立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非を巡って迷走している。立民は反対だったのに対し、公明は容認の立場で、党の方針を統一できていないためだ。他党は中道の「アキレス腱」とみて追及を強める。
発端は1月19日、立民の安住淳幹事長(当時、現中道共同幹事長)の発言だった。中道の綱領を発表した記者会見で、辺野古移設に関し「政権を担うことになれば、ストップすることは現実的ではない」と明言した。
立民は昨年、参院選の政策集で「辺野古新基地建設を中止」と公約しており、立民沖縄県連は翌20日、方針の堅持を求める文書を野田佳彦代表(現中道共同代表)宛てに提出。安住氏は同日「中道として、移設に関する整理はまだできていない」と軌道修正した。
一方、公明の斉藤鉄夫代表(現中道共同代表)は21日、記者団に「辺野古移設は日米基軸の安保政策の中で、抑止力に効果を持たせるため必要だ」と言明し、立民側と足並みの乱れが露呈した。
高市早苗首相(自民党総裁)は24日の党首討論会で「確固たる方針がないと日米同盟を守れない」と批判。野田氏は、移設に反対する社民党の福島瑞穂党首から「辺野古移設は賛成か、反対か」と迫られ「慎重な立場だ」と口にした。
その後もテレビ番組などで繰り返しただされ「選挙が終わった後に結論を出したい」「基本線は一致している。現実的に対応したい」などと弁明に追われた。
野田、安住両氏が要職を務めた民主党政権は、普天間飛行場の県外移設を主張しながら、辺野古移設に回帰した経緯がある。日本維新の会の藤田文武共同代表は「民主党政権を思い出す。信頼できる政党なのか、有権者に判断してもらうことになる」と当てこすった。
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雪の重みか、新潟で住宅や建物の倒壊相次ぐ 上越では男性死亡
新潟県内では2日から3日にかけ、雪の重みが影響したとみられる建物などの倒壊が相次いだ。
3日午後1時ごろ、上越市三和区岡田の木造住宅が倒壊していると上越署に通報があった。署員らが駆けつけたところ、がれきの中から成人男性1人が見つかった。
同署によると、男性はこの家に住む片山圭太さん(68)とみられ、現場で死亡が確認された。片山さんが出勤しなかったことを不審に思った職場の同僚が訪ねて、倒壊が判明した。
上越市によると、3日午前9時の三和区総合事務所の積雪量は127センチ。同署によると、片山さん宅の周辺には約150センチの積雪があったといい、同署は雪の影響で倒壊したとみて詳しい状況を調べている。
また、3日午前6時ごろには、柏崎市与板で「近所の家が雪で倒壊している」と付近住民から柏崎署に通報があった。
署員らが駆けつけたところ、住宅敷地内にある車庫が倒壊し、車庫内で男性1人が下敷きになっているのが見つかった。男性は約2時間半後に救助され、病院に搬送されたが、頭部から出血しており、意識不明の重体。
同署によると、男性はこの家に住む50代とみられ、倒壊した車庫には大量の雪が積もった状態だったという。
新潟地方気象台によると、柏崎市の3日午前6時の積雪は平年の3倍近い62センチだった。
一方、長岡市殿町では2日午後7時半ごろ、飲食店などが連なる商店街の「がん木」と呼ばれるアーケードの一部が雪の重みで数メートルにわたって崩れた旨の通報が長岡署にあった。同署によると、けが人などはない。この時間帯の同市の積雪量は平年の約2・5倍以上となる139センチだった。
県は3日、長岡市の旧山古志村、旧小国町、旧栃尾市、旧川口町のエリアについて、屋根の除雪などにかかった費用を国と県が負担する災害救助法の適用を決定。2日には小千谷市と魚沼市の全域を対象とした同法の適用が発表されている。【戸田紗友莉】
安倍元首相銃撃 山上被告側が控訴へ 量刑不当や一部無罪主張の方針
安倍晋三元首相(当時67歳)が2022年7月、奈良市で参院選の応援演説中に銃撃され死亡した事件で、山上徹也被告(45)に求刑通り無期懲役を言い渡した奈良地裁判決について、被告側は控訴する方針を固めた。弁護側は1審で被告の不遇な生い立ちを重視すべきだとして懲役20年以下の判決を求めており、控訴審では量刑不当や一部無罪を主張する方針。控訴期限の4日に控訴するとみられ、被告にも説明済みという。
1月21日の裁判員裁判判決は、被告の犯行態様は極めて危険で悪質性が高く、演説会場での手製銃の発砲によって公共の静穏や安全も大きく侵害されたと指摘。極めて高い計画性や結果の重大性を訴えた検察側の主張を全面的に支持した。
被告の母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入信したことで家庭内でいさかいが起き、これらが事件の遠因になったことは認めた。
一方で、被告が教団に対する激しい怒りを抱いたとしても、銃の製造を計画して殺人を実行するという意思決定に至ったことは「大きな飛躍がある」と判断。被告の生い立ちは犯行に大きく影響しておらず、酌むべき余地は大きくないとして無期懲役を言い渡していた。
被告は殺人罪のほか、銃刀法違反(発射、加重所持)▽武器等製造法違反▽火薬類取締法違反▽建造物損壊罪――にも問われ、弁護側が無罪を主張していた発射罪についても違反が成立していると認めていた。
判決によると、被告は22年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で、手製銃を発砲し、演説中だった安倍氏を失血死させた。
弁護側証人として奈良地裁の公判に出廷し、判決後に被告と面会した北海道大大学院の桜井義秀特任教授(宗教社会学)によると、被告は判決について「出る前から(無期懲役となることは)雰囲気で分かった。覚悟していた」と話したとされる。【田辺泰裕】
防衛大OB、イスラエル製ドローン導入に反対 ハンストで訴え
衆院選が公示される前日の1月26日夜、防衛大学校OBの男性が東京都新宿区の防衛省前でハンガーストライキを始めた。寒空の下、パレスチナ伝統の布を肩に掛け、防衛省が導入しようとしている小型攻撃型ドローンに「イスラエル製」を採用しないよう求めている。男性は「世の中の関心は衆院選に集まっているが、日本が虐殺に加担しないよう目を向けて」と訴える。
防衛省の前に立っているのは、2024年3月に結成された「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」代表で、防衛大63期卒の平山貴盛さん(29)。イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で実行するジェノサイド(大量虐殺)に抗議し、市民団体「武器取引反対ネットワーク(NAJAT)」などと、イスラエル製武器の導入中止を防衛省やドローン輸入企業などに求めてきた。
17日に防衛省が一般競争入札
防衛省は小型攻撃型ドローンを導入するため、今月17日に一般競争入札をする。
NAJATによると、取得のために事前に行われた実証試験は4機種で実施され、イスラエル企業「イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)」製の2機種を含む。
国連人権理事会の独立調査委員会は25年9月、イスラエルがガザ地区でジェノサイドをしていると認定した。パレスチナの人権状況に関する国連特別報告者であるフランチェスカ・アルバネーゼさんは、ガザ地区で使われるドローンを製造するIAIなどはジェノサイドで利益を得ていると指摘している。
平山さんは「イスラエル製ドローンが導入されたら、虐殺と戦争犯罪への加担という政治的な意味をもつ」と強調する。日本政府はガザ地区の人道状況について懸念を表明しているが、平山さんは「イスラエル製ドローンを導入すれば、日本の外交姿勢のダブルスタンダードを露呈させ、安全保障環境をかえって危険にさらす可能性もある」とハンスト前の記者会見で指摘した。
東アジアの安全保障環境が厳しくなっているとする平山さんは、ドローンの導入自体には反対しない。「性能や実績に定評のあるイスラエル製ドローンが目に留まるのはある意味、仕方ないかもしれない」とした上で、「これらの性能や実績はパレスチナ人を長年にわたり人体実験のように虐殺し続けることで獲得されたことが明らかだ」と断じる。
ハンストでは水と塩、砂糖だけをとって座り込み、寝袋で休みを取る。「風邪引くなよ」と声を掛けてくれたり、すっと近づいてきてガッツポーズし「表立って応援はできないが頑張れ」と言ったりする人もいるという。
平山さんは、国際法をはじめとする国際ルールに基づく秩序が大事だと考える。「ルールを根底から壊すイスラエルから武器を買うと、日本がルール破壊をする側に回り、金を出して支援することになる。イランや中国、ロシアのドローンは買わないのに、イスラエルのやっていることは問題ないというメッセージを出すことになってしまう」
9日目を迎えた極寒のハンスト。「日本政府が当事者である以上、市民も無関係であることなどありえない。これはパレスチナだけの問題ではなく、私たちが生きる国際社会をどのようにつくっていくかという問題だ」。平山さんは熱を込めて語る。【矢追健介】
ネパール大統領夫妻と会見 両陛下、皇居・御所
天皇、皇后両陛下は3日、来日中のネパールのポーデル大統領夫妻と皇居・御所で会見された。宮内庁によると、天皇陛下は1987年にネパールを訪問したことがあり「美しい国で大変印象に残っている」と述べ、当時撮影した風景写真を贈った。水くみ場に女性らが集まる姿を見て、水問題を考えるきっかけになったことも紹介した。
大統領は仏教を通じたつながりなど両国の長年の関係に触れ、日本から多くの観光客が訪れていることを「うれしく思う」と話した。
会見では2011年の東日本大震災と15年のネパール大地震を巡り、お互いの支援について感謝を伝え合った。
豪雪の青森 手つかずの“除雪困難地域”
雪の重みで倒壊する建物が相次ぐなど、住民の生活に甚大な影響が出ています。この2週間の記録的大雪で、合わせて30人の方が亡くなっています。
【画像】災害級の豪雪…除雪も進まず 「アーケード」や「車庫」倒壊
災害級の豪雪…除雪も進まず
狭くなった道路で、雪の壁に突っ込んだ車。その時、後ろでも保育園に行く車がスタックしていました。さらにその後ろも…。
誘導しているのは、道路沿いの会社に勤める人たちです。車がいない隙を狙って一斉に硬くなった雪をつるはしで取り除いていきます。
青森では積雪が170センチを超え、普通の日常ではなくなっています。
雪に埋もれたバス停、傘も見えます。落雪の恐れがあるため、女性は車道のすぐ近くで待っています。
道路脇で傾いて止まったバス。雪の下にあったのは道路脇にある流雪溝です。
道路と流雪溝の間にできた段差にタイヤがはまり、動けなくなったということです。
近隣住民
「(流雪溝を)知らない運転手が穴があるのに気付かずに入っちゃう」
「アーケード」や「車庫」倒壊
雪が重たい日本海側、事故も起きています。
新潟県柏崎市では雪の重みで車庫が倒壊し、住人の50代の男性が下敷きになり、心肺停止です。
隣の長岡市の繁華街、殿町で歩道についた屋根が雪の重みで崩れてしまっていました。
8メートルにわたり、崩れてしまったアーケード。元はラーメン店などが並んでいました。屋根には室外機が2つ乗っていたことが分かります。その室外機は、屋根とともに地面に落下してしまいました。
青森では2日から災害派遣要請を受けた自衛隊が入っていますが、除雪が行き届かない裏通りに行くと、一人が歩けるかどうかという道幅になっていました。
ここは古い商店街。人の手が入らない場所は生活が困難な状況が続いていました。雪で看板が覆われていますが、ここは果物店です。
除雪だけでなく排雪も課題
表通りではトラックが次々と立ち往生します。佐々木快アナウンサーも雪をかきます。あまりに動かず、カメラマンもカメラを置いて参加します。それでも無理です。最終的にはロープで牽引(けんいん)し、なんとか動きました。
どんな場所でスタックしたのか…その深さはおよそ20センチはあり、かなり深くはまっていたのが分かります。
ドライバー
「除雪しても排雪しないと結局、(道が)狭い」
そう、除雪だけでなく、排雪も課題です。国の委託で、排雪を行っている内山真澄さん(54)です。除雪車から出た雪をトラックに積み海に捨てます。
内山さん
「(Q.どうですか?)道路ガタガタで大変」
次々と排雪に向かうトラック。しかし、10トントラックが雪に突っ込んで、立ち往生しました。
内山さん
「ショベルカーとかで引っ張るしか…」
降りやまぬ雪で、内山さんは12月からずっと働き詰めです。
内山さん
「(Q.何日連続でやってる?)分からなくなったっすね。 結局誰かが犠牲にならなければ道路は良くならないし」
(2026年2月3日放送分より)
「『死んじゃうよー』公用車の運転手がうめき声を…」「官僚2人は後ろでグッタリ」公用車が130キロで死傷事故、目撃者が語った“凄惨な事故現場”【高市首相、腹心の官僚】
衆院解散の直前となる1月22日の夕刻、総理大臣官邸を出発した公用車が、東京・永田町の『特許庁前』交差点の赤信号を無視して突っ込み、7人が死傷した事故。公用車の運転手・Xさん(69)は重傷を負い治療中で、警視庁は現場検証などで事故の原因を調べている。
亡くなったのはタクシーに乗っていた32歳の会社員男性・Zさん。なぜ公用車はブレーキを踏まずに突っ込んだのか事故の一部始終を目撃した関係者が、その詳細を証言した。【前後編の前編】
事件の概要を全国紙社会部記者が解説する。
「Xさんは内閣府から業務委託を受ける会社の社員です。事故当時も後部座席に官僚のA氏、B氏2名を乗せ、業務中でした。18時半ごろ、総理官邸を出発した公用車は総理官邸前交差点を右折後加速し、アクセル全開のまま出発後30秒ほどで現場交差点に突っ込んだ。衝突時には130キロに達していたといいます。
公用車は最初に白のワゴン車に突っ込むと、吹っ飛んだワゴン車が車線を跨いでタクシーに直撃。その後部座席に乗っていたZさんが脳挫傷などで亡くなりました」
官邸関係者によると、「A氏とB氏は高市政権下で昨年発足した『日本成長戦略会議』のメンバーである幹部官僚で、顔面骨折などの重傷を負っており、現在も入院中」だという。
「特にA氏は『日本成長戦略会議』の事実上のトップにあたり、過去には菊池桃子さんの夫で元官僚の新原浩朗さん(元経産省経済産業政策局)が務めたポストに就いている人物です。かなりキャリアの長い人物ですが、高市早苗首相はその手腕を高く買っていて、昨年の就任に繋がった。
10月に内閣が発足してから、高市氏は頻繁にA氏と会って相談や会議を繰り返していた。職務に復帰するにはまだまだ時間がかかるでしょうし、不安は大きいでしょう」
内閣府はNEWSポストセブンの取材に対し、「当日の運転手の対応については、特に問題がなかったと(運転手を雇用している)事業社から報告を受けています。車両については警視庁のほうで引き続き捜査中とのことですが、現時点で不備や故障があったという事実は承知しておりません」と回答している。
ではなぜ事故は起きたのか、出発から事故までの30秒間に何があったのか。NEWSポストセブンは、事故状況を示す重要な証言を入手した。当時事故を目の前で目撃し、公用車運転手の救助に当たった男性・Cさんが語る。
「ちょうど内閣府下交差点から特許庁前交差点の間の坂を、歩きで下っていたんです。100メートルちょっとの坂道を3分の2ほど下った時点で、後方からものすごい爆音で車が下ってきて、最初は暴走族か何かだと思ったんです。
《衝撃スクープ》高市首相がNHK「日曜討論」出演キャンセルを2日前から準備していた! 官邸関係者が明かす真相「小林鷹之氏に代打を打診したが…」
〈 「統一教会の問題になるとダンマリ」高市首相のパーティー券「教団側が購入」報道に説明責任を求める声が多数「いつも大見得を切って…」「一度下野しなければ…」 〉から続く
高市早苗首相が2月1日午前のNHK「日曜討論」出演を直前に取りやめ、野党が再設定を求めて抗議している問題。実は高市首相側が、生放送の2日前から出演キャンセルを準備していたことが「週刊文春」の取材で分かった。
官邸関係者が今回の“ドタキャン”の真相を明かす。
「放送2日前、1月30日の金曜日時点で、高市氏側から、政調会長を務める小林鷹之氏に代打出演を打診しているのです」(官邸関係者)
ただ小林氏は日曜午前10時半から京都での遊説日程があったため、調整が付かなかったという。
「そこで白羽の矢が立ったのが、政調会長代行を務める田村憲久氏でした」(同前)
実際、番組には田村氏が代役で出演。高市首相はキャンセルの理由を「怪我」であると説明する一方、同日午後の地方遊説は予定通りこなしていた。
この経緯について高市氏、小林氏、田村氏に質問状を送付すると、三者から「党幹部の(間の)日々のやり取りの逐一については公表しておらず、お答えは差し控えます」と全く同趣旨の回答が寄せられた。
なぜ、高市首相は日曜討論の出演を避けたのか。2月4日(水)12時配信の 「週刊文春 電子版」 および5日(木)発売の「週刊文春」では、ドタキャン騒動の真相に加え、高市首相と統一教会の新たな“接点”を示す内部資料について詳しく報じる。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 電子版オリジナル)
衆院選、全開票終了は9日正午 投票繰り上げ42%
総務省は3日、衆院選(8日投票)の全ての開票作業が終了するのは小選挙区、比例代表とも9日正午になるとの見通しを発表した。各都道府県選挙管理委員会からの報告をまとめた。いずれも東京都が最も遅い。投票終了時間を午後8時から繰り上げる投票所が、3日時点で全体の42%になるとも明らかにした。前回2024年から3ポイント増となる。
開票が最も早く終わるのは、小選挙区が佐賀県で8日午後11時40分。比例は徳島県が9日午前0時半と報告した。
投票日当日、全国に設けられる投票所は4万4642カ所で、前回から787カ所減る。このうち1万8537カ所で終了時間を繰り上げると報告があった。東北地方などで増加傾向にあり、総務省の担当者は「雪の影響を受けたとみられる」と話す。
閉鎖を早める投票所の割合は、立会人の負担軽減などを目的に増加している。投票日、日本海側を中心に大雪となる恐れがあるとの予報が拍車をかけたとみられる。気象状況次第でさらに増える可能性がありそうだ。
「突然激昂してカッターを取り出し大振りで…」埼玉の中3男子が同級生から受けた大怪我を親にも3年間言えなかった“恐怖の理由”
2022年6月27日、埼玉県立の中高一貫校の中学3年生だったダイキさん(仮名)は、教室で昼休み明けの5時間目の準備をしていた。同級生のAにカッターで切りつけられ、右膝の内側を大きく切る重傷を負った。
昼休みが終わり、教室で5時間目の移動教室の準備をしていたダイキさんに、隣のクラスの同級生であるAが近づいてきた。 ダイキさんは当時の状況を、今も鮮明に記憶している。
カッターの刃をダイキさんの顔面めがけて振り下ろし
「最初は『次の授業は移動教室だね』という、ごく普通の挨拶から始まりました。翌日からプールの授業が始まる予定だったので、そんなたわいもない話をしていたのですが、Aが次第にじゃれついてくるような感じで、腕時計の革ベルトを外して僕の腕をパチパチと叩き始めたんです。
最初は軽く受け流していましたが、だんだんしつこくなってきて……。嫌だったので『やめろ』と言って彼の手を払い除けました。すると彼は、自分が逆らわれたと感じたのか、突然、激昂しました。そしてカッターを取り出し、僕に向かって大振りで切りつけてきたんです」
Aは、カッターの刃をダイキさんの顔面めがけて振り下ろした。ダイキさんは咄嗟の判断で身をかわしたものの、その拍子に机をなぎ倒して背中から転倒してしまう。
「後ろに飛び退きましたが、足をもつれさせて背中から倒れ込みました。その際、転倒した反動で僕の足がAの方に向いてしまった。それで振り下ろされたカッターが僕の右膝の内側にグサッと刺さったんです。最初は背中を打った痛みの方が強く切られたことに気づきませんでしたが、2~3秒して起き上がろうとしたら膝に激痛が走りました。見ると、制服のズボンが半分近くバッサリと切れ、膝のあたりが血だらけで真っ赤になっていました」
血がしたたる右足を引きずりながら、ダイキさんは自力で保健室にたどりついた。しかしダイキさんは、教師に怪我の原因を伝えることができなかった。
「保健室に行くと、先生が傷口を見てすごくびっくりして『どうしたの?』と聞かれました。その瞬間に『もし本当のことを言ったら、後で仕返しをされるんじゃないか?』という強い恐怖が頭をよぎったんです。Aは普段から教師の言うことも聞かない、いわゆる“やんちゃ”な生徒として知られていました。過去には女子生徒の手にシャーペンを突き刺したり、暴力を振るったという物騒な噂も聞いていた。
その恐怖心から、僕はとっさに『転んで教室の机の金具に引っ掛けた』という嘘をついてしまいました。先生はダバダバと溢れ出る血を止めることに必死で、僕の嘘がそのまま通ってしまったんです」
ダイキさんが保健室で治療を受けていた13時30分頃、ダイキさんの母親は職場で学校からの電話を受けた。
「息子さんが怪我をしてしまったので、すぐに来てください」
電話口では詳細な説明は一切なく、母親は「休み時間に遊んでいて転びでもしたのかな、大きな怪我でなければいいけれど」と不安を抱えながら、職場を早退して車を走らせた。
学校側は救急車を呼ぶなどの対応を一切取っていなかった
学校に到着し、保健室のドアを開けた瞬間、母親は自分の目を疑った。
「怪我をした膝の部分を見ると、制服のズボンが20センチ近くも切り裂かれていて、その下に傷口が露出していました。膝の傷跡は6~7センチに及び、深さも1センチほどあって、中の肉が見えている状態でした。ダイキは教室から自分で足を引きずって保健室へ向かったようで、保健室の前の廊下まで血みどろになっていました。しかしこの時点で息子は『他人にやられた』とは言わず、私もまさか同級生にカッターで切られたなんて、夢にも思っていませんでした」
保健室では教師が包帯を巻いて止血を試みていたが、「血が止まらない」と処置が難航していた。これほどの重傷でありながら、学校側は救急車を呼ぶなどの対応を一切取っていなかったのである。
「とにかく一刻も早く病院へ連れて行かなければと思い、私の肩を貸して、ダイキにケンケンをさせるようにして近くのクリニックに担ぎ込みました。結局、傷口は5~6針ほど縫うことになりました」
帰宅後、母親が改めて理由を尋ねると、ダイキさんは「転んで教室の机の金具に引っ掛けた」と同じ説明を繰り返した。母親は「次は気をつけなさいよ」と諭すしかなかった。
その日の17時頃、担任の女性教師から状況確認の電話があった。「明日、学校はどうしますか?」という事務的な確認と共に、学校の管理下での負傷時に適用される「災害共済給付金」についての説明を受けた。
「その後、学校から渡された書類には、ダイキの説明通りに『転倒して怪我をした』といった必要事項を記入しました。ただ今になって思えば、学校側は事件直後の聞き取り調査ですでに『Aのカッターによるもの』という事実を把握していたはずです。にもかかわらず、学校がどのような名目で共済金を申請し、事務処理を行ったのかは私たちには分かりません」
「毎日が強いストレスと心労の連続でした」
それでもダイキさんが自分で転んで怪我をしたと思っていた両親は、学校側の対応を「親身で心配してくれている」と感じていたという。
ダイキさんの父親も、「刃物で切りつけられるなんていう発想自体がありませんから、息子には『次から気をつけろよ』とだけ言いました」というものだった。
事件後、ダイキさんは真相を誰にも言えないまま中学校を卒業し、同じキャンパス内にある高校へと進学した。その日々は、常に恐怖と隣り合わせだったという。
「毎日が強いストレスと心労の連続でした。Aは隣のクラスにいる状態だったので、学校に行けば常に彼とすれ違う可能性がありました。そんな環境で、勉強や部活に安心して打ち込めるわけがありません。もし変にAを避けるような態度を取れば、『なんだお前、避けてんのか』と八つ当たりの対象にされるかもしれない。それが何よりも怖かった。だから僕は『卒業までとにかく逃げ切るんだ』と自分に言い聞かせ、Aに対しては当たり障りのないように接し1人で耐え続けていました」
ダイキさんは、自分が黙っていても「いつか学校側が適切に調査し、事実を明らかにしてくれるだろう」という淡い期待も抱いていた。しかし、学校が動く兆しは一向になかった。
「あの怪我、転んだって思ってるだろうけど…」
沈黙が破られたのは、事件から3年が経過した2025年6月11日。高校3年生になったダイキさんの進路に関する三者面談の場だった。面談が終わりかけたその時、ダイキさんは母親に全てを告白する決意をした。
「三者面談の時、これが『ラストチャンス』だと思いました。このまま卒業してしまえば二度と話す機会はなくなる。もうすぐ夏休みが始まり、学校に行くこともなくなるタイミングだったので、今なら安全に逃げ切れるかもしれないという思いもありました」
進路の話が一通り終わった後、ダイキさんは「ちょっと待ってくれ。話があるんだ」と声を震わせながら切り出した。
「お母さんは、あの怪我、転んだって思ってるだろうけど……本当は隣のクラスのAにやられたんだ!」
それを聞いた母親は、椅子から転げ落ちるほどの衝撃を受けた。3年前に起きた出来事が不慮の事故ではなく、極めて悪質な「傷害事件」であったことを初めて知ったのである。
「びっくりして、言葉が出ませんでした。『どうしてこれまで黙っていたの?』と聞くのが精一杯でした。ダイキは涙ながらに 『仕返しが怖かった。もし話したらまた襲われるかもしれないし、同級生のみんなも事件を見ていたけど、みんなに迷惑をかけるのも嫌だった』と話してくれました」
この告白は三者面談を担当した担任教師もその場で淡々と聞いていたという。
ダイキさんは3年越しに事件の真相を話したことで、「高校の担任が学校に伝えて正式な調査をしてくれて、警察へも届けてくれるはず」と期待していた。しかし、その期待もまた、無情に崩れ去ることになる。
現在のダイキさんは、当時の絶望をこう振り返る。
「被害を告白した後の7月に学校側は『守ります』と言いましたが、実際には具体的な調査も加害者への処分も行われませんでした。両親が何度電話をしても『警察が捜査中なので無理です』の一点張りで、結局、学校自らが動いてくれることはありませんでした。学校に対する信頼感は、完全に失われました」
〈 「同級生をカッターナイフで切りつけた生徒に卒業証書を渡すのか?」一生消えない傷跡が残ってしまった中3男子が“2カ月後の卒業式”に望むこと 〉へ続く
(渋井 哲也)