大阪府東大阪市中新開のコンビニの敷地内で6日、車にはねられ意識不明の重体となっていた少年が死亡したことが、大阪府警河内署への取材で分かった。
同署は自動車運転処罰法違反(過失致傷)の疑いで、車を運転していた同府四條畷市田原台の会社員、坂口清隆容疑者(70)を現行犯逮捕。「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」と供述し、容疑を認めている。同署は容疑を過失致死に切り替え、事故状況などを詳しく調べる。
6日午後1時5分ごろ、「車が男性をはねてフェンスに突っ込んでいる」と近くにいた女性から119番があった。同署によると、死亡したのは中学3年の男子生徒(15)。一時、車とフェンスの間に挟まれ、搬送先の病院で死亡が確認された。
現場は、近鉄けいはんな線吉田駅から北西に約400メートルの住宅街。
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ビル外壁や市役所の天井が落下…島根東部震源の地震で建物被害相次ぐ
6日に震度5強を観測した鳥取、島根両県では、各地で建物などへの被害が確認された。
鳥取県伯耆(ほうき)町の上細見地区では、高台にある民家の石垣が高さ約5メートル、幅約5メートルにわたって崩落し、下にある町道を塞いだ。同地区に住む自営業の女性(42)は、自宅でも電子レンジや食器などが落ちたといい、「どこから片付けに手をつけたらいいのか」と困惑していた。
同県米子市役所(5階建て)では、3階の事務室の天井パネル(長さ約1・3メートル、幅約40センチ)が9枚落下するなどの被害が出た。市は来庁者を外に避難させ、窓口業務を一時停止した。
島根県庁の南東約300メートルにある松江市殿町の空きビルでは、外壁の一部が約15メートルの高さから隣の駐車場に落下。飲食店などが立ち並ぶエリアで、南殿町商店街振興組合の坂本拓三理事長(65)は「さらに落下する恐れもあり、このままにしておけない。市と対応を相談する」と話した。
松江市八幡町の武内神社では、境内の石灯籠2基が倒れ、割れた部材が参道に散乱した。
今回の地震は、正月休みで帰省していた人らの足も直撃した。鳥取県米子市のJR米子駅では、駅舎にいた数百人が駅員の誘導で一時、駅前の広場に避難した。
新大阪駅でも、新幹線の運転見合わせの影響で改札周辺に人だかりができた。
〈水戸・ネイリスト殺害〉「おしゃれでキレイな方…」妊婦が頭を殴られ首を刺され死亡、腕には多数の防御創…かつては“人間関係のトラブル”を3度警察に相談(大晦日の惨劇)
茨城県水戸市加倉井町のアパートで昨年大晦日の午後7時15分ごろ、住人でネイルサロンを経営する小松本遥さん(31)が血を流して倒れているのを帰宅した夫(27)が発見し、119番通報した。
〈画像〉「細身のキレイな方」浴衣の後ろ姿、小松本さんとみられる写真と、現在の事件現場
小松本さんは首に刺し傷があったほか、頭にも鈍器で殴られたような痕が複数あり、搬送先の病院で死亡した。司法解剖で死因は頭を殴られたことと首を刺されたことによる外傷性ショックと判明。茨城県警捜査1課は殺人事件とみて1月2日、水戸署に捜査本部を設置した。小松本さんは妊娠中だったという。
「恨みを持つ人物が激しい殺意で犯行に及んだ可能性が高い」
新年を迎える準備に気持ちの昂まる大晦日に、なぜ凶行は起きたのか。社会部デスクが解説する。
「小松本さんは夫と2人暮らしで、大晦日の午後4時50分ごろに夫が外出先から『今から帰るよ』と電話をして無事を確認しています。
夫の帰宅時に玄関ドアは無施錠で、小松本さんは部屋着のフリース上下姿に靴下を履いて玄関内で倒れ、辺り一面は血の海状態でした。両前腕に防御創とみられる傷が多数あった。
部屋を物色した形跡などもなく、財布やスマホも残されており、盗まれた物も確認されていないことから、捜査本部は小松本さんに恨みを持つ人物が激しい殺意で犯行に及んだ可能性が高いとみています。
また、小松本さんは2015年と2017年に計3回にわたって『人間関係のトラブル』を県警に相談し、当時はいずれも『必要な措置を講じて解決した』とされていますが、捜査本部は改めてトラブルの内容を精査する必要があるとみて調べを進めています」(社会部デスク)
現場は常磐自動車道の水戸インターチェンジ近くにある閑静な住宅街。周囲には田畑も広がるのどかな環境だけに、年末年始の物騒な事件に近くに住む女性も眉をひそめた。
「大晦日はだいたい家にいましたが、事件についてはまったく気づかず、元旦に犬の散歩のために外に出たら規制線が張られて警察官が立っていたので何かがあったのだと気づきました。近所の方にあのアパートの奥さんが被害者だと聞いて、本当にびっくりしました。
小松本さんご夫妻をアパートで見かけるようになったのは1年くらい前からで、奥さんとお話したことはないけど、こちらが『こんにちは』と声をかけると会釈をしてくれる方でした。最後に見かけたのは12月末だから、ごく最近です。
奥さんは細身の綺麗な方で、後からネイリストと聞いて、言われてみればそんな感じの方だなって思いました。派手じゃないけどオシャレな感じ。
旦那さんの運転する車で2人で帰ってくるところも何度か見かけていますが、旦那さんも普通の方です。ご夫婦に関してのトラブルや、付近で不審者がうろついていたみたいな話も聞いたことがありません」
「この辺りでトラブルの類の話は聞いたことありません」
近隣に住む別の女性住民の反応も同じようなものだった。
「大晦日の日の午後7時ごろに家の外でパトカーだか救急車だかのサイレンがなっていたのは気付きましたが、わざわざ外に出て確認はしませんでした。その後に警察の方が尋ねてきて、事件のことを知りました。
不審者を見なかったか、何か気づかなかったかなど尋ねられましたが、これまでこの辺りでトラブルの類の話は聞いたことありません」
また、知人や同級生も「ストーカーなどのトラブルは聞いたことがない」と口を揃えたが、小松本さんには2015年と2017年に計3回にわたって「人間関係のトラブル」を県警に相談していた過去があった。
結婚と妊娠に加え、若くしてネイルサロンを経営するなど順風満帆な人生航路を進んでいたかに見えた小松本さんがなぜ殺害されなければならなかったのか。8年前に解決したはずの「トラブル」に隠されているのか。
捜査本部はスマホの解析などを急ぎ、捜査範囲の絞り込みを進めている。
※「集英社オンライン」では、今回の事件についての情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。 メールアドレス: [email protected] X(旧Twitter) @shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
最大で震度5強「怖かった」 原発地域、住民不安の声
「怖かった」「気持ちが落ち着かない」。6日午前の地震で、最大で震度5強を観測した鳥取県と島根県では市役所や病院の天井板が崩落する被害も。全国で唯一、県庁所在地に立地する島根原発のある松江市や周辺地域での繰り返す揺れに、住民は恐怖や不安を隠せなかった。
鳥取県米子市では、市役所本庁舎の天井板が複数枚剥がれ、一部が職員の机に落下した。机の下に隠れていた職員の原慎一郎さん(37)は「明らかに揺れだけじゃない衝撃を感じた。何が起きているのか分からず怖かった」。天井板崩落は鳥取県境港市の鳥取県済生会境港総合病院でも発生。天井に水がしみ出し、一部が剥がれ落ちた。
松江市や周辺では、地震の原発への影響を懸念する声も出た。原発から半径30キロ圏にある鳥取県境港市の高校教諭堀川貴哉さん(44)は、学校にいた生徒約30人を中庭に避難させた。東日本大震災の原発事故を念頭に「放射性物質という目に見えない脅威に襲われるかも、と考えると怖い」と落ち着かない様子だった。
【独自】原子力規制庁スマホ、中国で紛失 非公表の職員名など漏えい可能性
原子力規制庁の職員が昨年11月、私用で訪問した中国で業務用のスマートフォンを紛失していたことが6日、関係者への取材で分かった。機密性が高いため公表していない核セキュリティー担当部署の職員名や連絡先が登録されていた。スマホは見つかっておらず、規制庁は「情報漏えいの可能性が否定できない」として、国の個人情報保護委員会に報告した。
この部署は、国内の原子力施設にある核物質を守るための対策を担当する。テロ攻撃を受けたり、核物質が盗まれたりしないよう情報管理の徹底が必要で、担当職員の氏名や部署の連絡先は原則公表していない。
関係者によると、スマホは昨年11月3日、職員が私的な目的で訪れた上海の空港で、保安検査を受けるために手荷物を出した際に紛失したとみられる。3日後に紛失に気づき、空港などに問い合わせたが見つからなかった。現時点で悪用された形跡はないという。
規制庁の担当者は取材に対し、庁内への注意喚起や再発防止に努めるとした上で「海外渡航時などのスマホ携行に関するルールを整理したい」と話した。
1月なのに…クマ 住宅街で目撃 北海道苫小牧市
北海道・苫小牧警察署は2026年1月4日、北海道苫小牧市の住宅街でクマの目撃情報があったと発表しました。
目撃情報があったのは苫小牧市ウトナイ北12丁目の市道交差点です。
警察によりますと、4日午後9時半ごろ、車で通りがかったドライバーが体長約2メートルのクマ1頭を目撃したということです。
クマはその後、近くの清流公園方向に立ち去っていて、警察が周辺を探しましたが、痕跡は確認できなかったということです。
現場は住宅街で、警察は「1月にクマが市街地に出没するのは珍しい。近くを流れる川沿いに移動して出没する可能性もあるので注意してほしい」と呼びかけています。
女性の顔にホットプレート投げつける 58歳男逮捕 「母親の彼氏ともめた」娘が通報 北海道旭川市
北海道・旭川東警察署は2026年1月4日、傷害の疑いで、旭川市の自称トラック運転手の男(58)を逮捕しました。
男は4日午後10時20分ごろ、旭川市内の共同住宅の一室で、同居している20代女性の顔にホットプレートを投げつけてけがをさせた疑いがもたれています。
警察によりますと、男はけがをした女性の母親と交際していて、3人で暮らしていたということです。
女性が「母の彼氏ともめた」と通報し、駆けつけた警察官が男を現行犯逮捕しました。
男は「けがをさせたことは間違いない」と容疑を認めています。
警察が当時の詳しい状況を調べています。
「日本人ファースト」を実行すれば日本経済は崩壊する…外国人労働者230万人なしでは回らない労働市場のシビアな現実
2025年参院選において「日本人ファースト」を掲げる参政党が躍進した前後から、在日外国人問題は急速に社会争点化している。なかでも注目を集めがちなのが、外国人犯罪に関する議論だ。
埼玉県川口市における在日クルド人コミュニティをめぐるトラブルはその象徴的事例だろう。実際のところ、市内における外国人犯罪率はほぼ変化がないともいわれるが、児童が巻き込まれる交通事故や性犯罪などは社会に強いインパクトを残している。
さまざまな国籍の外国人が複合して関与する事例も
コロナ禍以降は、逃亡した元技能実習生のベトナム人(ボドイ)やカンボジア人らによる窃盗被害の拡大も目立つ。近年の銅価格の高騰に合わせて、工事現場や屋外ソーラーパネルなどの銅線の大規模窃盗が横行し、2023年の被害総額は銅だけで約97億7900万円にのぼった。2025年はこれを上回るとみられている。
カーディーラーに屋外展示された車両や、屋外の高級盆栽など、換金性が高い物品の窃盗も活発だ。ドラッグストアの化粧品の組織的万引きも目立ち、外国人犯罪者による被害額は日本人によるものの8倍に及ぶとする警察発表もある。
実際に現場で取材をおこなうと、ベトナム人ボドイが盗んだ中古車をカンボジア人偽装難民が購入、同じくカンボジア人らの窃盗銅線を中国人が経営するヤード(スクラップ金属買取所)が大量購入して中国に輸出、各国の不法滞在者らに向けて中国人業者が偽造身分証を販売……。と、さまざまな国籍の外国人が複合して関与する事例も目立つ。ヤミ経済の地下茎は大きい。
加えて、コロナ禍前後から急増した中国人富裕層移住者による不動産の爆買いや、彼らが賃貸物件オーナーとなった場合の違法民泊営業や家賃トラブルなども懸念されている。
日本社会をおおいはじめた、外国人に対するうっすらとした警戒や嫌悪感。その感情をすくい取った現象のひとつが、参政党の躍進だったと考えていい。「外国人を叩き出せ」といった極端な排外主義が、今後は拡大していく懸念も強い。
だが、いっぽうで意識しなくてはならない事実がある。日本社会の少子高齢化を背景とした、労働者の外国人依存だ。
日本の労働市場の外国人依存
現在、外国人労働者数は230万人を上回り(2024年10月末時点)、過去最高を更新した。国籍別に見るとベトナム、中国、フィリピン、ネパール、インドネシア、ブラジルなどが多く、製造業や宿泊・飲食業では特に外国人依存度が高い。日本の労働市場全体が高年齢化するなかで、外国人労働者の年齢ボリュームは20代から30代に集中し、職場によっては「現場の若い人」が外国人のみで占められる状況も常態化している。
日本の労働市場は、すでに外国人抜きでは回らない構造的現実を抱えているのだ。仮に都市部のサービス業や地方の第一次産業など、外国人頼りの現場で「日本人ファースト」を実行した場合、日本社会は確実に機能不全に陥る。
技能実習生制度の弊害
他方、外国人労働者が置かれている環境は厳しい。それを象徴するのが、約47万人(2024年10月末時点)にのぼる技能実習生たちだ。彼らの多くは学歴や語学力が高くない非熟練労働者であり、給料も低額におさえられているケースが多い。
彼らは「実習」の名目のもと、最長で5年にわたり実習先(=職場)の変更が困難な状態に置かれる。それを不満として、毎年約5000人~10000人ほどの人々が逃亡し、一部は犯罪にはしっている。昨年6月の法改正により、今後は「育成就労」と呼ばれることになるが、やはり職場変更には一定の条件がある。変わるのは名前だけで、現在の問題が根本的に改善するとは考えがたい。外国人の労働問題や、それと表裏一体の逃亡技能実習生による犯罪問題を考えるうえで、技能実習制度の弊害は決して小さくない。
ただし悩ましいのは、この制度が日本の地方の産業を延命させ、ひいては日本人の生活水準を担保しているという厳然たる事実も存在することだ。
地方の第一次産業は崩壊する
地方に技能実習生の取材に行くと、閉鎖的な漁村や山間部など、地元の人を除いた労働者がなかなか集まらないと思える土地にしばしば出くわす。しかし、そこで作られているものはスーパーのキャベツやキュウリであったり、「地域の名産」である牡蠣やミカンであったりする。
仮に技能実習生に対して、雇用や居住の流動性を完全に保証した場合、彼らの多くはこうした場所では働かない。結果、多くの業者は倒産するか、もしくは高給で労働者をつなぎとめることになる――。ゆえに容易に予見できるのは、日本の野菜や水産物などの著しい高騰だ。
技能実習生は社員食堂などの調理現場や、チェーン飲食店に供される惣菜の製造現場などでも数多く働く。制度が完全に消滅した場合、惣菜や外食の価格は、原価の高騰以上に大幅な上昇を見せるだろう。
治安の安定か、人権擁護か、国民経済の安定か
技能実習制度は実質的に、外国人の非熟練労働者に対して職業選択や居住の自由、つまり基本的人権を抑圧することで、日本の物価と人々の暮らしを支える制度であるとも言えるのだ。
現実的な問題として、見知らぬ外国人労働者の人権のために物価高を受け入れられる国民は、決して多くないと考えられる。一部の外国人犯罪も含めた技能実習生問題は、実質的には日本人が現在の生活水準を維持するための不可避的なコストとなっている、という指摘さえも可能である。
在日外国人問題に関して、治安の安定・人権擁護・国民経済の安定(物価)のすべての面で、日本国民が完全に満足できる答えを導き出すことは極めて困難だ。いずれの分野に重点を置き、政策や社会をデザインしていくか。そのヴィジョンが求められる。
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このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『 文藝春秋オピニオン 2026年の論点100 』に掲載されています。
(安田 峰俊/ノンフィクション出版)
高市政権の「財政赤字」はどこまで許されるのか? “消費税減税すべきか論争”の理解に欠かせない4つの学説
2025年7月の参院選を前に、野党が次々と物価高対策として、消費税減税を政策に掲げた。主なものを挙げれば立憲民主党は「来年4月から1年間食料品の消費税ゼロ」、国民民主党は「実質賃金が持続的にプラスになるまで消費税は一律5%」、日本維新の会は「食料品にかかる消費税を2年間0%に」、共産党は「消費税廃止目指し、緊急に税率一律5%」、そして参政党が「段階的な廃止」を唱えている。
与野党ともに減税策を打ち出すのが慣例に
これに対して自民党は選挙前には消費税減税は行わないで、その代わり「2万円の一律給付」を掲げていたのだが、選挙の敗北で「ノー」の民意が出たとみなされた。その後、石破茂首相が辞任して、消費税減税も放棄しないと言っていた高市早苗氏の政権が発足した。今や与野党ともに何らかの減税策を打ち出すというのが慣例になってしまった観がある。
これは他の先進国でも同じ傾向がみられる。OECD加盟国の財政赤字は昨年、対GDP比4.6%に達した。EU諸国では財政累積赤字が急増し、トランプ大統領の米国でも似たようなものだ。トランプは公的機関への支出を激減させているが、それ以上にビジネス刺激策の減税を断行しているので、結果として財政赤字は増加すると予想されている。
日本の場合、あるシミュレーションでは消費税を恒久的に引き下げると「中長期的」に消費が1.5~4.4%伸びるとされる(日本総研)。そのいっぽうで、食料品の8%の軽減税率を0%に引き下げた効果は翌年GDP比0.33%の押し上げがあっても、翌々年にはマイナス0.2%に転落するとの予測もある(明治安田総研)。消費減税は高額所得者にとり有利であり、累積赤字について綿密な議論もないまま財政支出が唱えられる。
“消費税減税すべきか論争”を読み解くための学説
こうした「財政ポピュリズム」は今に始まったものではないが、昨今はコロナ禍による景気後退への対策が常態化したこと、また財政支出に関する学説がいろいろ出てきたことも契機になっている。論者がどの学説で論じているのか分かれば消費減税についての理解も速いし、自分で考えるさいにも役に立つ。ここでは(1)従来の財政学の赤字反対スタンス、(2)ニューケインジアンの条件選択的なスタンス、(3)MMT(現代貨幣理論)論者の高インフレが起こるまで財政支出は可能というスタンスの3つを説明しておこう。
まず、(1)の財政学のスタンス。財政学を専門にする論者の見解では日本の財政累積赤字は危機的状態にあり、どんな財政赤字でも批判対象になる。これは減税を嫌う財務省の立場に近い。次の財政学者・井堀利宏氏の指摘はかなり柔軟性のあるほうだと言える。「物価高で困窮する家計に政治が配慮するのは望ましい。しかし真の弱者に対象を限定した給付であるべきだろう。全国民対象の減税や給付金はインフレ抑制に逆効果であるだけでなく、財政規律を悪化させ将来に大きな負担を生じさせる」(日本経済新聞)。
(2)のニューケインジアンのスタンスも論者によってかなり幅があるが、不況での財政出動は当然だと考えている論者が多い。そのなかで以前は財政赤字に厳しかったが、2019年の論文「公的債務と低金利」でg>rであれば赤字があってもその経済に持続性があると論じたのがO・ブランシャールだった。gは経済成長率でrは金利。つまり、財政累積赤字が大きくても経済成長率が金利より大きい状態が続けば財政破綻しないというわけだ。安倍政権時代のプライマリーバランス論ではないかと思う人がいるだろうが、ブランシャールは「プライマリーバランスが赤字でもg>rが成立する条件がある」と述べている。
(3)のMMT論者においても創始者とされるL・R・レイはg>r式を自分の入門書で2012年の初版から取り上げている(『現代貨幣理論入門』)。しかし日本のMMT論者にとって財政累積赤字はほとんど問題にならない。自国通貨を発行できる国家ならばいくらでも財政支出は続けられ、国債は廃止してもかまわない。問題になるのはインフレだけで、その時は「増税すればいい」という。これは自民党右派の一部が導入したがっているが、危険なのはこの理論の根拠が脆弱なだけでなく、モデルを示さないので細かい場合分けができないことである。
高市首相はどのポジションか?
もうひとつ(4)を追加しておく。(2)のブランシャールの立場から出発したA・ミアン、L・ストローブ、A・スーフィの3人が組み上げた財政赤字論は、簡単にいってしまえば、「財政赤字を小幅に拡大すれば、赤字を増やしても債務対GDP比はむしろ減少するような諸条件のゾーンがある。しかし、そこから外れてしまうと赤字が増せば債務対GDP比も増加するようになり、g<rに至ってしまう」というものだ。日本では一部で注目されたが政策レベルでは本格的に議論されていない。
この議論を3人が最初に展開したのは2021年だが、翌年の「財政赤字のゴルディロックス理論」では「米国がg<rになるのは財政累積赤字が対GDP比で218%のとき、日本は446%」との意外な結論だった。ただしコロナ禍以前の19年を起点とし、米国の財政累積赤字が100%、日本が238%で金利はゼロ近傍という前提での議論である。
積極財政派として知られる高市首相は、(3)の匂いのする(2)を主張してきた。私は今の日本は(2)を基本に(4)の条件が成り立つゾーンを模索すべきだと思う。日本は3%台のインフレだが世界水準ではそれほど高くない(25年8月は2.7%)。失業率は2%台と低く、25年第2四半期経済成長は年率換算2.2%、トランプ関税などを織り込んだ予測では25年は0.9%(エコノミスト誌)、いま国債10年物金利は約1.6%、政策金利0.5%である。物価高対策ならば安易な消費減税より、米価対策に絞った政策が必要で有効だろう。
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このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『 文藝春秋オピニオン 2026年の論点100 』に掲載されています。
(東谷 暁/ノンフィクション出版)
高市首相 米のベネズエラ攻撃に〝無難声明〟で批判続出…尾を引く「台湾有事」発言の影響
ベネズエラ情勢を受けて日本の政界も緊迫している。そんな中、高市早苗首相が4日にX(旧ツイッター)で出した声明が物議をかもしている。
この〝武力による現状変更〟に対して、日本の反応はどうか。外務省は外務報道官談話を公表。邦人の安全確保を最優先にするとし「日本政府としてはこれまでも、一刻も早くベネズエラにおける民主主義が回復されることの重要性を訴えてきています」との立場を強調。国際法の原則の尊重に言及しつつ、民主主義の回復および情勢の安定化に向けた外交努力を進めるとまとめた。
その後、高市氏もXに声明を発表。高市氏の「指示の下」で邦人の安全確保にあたるとし、民主主義の回復や法の支配の尊重などに触れ、情勢の安定化に向けて外交努力を続けるとの決意を述べている。つまり、外務報道官談話をほぼ踏襲していたのだ。
これには野党からツッコミが入った。立憲民主党の田島麻衣子参院議員は「他国への武力行使を否定しない総理のコメントに抗議をします」、社民党の大椿裕子前参院議員は「最も重要なことが書かれていない。これがアメリカでなければ、高市総理は非難するだろう」と、米国への言及がないことにXで苦言を呈していた。
一方で米国の行動の是非に踏み込まない曖昧さを評価する声もある。というのも、昨年は曖昧さをなくした台湾有事をめぐる高市氏の国会答弁によって、日中関係が不安定化した苦い経験があるからだ。「台湾有事をめぐる発言は間違っていないので撤回する必要はないが、言わなくてよかった発言だった」(永田町関係者)
無難な発信に抑えた高市氏だが、国会では野党から米国の行動への見解について追及があるに違いない。