緊急事態、追加あり得る=医療の逼迫状況含め判断―西村担当相

西村康稔経済再生担当相は14日の参院内閣委員会の閉会中審査で、11都府県に拡大した新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言について「感染状況次第では追加もあるということだ」と述べ、対象区域をさらに広げることもあり得るとの認識を示した。立憲民主党の杉尾秀哉氏への答弁。
西村氏は、対象区域を追加する場合、「地域の感染状況、特に医療の逼迫(ひっぱく)状況、保健所の公衆衛生の体制も含めて判断する」と語った。
全国への対象拡大に関しては「東北地方や山陰地方はそれぞれ感染が低く抑えられている。今の時点で緊急事態宣言の対象地域とすることは慎重に考えなければいけない」と強調した。
[時事通信社]

友人の顔蹴り、窒息死させた男「酔って階段から落ちた」と119番

友人男性の顔を蹴るなどの暴行を加えて死なせたとして、徳島県警は12日、徳島市助任本町、無職西峰聖二容疑者(49)を傷害致死容疑で逮捕した。認否を明らかにしていない。
徳島中央署の発表によると、西峰容疑者は1日深夜から2日未明にかけて、自宅で一緒に飲酒していた徳島市東吉野町、警備員津田耕資郎さん(49)に、顔を足で蹴るなどの暴行を加え、窒息死させた疑い。津田さんは外傷性くも膜下出血になり、血液で気道が詰まったという。
2日午前1時45分頃、西峰容疑者が「男性が酔って階段から落ちた。鼻から出血し、意識がない」などと119番。津田さんは救急搬送されたが、同3時10分頃に死亡が確認された。

交番襲撃2人殺害で元自衛官黙秘 富山、弁護側は強盗殺人罪を否定

富山市の交番で18年6月、警察官が刺殺され、奪われた拳銃で警備員が射殺された事件で、強盗殺人や殺人などの罪に問われた元陸上自衛官島津慧大被告(24)の裁判員裁判初公判が14日、富山地裁で開かれた。被告は人定質問や起訴内容の認否について黙秘した。
被告の弁護側は「拳銃を奪おうとする意思は殺害行為の後に生じた」として警察官への強盗殺人罪の成立を否定し、警備員への殺人罪などについては起訴内容を認めた。
これまでに検察側と弁護側それぞれの求めで、計2度の精神鑑定が行われており、刑事責任能力の有無や程度が争点になるとみられる。

中国公船が領海侵入=日本漁船に接近―沖縄・尖閣沖

沖縄県石垣市の尖閣諸島沖で14日、中国海警局の「海警」1隻が約9時間にわたり、日本の領海に侵入した。日本漁船に接近しようとしたため海上保安庁の巡視船が安全を確保し、領海外へ出るよう警告した。尖閣諸島沖での中国公船の領海侵入は2日連続で、今年2回目。
第11管区海上保安本部(那覇市)によると、海警は14日午前7時15分ごろ、日本漁船を追うようにして大正島南の領海に侵入。午後4時15分ごろ、同島南から領海を出た。
[時事通信社]

元交際女性に「コンクリで生き埋めに」…鎌で脅し、粘着テープで縛る

逮捕監禁罪などに問われた栃木県野木町丸林、無職の男(52)に対し、宇都宮地裁(小笠原義泰裁判官)は13日、懲役2年(求刑・懲役3年)の判決を言い渡した。
判決によると、男は昨年9月、宇都宮市のホテルで元交際相手の女性を鎌で脅して車に連れ込み、「コンクリートで生き埋めにしてやる」などと脅迫し、粘着テープで体を縛って監禁するなどした。

女子大付属高バレー部、「春高」参加者の半数近くが感染

福島県と同県郡山市は13日、新たに31人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。郡山女子大付属高校バレーボール部では、部員や教員らが感染するクラスター(感染集団)が発生した。県内の感染者は10日連続で20人を超え、累計は1307人となった。
感染者の内訳は、同県いわき市7人、福島市と同県南相馬市で各3人など。医療機関や宿泊療養施設への入院・入所者は計354人で、病床使用率は60・3%と高水準が続いている。県は、計160室確保している宿泊療養施設をさらに増やす方向で検討している。
同部は、東京で今月開催されたバレーボール全日本高校選手権(春高バレー)に出場。参加した32人のうち、部員11人、教員・スタッフ3人の計14人の感染が13日までに判明した。4人は陰性で、残る14人はPCR検査の結果待ちという。
市や学校によると、部員らは今月2日から7日まで都内に滞在。郡山に戻った後は自宅で体調観察し、他の生徒とは接していないという。市役所で記者会見を開いた佐々木貞子校長は「生徒たちは努力の結果、全国大会出場を勝ち取った。感染が確認され、悔しい思いがあると思う。学校としてもできるだけバックアップをしていきたい」と語った。

女性「人の優しさに触れて涙が出そう」…野球部員、積雪で立ち往生の車を救助

福井市中心部で13日朝、積雪のため立ち往生していた乗用車を、北陸高校の野球部員らが救出する一幕があった。
同市の40歳代の会社員女性が運転する車が雪のため1時間ほど進めなくなっていたのを、出勤途中の同校教員が発見。この日は休校で、地域での雪かきを準備していた野球部員5人と別の教員約10人が駆けつけた。タイヤ周りの雪をかき出したり、車両を押したりして、30分後に乗用車は脱出。部員らはハイタッチをして喜んでいた。
女性は「こんなにたくさんの方々が力を貸してくれるなんて。人の優しさに触れて涙が出そう」と話し、捕手の2年男子(17)は「困っている人を助けるのは当たり前。車は重たかったけど、日頃のトレーニングの成果が出た」と語っていた。

葉まで赤く…「片平あかね」が旬 奈良の固有種カブ 食糧難支えた伝統野菜

奈良県山添村の片平地区で戦前からひっそりと育てられてきた野菜「片平あかね」が旬を迎えている。冬の寒さで葉まで赤く染まるのが特徴で、現在も地区外には種を持ち出さず、住民らが固有種を守り続けている。
片平あかねはカブの一種で、例年11月から翌年2月にかけて収穫、同地区では食べ物が少なくなる冬場に漬物といった保存食にして親しまれてきた。太平洋戦争中や戦後の食糧難の時期も支え、2006年には「大和の伝統野菜」に認定。辛みの中に甘さを感じる味わいが特徴で、大根おろしのようにして魚と合わせたり、生のままサラダとして食べたりもする。
花こう岩が多く、酸性度が高い土壌なども良い影響を与えており、「他で育てても鮮やかな赤色にはならない」と地元の「片平あかねクラブ」会長で栽培にも携わる畑中重一さん(72)は言う。約10人が村外などへの出荷に携わるが、近年は栽培者の高齢化が進み、この先も品種を残せるのかといった不安も出ている。
「希少価値の野菜を大事に育てていきたい」と畑中さん。スーパーなどでは1本100円前後で売られている。販売などに関する問い合わせは、畑中さん(0743・85・0634)。【田中なつみ】

日本と中国の「IT化」に大差が生じた決定的要因 大成功してしまったがために重い遺産を抱えた

経済大国だった日本が、なぜ中国に追い抜かれてしまったのか? その秘密は「リープフロッグ」にある。遅れてきた者が、先行者をカエルが跳ぶように追い越すことだ。世界の覇権争いの歴史を振り返ると、リープフロッグ=逆転勝ちの連続だったといえる。「日本が世界で躍進したのに今に繋がってない訳」(2021年1月7日配信)に続いて、『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』より一部を抜粋、再構成してお届けする。 ■国際ランキングで、トップから34位に転落 さまざまな国際比較ランキングで、日本の地位は低下を続けています。スイスの国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力ランキングで日本の順位をみると、ランキングの公表が開始された1989年から1992年まで、日本は1位を維持していました。その後、順位が下がったのですが、1996年までは5位以内でした。 しかし、1997年に17位となり、その後、低迷を続けました。そして、2019年では、過去最低の30位まで落ち込んだのです。ここで止まらず、2020年版では、日本は34位にまで低下しました。30年の間に、トップから34位という、大きな変化が生じたのです。 デジタル技術では、2020年に日本は62位でした。対象は63の国・地域ですから、最後から2番目ということになります。 日本がこのように凋落し、世界の中での地位を下げてきたことは、日本国内で、必ずしも明確に認識されたわけではありません。 それは、エレベーターに乗っている人の感覚のようなものです。扉が閉められて外界の様子が見えないと、下降しているにもかかわらず、室内の人々との相対的な位置は変わらないので、高度が下がっていることが認識できません。それと同じことです。先に述べたようなデータがあっても、抽象的な数字なので、あまり強い危機感を抱かなかった人が多かったのではないかと思います。 しかし、そう考えていた人々も、新型コロナウイルスへの対処でのデジタル化の遅れには、目を覚まされたと思います。日本政府はITでほとんど何もできないことが暴露されたのです。 定額給付金申請では、マイナンバーを使ったオンライン申請が可能とされました。しかし、市区町村の住民基本台帳と連携していなかったため、自治体の職員は照合のために膨大な手作業を強いられ、現場は大混乱に陥りました。その結果、100以上の自治体がオンラインの受け付けを停止し、郵便での申請を要請しました。「オンラインより郵送の方が早い」という、笑い話のような事態になったのです。

経済大国だった日本が、なぜ中国に追い抜かれてしまったのか?
その秘密は「リープフロッグ」にある。遅れてきた者が、先行者をカエルが跳ぶように追い越すことだ。世界の覇権争いの歴史を振り返ると、リープフロッグ=逆転勝ちの連続だったといえる。「日本が世界で躍進したのに今に繋がってない訳」(2021年1月7日配信)に続いて、『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』より一部を抜粋、再構成してお届けする。
■国際ランキングで、トップから34位に転落
さまざまな国際比較ランキングで、日本の地位は低下を続けています。スイスの国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力ランキングで日本の順位をみると、ランキングの公表が開始された1989年から1992年まで、日本は1位を維持していました。その後、順位が下がったのですが、1996年までは5位以内でした。
しかし、1997年に17位となり、その後、低迷を続けました。そして、2019年では、過去最低の30位まで落ち込んだのです。ここで止まらず、2020年版では、日本は34位にまで低下しました。30年の間に、トップから34位という、大きな変化が生じたのです。
デジタル技術では、2020年に日本は62位でした。対象は63の国・地域ですから、最後から2番目ということになります。
日本がこのように凋落し、世界の中での地位を下げてきたことは、日本国内で、必ずしも明確に認識されたわけではありません。
それは、エレベーターに乗っている人の感覚のようなものです。扉が閉められて外界の様子が見えないと、下降しているにもかかわらず、室内の人々との相対的な位置は変わらないので、高度が下がっていることが認識できません。それと同じことです。先に述べたようなデータがあっても、抽象的な数字なので、あまり強い危機感を抱かなかった人が多かったのではないかと思います。
しかし、そう考えていた人々も、新型コロナウイルスへの対処でのデジタル化の遅れには、目を覚まされたと思います。日本政府はITでほとんど何もできないことが暴露されたのです。
定額給付金申請では、マイナンバーを使ったオンライン申請が可能とされました。しかし、市区町村の住民基本台帳と連携していなかったため、自治体の職員は照合のために膨大な手作業を強いられ、現場は大混乱に陥りました。その結果、100以上の自治体がオンラインの受け付けを停止し、郵便での申請を要請しました。「オンラインより郵送の方が早い」という、笑い話のような事態になったのです。

「シャブの売人は普通のばあさんが多い」ライターが西成でみた薬物取引のリアル

大学を7年かけて卒業するも、就職できずに無職となった当時25歳の私が流れ着いたのは、日本最大のドヤ街、大阪市西成区あいりん地区だった。取材のためであるならば、覚せい剤に手を出すことも辞さない――そんなことを考えていた当時の若い私であるが、この街で出会った青山という男との出会いにより、その考えを改めることになった。
青山さんとは、西成の飯場で出会った。飯場の労働者たちは早朝起床し、バンに乗り込み、尼崎にある解体現場へと向かう。
「俺そっちのバンに乗りますわ。あっち、中が狭いんですわ。いや後ろの席でええ、タイヤの上でええ。坂本さん(仲間の労働者)と國やんがいる方に乗りますわ。ええでしょ? 問題ないやろ?」
昨日から私のことを“國やん”と呼ぶようになった青山さんの様子がおかしい。何がなんでもそっちのバンに、といった様子で乗り込んできた。
「おお、ええなこのタイヤ! なあ國やん座りやすいよな。坂本さん今日も昨日と同じ仕事やろ? あの現場ええですわ、俺ずっとここがええですわ」
朝6時のテンションではない。そわそわと落ち着きがなく、コンビニ袋をしきりにガサガサ鳴らしている。これがシャブ中ってやつ……? そう考えていると坂本さんが「どうやこれがシャブ中や」といった顔で私のことをニヤニヤと見ている。現場でも青山さんの“居場所探し”は続いた。
「國やんちょっとコンビニ行かへん? なあ一緒に行こうや。肉まん食いたいんや。國やん明日で終わりやったけ? 前借りしてないっちゅうことは6万くらい入るってことやな。ちょっとトイレ行ってくるからそこで待っといてや」
新人の私なら気を遣わずに話し相手になれるということもあるだろうが、雇われ先のS建設でも力のある坂本さんにかわいがられている私と仲良くしておけば、自分の居場所が確保できる、といったところだろう。常に頭の中に不安がグルグルと巡り、それを払拭(ふっしょく)するために無理にでも喋(しゃべ)り続けているという感じだ。
「青山アイツ大丈夫か?」と坂本さんが川端さんと大口さんに聞いている。青山さんと2人は以前、別の飯場で一緒に働いていたことがあるらしい。
「青山はシャブで最近まで刑務所入っとったで。前科9犯やて、今でもやっとるんちゃうか」
そういう大口さんも現在進行形でどっぷりとシャブに漬かっている前科者だ。もはやシャブ未経験の人間を探す方が難しい。シャブを打ったことのない自分がなんだかとても幼いように思えてくる。「川端はな、昔中央郵便局を襲撃して一億七千万を奪ったんやで。銀行じゃなく郵便局っちゅうところがプロやろ。ウヒヒ」というのは坂本さんのジョークだとしても、郵便局くらい襲っていてもなんら不思議ではない。
飯場は市橋達也のように指名手配犯が潜伏するような場所なのだから、前科者なんかウジャウジャいるのだ。S建設にもよく警察が踏み込んでくることがあるらしい。そして時には逮捕状が出ているやつなんかも混じっており、そのままパクられてしまうらしい。
「青山がまた捕まるのも、もう時間の問題やろ。あそこまでいくとな、物事の優先順位が全部シャブになってしまうんや。もう頭の中シャブだらけやで。見てれば分かる」と坂本さんが確信を持った顔でうなずく。あんなただの白い粉に人生を翻弄(ほんろう)されて刑務所に9回も入り、いまだに取りつかれている青山さんがとてもみじめに思えてきた。
飯場を出た私は、ドヤの清掃員として働きながら西成の街を毎日のようにうろついていた。南海電車の高架下では、土日の朝になると闇市が開かれる。無修正のAVや、違法で売られている睡眠薬や向精神薬を手に取り眺めていると、遠くで見慣れた顔が「國やん!」と呼んでいる。シャブ中の青山さんだ。
「國やん元気か、坂本さんに聞いたんやけどお前本書くんやってなぁ。なあいつ発売なん? 俺にも送ってくれや。あと西成の本書くっちゅうんなら、このかっちゃんを忘れてはいかん。あ、俺のこと今日からかっちゃんって呼んでくれな。なあ國やん」
20代前半で京都の暴力団に入り、西成でもB会に属した青山さん改めかっちゃん。B会はシャブの密売をシノギの中心としており、かっちゃんもかつてはシャブの売人としてこの街で生きてきた。しかし刑務所に入ること9回、地元では周りの目もありドカタなどできず、S建設にやってきたというわけ。
「んで、兄ちゃん何が知りたい?」
「シャブの売人をこの目で見てみたいです。それらしき人はいるけどブツを見たことがない」
「そんなやつその辺にいっぱいおるで。そしたら俺のお得意先を少し紹介したるからちょいと付いてきいや。ここだけの話、今でも少しだけやってんねん。毎日じゃないで、たまにだけやで」
そう言うとかっちゃんは四角公園の近くにある居酒屋オンドルへと向かったのだった。
「おお、姉さん。ハンさんは?」
「おお久しぶりやなあ」
ハンさんというのは以前かっちゃんが刑務所で一緒だった人物らしい。姉さんはその知り合いで、オンドルの常連客である。
「いま持っとるの? ネタ」
「あるよ」
そう言うと姉さんはポケットからスッと、白い粉が入ったパケをチラリと見せた。
「シャブの売人ってのはな、男よりもああいう普通のばあさんが多いねん。警察にとってはあんなババア盲点やし、感情消していろいろできるからな、捕まりにくいねん。なによりあのババアの肝が据わっとる」
動物園前駅を出て阪堺線の線路を渡ると、左手にあいりん地区の入り口がある。ローソンの横を通り、しばらく行ったところに何年か前につぶれた店舗が、シャッターが下りたままになっている。その店の前には3人の男がローテーションで常に座っている(2021年現在はいない)。携帯を見たり漫画を読んだり、本当にただ座り続けているだけ。しかしこのグループはこの一帯では誰もが知るシャブ屋である。
「あの店の前にいるシャブ屋おるやろ。俺昔あいつと一緒にシャブ捌いとったんや。ちょっと聞いときや」
かっちゃんが少し周りを気にしながら売人に近づいていく。今いるのは柄入りのスエットを着ている40代くらいの角刈りの男。もう一人は肥満体形の歯の抜けた男で、あとは釣り用のチョッキを着た70代くらいの男だ。
「兄さん、久しぶりやな。覚えてまっか?」
「おう」
「売れてまっか?」
「いや」
「オレも金があればシャブいきたいけどなあ」
「……」
角刈り男は買う気がないなら早くどこかへ消えろといった様子だ。かっちゃんの後ろにいる私のこともチラチラと見ている。角刈り男のように街に立っている「立ちんぼ」がネタを持ち歩くようなことはない(オンドルのババアは例外)。「立ちんぼ」に告げられた場所で、また別の人間と待ち合わせをし、そこで受け取ることが多いという。
シャブ中であるかっちゃんとはとにかく話が噛み合わない。こちらの質問の答えにたどり着くまでに、少し根気がいる。
「待ち合わせするところってどんな場所なんですか?」
「待ち合わせ場所でシャブ売っているやつは立ちんぼと違って本腰入れてやっとる。まあ立ちんぼなんてやろうと思ったら兄ちゃんでもできる仕事や」
「シャブを受け取るところってどんなところですか?」
「中にはオンドルのババアみたいに持ち歩いてるやつもおるけどな」
「青山さん、待ち合わせ場所はどこですか?」
「場所はこれといって決まってるわけやないで。その辺のドヤの一室ってこともある。臨機応変や」
他にも「あの角の草むらに隠しておくので後でこっそり回収しておけ」というパターンもあるそうだが、かっちゃんは「今は大体室内がメインや」と言うので、かっちゃん自身は、現在はそういった方法で買っているということだろう。
「初めて青山さんがやったのはいつですか」
「しまいには死んでまうねん」
「青山さんが……」
「いっぱい見てきたで。シャブ打って人生終わってまう人」
「初めて打ったのは……」
「シャブ打つやつは根性あらへん。ホンマに根性あるやつはヤクザでもシャブなんてやらへんねん」
「初めて打ったのはいつだったんですか?」
「俺は中学のときからやっとる」
「いま中学の時に戻っても、もう一回やりますか?」
「やらへん。やらへんよ。シャブ売るより真面目に働いた方がよっぽど男らしいやん。思わんか? なんや、居場所なんてあったもんやない。みじめや。ホンマに根性ある人間はそんなことしいへん。分かるやろ? お前があんな白い粉で人生壊すような愚かな人間じゃないんは、兄ちゃん自分でも分かっとるやろ」
かっちゃんの言う通りだ。私の周りには「裏モノ系のライターなら覚せい剤くらい経験しておかないとダメだよ」と責任感のかけらもないことを言う人間が何人かいるが、おそらくその人たちは本当の怖さというものをまだ知らないのだろう。ここまで漬かってしまった自分は一生止めることなどできないと悟っているかっちゃんだからこそ、言える言葉がある。
「そやけど、兄ちゃんも若いから頑張れよ。俺はヤクザもやったし覚せい剤もやったし、色んな経験してきた。でもこれだけは言うとく。シャブやったらホンマ人間終わってまうで。兄ちゃんは日銭をつかんで、それをコツコツためて、その金を、頭を使って増やすんや。兄ちゃんは頭生かして、捕まらんようにうまいこと金もうけせえ。こんなな、S建設にいるようなやつらになったらあかんでホンマ。もちろん俺も含めての話やで。これだけは言うとく、覚せい剤だけは手出したらあかんで。ドポン中(シャブ中のこと)の本人が言っとるんや。間違いないやろ?」
かっちゃんは覚せい剤の影響か、予定の確認の電話を死ぬほどかけてくる。予定の日が来るまで毎日のように電話をかけてきたが、ある日を境にパタリと連絡が途絶えた。何度もかっちゃんに電話をするも繋がらない。飯場からも突然いなくなったらしい。坂本さんいわく、「10回目のお勤めに行ったんやろ」とのことだ。口を開けば覚せい剤の話しかしないかっちゃんであったが、今では「あいつもドポン中や!」というかっちゃんの口癖が懐かしく思える。
「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」
覚せい剤を表す際によく聞くキャッチコピーであるが、かっちゃんは少なくとも私の前ではひとりの人間であった。人間をやめてなどいなかった。しかし、かっちゃんは覚せい剤に人生を奪われた。かっちゃんからの言葉を胸に、私は覚せい剤に手を出すことなく西成を後にした。そして今後も手を出すことはないと、もう二度と会うことはないであろうかっちゃんに誓う。
———-
———-
(ライター 國友 公司)