日本原子力研究開発機構(原子力機構)は23日、廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」(福井県敦賀市)で、放射性物質「トリチウム」を含む水が漏れたと発表した。近くにいた作業員3人に被ばくはなく、外部への影響もないという。
原子力機構などによると23日午後3時20分ごろ、原子炉補助建屋3階で試験装置の解体作業中、作業員が配管を切断したところ、約20ミリリットルのトリチウムを含む水が漏れた。
漏れた水のトリチウム濃度は不明。このトラブルにより室内の放射能量は、国への報告が必要な基準の約10倍まで上昇したとみられる。室内はビニールで養生していた。
原子力機構によると作業の再開時期は未定だが、2040年度までの廃炉完了に影響はないとしている。
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次席検事「虚偽と言えるか疑義ある」 大川原冤罪、告発対象の報告書に
化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件の捜査を巡り、検察審査会が「不起訴不当」と議決した警視庁公安部捜査員(当時)の3人について、東京地検は23日、再び不起訴処分(容疑不十分)とした。虚偽有印公文書作成・同行使容疑での刑事告発に対する捜査は終結した。民事訴訟では違法捜査が認定されたが、刑事事件として個人の責任が問われることはなくなった。
地検の市川宏次席検事は取材に、告発の対象となった報告書が「虚偽と言えるのか疑義がある」と理由を説明した。
大川原化工機側は①捜査を指揮した警部と部下の巡査部長が不正輸出の対象となった装置の温度実験で、立件に不利な結果が出た回収容器の実験データを報告書から削除した疑い②元取締役の取り調べを担当した警部補が供述調書を過失で破棄したとする虚偽の報告書を作成した疑い――で刑事告発した。
地検の不起訴処分に対し、①を審査した東京第6検察審査会は9月、公安部の捜査を「立件ありき」と指摘し、虚偽の公文書が作成されたと認定した。また、②を審査した東京第4検察審査会は2月、「調書の破棄は過失」とした警部補作成の報告書の内容について「虚偽」と言及した。
地検が①で報告書を虚偽として捜査員を起訴するには、回収容器が「装置の内部」ということを立証する必要があった。地検は捜査員には「装置の内部」という認識がなかったとし「実験データが必ず報告書に記載すべき事項だったとは認められない」とした。
②も報告書を虚偽とするには、警部補が故意で調書を破棄し、それを隠すためにうその内容を書いたことを立証する必要があったが、地検は「隠蔽(いんぺい)や虚偽記載の意図を認定するのは困難」と説明した。
捜査終結を受け、大川原化工機の大川原正明社長(76)は「検察は組織を守るために身内の悪に目をつぶったのだろうか。残念であきれるばかりだ」とコメント。代理人の高田剛弁護士は「不起訴不当でも強制起訴を可能とする制度改正が必要」とした。
民事訴訟では公安部の逮捕や地検の起訴を違法とし、東京都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた東京高裁判決(5月)が6月に確定した。警視庁と最高検はそれぞれ検証報告書を公表し、幹部が大川原化工機側に謝罪した。【岩本桜、北村秀徳】
「ふげん」トリチウム水漏れ、配管切断中にしたたる 外部へ漏れなし
福井県と日本原子力研究開発機構は23日、廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」(同県敦賀市)で、配管を切断する作業中に放射性物質「トリチウム」を含む水が漏れたと発表した。作業員は二重の手袋を着用するなどしており、被ばくはなかった。
県などによると、原子炉補助建屋内でこの日午後3時18分、不純物の測定などに使う装置の配管を切断した際、配管内に残っていたトリチウムを含む水約20ミリリットルがしたたり落ちた。漏れた放射能量は、国への報告基準の約10倍の4000万ベクレルと推計している。作業現場はビニールハウスで覆っており、外部への放射性物質漏れはない。
装置は1994年以降使われておらず、配管内の水抜き作業は済んでいた。【高橋隆輔、萱原健一】
【原発】再稼働「地元同意」も…山積する課題 避難道路の整備や東電の信頼性は《新潟》
花角知事が再稼働を容認する前提として国に求めた7つの項目。「地元同意」が完了してもなお避難道路の整備など課題は残されたままです。
赤沢経済産業相と面会した花角知事。手渡した回答書には国に求める7つの項目が記されていました。
〈花角知事〉
「最終的には7つの項目について国の対応を確認したうえで了承するということに結論に達した次第」
柏崎刈羽原発の再稼働を容認する前提として花角知事が挙げた7つの項目。その一つが避難道路の整備です。原発から6方向の放射状に延びる避難道路については全額国費で整備することが決まっています。ただ、完成まで10年以上かかることも予想されています。とくに懸念されるのが大雪と原発事故が重なる複合災害です。
2022年12月には大雪の影響で柏崎市の国道8号で大規模な車の立往生が発生。避難の課題が浮き彫りとなりました。花角知事は「避難路の整備促進」や「除雪体制の強化」などを国に求めています。
〈赤沢亮正 経済産業相〉
「避難する経路の整備促進や、除排雪体制の強化などに向けて県、関係省庁と連携しつつできる限り速やかに整備を推進してまいります」
さらに花角知事が求めたのは東京電力の信頼確保に向けた取り組みです。東京電力をめぐってはIDカードの不正使用や核セキュリティの不備など問題が相次いで明らかになりました。
〈東京電力 小早川智明社長(2021年当時)〉
「大変なご心配をおかけしましたことにつきまして会社を代表して心よりお詫び申し上げます」
〈花角知事(2021年当時)〉
「東京電力の信頼性現状でも信頼性はなかなか回復していないと思っています」
県が行った調査では「東京電力が柏崎刈羽原発を運転することは心配だ」と答えた県民は約7割に上ります。
赤沢大臣は内閣官房副長官をトップとする「監視強化チーム」を新たに設置したことなどを花角知事に伝えました。
〈花角知事〉
「ぜひとも着実に、そして確実に実施していただきたい、取り組んでいただきたい」
1月にも再稼働が見込まれる柏崎刈羽原発。避難道路の整備や東京電力の信頼回復など課題は残されたままです。
特別支援学校生の除外、半世紀前から 史料に「少数例外者でしか…」
文部科学省が特別支援学校(特支)の卒業者数を除外した18歳人口で大学進学率を算出していた問題で、同様の算出方法が遅くとも1972年には導入されていた可能性が高いことが毎日新聞の調査で判明した。
これまで文科省は99年には不適切な算出が始まったとの認識を示していたが、半世紀以上前までさかのぼることになった。
旧文部省の施策などを取りまとめた72年発行の「学制百年史」に記載された大学進学率も、特支(当時の盲・ろう・養護学校)卒業者を除外して算出していた。
学制百年史は著作権を旧文部省が所有し、帝国地方行政学会(現ぎょうせい)が発行。高等教育の普及状況を紹介するページで、大学進学率について「71年度における大学および短期大学の入学者の同一年齢層に占める比率は26・8%に達した」との記載がある。
この数値は「大学・短期大学入学者」を「3年前の中学卒業者」で割って算出されている。
学校基本調査によると、68年度の「中学卒業者」は184万6787人で、特支中学部卒業者は4738人。特支を分母から除外して計算すると百年史記載の26・8%になり、特支を含むと0・1ポイント下がって26・7%となる。
学制百年史には、障害のある児童生徒の教育に関して「何といっても少数例外者でしかない障害児たち」という表現もあった。差別的と読み取れ、障害児が軽視された時代背景が算出方法に影響した可能性もある。
92年発行の「学制百二十年史」にも大学進学率について「大学学部入学者数を3年前の中学校卒業者数で除した(割った)比率」との定義が記載され、特支の卒業者を含まない数値で進学率が算出されていた。
特支卒業者を除外した大学進学率は99年度の学校基本調査報告書で初めて登場。54年度分までさかのぼって掲載されている。
99年に旧文部省幹部だった元職員は毎日新聞の取材に対し「99年以前から同様の算出方法が続いており、前例踏襲した」と証言した。
文科省は54~2024年度の71年間に除外された特支卒業者の総数は約46万人いるとし、18歳人口に特支卒業者を含む形で過去にさかのぼって再集計している。また、18歳人口のほかにも複数の調査や統計で特支の児童生徒が対象になっていないケースがあることも判明した。【斎藤文太郎】
銃口の50センチ先にクマの顔、「やられる」と片手で発砲し命中…緊急銃猟で出動の隊員「こんなところに出てこなければ」
「銃口の50センチ先にクマの顔が迫った――」。今年、富山県内で相次いだクマの緊急銃猟。実際の現場は、どのようなものなのか。11月に砺波市の納屋に入り込んだクマを撃った猟友会員や市職員らの証言を基に、緊迫した当時の模様を再現した。(源一秀)
11月10日午前6時15分頃、庄川町古上野でのクマの目撃情報があった。市は、非常勤公務員として市の「鳥獣被害対策実施隊」に参加する猟友会員にSNSなどを通じ出動を要請。男性隊長を含む5人が応じた。
クマが出没したのは民家が散在する田園地帯。警察官約10人、市職員6人とともに、5人は一帯の捜索にあたった。ほどなく田んぼにクマの足跡が見つかる。足跡が続く先の民家に急行した。
午前7時5分頃、男性隊員が、民家の生け垣に潜む黒い影を発見した。この隊員は狩猟歴37年。これまでにクマを3頭仕留めたベテランだが、許可が出るまでは発砲できない。
冷静にスマートフォンを取り出し、SNSで他の隊員らに「いました」と報告。「役に立たないだろう」と思いつつ持ってきた護身用のスコップを握り直し、物陰に身を隠した。
一同が集結した時、クマの姿はなかった。だが、民家の敷地のどこかにはいるはずだ。緊張が高まる。
午前8時5分、緊急銃猟が許可された。慎重に敷地内を調べると、納屋の中にクマの気配が確認された。
納屋の入り口は2か所あり、開いていた引き戸から侵入したようだ。隊長が様子をうかがいながら、素早く戸を閉め、納屋に閉じ込めた。
「君がやってくれ」。最初にクマを見つけた隊員が隊長から指名された。
隊員は納屋の地上約1メートル80の高さにある小窓からクマを狙うことにした。撃ち損じてもクマの向こう側に壁があり、弾が突き抜けても射程内にほかの民家はない。また、撃ち下ろせるポジションなので、撃ち手もある程度安全だ。
納屋には鶏舎だった小屋が隣接している。小窓に近づくため、隊員は脚立で鶏舎の屋根によじのぼり、腹ばいになった。「クマが動いても動かなくても、見たら撃て」と隊長。ハンターに人気の高い米国製猟銃「レミントン1187」を握り、大型獣に使う一発弾「スラッグ弾」2発を込めた。
小窓を開け銃口を先に突っ込み、そっと中をうかがうが、いない。
そう思った瞬間、真下の棚の陰からクマが立ち上がった。完全な死角だった。
「やられる」。クマの牙、爪の鋭さ、俊敏さは熟知している。不意をつかれ、「左手が銃を握っていない状態」で、反射的に右手で引き金を引いた。その一弾はクマの顔に命中。あおむけに崩れ落ちた。
納屋に入ると、クマの体はわずかに動いていた。別の隊員がとどめの1発を頭部に放ち、午前8時35分、任務は完了した。全長約1メートル30、体重70キロのメスの成獣だった。
「かわいそうだな。食ってやることもできない」。そんな感慨が隊員の頭をよぎった。通常の狩猟の獲物は食卓に上るが、市鳥獣被害対策実施隊で駆除したクマは焼却か埋却処理される決まりだ。
当時、敷地内の2本の柿の木には、実がたわわに実っていた。腹をすかせて食べに来たのだろうか。「こんなところに出てこなければ」。隊長も、どこかむなしさを感じたという。
市農業振興課によると今月19日現在で、市内での過去5年間の銃によるクマ駆除は2件目。今年は9年ぶりに山間部でわなによる捕獲も実施し、これまでに6頭を処分したという。
〈NHK受信料〉役所には甘く国民に厳しい「鬼のダブスタ督促状」…公用車カーナビ問題が突きつけた根本的疑問
NHKが受信料未払い世帯や事業所に対して督促を強化、昨年度の10倍を超える督促件数を見通すという。さらに地方自治体の公用車のカーナビに対しても受信料を徴収していく。元NHK党の秘書でコラムニストの村上ゆかり氏は、「警察や自治体に対しては『丁寧な周知』に留め、国民に対しては督促を強化するというダブルスタンダードでは、NHKへの信頼はさらに下がっていくのではないか」と指摘する。
【画像】NHK受信料制度が根拠とする、放送法第64条の要旨
パトカーや救急車のカーナビも対象に
NHK受信料制度は「受信設備を設置した者は、NHKと契約を結ばなければならない」とする放送法第64条を根拠としており、最高裁も2017年12月の大法廷判決でこの契約義務を合憲と判断している。
NHK受信料は衛星契約であったとしても月額数千円。それでも不満が消えない理由は、支払う理由が生活実感とあまりにも結びつかないからである。
総務省の情報通信白書でも、若年層を中心にテレビ視聴時間が減少し、インターネット利用時間が増加していることが繰り返し示され、NHK自身も若年層のテレビ離れを公式資料で認めている。
それにもかかわらず、テレビを設置しているという一点だけで契約義務が生じ、NHK受信料を支払えと言われる。この構造が、現代の国民の感覚と全くずれているのだ。
実際に視聴しているかは関係なく、受信可能であるかどうかが基準になる。だが、生活感覚から見れば、使っていない機能のために料金を無駄に請求されるのはたまらない。
最近のテレビのリモコンにはネットフリックスのボタンがついていることが多いが、ネットフリックスと契約を結ばなければコンテンツも視聴できないし、料金を請求されることもないのは、当たり前のことである。
受信料制度に対する不満が一段と可視化されたのが、公用車に搭載されたカーナビからNHK受信料を徴収する動きが報じられた場面である。
警察のパトカー、救急車などの公用車に設置されたカーナビが「受信機」に該当することを行政側が認識しておらず、未契約が発覚した。
公用車は言うまでもなく公務のために使われる車であり、カーナビは公務の移動のために使用されるものであるから、基本的にはそこにテレビ放送を視聴する意図など存在しない。
しかし総務省は過去に、ワンセグやカーナビが受信設備に該当し得るという解釈を示しており、たとえ公用車であっても受信契約が義務付けられるとされた。テレビを見ることのないカーナビにもNHK受信料を徴収する――この構造に、多くの人が制度運用そのものへの疑念を強めることになったのである。
「放送の受信を目的としない受信設備」は除外されているのに徴収
放送法第64条は、NHKの受信契約義務を「特定受信設備」を設置した者に課している。この「特定受信設備」とは、「放送の受信を目的としない受信設備」は除外されている。
つまり、放送を受信する機能を備えていても、その設置目的が放送の受信ではない場合、契約義務の対象から外れる余地が理論上は存在するはずだ。
公用車は業務用であり、カーナビはテレビの視聴を目的とせず、目的地までの道順確認のために設置されている。普通に考えれば、公用車のカーナビは「放送の受信を目的としない受信設備」と整理できるはずだ。
いずれにせよ、我々の税金で運営している自治体から、利用目的があるわけでもないNHKが受信料を請求したことに対して、批判は強まっている。
さらに今年12月12日、千葉市議会定例会が公用車のNHK受信料について、国に対し、全額免除制度の創設を求める意見書を全会一致で可決するなど、自治体からも制度に対する反発が見られた。
読売新聞が11月17日に報じた記事によれば「今年10月までに、都道府県や県庁所在地など主要な122自治体のうち半数以上の73自治体で受信契約漏れが判明。このほか、少なくとも約200市町村が未契約」で「徴収ルールの見直しを求める声も上がっている」という。
NHKがこの整理を公式に認めることはしない
だがNHKがこの整理を公式に認めることはしないだろう。
公用車で認めれば、その論理は必然的に一般国民の車両に波及する。業務用であれ私用であれ、カーナビの設置目的は同じである。
「視聴を目的としない」という評価が成立すれば、個人のカーナビも同様に扱われ、これまで契約対象としてきた相当数の世帯や事業者が、契約義務から外れる可能性が生じるからだ(ちなみに一般家庭における「自家用車」の場合、住居ですでに受信契約を結んでいれば、たとえ車にテレビ番組視聴が可能なチューナー付きのカーナビが搭載されていても、世帯同一性が認められるため追加契約の必要はない)。
だが今の状況では、制度防衛のために常識を押しのけているようにしか国民の目には映らないのではないか。
ここで生じる不信は、金額の問題ではない。なぜ設置する目的を考慮しないのか。なぜ、明らかに視聴目的でない公用車にまで受信契約の義務を課すのか。この問いに対し、NHKは正面から「収入が減るかもしれないから」とは言わず、説明は抽象化する。
NHKの公式ホームページには、「NHKのテレビ放送を見ていないので、受信料を支払いたくない」という問いに対し、「公共放送としてのNHKの運営を支える財源は、テレビ等の受信機を設置またはNHKの配信の受信を開始しているすべての方に負担していただく受信料によることが、最も適切であるとの考え方に基づくものです」と記載されている。
このNHKの回答は、なぜ視聴していない人まで負担する必要があるのか、なぜ設置目的や利用実態を考慮しないのかという国民の本質的な疑問に応えられているものではない。この回答では、かえって国民は自分たちの感覚が切り捨てられたと感じるのではないか。
「公共放送が公共性を失っている」
さらにNHKはカーナビ受信料について警察や自治体に対しては「丁寧な周知」に留める一方、一般国民には受信料の督促を強化するという方針を執ると報道されている。
実際、2025年3月には愛媛県警が捜査用車両に設置したカーナビ38台分の受信料、約644万円を支払っていなかった事案が判明した。さらに島根県警や愛知県警といった地方警察でも同様の未払いが次々と発覚している。
これでは、NHKは自らの組織を守るためだけに都合よく運用しているだけのように映り、さらなる不信を招く恐れがある。
受信料制度が作られた1950年当時、受信機とはほぼテレビそのものであり、テレビを持つことはイコールNHKを見ることを意味していた。だが現在では、受信機という概念は極端に広がり、スマートフォン、パソコン、カーナビ、ゲーム機など、映像を受信できる機器は生活の隅々に様々に入り込んでいる。
にもかかわらず、受信料制度だけが1950年当時のまま「受信できるかどうか」という一点に立ち続けている。公共のためと言いながら、目的外利用が明らかな機器からも徴収する。それには「公共放送が公共性を失っている」と感じている国民は少なくない。
NHK内部の人間が、こうした状況を理解していないはずがない
NHKの内部にいる人間が、こうした状況を理解していないはずがない。理解しているからこそ、支払いの大義名分が抽象化され、「公共放送の使命」という表現に集約されていく。
制度を変えられない理由は明確だ。制度を変えることは、組織の存続にかかわるからである。NHKの収入の大半は受信料であり、広告収入に頼らない仕組みは、公共放送としての独立性を支えてきた。
しかし今のNHKがスクランブル化や任意契約に移行した瞬間、視聴していない層の支払いは止まり、受信料収入は一気に減少する可能性が高い。
NHKの組織は、その衝撃に耐えられる設計になっていない。全国ネットワーク、災害対応体制、専門職の長期雇用――これらは短期で削減できない固定費である。一度縮小すれば、元の規模に戻すことは困難を極め、公共放送の機能そのものが失われる恐れがある。
NHKは、「現実に合わせて制度を変え、組織の規模縮小を受け入れる」か、「制度を守り、組織を守る」かという選択を迫られた。その結果、民意を理解したうえで、後者の「制度を守り、組織を守る」という選択をしている。
この状態は国民から見れば不誠実に映るだろう。だが内部論理としては一貫している。制度を動かせば崩れ、崩れれば公共放送としての役割を果たせなくなる。現状維持は消極的な逃避ではなく、防衛手段として選ばれているのだ。
問題は、この防衛が長期的に見て成立するかどうかである。
海外の公共放送では、受信料制度を見直し、税方式や選択制に移行した例も存在する。英国の公共放送であるBBCでも、受信料制度の持続可能性が議論されている。
それでもNHKは「公共放送の使命」をことさらに強調する。しかし受信料制度そのものや、NHKの運用の在り方への国民の不信感はもうすでに限界まできているのではないか。
受信料制度を現行のまま防衛し続ける結果として起きるのは、突然の崩壊ではなく、「静かな失墜」だろう。受信料制度は維持され、組織も存続されるが、NHKの公共放送としての信頼は、このままでは少しずつ、確実に、削られていく。
督促は強化され、裁判も増え、国民の心はNHKからどんどん離れる。若者のテレビ離れによるNHK離れも深刻だ。
信頼を失った公共放送は、公共であり続けることができなくなっていく。災害時に情報を出しても、反発が先に立つかもしれない。平時の番組はどんどん見られなくなり、若年層との接点はさらに細る。
NHKを視聴する国民が減れば、その影響も当然、徐々に失っていく。立法府は、総務省は、国は、この状況をどこまで放置し続けるのか。公共放送の大義は先送りできるほど軽微な問題なのか。
NHKの受信料制度は「強制を前提にした制度」から「公共性を条件とした選択型制度」へ段階的に移行すべき時がきているのではないか。先送りすればどんどん状況は悪化する恐れがある。国会でNHK受信料制度問題の議論が進むことを、筆者は心から願っている。
文/村上ゆかり 写真/shutterstock
2度延期のH3ロケット8号機、まもなく打ち上げ 対策施し「年内最後のチャンス」に挑む
日本版の衛星利用測位システム(GPS)を担う国の準天頂衛星「みちびき」5号機を搭載し、日本の主力大型ロケット「H3」8号機が22日午前10時51分30秒、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げられる。機体や打ち上げ設備の不具合によって、2度延期した後の打ち上げだ。打ち上げチームはプレッシャーや時間的制約と必死で闘いながら、より信頼性を向上させた機体と設備で、年内打ち上げの「最後のチャンス」に挑む。
これまでは5機連続成功
H3は、今年6月に退役した名作ロケット「H2A」の後継機として開発された。H2Aは、全50機のうち、打ち上げに失敗したのは2003年11月の6号機だけで、世界的にも極めて高い98%という通算打ち上げ成功率を打ち立てた。
一方、H3の打ち上げは、2023年3月の初号機は失敗したが、24年2月の2号機以降、5機連続で成功している。新たに開発されたばかりのロケットとしては、初期のH2Aと肩を並べる立派な実績だ。
ただ、8号機の打ち上げは難航している。当初計画の打ち上げ日は7日だったが、機体の部品に不具合が見つかったことから、原因究明と部品の交換が必要となって17日に延期された。
さらに、17日には打ち上げ時刻の16・8秒前、燃焼開始時にエンジンが発する高温の噴流を冷やすため、発射台側から水を噴射する装置に不具合が判明。打ち上げ施設や機体を高温や振動から守れないことから、再度の延期が決定した。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、最初の延期の原因となった機体部品の不具合は、部品の製造工程のばらつきによる、使われた部品固有の品質不良だった。不具合がないことをきちんと確認した優良な部品への交換で解決した。部品の不良を打ち上げ前に見事に見抜いたチェック体制は称賛に値する。
難航の背景にあるものは
一方、2度目の延期の原因となった水噴射装置の不具合は、深刻な問題を含んでいるように見える。不具合について、JAXAは20日に記者会見を開き、水に圧力をかける装置のバルブの開き方が足りず、十分な量の水を噴射できなかったと説明した。その原因は、8号機で新たに導入した、バルブの開き具合を確認する方法がうまく機能しなかったためだという。
新方式は、スタッフが考案した簡単な計測器具をバルブに当てることで開き具合を確認するもので、同時に複数のスタッフが一目瞭然で確認できる、効率的で優れたアイディアだった。しかし、17日の打ち上げでは器具が誤った位置に当てられて開き方が不十分になり、水の噴射量が本来必要な量の4分の3に落ちた。
新方式の導入に合わせ、マニュアルは書き換えられたが、どの位置に当てるのかについては詳しく記されていなかった。また、新たな取り組みの導入だったにもかかわらず、器具の当て方についての事前テストを実施していなかった。
打ち上げのわずか16・8秒前とはいえ、水噴射装置の不具合を見つけ、発射作業を緊急停止できたことは素晴らしい。だが、背景にある不適切なマニュアル作成や、事前テストをしない「ぶっつけ本番」を良しとした管理態勢はどうだろうか。全ての新規事項の事前テストは無理だろうが、やるやらないの切り分け方に問題はなかったか。
日本の技術の底力発揮へ
JAXAの有田誠プロジェクトマネージャは、20日の記者会見で「事象は真摯(しんし)に重く受け止めるべきで、なぜ起きたかについての深掘りを今後も続ける必要がある」と表情を曇らせた。
関係者によると、種子島宇宙センターの発射場は、年内は23日までしか使うことができないため、8号機が打ち上げられる22日は、年内打ち上げの「最後のチャンス」とみられている。そして年内に打ち上げを済ませることが、極めて重要なのだという。
年明けから年度末にかけて、同センターでは2月1日に9号機の打ち上げがあり、3月には機体構成を変更する6号機のエンジン燃焼試験が行われる。8号機の打ち上げが来年にずれ込めば、今後の打ち上げ計画などに大きな影響が出ることが確実視されるからだ。
2度の打ち上げ延期とタイムリミット。ロケット打ち上げのスタッフにのしかかる、これらのプレッシャーはすさまじいものに違いない。だが、有田氏は「より信頼性を高めた状態で打ち上げに臨める機会を得た。成功に向け、全員が心を1つにして全力を尽くす」ときっぱり語った。日本のロケット技術の底力を発揮し、6機連続の打ち上げ成功を成し遂げてほしい。(伊藤壽一郎)
《スクープ》前駐中国大使に仕掛けた中国の盗聴工作 舞台となった北京の日本料理店経営者が証言 機密指定の情報のはずが当の大使が暴露、大騒動の一部始終
高市早苗・首相の台湾有事を巡る「存立危機事態」答弁後、日中関係は緊迫の度を増している。そんななか、中国の日本に対する”ある工作”が明らかになった。しかも、それを暴露したのは他ならぬ日本の前駐中国大使だったのだ。外務省も巻き込み大騒動となったその工作の全貌について、本誌・週刊ポストは北京の日本料理店店主から貴重な証言を得た――。【前後編の前編】
地下に潜んで大使の会話を聞く
中国は高市首相の台湾有事発言に対して批判のボルテージを上げ、国連安全保障理事会では中国の国連大使が、「時代に逆行する許しがたい発言」と撤回を求めた。
時代に逆行はどちらなのか。次の証言を聞いていただきたい。
「北京に戻った時、日本の大使館の偉い人から呼ばれて、『何かあったら、ちゃんと守るから』と言われたんです。それまで日本に一時帰国していて、携帯電話もなくしていたから、そんな騒ぎになっていたことを私は知らなかったんです」
そう語るのは北京の日本料理店経営者だ。図らずも中国による対日盗聴工作の渦中に巻き込まれてしまった人物である。
大使館が慌てた理由は、日本側が中国の工作を具体的に掴んで機密指定していたとされる情報を、よりによって日本の垂秀夫・前駐中国大使が暴露してしまったことだった。
垂氏はチャイナスクールと呼ばれる外務省の中国語研修を受けた外交官では異色の対中国強硬派として知られ、香港総領事や日本台湾交流協会台北事務所総務部長なども歴任。中国・モンゴル課長時代に起きた尖閣諸島での中国漁船衝突事件の際には、超法規的に中国人船長を釈放させた菅直人内閣に「そんなことをすれば、政権は持ちません」と抗議した。
2020年9月から2023年12月まで駐中国特命全権大使を務めて帰国した前大使はその後、月刊誌『文藝春秋』(2024年2月号)の連載インタビューで中国の工作をこう語ったのだ。
〈私が利用した日本料理店に盗聴器を仕掛けられたこともあります。大使館近くの店で会食をした際、私が到着する前に北京市国家安全局の職員がやってきたそうです。用意していた部屋を見て、「ここは盗聴器が仕掛けにくい」と違う部屋に変更させて、監視カメラと盗聴器をセット。地下の部屋に潜んで私たちの会話を聞いていた。そして、日本料理店の関係者は、「口外してはならない」という書類にサインをさせられたのです〉
工作があったのは垂氏が中国大使に就任して2年目の2021年の春節(中国の旧正月)のことだった。
国内・政治「秘書給与796万円ピンハネ疑惑」の遠藤敬・首相補佐官に渦巻く不満 「連立離脱」や「維新大分裂」の危機も
「身を切る改革」と言いながら、党幹部の政治とカネの問題がゴロゴロ出てくる日本維新の会。藤田文武・共同代表や高木佳保里・総務会長が公設秘書の会社に公金を還流させていたことが報じられ、本誌・週刊ポストは高市内閣の首相秘書官を務める遠藤敬・国対委員長の秘書給与ピンハネ疑惑をスクープした。
遠藤氏の政党支部が公設秘書3人から5年間で総額796万547円もの寄附を受けていたのだ。国会議員の公設秘書の給与は国から支給され、原資は税金であるため、公金が遠藤氏に”上納”されていたと見られても仕方ない構図だ。
約221万円を遠藤氏の支部に寄附していた元秘書A氏は本誌の取材に対し、「ある人から(寄附をするように)言われたら、『はいはい』と言わんとしゃあないですよね」と証言。遠藤事務所に聞くと、「秘書に対し、寄附を指示したことはありません」と答えた。
この遠藤氏をめぐる騒動などに関して、維新の若手議員は相当不満が高まっている口ぶりなのだ。
「もともと維新は国会議員のカネの問題には厳しかった。遠藤さんみたいに公設秘書から給料を1人何十~何百万円も支部に上納させていたとしたら、まるでブラック企業。いくら何でも秘書が気の毒です。以前なら、代表なり共同代表がケジメをつけさせて役職辞任とか、重い処分の場合は除名もあり得た。しかし、今は我々から”そんな議員やめさせろ”とか”離党させろ”という声を挙げることもできない空気です」
理由は高市内閣の事情にあるという。
「自維連立は衆院でギリギリ過半数。維新が不祥事で議員を除名処分にすれば即、過半数割れで予算も通らなくなる。それを口実に幹部の不祥事も黙認。国会議員団は藤田共同代表のバックで馬場伸幸・元代表や遠藤さんが公認権を握って睨みを効かせているから、文句を言ってる議員も、”比例名簿どうなっても知らんで”と言われることを恐れて何もできない」(同前)
維新の議員の不祥事は自民党にとって”弱み”を握ることになる。遠藤氏の秘書給与ピンハネ疑惑は国会議員秘書給与法に違反する可能性が指摘されているが、高市首相が遠藤氏の首相補佐官をクビにしないことで維新に”貸し”をつくることができるからだ。
維新の府議や市議が黙っていない
そして自民党はその弱みを突いて維新に譲歩を引き出した。維新が自維連立の「絶対条件」として自民党に突きつけた衆院の定数削減について、吉村洋文・代表は高市首相とのトップ会談(12月16日)で今国会成立を断念、来年の通常国会に先送りすることで合意したのだ。