数が足りないとなれば、連立相手の選択肢は元々維新しかなかったのかもしれない。参院選後3か月、国内では「政治の空白」を批判する声が多かったが、この間、主要政党間の政策的「ねじれ」がある程度解消されたことも事実。極端な左派と右派が少数にとどまる中、主要プレーヤーが中道系と保守系に綺麗に分かれるという「新たな地殻変動」が始まったとすれば、過去3か月は決して無駄ではなかったと思う。先週書いた通り、筆者の最大関心は日本で国会の「クネセット化(イスラエルの議会、転じて、不安定な小政党連立政治)」が始まるか否か、だった。もし、高市政権誕生により当分「クネセット化」は起きない、またはペースダウンするのだとすれば、日本にとっては朗報かもしれない。最も重要なことは日本内政の安定だからだ。自民・維新の政策合意は全文で6千字弱、外交安保関連だけでも1066字ある。昨年の石破政権誕生の際の自民・公明合意文書が2千字弱だったことに比べれば、約三倍の分量だ。しかも、個々の政策の実現可能性は別として、内容は極めて詳細かつ具体的である。この点は今週のWorldWatchに書いたので、ご一読願いたい。
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2025#41
2025年10月20-26日
・高市早苗内閣の成立は、自民党が維新と組む必然的な流れで「自然な結果」だった
・参院選後の政治的空白は、主要政党が中道・保守に再編され、新たな地殻変動となった点で無駄ではなかった
・内政の安定こそ日本に最も重要で、「クネセット化(不安定な小政党連立政治)」しなかったことは朗報
10月21日、高市早苗内閣が発足した。先週と先々週、次期首相に関する専門家の予測はジェットコースター、というか、猫の目のように変わり続けた。先週は「これこそ、事前の『まあ、ないだろう』といった希望的観測が、事後の『なるほど言われてみればね・・・』という現実認識に変わる典型例」だと書いたが、今でも筆者はそう思う。
古今東西、庶民生活が苦しくなり、内外情勢の不確実性が高まり、予測可能性が低下する状態が続けば、人心は基本的に保守化していく。これを「右傾化」と呼ぶか否かは「好き好き」だが、振り返ってみれば、そのような中で自民党と公明党が連立を組んできたこと自体、不自然というか、奇跡的なことだったと筆者は思っている。
専門家ではないので無責任なことを言うかもしれないが、振り返ってみれば今回の結果は実に「自然」だった。立憲民主党に政権奪還の覚悟はなく、連合の反対もあるので国民民主党は自民党との「連立」に踏み切れない。参政党や保守党では数が足りないとなれば、連立相手の選択肢は元々維新しかなかったのかもしれない。
参院選後3か月、国内では「政治の空白」を批判する声が多かったが、この間、主要政党間の政策的「ねじれ」がある程度解消されたことも事実。極端な左派と右派が少数にとどまる中、主要プレーヤーが中道系と保守系に綺麗に分かれるという「新たな地殻変動」が始まったとすれば、過去3か月は決して無駄ではなかったと思う。
先週書いた通り、筆者の最大関心は日本で国会の「クネセット化(イスラエルの議会、転じて、不安定な小政党連立政治)」が始まるか否か、だった。もし、高市政権誕生により当分「クネセット化」は起きない、またはペースダウンするのだとすれば、日本にとっては朗報かもしれない。最も重要なことは日本内政の安定だからだ。
自民・維新の政策合意は全文で6千字弱、外交安保関連だけでも1066字ある。昨年の石破政権誕生の際の自民・公明合意文書が2千字弱だったことに比べれば、約三倍の分量だ。しかも、個々の政策の実現可能性は別として、内容は極めて詳細かつ具体的である。この点は今週のWorldWatchに書いたので、ご一読願いたい。
防衛省施設で技官転落か 死亡、エレベーター昇降路
22日午前9時45分ごろ、東京都新宿区の防衛省の施設にあるエレベーターの昇降路で、人が落下したと119番があった。警視庁牛込署によると、同省の男性技官(60)が1階から地下まで5~6メートルほど転落したとみられ、搬送先の病院で死亡が確認された。
男性は直前まで運搬車「ターレ」を運転していたという。運搬車は1階部分に残っており、署が詳しい状況や死亡の経緯を調べる。
木原官房長官「安倍政権の政策を含めて適切に引き継ぐ」高市政権の運営に関し歴代内閣の政策を適切に継承する考え
木原官房長官はきょう午前の記者会見で、安倍政権で総理秘書官や総理補佐官を務めた今井尚哉氏を内閣官房参与に起用した理由について、「豊富な経験を活かし、高市総理からの特命の事項について情報提供や助言を行ってもらうため」と説明しました。
その上で、歴代内閣の政策で引き継ぐべきものについては、安倍政権の政策を含めて適切に引き継いでいく考えを示しました。
娘への性的暴行で父親に懲役8年、被害女性が実名告発
【AFP=時事】2016年に当時高校生だった長女福山里帆さん(25)に性的暴行をしたとして、準強姦罪に問われた大門広治被告(54)に対し、富山地裁は21日、懲役8年の判決を言い渡した。匿名での告発を選ぶことの多い日本で、実名での告発は珍しい。 被告は性行為があったことを認めたものの、「(福山さんは)逆らえない状態ではなかった」として無罪を主張していた。 梅沢利昭裁判長は判決理由で、「被害者は中学生の頃から性的虐待を繰り返し受け、周囲に助けを求めても奏功せず、逃げ場のない状況で精神的に追い詰められており、結果は重大だ」と述べた。 福山さんは、中学生の頃から、母親が家にいない時に性的暴行をされるようになったと述べている。 昨年3月に被告が逮捕・起訴されたのを受け、福山さんは実名を明かして被害を訴えてきた。 日本で同様の犯罪の被害者として実名を公表した人は、ごくわずかだ。 福山さんは裁判所前に集まった記者団に対し「まずはほっとしている」「社会に家庭内性被害があることをまず伝えたい」と語った。 福山さんは今まさに苦しんでいる被害者に対し、「非常にいまつらい思いをしていると思います。でも、社会は見てくれるので、声を上げて、信頼できる大人に『助けて』と相談してほしいです。勇気がいることですが、助けてくれる大人は必ずいます」と呼び掛けた。 【翻訳編集】AFPBB News
トランプ米大統領、27日来日 28日首脳会談、同盟強化確認へ
政府は22日、トランプ米大統領が27~29日の日程で来日すると発表した。天皇陛下との会見や高市早苗首相との初会談を予定している。首相は日米同盟の強化と「自由で開かれたインド太平洋」の推進を確認したい考え。米国からのコメや液化天然ガス(LNG)の輸入増加など日米関税合意の進捗状況も説明する方針だ。政府が米自動車大手フォード・モーターのピックアップトラックを100台規模で購入する案を取り上げることも念頭に置く。
陛下との会見は27日、首脳会談は28日で調整。北朝鮮の核・ミサイル問題への対応を確認し、拉致問題解決に向けた支援を要請する。
7月の日米関税合意も主要テーマとなる。日米が9月に公表した共同声明には、日本がミニマムアクセス(最低輸入量)の枠内で米国産コメの調達を75%増やしたり、米国のエネルギーを年70億ドル(約1兆円)規模で追加購入したりすることを盛り込んだ。
政府が調達を検討するフォード車は「F―150」。国土交通省の地方整備局に導入し、道路やダムの定期点検のほか、災害時の使用を想定する。
〈ホントに進次郎防衛相で大丈夫?〉「生まれ育った横須賀は防衛の街」アピ―ルも不安の声続々「センスのない構文は国際問題」…“ポスト高市”の動きを封じる戦略か
日本維新の会との連立によって発足にこぎつけた高市内閣。論功行賞色もありつつ、高市氏とは距離のある議員も登用し、党内の各方面に一定の配慮を見せた人事となった。そのなかでも注目は、総裁選で高市氏に次ぐ2位となった小泉進次郎防衛相。未来の首相を目指すうえで経験を積むことが求められる彼にとっては、安全保障分野の重要ポジションだが、諸刃の剣ともなりそうだ。
〈画像〉進次郎大臣が4歳のときに撮った、父・純一郎氏、兄・孝太郎氏との3ショット
「生まれ育った横須賀は防衛の街」出身地のゆかりアピールも、心配の声
進次郎氏は21日、さっそく首相官邸で記者団の取材に応じ、「私の生まれ育った横須賀は防衛の街」「自衛隊と大変つながりの深い環境で生まれ育ち、政治家の活動を続けてきた」と、出身地と防衛のつながりをアピールした。
確かに彼は、2023年には衆院安保委員会の与党筆頭理事、2024年には安全保障委員長も務めるなど、安全保障分野においても一定の経験を積んできた。だが、進次郎氏のこれまでの外交・安全保障に関する発言をひもとくと、不安の声も。
進次郎氏は昨年の総裁選で、記者から中国訪問の経験を聞かれた際に「台湾には行ったことがあります。中国にはありません」と発言。中国と台湾の微妙な関係を踏まえると、中国について聞かれて台湾を持ち出すのはセンスがない。これには自民党の中からも「首相になってこんな発言をしたら、国際問題になりかねない」とあきれる声があがったのだ。
また、カナダでのG7をめぐっては「(カナダの)トルドー首相は就任した年は43歳。私は今43歳」と、「自分が首相に就任したら同い年での就任」とアピール。北朝鮮による日本人拉致問題についても「首相になればトップ同士、同世代」と、金正恩総書記との「同年代」を強調。
「同世代」ということを主張するばかりで、外交・安全保障分野について具体的な政策をほとんど語らなかったことから、今回の防衛相就任も「ボロが出ないといいが…」(自民党関係者)と不安視されているのだ。
「ポスト高市」レースには不利? 手足を縛られ…
政界きっての政策通として知られ、外交・安全保障にも詳しい高市氏だが、なぜ能力が不安視される進次郎氏を防衛相に起用したのだろうか。全国紙政治部記者はこうみる。
「まずは『挙党体制』『党内融和』を演出するためでしょう。総裁選では当日まで進次郎氏が本命とみられていたくらい、進次郎氏を支持していた議員は多かった。それだけに進次郎氏を重要閣僚に就け、『進次郎派』にも一定の配慮をした形です。
また、中国や韓国もタカ派の高市首相を警戒しているなか、自身に近い議員を防衛相にするよりは、タカ派色の弱い進次郎氏を就けることで、各国を刺激しないねらいもあるとみられます」
首相の座を目指す進次郎氏にとっても、避けて通れない安全保障分野の経験を積むという意味で、望ましいポストといえそうだ。
だが防衛相を務めるということは、諸刃の剣でもある。
「防衛相は北朝鮮から飛ばされるミサイルへの対応、災害時の自衛隊の対応など危機管理対応が求められるポジションです。それだけになかなか東京を離れづらい。一方で海外出張も多くあります。総裁選で課題となっていた党員票の掘り起こしはしづらいのではないでしょうか。
党内基盤が十分でない高市氏としては、総裁選で2位になった進次郎氏の“次”に向けた動きは脅威。進次郎氏を身動きの取りづらいポジションに置き、ポスト高市に向けた動きを封じようとするねらいもありそうです」(同)
高市首相も石破前首相も、無役の時期や党の役職を務めていた時期に地方での講演会や選挙の応援に回っていた。その際にできた地方議員や党員とのつながりが総裁選での党員票獲得に生きたが、防衛相の立場ではそうはいかないというのだ。
国会答弁では、野党の格好のターゲットに?
さらに、高市内閣の防衛相ならではの難しさもある。高市氏は就任直後の記者会見でさっそく、政府が2022年に策定した安全保障3文書の前倒し改定を指示する方針を表明。防衛費を含む安保関連費の増額を目指すとみられている。
「立憲も高市氏のタカ派政策を批判し、防衛費増額については国会で積極的に取り上げるでしょう。進次郎氏の不安定な答弁を引き出したいと考え、年明けの通常国会の予算委員会でもターゲットにするかもしれない。先月の総裁選では安全運転に徹した進次郎氏ですが、たび重なる野党からの質問攻勢に再び『進次郎構文』で答えてしまったら、何度もその場面がテレビで流れてしまいます」(同)
防衛相は農水相時代の「備蓄米放出」のように国民にとって分かりやすく、生活に直結するテーマに取り組むことも少ない。大臣の仕事を通じて人気を集めるのにも限界があり、進次郎氏にとっては「いかに減点をしないか」が重要になりそうだ。
環境相時代は「気候変動のような大きな問題は、楽しくかっこよくセクシーであるべきだ」と発言していた進次郎氏。「国家存立の崇高な任務」と語る防衛相の職務も、セクシーにこなせるだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
「高市官邸は経産省が支配」なぜアベノミクスの負の遺産を引き継ぐのか? 増税、赤字国債、ムダ遣い志向色濃く
初めての女性総理が誕生した。高市早苗氏だ。そんな高市政権にブレインとして、筆頭総理秘書官として起用の方針を報じられたのは飯田祐二・前経済産業事務次官であった。この人事について、経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏は「高市政権の目指す方向性は火を見るより明らかだ」と指摘する。その方向性とは?
【画像】高市総理が掲げる積極財政の負の側面
安倍晋三政権が残した負の遺産を引き継ぎ、増幅させようとするもの
ひとつの人事が、時に政権の行く末を雄弁に物語ることがある。
2025年10月21日、第104代総理大臣に就任した高市早苗氏が、官邸の中枢、筆頭総理秘書官に据えたのは飯田祐二・前経済産業事務次官であった。この決定は、単なる官僚の配置転換ではない。
高市新政権がどのような国家像を描き、いかなる経済哲学に基づいて日本を導こうとしているのか、その設計思想を白日の下に晒す、極めて象徴的な選択である。
結論から言えば、その設計図は過去の失敗から何一つ学ばず、むしろ安倍晋三政権が残した負の遺産を忠実に引き継ぎ、増幅させようとするものに思える。日本の未来は、再び経済産業省という名の亡霊に取り憑かれ、成長への道を閉ざされようとしている。
飯田祐二という官僚の経歴をひもとけば、高市政権の目指す方向性は火を見るより明らかである。飯田氏は岸田文雄政権下で、脱炭素政策、いわゆるGX(グリーントランスフォーメーション)を主導し、大阪・関西万博の旗振り役も担った人物だ。
これらのプロジェクトに共通するのは、政府が「ミッション」と称する壮大な目標を掲げ、特定の産業分野に巨額の国費を計画的、長期的に投入するという手法である。
飯田氏自身、自らが推進した政策を「経済産業政策の新機軸」あるいは「ミッション志向の産業政策」と呼び、これを誇らしげに語っている。
「官も民も一歩前に出て、あらゆる政策を総動員する」
この言葉は、一見すると力強く、未来志向に響くかもしれない。しかし、その内実は、市場メカニズムへの不信と、国家による経済への過剰な介入を正当化する思想に他ならない。
日本の経済を一つの広大な庭園に喩えるならば、経済産業省が掲げる「ミッション志向」とは、庭園全体の土壌を豊かにして多様な植物が自らの力で育つ環境を整えるのではなく、政府が選んだ特定の区画にだけ巨大な温室を建設し、そこに高級な肥料と水を惜しみなく注ぎ込むようなものである。
半導体産業の強化に10兆円、GXの実現に官民で150兆円。これらの数字は、もはや政策というより巨大な公共事業の様相を呈している。
高市政権が採用した経産省主導の体制
飯田氏は、自らの政策を「官が主導する伝統的産業政策でもなく、かといって官が民の活動を阻害しないように徹する新自由主義的政策のどちらでもない」と規定する。だが、これは巧妙な言葉遊びに過ぎない。
政府が特定の産業を選別し、補助金や基金、政府系金融機関を通じた支援で手厚く保護するやり方は、かつて日本が経験し、そして失敗した護送船団方式の産業政策そのものである。
温室の中で育てられた植物は、見栄えは良いかもしれないが、外部環境の変化に弱く、自律的な成長力を失う。
政府の補助金という麻薬なしでは生き残れないゾンビ企業を量産し、市場の創造的破壊を妨げ、経済全体の生産性を蝕んでいく。これが「ミッション志向」の避けられない結末である。
高市政権が採用したこの経産省主導の体制は、第二次安倍政権、とりわけ官邸官僚として絶大な権勢を誇った今井尚哉氏の時代を彷彿とさせる。
今井氏もまた経済産業省の出身であり、大規模な産業政策と財政出動を好み、その財源を確保するために、多くの反対を押し切って消費税率の引き上げを断行した中心人物であった。
出費を増やし、足りなくなれば国民から広く薄く徴税する。この安直な「大きな政府」への志向は、経済産業省に深く刻まれたDNAのようなものだ。高市政権は、飯田祐二氏を官邸の司令塔に据えることで、この危険なDNAを何のてらいもなく受け継ぐことを宣言したのである。
高市早苗氏自身の経歴との断絶
ここで驚かされるのは、高市早苗氏自身の経歴との断絶である。高市氏は長年にわたり総務大臣を務めた経験を持つ。総務省、特にその情報通信分野は、経済産業省とは全く異なる経済哲学を持つ省庁だ。
経済産業省が特定のプレイヤーをえこひいきする「産業政策」に傾倒するのに対し、総務省は市場のルールを整備し、企業間の公正な競争を促す「競争政策」を重視してきた。
携帯電話料金の引き下げを巡る一連の政策は、政府が直接価格に介入するのではなく、新規参入を促し、事業者間の競争を活性化させることで、結果として国民の利益を実現した好例である。
競争政策こそが、経済全体の活力を生み出し、持続的な成長を実現するための王道であることは、数多くの実証研究が示している。
大盤振る舞いの財政出動は経済の足を引っ張る
例えば、テオフィール・アイヒャーとティル・シュライバーが2009年に発表した論文『構造政策と成長:自然実験からの時系列証拠』は、旧共産圏の移行経済諸国を分析し、市場の質を高める「構造政策」が10%改善するだけで、年間経済成長率が2.5%も向上するという劇的な結果を報告している。
これは、政府が特定の企業を選ぶのではなく、市場という土壌そのものを豊かにすることの重要性を物語っている。
また、ダンコ・タラバルとルイス・パントゥオスコによる2022年の研究『改革の補完性と成長:証拠とメカニズム』は、単発の政策変更ではなく、税制、規制、労働市場にまたがる「広範な改革パッケージ」こそが、年間1.2%の成長押し上げ効果を持つことを明らかにした。
経済産業省が進めるような、半導体やGXといった個別分野への断片的な介入が、いかに近視眼的であるかを示唆する研究である。
さらに、レオネル・ムイネロ=ガロとオリオル・ロカ=サガレスが2011年に発表した論文『経済成長と不平等:財政政策の役割』は、政府の経常支出や直接税が経済成長を抑制する危険性を指摘している。
つまり、経済産業省が主導する大盤振る舞いの財政出動は、将来の増税を通じて、まさに経済の足を引っ張る行為に他ならないのだ。
長期的な国家ビジョンよりも、目先の権力基盤の安定
これらの学術的知見が指し示す方向はただ一つである。持続的な経済成長の鍵は、政府が特定のプレイヤーをえこひいきする「産業政策」ではなく、市場全体の競争環境を整備する「競争政策」にある。
経済産業省が推進する特定の企業への補助金政策は、市場を歪める介入であり、ここで言う包括的な供給サイド改革の理念とは真逆の、偽りの改革なのである。
なぜ高市氏は、自らが熟知しているはずの総務省的な、堅実で効果的なアプローチを捨て、経済産業省が描く華やかだが危うい幻想に身を委ねたのか。
そこに見えるのは、政策的な信念の欠如と、第二次安倍政権の成功体験(という名の幻想)に安易に乗っかろうとする権力志向である。
高市氏は、総務省時代に培ったはずの人脈や知見を活かすことなく、経済産業省の官僚たちに政権運営を丸投げした。これは、長期的な国家ビジョンよりも、目先の権力基盤の安定を優先した、極めて無責任な選択と言わざるを得ない。
新たな暗黒時代へと国民をいざなう、破滅への一本道
経済産業省の官僚たちが信奉する「産業政策・補助金投下」路線は、実証データによってその有効性が繰り返し否定されてきた。政府が巨額の支出を行っても、その効果は曖昧であり、場合によっては経済に有害ですらある。
公共投資は非効率な資源配分をもたらし、補助金は本来淘汰されるべき企業を延命させ、産業の新陳代謝を阻害する。そして、大盤振る舞いの後には、必ず増税か、将来世代への負担の先送りである赤字国債の発行が待っている。
飯田祐二氏が推進してきたGX経済移行債という仕組みは、その典型だ。将来の炭素税収を当て込んで20兆円もの国債を発行するというが、将来の財源確保は不確実であり、事実上の野放図な歳出拡大に道を開くものだ。
閉幕した大阪・関西万博も同様である。当初の想定を大幅に超えて膨張した建設費、関連予算13兆円は、そのほとんどが税金で賄われる。これらの巨大プロジェクトが生み出す経済効果は限定的であり、むしろ一部の業界に利権をばらまき、国民全体に重い負担を強いる結果に終わるはずだ。
高市政権が歩む道は、日本の再成長へと続く道ではない。それは、経済停滞に苦しんだ「失われた30年」をさらに延長し、新たな暗黒時代へと国民をいざなう、破滅への一本道なのである。
文/小倉健一
秋葉原で静かに進行する「中国化」のリアル
かつて“オタクの聖地”と呼ばれた秋葉原が、いま静かに姿を変えつつある。ここはもはや日本メーカーの“牙城”ではない。アニメやゲーム広告に電気街──その街を象徴する風景の裏で、勢力図が塗り替わりつつある。
本記事は『ニッポン華僑100万人時代』より一部抜粋・再編集。変貌するアキバの最前線に、日経記者が迫る。
※登場する取材協力者の肩書や年齢は取材当時のものです。
オタクの聖地を中国席巻
日本を象徴する街の姿が大きく変わり始めた。アキバから、上野アメ横、道頓堀に至るまで。「日本らしさ」が全国から静かに消えつつある。陰の主役は「中国」だ。
【グラフを見る】秋葉原を訪れるインバウンド客の国別人口
「秋葉原へようこそ!」。1日20万人超もの乗客が利用する、JR秋葉原駅。その駅の表玄関である中央改札に向かうと、正面から次々と美少女キャラクターの広告が現れ、アキバファンを出迎える。
改札を抜けると、今度は全長30メートルもの大型ビジョンに、女子高生風のアニメキャラクターが次々と登場する。ファンの気持ちをこれでもかと高ぶらせる駅構内は今、「完全なアキバワールド」(20代の日本人男性)だ。だが、この広告主、実はすべて日本企業ではない。「秋葉原駅中央改札をジャックする」。そう豪語し、2024年春から派手な宣伝を仕掛けてきたのは、新進気鋭の中国企業だった。
上海に拠点を置くスマートフォン向けのゲームメーカー、上海悠星網絡科技――。日本では「Yostar(ヨースター)」の名称で展開し、日本のアニメファンを次々と虜(とりこ)にしている。ゲームプレイヤーが教師役となり、美人学生たちと学園ドラマを楽しむゲーム「ブルーアーカイブ」や美少女ゲーム「アズールレーン」などを配信し、人気を呼ぶ中国メーカーだ。
JR東日本は現在、全国の主要駅を中心に、駅を従来の「交通拠点」から「新たなビジネスを創発する拠点」へと転換を進めている。2024年からは、秋葉原駅をモデルケースとし、「圧倒的インパクトを創出する」場として、駅構内に大型ビジョンと店舗スペースを一体化させた空間を企業側に提供。その第1弾で、アキバの世界観に合致しているとして選ばれたのが、中国企業のヨースターだった。同社が用意した広告費は1年間で3億円を超える。
「ヨースターは、ゲームキャラクターの見た目が特にかわいいです。ゲームのクオリティーも日本のものと変わりません」。駅構内で出会った大阪府在住の男子大学生、吉田成孝さん(22)も、そう興奮気味に話してくれた。就職活動で上京したついでに、秋葉原駅構内にあるヨースターの公式販売ショップに立ち寄り、グッズを買い求めに来たところだったという。2年前、友人の勧めでヨースターのゲームを始めて以来、「すっかりその魅力にはまってしまった」。
アキバのあちこちに出現「実は中国」な企業広告
高市自維政権で進む病人・弱者切り捨て…医療費削減ありき「病床11万床潰し」すでに3党合意の非情
「総裁にはなったが、首相になれないかもしれない女と言われている、かわいそうな高市早苗」と自虐ネタを飛ばした1週間前とは打って変わった様子だった。自民党の高市早苗総裁は20日、日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)と連立合意。共同会見でご機嫌な表情を浮かべながら「国民の皆さまの不安を希望に変えたい」と力を込めたが、合意した政策メニューに不安は拭えない。自維連立政権の爆誕で「医療難民」の続出が懸念される。
◇ ◇ ◇
21日召集の臨時国会に関し、高市氏は会見で「経済対策が本当に大切」と強調。「医療機関の7割が大きな赤字、そして福祉施設の倒産も過去最多」と危機感を示し、「この状況を何とか脱するために臨時国会はとにかく経済対策をしっかり打つ、補正予算を仕上げる」と意気込んだ。
実際、医療機関の経営状況は悪化の一途をたどっている。東京商工リサーチの調査によれば、今年1~9月の病院・クリニックの倒産は27件。2006年以降の20年間で2番目の高水準で推移しており、このペースなら16年ぶりに年間40件を超える可能性がある。帝国データバンクの調査でも今年上半期(1~6月)の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産は35件に上った。年間では初めて70件に達する可能性があるという。
医療クライシスが迫る中、高市氏は総裁選で診療・介護報酬の前倒し改定を掲げた。維新との連立合意文書にも具体策として、〈高度機能医療を担う病院の経営安定化と従事者の処遇改善(診療報酬体系の抜本的見直し)〉を明記。物価高に苦しむ病院や介護施設の〈経営状況を好転させるための施策を実行する〉と盛り込んだ。
「保険料あって医療・介護なし」
しかし、である。問題は、通常国会で自民・公明・維新が交わした社会保障改革と骨太方針に関する3党合意の実現がうたわれていること。一般病床・療養病床・精神病床の11万床削減やOTC類似薬の保険適用除外が目玉だ。全国の医師・歯科医師約10万7000人で構成される全国保険医団体連合会事務局次長の本並省吾氏が言う。
「医療費削減ありきでどんどん病床を潰していくことになれば、採算の悪い救急病床の閉鎖にもつながる恐れがあります。病床が余っているといわれますが、そもそもの大きな要因は医師や看護師の不足、経済的な事情で受診抑制が生じていることです。余っているというより、回したくても回せないのが実情。入院施設の持続可能性を担保する改革というよりは、単に医療費を削減すればよいと考えているのでしょう。ただでさえ医療提供体制の持続可能性が欠けている状況で、さらに病床削減では医療へのアクセスが奪われかねません」
社会保障費負担の軽減は待ったなしだが、改革の名の下に行われるのは「患者へのツケ回し」だ。「OTC類似薬の保険適用除外もまたしかり。特に維新は社会保障を削ることを『改革』と称していますが、社会保険料の引き下げとはすなわち、給付の削減でもある。やがて訪れるのは、保険料を強制徴収される仕組みはあるのに医療サービスが受けられない『保険料あって、医療・介護なし』の状況です。まずは医療・介護にも公共インフラとして、手厚く公費を投入していくべきです」(本並省吾氏)
病人・弱者切り捨ての自維政権が国民の不安を希望に変えられるとは、到底思えない。
◇ ◇ ◇
自維連立めぐるドタバタ劇は、関連記事【もっと読む】【さらに読む】で詳しく報じている。