「おとこおんな」幼児がいじめを受けたとき 防止法は対象外、LGBTどう教える

幼児が「僕は女の子になりたい」と訴え、女児の服を着て保育園に行ったらいじめられた。そんなとき、周りの子どもにどう教えたらいいのか―。こんなケースが実際に大津市であった。LGBTなど性的少数者への理解が進み、親も受容するようになってきたことで、幼児期から対応を求められるケースは今後、増えていきそうだ。一方、小学校入学前の子どもの場合、法的には「いじめ」にならないという。一体どういうことなのか。(共同通信=福田亮太、市川亨)
▽対応遅れ、不登園に
「なかまはずれ」「ぼこぼこ」。大津市の市立保育園に通っていた園児(6)は、つたないひらがなでいじめの内容をメモに書いていた。2019年4月に年中クラスへ途中入園。戸籍上は男だが、女の子の格好をしていたため「おとこおんな」などと他の園児にからかわれた。暴言や暴力も受け、家に帰ると母親に「女で生まれたかった」「1回死んで女になりたい」と泣いて訴えた。
園児が書いたいじめ内容のメモ
両親は園や市に相談したが、園は「(加害園児の)成長過程での行為」「じゃれあい」と説明。市の保育園の担当課は「いじめには当たらない」と回答した。根拠となったのが、2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」。同法は、同じ大津市の中2男子がいじめを受け11年に自殺したことがきっかけで制定された経緯もあって、対象は小学生以上となっている。
園児の両親の継続的な訴えを受け、市は20年11月になって「年齢的なことを除けばいじめに当たり、対応が不適切だった」と謝罪したが、約1年半続いたいじめで園児は不登園状態に。市のホームページに掲載された「保育園評価書」に、匿名ではあるものの園児の性別違和のことが無断で掲載されるという「アウティング」も起きた。
園児が通っていた保育園の対応について大津市が作成した経過報告書の一部
▽幼児期でもいじめは起こり得る
いじめ防止法の対象を未就学児に広げる必要はないのか。市が設置する「大津の子どもをいじめから守る委員会」の春日井敏之委員長(立命館大大学院教授)は現実的な難しさを指摘する。「事実認定をする際、未就学児は受けた行為や思いを正確に言語化するのが困難な場合がある」からだ。「本人の悲しみやつらさが本当にいじめに起因するものか、慎重に判断しなければならないとの見解を示す。
ただ、「幼児期にもいじめは起こり得る。現行法には議論の余地がある」とも。「乳幼児期は日常的にトラブルが起きる。未熟な子ども同士が関わり合い、つながるのが幼保教育の場。だからこそ、保育士や幼稚園教諭には丁寧な初期対応が求められる。法改正の議論とは別に、法の理念を踏まえて取り組んでほしい」と話す。
▽性別違和、半数以上は就学前から
岡山大大学院の中塚幹也教授
園児の両親は周囲から「妹に焼きもちを焼いているだけ」「思春期にならないと、本当にトランスジェンダーなのかどうかは判断できない」などと言われ、取り合ってもらえなかった。だが、性同一性障害(GID)学会理事長の中塚幹也岡山大大学院教授によると、当事者の半分以上は小学校入学前から性別に違和感を抱くという。
LGBTなど性的少数者には、依然として差別や偏見が根強いため、本人が気持ちを押し殺し、親も否定したり隠したりすることが多い。それでもここ数年、徐々に理解が進んできたため、教育現場が対応を迫られることが増えてきている。文部科学省は15年、性同一性障害の子どもへの対応について通知を出し、きめ細かな配慮や支援体制などを求めた。ただ、この通知も対象は小中高に限られており、中塚教授は「性のことを含め、人には多様性があるということを教えるのは早いほうがいい」と指摘する。
▽その子らしくいられるよう支援を
大津市の保育園も、何もしなかったわけではない。他の園児に「『女の子、男の子だから』ではなく、友達の『こうなりたい』という心を大事にして」などと呼び掛けたが、いじめを止められなかった。
大人でも受け止めるのが難しい事柄だけに、中塚教授は「年齢や立場によって適切な方法は異なる。その方法論を見いだすのが今後の課題だ」と言う。その上で「本人と話し合いながら環境づくりをしていくのが望ましい。他の幼児への説明では絵本を使ったり、大人の当事者と会って話をしたりするのが効果的だ」と柔軟な対応を促す。
自身もトランスジェンダーで、性的少数者を支援する認定NPO法人「ReBit(リビット)」の薬師実芳代表理事は「幼少期に自分で『性別違和がある』などと周囲に伝えることは難しい。『スカートをはきたい』といった言葉に大人は耳を傾け、我慢を強いるのではなく、その子らしくいられるよう支援してほしい。一方で性自認は変わり得るので、『この子は性的少数者だ』と周囲が決めつけず、見守ることが大事だ」と話している。

認知症患者の裸、看護師が送信 高知、「面白がって」

高知市の高知記念病院で昨年9月、女性看護師が、担当する認知症の男性入院患者の裸を自身のスマートフォンで写真撮影し同僚に送信していたことが29日、病院への取材で分かった。看護師は「面白がってやった」と話しているという。女性介護職員が、この患者が病室で転倒する様子を同11月にスマホで撮っていたことも判明した。
病院は今年2月、看護師を減給1カ月、出勤停止1週間とし、介護職員を出勤停止3日の懲戒処分とした。高田早苗院長は「医療に携わる者として決して許されない。患者の名誉とプライバシーを守ることを徹底する」とのコメントを出した。

コロナで高齢者の「虚弱」を懸念 致死率3倍、接種後死亡例

新型コロナウイルス流行による外出制限で、高齢者の身体機能や認知機能が低下して要介護の一歩手前の「フレイル(虚弱)」に陥る懸念が世界で深まっている。感染時の死亡率が健常者の3倍との研究結果や、ワクチン接種後に死亡した例も。専門家は適度な運動や人との触れ合いを増やすよう訴えており、高齢者人口の割合が世界最高の日本も対策が急務だ。
感染者が多い欧州などでは拡大阻止のために日本より厳しい外出規制を課し、ロックダウン(都市封鎖)を延長している国も多く、高齢者が自宅にこもりきりになる事例が増加している。(共同)

横浜でマンション火災、2人死亡 高齢の母と娘か

28日午後11時25分ごろ、横浜市神奈川区羽沢南の6階建てマンションから出火していると目撃者から119番があった。4階の無職井口正夫さん(87)方が全焼し、1人の遺体が見つかった。このほか室内から井口さんの長女で会社員の恵子さん(55)が搬送されたが、病院で死亡が確認された。
神奈川署によると、井口さんは避難して無事だった。井口さんの妻(81)と連絡が取れておらず、遺体は妻とみて身元の確認を急ぐ。

宣言解除1週間 飲食店「客足戻らない気が…」 頼みはワクチン

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除されて29日で1週間となる。飲食店への営業時間短縮要請は1時間緩和されて午後9時までとなったが、飲食店関係者からは「客足は戻っていない。ワクチン接種が広がらないと……」という声が上がっている。【山越峰一郎】
埼玉県のJR大宮駅東口の目の前にあるアーケード街「すずらん通り」。25日夜に取材に訪れると、飲食店内には8割ほどの人が入っているように見えた。NTTドコモによると、この日の午後3時時点の大宮駅西口の人出は、感染拡大前の2020年1~2月の平均より5・5%多かった。
居酒屋「鐘屋(かねや)」には6組12人の笑い声があふれていた。だが、オーナーの池田和靖さん(64)は「多少はお客さんが増えたが、もう少し期待していた」。36席あるが、社会的距離を取るため4人用の席を2人用にしており、席数は実質半減している。
「県や国がどうではなく、ワクチン接種が広がり、安心できないと」と池田さん。店は透明ビニールシートをのれん代わりにして、ドアは開けたままだ。時短要請解除後も、当面は現在の席数を維持するつもりという。
ラストオーダーの午後8時。店内にいた5組13人の客からは、ハイボール計6杯の注文が入った。飲食時以外はマスクをして会話をする客もいた。
大宮の不動産会社に勤める男性2人組は、今年初めて飲みに来たという。上司(41)は「『飲みニケーション』も大事。職場の外でねぎらったり、相談を受けたりすることができず仕事にも影響していた」。部下(28)も「午後9時までになり、仕事の終わりに行けるようになった」と話す。これから上司は神奈川、部下は栃木に帰宅するという。
閉店の午後9時が近づくと、店員が声をかけずとも客は帰っていった。「以前は午前0時まで開けていたが、客足はもう戻らない気がする」。池田さんは複雑な表情だ。
大宮駅周辺では午後9時以降、多くの店が閉まったが、南銀座通りでは営業を続ける店舗もある。「居酒屋いかがですか」「午後11時まで大丈夫ですよ」。通行人に声をかける店員の姿もあった。

「昼カラオケ」警戒でも高齢者4人感染…緊急事態中「大会」参加者も

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の解除から1週間となる28日、埼玉県内では新たに114人の感染が確認された。
県は感染のリバウンド(再拡大)対策として飲食を伴う会合や「昼カラオケ」への警戒を強めているが、同日の新規感染者にはカラオケを通じて感染した高齢者4人がいたほか、接待を伴う飲食店の従業員3人の感染も明らかになった。
感染者の内訳は、県発表が70人、さいたま市が18人、越谷市が13人、川口市が10人、川越市が3人。感染者は累計3万2467人となった。
カラオケ関連の新規感染者のうち1人は、緊急事態宣言発令中の3月中旬に行われたカラオケ大会に参加していた。同大会参加者らの感染は計6人となった。
県によると、28日夕現在、入院者は指定医療機関と一般医療機関で470人で、うち重症者は37人。ホテル療養は326人、自宅療養は301人。医療機関の退院やホテル・自宅療養の終了者は3万420人。死者は699人。

就寝中に強盗「金を出せ」…自力で結束バンド外しもみ合いに

愛知県警蟹江署は28日、同県半田市旭町、会社員の男(20)を強盗容疑で緊急逮捕した。
発表によると、男は同日午前2時頃、同県飛島村新政成の住宅で、1階居間の窓ガラスを割って侵入、2階で就寝中の会社員男性(40)に果物ナイフのようなものを突きつけて「金を出せ」などと脅し、結束バンドで両手首を縛り、スマートフォンや運転免許証などを奪って逃げた疑い。男性は自力でバンドを外し、男ともみ合いになったが、けがはなかった。
同日早朝、捜索中の警察官が男を発見、男性のスマートフォンを持っており、容疑を認めたという。

出張で「車内クラスター」発生…同乗の計10人

茨城県と水戸市は28日、新型コロナの感染者が新たに51人確認されたと発表した。50人を超えるのは3月1日以来。県内の感染者は6651人となった。
同県常総市内の事業所では、集団感染が疑われる事例が新たに発生した。感染したのは、従業員の20~50歳代の男女10人。このうち9人と26日までに感染が公表されていた1人の計10人は3月下旬、同じ車で県外に出張していた。県は車内でクラスター(感染集団)が発生したとみている。残る1人は公表済みの1人の濃厚接触者で、事業所の感染者は計11人だ。
すでに6人が感染した同県取手市内の病院でも、新たに4人が感染した。これまでの感染者とは別の階に入院しており、県は職員を介して感染が広まった可能性もあるとみている。県は「クラスターが発生した」との認識を示した。
これまでに48人が感染した常総市内の事業所でも、10歳代の会社員女性の感染が判明した。この事業所の感染者は49人目で、いずれも従業員だという。
ほかの感染者では、水戸市の未就学女児は、市内の児童福祉施設の利用者。同施設での陽性者は、県発表分と合わせて児童7人、職員8人の計15人となった。
同市に住む50~60歳代の男性3人は、市内の同じ事業所の会社員。市によると、これまでの県と市の発表者を含めると、同事業所での陽性者は計7人だという。

警視庁チアダンス部が発足…女性警官有志が詐欺防止の踊り

警視庁にチアダンス部が発足し、28日、東京のJR新橋駅前で愛宕署が開いた特殊詐欺被害防止の啓発イベントで、ダンスが初めて披露された。
本部や警察署に勤務する有志の女性警察官ら21人で構成。高校や大学でのチア経験者が中心で、約1年前から練習を重ねてきた。
この日は9人のメンバーがアップテンポの曲に合わせて踊り、「怪しい電話がかかってきたら110番を」と訴えた。サブリーダーで四谷署地域課の岩村美沙子巡査長(26)は「警視庁の活動をしっかりPRしていきたい」と話していた。

『報道ステーション』CMに見え隠れする「ポストフェミニズム」の悪質性

「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で何それ時代遅れって感じ」

テレビ朝日の報道番組『報道ステーション』の新WebCMに登場するセリフだ。CMは3月22日に公開され、ネット上の批判を受けて24日に削除された。

◆『報道ステーション』CMとは

CMは「これは報道ステーションのCMです」というテロップから始まり、仕事から帰宅した女性が、誰かに対して話し掛けているという内容になっている。

全体のセリフは以下の通りだ。

「ただいま。なんかリモートに慣れちゃってたらさ、ひさびさに会社に行ったら、ちょっと変な感じしちゃった」

「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって今、スローガン的に掲げてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」

「化粧水買っちゃったの。もうすっごいいいやつ。にしてもちょっと消費税高くなったよね。でも国の借金って減ってないよね?」

「あ、9時54分!ちょっとニュース見ていい?」

最後に女性の顔の上に大きく「こいつ報ステみてるな」というテロップが入る。

女性蔑視であり、またジェンダー平等が達成されているという間違った認識に立っているため、悪質であることは疑いない。

ただ、それ以上にこのCMからは、現在の日本ないし世界中で一般的になりつつある風潮が見えてくる点こそ不気味だと筆者は考える。その風潮とは、ポストフェミニズムである。

◆ポストフェミニズムとネオリベラリズム、女性性

ポストフェミニズムとは、「フェミニズムはもう終わったもの、古いものと認識させる言説とそれによって構成される社会」と定義づけられる。

もちろん、フェミニズムは終わっていない。女性差別もジェンダー不平等もまだ残っている。それなのに、終わったものとしてしまうことで、いわゆる「古い価値観」に立つ復古主義とは異なる権力構造に基づく女性差別が生まれているのである。

その異なる権力構造とは、新自由主義である。新自由主義とは、市場への国家の介入を最小限にするべきと考え、自由競争や能力主義を重んじる経済思想のことだ。フェミニズムと新自由主義は複雑な関係にある。このことについて、2つの側面から説明したい。

まず1つ目は、経済的な側面だ。これまでフェミニズムは女性にも男性と同様に能力に応じて賃金を支払うように要求してきた。これは、一見すると新自由主義の能力主義と整合性があるように見える。実際フェミニズムが歴史のなかで新自由主義に加担しなかったというのは嘘になる。たとえば日本の「女性活躍」政策はまさにこの文脈に位置付けられる。

しかし、本当にフェミニズムは新自由主義を正当化してよいのだろうか。新自由主義は男性にとっても女性にとっても経済的格差を拡大した。

また、後に述べるように新自由主義のなかでも文化的な性別役割規範は消滅しないため、女性たちは家事をこなしながら、家事をしない男性と同じ基準で能力競争していかなければならないという男性優位の構造は残ったままだ。

さらに、そのなかで新自由主義は女性たちの連帯よりも個人主義的な「成功」を目指すことを女性たちに求める。「女性が輝く」などと叫ばれるなかで、女性たちに実際かけられている身体的・精神的負荷の大きさは察するに余りある。

次に2つ目の文化的な側面について述べる。文化的な女性性の強制は、外部からも内部からも女性たちを呪縛している。

まず外部からの呪縛について、重要なのは新自由主義は多くの国で新保守主義とセットになっているということだ。新保守主義の政治家が新自由主義の旗を掲げて改革を進める際、自分たちの支持基盤である保守的な人々の生活も掘り崩すということになりかねないため、性別役割規範を含む伝統的な価値観を必要以上に強調することになる。

次に内部からの呪縛について、新自由主義の文化的な特徴には、経済的主体としての自己管理や自己監視がある。一方、フェミニズムのもたらした果実の1つとして、女性が性的対象から欲望する性的主体へ変容したことが挙げられる。それらが組み合わさった結果、男性の視線によって客体的に評価されるのではなく、女性自身の視線によって自己検閲される形での女性性の強制が起こっているのである。

このように、フェミニズムと複雑な関係を持つ新自由主義という権力構造の上に、ポストフェミニズム下での女性差別は起こっているのである。女性たちは男性と同じように市場に参加して競争に勝たねばならないと同時に、伝統的な女性性をより主体的に体現しなければならないというダブルバインドの状況に立たされている。

◆報ステCMで表現されたポストフェミニズム

ここで、もう一度報道ステーションのCMを見てみよう。

まず冒頭に記した「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で何それ時代遅れって感じ」というセリフは白々しいほどにポストフェミニズム的気分を表している。かえって、一般的には巧妙な言説が多く含まれるポストフェミニズムにしては、短絡的過ぎるといって良いほどだ。

これを前提として、最初に経済的な側面を見てみよう。まず気が付くのは、登場する女性自身のアイデンティティが労働者(保守的な言い方をすれば「キャリアウーマン」)として定義されているということだ。

その上で、冒頭の科白と、その前に来る「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって」というセリフと組み合わせて考えると、「民間のジェンダー平等に対する努力と比較して政府の努力は遅れている」という批判と好意的な解釈ができなくもない。

とはいえ、これは「政府の介入なしに、民間つまり市場の競争に任せていればジェンダー平等は達成される」という新自由主義的な楽観主義と裏腹だ。

また、「にしてもちょっと消費税高くなったよね。でも国の借金って減ってないよね?」という部分は国の借金を強調するという点で、規制緩和や民営化を推し進める新自由主義と親和的だ。

次に、文化的な側面に注目する。この側面からは、「化粧水買っちゃったの。もうすっごいいいやつ」というセリフから、登場する女性自身のアイデンティティは消費者として定義されているということが着目できる。

その上で、「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって」というセリフからは女性は母性を持っているものだという観念の内面化が指摘できる。

さらに、「化粧水買っちゃったの。もうすっごいいいやつ」というセリフからは女性は容姿に投資するものだという観念の内面化が感じられる。これらは両方とも、女性自身の視線によって自己検閲される形での女性性の強制が起こっていることを指し示している。

つまり、全体をまとめると、新自由主義の政治経済体制を背景に、女性は都合の良い労働者/消費者として「活躍」しつつ、しかも女性性を主体的に体現しているべきだというポストフェミニズム的なメッセージが読み取れるのである。

◆分断を超えた連帯

もちろんこのCM作成者が狙ってポストフェミニズム的なメッセージを発した訳ではないだろう。それにしてはあまりにも短絡的な物言いだと思われるからだ。とはいえ、このようなメッセージがついうっかり世に出てきてしまうということは、日本にもポストフェミニズムの風潮が深く根付いているということを示しているといえるだろう。

たしかに男性稼ぎ主モデルの時代と比べると、女性は「社会進出」しているかもしれない。だが、現在でも働く女性の約半分が非正規雇用という中で「女女格差」が開く一方、もう半分の正規雇用の女性たちも女性役割を押し付けられながら同時に男性並みに「活躍」することを求められて疲弊している。それだけではなく、ポストフェミニズムは個人主義を推し進め、わたしたちをバラバラに引き裂き分断する。

だから、そんな今こそフェミニズムの連帯が必要なのではないだろうか。雇用形態、階級、セクシュアリティ、人種、障碍など様々な違いを越えて、女性たちが互いをサポートすることが今求められている。

もちろん今回のCMは分かりやすい例だったから、誰もがその悪質性に気が付くことができた。だが、大抵のポストフェミニズムの言説はもっと巧妙だ。その巧妙な言説に騙されず、わたしたちは共に連帯していくべきだ。

【参考文献】

菊地夏野『日本のポストフェミニズム 「女子力」とネオリベラリズム』(大月書店)

早稲田文学会『早稲田文学 〈2019年冬号〉 シリーズ特集第1回:ポストフェミニズムからはじめる』(筑摩書房)

<文/川瀬みちる>

【川瀬みちる】

1992年生まれのフリーライター。ADHD/片耳難聴/バイセクシュアル当事者として、社会のマイノリティをテーマに記事や小説を執筆中。

Twitter:@kawasemi910