福岡県新宮町は11日、低気圧と前線に伴う大雨の影響で、地下式下水処理施設「新宮中央浄化センター(アクア新宮)」(新宮町中央駅前2)が水没し、稼働不能になったと発表した。汚水処理ができないため、ポンプでくみ上げて消毒後に放流しているという。復旧時期は未定で、同町は仮設の処理設備を建設することも検討しているという。
アクア新宮は、全国的にも珍しい地下式の下水処理施設で、一定量の雨水などは排水される仕組み。だが、町では9日午後11時40分までの1時間雨量が約120ミリを記録して記録的短時間大雨情報が出るなどし、短時間で大量の雨水が施設に接続する下水道管から流入した。
職員が10日午後6時ごろに、設備がある地下2階に約30センチの浸水を確認し、ポンプによる緊急排水を実行したが、流入量の方が多く、地下2階は完全に水没したという。
アクア新宮が下水処理を担うのは新宮町の一部で、影響が出るのは約7300世帯、約1万7000人にのぼる。町は町民に「ご迷惑をおかけして申し訳ない。生活排水を必要最低限にしてほしい」と呼びかけている。【志村一也】
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大雨で九州各地に甚大被害「梅雨末期のような状態」なぜ線状降水帯が連日発生?その原因は「動けない前線」【Nスタ解説】
熊本の7つの市や町に、相次いで大雨の特別警報が発表されました。その後、警報や注意報に切り替わりましたが、引き続き注意が必要です。 毎日どこかで線状降水帯が発生しているという、あまり例がない状況です。なぜ、これほど連続して発生したのでしょうか。(11日午後5時ごろの放送より)
大雨で九州各地に甚大な被害…熊本では記録的な雨量
吉村恵里子キャスター: 先週から降り続いている九州の大雨ですが、本当に記録的な雨量となっています。
6日から11日正午までの降り始めからの積算雨量ですが、▼熊本・甲佐で682ミリ、▼熊本・山都で657.5ミリ、▼熊本・益城で519ミリとなっていて、非常に多くなっているのがわかります。
梅雨の時期でも1か月で400ミリ降れば多い方なんですよね?
河津真人気象予報士: 熊本県は比較的雨量が多い土地ではあるので、1か月でこの雨量ならわかりますが、1~2日といった短いスパンでこれだけ降ってしまうと、災害が起こってしまうということですね。
吉村キャスター: 熊本の各地で様々な被害が起きています。
甲佐町ではがけ崩れが発生し、行方不明の父親とみられる男性が発見されましたが、心肺停止の状態だということです。
そして、熊本県管理の5つの川が氾濫しています(午前7時時点まとめ)。さらに、玉東町では車が水没していて、一時通行止めのところもありました。
熊本は車社会なので、「明日からどうしよう」といった心配の声も上がっていました。
「線状降水帯」はなぜ連続して発生? 前線が動けない理由
吉村キャスター: そんな中で、「線状降水帯」はなぜ連続して発生したのでしょうか。
【線状降水帯発生の状況】 8月8日:鹿児島 8月9日:福岡 8月10日:福岡・山口・大分・熊本 8月11日:長崎・熊本
8日以降、毎日どこかで線状降水帯が発生しているという状況が続いています。河津気象予報士によると、「前線が停滞していることが原因ではないか」ということでした。
河津気象予報士: やはり気圧配置が変わらないと、同じような場所で雨が降り続けてしまうので、トータルの雨量が多くなって災害が起こってしまうということです。
吉村キャスター: 前線の停滞というのを天気図を使って解説していきます。
今、日本列島に雨を降らせている前線を挟むように、南側に「高気圧」、北には「寒冷渦」があります。この2つに挟まれているので、前線が動けず停滞している。そこに、南からの湿った空気が流れ込み、九州に大雨を降らせているという状況です。
河津気象予報士: 太平洋高気圧の周りを流れる湿った空気と、さらに西からも湿った空気が入ってくると、風がぶつかり合い、そこで雨雲が発達します。それがちょうど九州の辺りになってしまったということです。
吉村キャスター: 前線は挟まれて停滞はしていますが、少しは動くので、福岡や鹿児島でも線状降水帯が発生しているということです。
では、なぜこのように前線が停滞しているのか解説をお願いします。
河津気象予報士: 真夏の空気に覆われていたのが一旦退いてきたところに、北からの冷たい空気がしばらく停滞してしまったところがポイントかなと思います。それで、前線が停滞してしまったということですね。
井上貴博キャスター: よく「梅雨末期に近い」と話していましたが、この時期にこの構図というのは、例年はあまりないんですか?
河津気象予報士: お盆の時期ですと、やはり高気圧の方がずっと優勢なので晴れることが多いです。しかし、梅雨末期のような状態になってしまったということですね。
出水麻衣キャスター: こういった事態で被害が本当にたくさん出てしまっていますが、私達としては、普段からどういう備えをすればいいのか。また、このような情報が出たときにどのように行動すればいいのでしょうか?
河津気象予報士: やはり自治体の情報をしっかり確認することが重要です。
熊本県の中でも、大雨になっているところと、大雨ではないところがあり、テレビの天気予報だけだとざっくりとした情報になってしまうことも正直あると思います。そこは自分で情報を取得するという行動も必要になってくると思います。
車が水没被害に遭う前に“冠水マップ”の確認を!
吉村キャスター: 国交省から道路に関するハザードマップが出ています。お住まいの地域の情報を確認しておくことも重要です。
まず、お住まいの地域を選択します。
例えば、九州地方をタップしてみますと、九州のエリアが出てきます。「冠水想定箇所」というチェック項目があるので、今回、熊本県にチェックを入れますと、熊本県での「冠水想定エリア」という黄色い注意マークが出ます。
さらに、注意マークをクリックすると、冠水が予想される場所の住所の他、警察や消防の連絡先、下の部分には地図と写真が出てきますので、一度、事前に確認しておくとよさそうです。
12日にかけて大雨エリアが北上…週末は再び猛暑に
河津気象予報士: 17時の最新の天気予報を見ていきます。
現在の雨の様子です。熊本県では雨はだいぶ上がってきましたが、九州北部や東海、あるいは北陸に活発な雨雲がかかっている状況です。
今後の雨の予想ですが、11日午後6時から前線が北上していくので、日本海側の地方で引き続き大雨に警戒が必要となりそうです。石川・金沢、能登半島などでは12日にかけて大雨となる可能性があります。
12日朝、空が暗い間も雨になるということで、11日夜にまた避難を考えていただきたいところも多いですし、12日午後にかけて雨の降りやすい状態が日本海側で続きそうです。
週間予報を見ると12日まで雨で、石川・金沢では13日午後まで雨雲が残るかどうかとなっています。
その先は晴れてきますが、気温が高くなります。15日、熊本では37℃の予想となっていますので、避難されている方や停電になってしまっている方などもいらっしゃるかなと思いますが、暑さ対策もできる範囲でしていただきたいと思います。
鎮魂と安全祈り灯籠流し=遺族「記憶語り継ぐ」―日航機墜落、12日に40年
乗客乗員520人が犠牲となった日航ジャンボ機墜落事故から12日で40年となるのを前に、遺族らは11日夕、墜落現場となった「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村)の麓を流れる神流川で灯籠流しを行った。犠牲者の鎮魂と空の安全を祈り、事故を二度と起こさないために「記憶を語り継がないといけない」と思いを新たにした。
犠牲者へのメッセージを書き込んだ手作りの灯籠約200個がともされ、参加者全員が黙とうををささげた後、灯籠を川面に浮かべた。
会社員の河口亜慧さん(24)=東京都新宿区=は、生まれる前に祖父博次さん=当時(52)=を亡くした。博次さんが機内で残した遺書には「幸せな人生だった」と感謝の思いが書かれていた。
亜慧さんは「自分もそう言い切れる人生を歩みたい」と話し、「(空の安全は)見えないところの努力で守られる。そのコストを忘れないでほしい」と願った。
父の南慎二郎さん=当時(54)=が犠牲になった川崎市の内野理佐子さん(65)は昨年12月、母(90)を亡くした。納骨の際、父の骨つぼを開けると、生前に母が話していた通り、お骨代わりに歯のブリッジが入っているのを見て、悔しさがこみ上げた。「人間だからミスはあるが、事故の記憶を呼び起こし、なくすために努力してほしい」と話した。 [時事通信社]
自民総裁選に地方前向き「責任を取らないというバカな話はない」…宮崎県連は早くも賛成決定
自民党が両院議員総会で臨時総裁選を検討する異例の決定をしたことを受け、地方組織がさっそく動き始めた。宮崎県連は9日、総裁選前倒しへの賛成を決めた。他の都道府県連の幹部の間でも賛同する意見が目立っている。(中山潤、宮崎支局 波多江航)
宮崎県連の賛成方針は宮崎市内で開いた総務会で決定された。県連会長代行の古川禎久・元法相は会合後の記者会見で「存亡の危機にある党の本格的な再起に向け、総裁選をやるべきだと賛同が得られた」と明らかにした。佐賀県連は意見集約に向けて検討に入った。山梨県連の会合では、所属国会議員が8日の両院議員総会の報告を行った。
総裁選挙管理委員会(逢沢一郎委員長)は今月中旬以降に前倒し実施への賛否を確認する方法や時期を定める。対象は党所属国会議員295人と都道府県連代表47人で、過半数の172人が賛同すれば、石破首相の総裁任期満了(2027年9月末)を待たずに、総裁選が行われることになる。
大半の地方組織は今後、協議を本格化させるが、幹部への取材では臨時総裁選に前向きな反応が相次いだ。埼玉県連会長の柴山昌彦・元文部科学相は「執行部がこのままでよいか、党員を含めけじめをつけたほうがよい」と述べた。栃木県連幹事長の木村好文県議も「前倒しは当たり前だ。責任を取らないというバカな話はない」と主張した。
静岡、千葉、沖縄の各県連幹部からも「体制を早く変えるべきだ」「首相も含めて総裁選をやるのも一つの手だ」といった見解が示された。
一方、首相が会長を務める鳥取県連の上杉栄一副会長(鳥取市議)は「前倒しには反対だ。有権者からはコップの中の争いにしか見えない」と訴えた。青森県連会長の津島淳衆院議員は早期の前倒し決定には慎重で、「総括し、責任を明確にした上で総裁選をやるべきだ」と述べた。
臨時総裁選を規定する党則6条4項に基づく作業は前例がなく、戸惑いの声も出ている。神奈川県連幹事長の梅沢裕之県議は「党本部に詳細な説明を早急に求めたい」と語った。逢沢氏は9日、X(旧ツイッター)に「賛否の確認方法などを厳正、慎重に検討し、準備を進める」と書き込んだ。
地方組織の動向は、国会議員の判断にも影響を与える可能性が高く、今後の展開が注目される。
台風11号(ポードル) 発達して暴風域が出現 来週は沖縄接近の可能性
8月10日(日)3時現在、台風11号(ポードル)は日本の南を西進しています。発達して風速25m/s以上の暴風域が出現しました。
来週中頃に沖縄に接近する可能性があります。進路や発達の程度によって影響が変わるため、今後の台風情報に注意してください。
▼台風11号 8月10日(日)3時
中心位置 日本の南
大きさ階級 //
強さ階級 //
移動 西 15 km/h
中心気圧 985 hPa
最大風速 30 m/s (中心付近)
最大瞬間風速 45 m/s
暴風域を維持して西進 来週は先島諸島に接近か
台風11号は10日(日)3時の解析で、暴風域を伴いました。この先も暴風域を伴う勢力を維持したままの予想です。進路の予想を見ると、三連休明けの12日(火)頃に沖縄本島の南を西進し、13日(水)頃に先島諸島の付近を通過する可能性が高くなっています。
発達の程度や進路次第では沖縄では先島諸島を中心に一時荒れた天気となる可能性があります。特に、お盆休み等で向かう予定がある方は、空路への影響等に注意してください。
台風の暴風域に入る確率
5日先までに台風の暴風域に入る確率が0.5%以上の府県予報区は以下の通りです。(気象庁)
沖縄本島地方
本島北部・中南部 2 %
慶良間・粟国諸島 3 %
久米島 4 %
宮古島地方 27 %
八重山地方
石垣島地方 36 %
与那国島地方 21 %
8月は台風の発生が最も多い時期
平年の台風発生数
台風の発生は3日(日)に発生した台風10号以来で、今月2つめです。7月は7個の台風が発生して平年と比べても多くなりましたが、8月も7月と同じくらいのペースで台風が発生しています。
台風発生数の平年値を見ると、8月の台風発生数の平年値は5.7個で、一年の中でも最も台風の発生が多くなる時期です。
秋にかけての本格的な台風シーズンとなりますので、台風対策・大雨対策等を整えておくようにしてください。
台風の名前
北西太平洋や南シナ海で発生した台風の名前は、国際機関「台風委員会」の加盟国などが提案した名称があらかじめ140個用意されていて、発生順につけられます。
台風11号の「ポードル(Podul/)」は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が提案した名称で、やなぎの木のことを指す朝鮮語です。
九州北部などで大雨災害のおそれ あすにかけて線状降水帯発生か 厳重警戒を
活発な前線の影響で、九州北部では9日夜遅くに線状降水帯が発生するなど大雨災害の危険度が急激に高まっている所があり、厳重な警戒が必要です。
九州北部では、活発な前線の影響で、9日夜遅くから非常に激しい雨が降り続いています。
11日にかけて前線が停滞するため、再び線状降水帯が発生し、災害の危険度が急激に高まる可能性があります。また、10日はさらに雨の範囲が広がり、西日本から北日本の広い範囲で、大雨となるでしょう。
11日朝までの予想雨量は、九州北部、山口で300ミリ、四国、東海で250ミリなどとなっていて、その後もさらに増える見込みです。
土砂災害や低い土地の浸水、川の氾濫に引き続き厳重な警戒が必要です。
「日本に移住すれば大学まで学費無料」中国でひそかに広がる、「教育無償化」「移民受け入れ」政策を悪用した“日本移住スキーム”
厚生労働省によれば、昨年の国内の出生数は68万6000人に留まり、1899年の統計開始以来、初めて70万人を割り込んだ。
政府は少子化に歯止めをかけるため、教育無償化などの子育て支援策の拡充を進める。一方、労働力の補完のため、外国人労働者の受け入れにも余念がない。各種ビザや永住資格の要件緩和で外国人に大きく門戸を開いた結果、在留外国人数は過去最高を更新し続けており、今年中には400万人を超えると見られる。
2つの政策を合わせ技のように悪用した“日本移住スキーム”
人口減少に対応するための「教育無償化」と「移民受け入れ」。これら2つの政策を合わせ技のように悪用した“日本移住スキーム”が、一部でひそかに広がっている――。
「在留資格の取得が容易であることや、円安の影響で物価が安いこともあり、欧米には行けない中間層の間でも、日本移住への関心が高まっている。特に最近は日本の修学支援も話題となっており、それを目当てに家族で移住する中国人も少なくありません」
そう話すのは、宗仁平(ゾンレンピン)氏(仮名・50代)。過去7年あまりの間に、100人近い中国人を日本移住に導いてきた“移民ブローカー”だ。近頃、中国のSNS「小紅書(Red Note)」には、宗氏のようなブローカーによる、こんな投稿が飛び交う。
あくまで法律で定められた手順を踏んだ合法的な手続き
「日本に移住すれば大学まで学費無料」
「東京大学で無料で学士号を取るまでの道」
確かに日本では高校授業料の無償化が段階的に拡充されている。だが、大学の学費は別だ。「無料で学士号を取る」ことは可能なのか。宗氏はこう胸を張る。
「不正ではなく、あくまで法律で定められた手順を踏んだ合法的な手続きで、修学支援の受給が可能です」
一体、どんなカラクリなのか。それを解き明かす前に、まずは宗氏が手掛ける「日本移住サービス」の内容から見ていこう。
◇ ◇ ◇
現在配信中の「 週刊文春 電子版 」および7日(木)発売の「週刊文春」では、宗氏が明かす衝撃の「日本移住サービス」の内容、“移住スキーム”を利用して日本で暮らす人物の体験談、移住先に日本を選んだ理由や「学費がタダになる」合法的な手続きのやり方などを詳しく報じている。
(奥窪 優木/週刊文春 2025年8月14日・21日号)
「完全に肉食動物の状態になっている」新聞配達中の52歳男性死亡のクマ事故“生ごみ”に対する執着心のスイッチが入った…専門家が見た予兆と危険
今年7月に北海道福島町で起きたヒグマによる死亡事故は、私たちに大きな衝撃を与えました。防ぐことは、できなかったのか?
鳥獣対策の専門家と現場を取材すると、予兆と住宅街に潜む危険が見えてきました。
■現場近くの草やぶと強い執着心
福島町三岳地区。
札幌市を拠点にハンターとしても活動する鳥獣対策コンサルタントの石名坂豪さんと事故が起きた現場にやってきました。
麻原衣桜 記者 「住宅が並んでいて、その向かいにあるこの場所で佐藤さんがご遺体で発見された草地です。まずここでまさに向かいの住宅で、クマに襲われてそのまま引きずられていってっていう、この状況見て、まずどう思われますか?」
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪さん 「山見えていますけど、結構離れてる。夜とはいえ、クマがここまで家の間に入り込んでいる状況というのが、なかなか通常は取らない行動」
石名坂さんも、クマが住宅街の奥深くまで入っていた事実に驚きを隠せませんでした。
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表 「ここに夜とはいえクマがいたというのが、日常的に起こることではない」
7月12日の未明、新聞配達中の男性がクマに襲われ、死亡した事故は、未だに小さなマチに影を落としています。
日課の散歩ができない。
子どもたちは、学校までクルマで送り迎え。
大相撲の九重部屋の夏合宿が中止に。
人気スポット「海峡横綱ビーチ」です。
厳しい暑さにもかかわらず、事故の影響で海開きは10日遅くなりました。
夏休みを迎えていますが、初日のビーチは親子1組だけです。
小学生 「楽しい。(先生が)大人いないといけないよって」
ビーチの監視員 「午前中は何人か来ていた。まだ怖い、うちの周りも草刈りをしている」
今も残るクマへの恐怖心。
石名坂さんは、現場近くの草藪が、事態をより悪化させたと指摘します。
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表 「ここに引きずっていって中に引き込んだというのは、完全に肉食動物の状態にクマがなっている状況。動物を捕らえたときは横取りされないよう落ち着いて食べるために、やぶの中に隠す」
先週、北海道羅臼町で撮影されたシカを襲うクマです。
捕らえた獲物を藪に引っ張り込もうとしています。
今回の事故も、近くに草が生い茂る藪があったため、クマが、人を襲った後も執着した可能性があるのです。
麻原衣桜 記者 「さすがに山まで引きずるということは?」
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表 「少しやろうとしたかもしれないけど、おそらくは成功しなかったと思う」
事故が起きる数日前から、現場周辺で相次いでいたクマの目撃情報や痕跡。
さらに3日前には、現場の集落に隣接する月崎地区でクマにごみ箱が倒され、生ごみの入った袋が無くなっていました。
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表 「大概最初の生ごみ被害はこういう山際で起こるんですけど、一度山際で生ゴミに餌付いてしまうと、山から多少離れたところであっても、完全に執着心のスイッチが入ったクマが住宅地徘徊して、ほかの生ごみ探し回るので」
事故後も「ごみ」への執着は続きます。
麻原衣桜 記者 「2日後の14日には2度にわたってスーパーマーケットの隣のゴミの入った倉庫が、完全に鍵がかかってたのを壊して、中のゴミを荒らすっていう」
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表 「あれがまさに典型的ですよね。どんだけいい生ゴミの臭いがしても、国道沿いの山から離れたところに、途中にやぶが多少あったとしても、いきなりはやらない。人身事故があるかどうかは別にして、スーパーのごみ倉庫がやられた、あそこまでは全道どこでも簡単になり得ます」
事故から6日後、クマは、駆除されました。
現場から800メートル離れた住宅街の草藪でした。
■4年前にも70代女性を襲う
DNA型鑑定の結果、男性を襲ったクマは、4年前にも、福島町の白符地区で当時77歳の女性を死亡させていたこともわかりました。
福島町民 「人間の味を知っているのかね。恐ろしい」
女性の親族 「まさかクマ生きてると思わなかった、もうちょっと早くね、なんか手を打てばよかった」
大好きだった畑仕事の最中に、クマに襲われたとみられる女性。
主を失った畑は、すっかり荒れ果てていました。
女性の親族 「当時はなんも声でなかった。遺体見ていないから。帰ってきたあとも、もう袋詰めできたから。そのまま焼き場に行ってすぐ焼いて骨になって。」
事故の1週間後、福島町は、クマが山から住宅地に入ってこないよう長さ1.5キロの電気柵と15台のカメラを設置しました。しかし、課題も…。
麻原衣桜 記者 「普通にここがもう空いてしまっているっていういうのも…」
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表 「通路だから張れないとか、いろいろ問題あると思う。これたぶん道庁が緊急でかき集めた、簡易に張りやすい電気柵なんですけど」
5日、同じ場所を取材すると、その出入口にも新たな電気柵が張られていました。
対策に、終わりはありません。
野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表 「全道民がすぐできるクマ対策としては、生ゴミを夜間クマが手出しできるところに置かない。特に山際の家に住んでる方は、徹底していただかないといけない。夜間に生ゴミ出すなコンポストやめろっていうのが一番わかりやすい」
人の住んでいる場所には、クマを入れない。
被害を防ぐには、人間の側で対策を進める以外、方法はありません。
■「住宅街にクマを入れない」
福島町では、事故の3日前に生ごみを荒らす被害がありました。
近隣の上ノ国町や江差町では、最近、家庭菜園や生ごみを荒らす被害が相次いでいます。
家庭菜園をしている人たちに話を聞くと「商売でやっている訳ではないからお金をかけてクマ対策をするのは難しい」という声も聞こえてきます。
しかし、石名坂さんは「札幌も含め、北海道どこでも山際には、もうクマがいる状態。クマが食べたがるような作物の栽培には、電気柵の設置などの対策が必要」と話しています。
環境省によると北海道のクマの生息域は、2003年からの15年間で「1.3倍」に広がっています。
これは、姿を見なくても、クマの身近で暮らしていることを意味しています。
【続報】踏切で見つかった遺体には激しい外傷 列車と衝突したとみて身元など捜査 JR千歳線
北海道・北広島市にあるJR千歳線の踏切で2025年8月10日未明、遺体が見つかりました。
JR北海道は「列車が接触したかは特定できていない」としていましたが、この遺体に激しい外傷があることから、列車と衝突したとみて警察が捜査していることが新たにわかりました。
また、遺体の損傷が激しいため、性別などは判明していないということです。
午前3時半すぎ、JR千歳線北広島~島松駅間にある「南の里2号線踏切」で、JRの線路点検の係員が遺体を見つけ、警察に通報しました。
この影響で、JRは快速エアポート3本を含むあわせて12本が始発から運休しましたが、午前6時ごろ、運転を再開しました。
警察は防犯カメラを解析するなどして、遺体の身元特定や事故が発生した時間などについて調べています。
「日本は逃げる男の天国」ろくに養育費を出さなくても責任なし…女性の絶望と怒り
東京都内でグラフィックデザイナーとして働く松本アイさん(仮名、40代)は2022年、妊娠した。彼に「結婚しよう」と言われ、婚約。広めの新居に引っ越した。 ところが、状況は一変する。彼は親族に結婚を反対されると、婚約を破棄。アイさんが里帰り出産のため新居を空けた隙に、鍵を置いて姿を消した。 翌年、息子を出産。その2カ月後、彼は弁護士を通じて連絡してきた。内容は「養育費は月1万6千円を支払う。育児には協力しない」。 がくぜんとしたが、悲劇はこれで終わらない。息子に小児がんが見つかったのだ。致死率50%。不安に襲われた。今後どうしていけばいいのか。一番に相談すべき彼は行方知れずだ。 生活費に加え、後遺症がある息子の闘病費用もかかるのに、健康体で働ける彼が宣言した養育費はたった1万6千円。しかも、いまだに1円も支払っていない。 アイさんは理不尽さに怒りが収まらない。 「養育費を出さないのに、なぜ責任を問われないのか。この国は逃げる男に甘すぎませんか」 養育費を受け取っていない母子家庭は約7割に上る。政府は昨年、養育費の不払い対策を盛り込み法改正した。ただ、専門家によるとそれでも「不十分」。一体どうなっているのか。(共同通信=宮本寛)
▽毎日陥る自己嫌悪
保育園が休みの日、アイさんの起床は午前7時だ。すぐに朝食を作り、2歳の息子に食べさせる。片付けをして9時に仕事を始めるが、2時間ほどで昼食の準備に取りかからなくてはならない。正午からの会社とのオンライン会議中、息子はずっと泣き叫んでいる。 会議を終えると、40分かけて自転車で療育施設へ。帰宅すると、すぐにおやつの時間だ。15時からの会議でも、息子の号泣が響き渡る。16時に調剤薬局へ。大暴れする息子をどうにかなだめる。17時から再び会議だが、息子の様子は言うまでもない。 会議後は夕食の支度に追われる。ここまでの食事はすべて息子のもので、自分は飲み物以外、何も口にしていない。 息子が寝てから家事や残りの仕事を片付ける。土日問わず深夜まで仕事をしており、睡眠時間はほとんどない。 アイさんは吐露する。「まったく仕事にならず、キャリアはとっくに諦めた。生きていくので精いっぱい。自分の都合で叱ってしまうこともあり、スキンシップの時間も短い。毎日、自己嫌悪に陥っている」
▽風邪を引くことも許されない日々
代理人を通して届いた彼からのメッセージ(アイさん提供)
実は、アイさんの記事を書くのは2回目。1回目の記事「養育費は月1万6千円です」を昨年6月に配信している。その翌日、ミュージシャンの彼はそれまで続けていたSNSへの投稿をぴたりと止めた。 記事を読んだのかどうかは定かではないが、その後もアイさんが求めた慰謝料と養育費の支払いはない。アイさんが求めているのは、慰謝料500万円と、養育費月3万円×20年分の一括払い。 一括払いは過大な要求に聞こえるかもしれないが、これには理由がある。彼が息子に関与せず、将来誰かと結婚して子どもが生まれた際には「養育費の支払いを止める」と既に通告してきたためだ。
その後、彼から四十数万円が振り込まれた。アイさんが求めた引っ越し費用や家賃など、初期費用の「半額」。それだけだ。彼の弁護士を通じて、こんな回答があった。 「(アルバイトをしている)介護の職場が変わった」「音楽での収入はゼロ」 しかし、源泉徴収票などの根拠は一切示されない。しかもアイさんが風邪一つ引かずに休まずフルで働くことを前提とした主張だ。アイさんには「そもそも法律が女性親の母性に依存し、不平等だ」としか思えない。「私が病気で倒れれば生活は破綻。私が死ねば息子は…」
▽終わらない悲劇 父の最後の笑顔
入院中の息子を看病した日々
必死に生きるアイさんに、またも悲しい出来事が起きる。2月中旬、アイさんの父が死去した。 実家の兄から着信があったことに気付いたのは、病院で息子と面会を終えた後。折り返した時、父はすでに息を引き取っていた。 葬儀にも駆けつけることができなかった。息子の容体に万一、何かあったときのために東京を離れることができなかったからだ。
実家には里帰り出産をした後、一度も帰れていない。気むずかしく寡黙だった父が、生まれたばかりの息子を抱くと、顔をくしゃくしゃにして「精悍な顔をしとるわ」と言ってくれた。
▽息子の退院 感じることのできなかった四季
退院の日、桜が咲き始めていた(アイさん提供)
3月、息子が退院した。1年前の入院時も同じように病院の近くで桜を見たが、その後の景色をはっきり覚えていない。必死だったからだ。ひたすら息子の健康を祈り、仕事をこなし、わずかな面会時間のために死にものぐるいでこの道を通った。「四季なんて感じる余裕もなかった」
息子は小さな体で過酷な抗がん剤投与と放射線治療を耐え抜いた。病院では、子どものベッド脇で仕事をする父親や、夫婦交代で看病する家庭ばかり。「病室は家族の絆や愛情を感じることのできる場所だった。疎外感を感じなかったと言えばうそになる」 彼の言動に傷ついて落ち込み、どす黒い気持ちを抱えたまま息子に向き合わざるを得なかった時間は「つらかった」。
▽「保育園が決まらなければ、母子の生活は詰む」
息子の退院の日に外れた患者のバンド(アイさん提供)
息子の退院後、最大の懸念は保育園探しだった。 医療的ケア児の入園には困難がつきまとう。シングルマザーでフルタイム勤務、そして実家による支援もなし。条件は有利なはずだった。それでも、4月からの入園はかなわなかった。 「このままでは母子の生活が詰んでしまう」。行政に掛け合い、なんとか特例による緊急措置として認めてもらえた。
▽逃げ得? 法改正でも残る課題
綱渡りの生活を続けるうち、彼との協議に無力感を覚えるようになった。 「行方をくらまし、支払いを渋る相手に時間とお金と精神力をかけて裁判や調停をする意味があるのか」 SNSを通じ、同じような境遇の女性の訴えを目にするようになり、こう感じている。 「逃げられた側のコストばかり高い。そんな現実に直面し、養育費を諦める人がかなりいる。それに気付いていて救済しないこの国って、逃げる男に甘すぎませんか?」
▽逃げ得? 「養育費よりも税の取り立てを優先」
改正民法が可決、成立した参院本会議=2024年5月
養育費を巡る日本の状況は、世界的に見てもかなり遅れていると言える。 厚生労働省の最新の調査によれば、母子家庭の約7割が養育費を受け取っていない。ひとり親世帯の子どもの約半数が貧困に直面している。
政府は重い腰を上げ、2024年5月の民法改正で「法定養育費」と「先取特権」の導入を決めた。 法定養育費とは、離婚時に取り決めがなくても一定額を請求できる制度。先取特権とは、和解調書や公正証書がなくても、相手の財産を差し押さえることができる権利だ。
ただ、これだけでは十分とは言えなそうだ。養育費問題に詳しい服部勇人弁護士は「不十分」と断言する。 「確かに民法改正によって、ちゃんと働いている親からの徴収はしやすくなったが、居場所が特定できない親への実効性は乏しい」 働いている親であれば、勤務先に照会して源泉徴収票を取り寄せ、それによって養育費の額も決められる。しかし、居場所が分からないと市区町村に問い合わせて課税証明書を取り寄せることもできない。結局は、逃げ得がまかり通ってしまう。
服部弁護士によると、アメリカの状況は日本とは正反対で、7割が養育費を払っている。この状況を支えているのは、税務署の関与という。 「行方不明でも、税金を納めているケースは多い。税務署が情報開示に協力するアメリカと、個人情報を理由に協力しない日本との大きな違いだ」 日本でも税務署の協力を強く求める声が上がったが、今回の民法改正に盛り込まれることはなかったという。 服部弁護士は力説する。 「税務署が守秘義務を盾に情報開示に協力しないということは、子どもを守るための養育費よりも、税金の取り立てを優先していることになる」
アメリカでは、養育費の不払いに対する制裁もある。不払い額が増えたり、払わない期間が長くなったりすると、「法廷侮辱罪」で懲役刑を科されることもあるという。
▽いま一度、彼に問いたいこと
画面を食い入るように見つめる息子
アイさんの息子は病気の後遺症で発達が遅れ、片耳は聞こえない。再発や晩期障害の恐れは消えず、定期的な検診も欠かせない。 それでも最近は発する言葉が増え、歌をフンフンと口ずさむようになった。お気に入りは「とれたんず」。新幹線をモチーフにした絵本やアニメだ。 何かを訴えるようにはいはいしながら近づいてきて甘える息子の姿が救いだ。
最後に、養育費を出さない彼に向けて語った。「私を傷つけ、幼い子どもの心や生命を犠牲にしてまで守りたかったものは何なのか、いま一度問いたい」
▽彼の反応は
彼の代理人弁護士に取材を申し込むと、こんな回答が来た。 「養育費について具体的な金額を提案しているが、当事者間で合意が成立しておらず、支払いができていない状態だ。これ以上、話し合いが進まないままなのは望ましくないことから、公平な裁判所を介した調停手続きで解決したいと考えている」