刑法犯で摘発された少年は年々減少しているにもかかわらず、再非行者の割合が高止まりしている。非行少年は不登校などで基礎学力を習得できておらず、出院後に就労が困難となっているためとみられる。このため法務省は今年度から関西の7つの少年院で、収容少年の学び直しを支援する取り組みを始める。順調に進めば全国の少年院にも広げる見込みだが、講師の指導ノウハウや成功事例の蓄積が求められそうだ。
令和6年の犯罪白書によると、警察が罪を犯したとして検挙した少年の人数自体は平成16年以降減少傾向にある一方、犯罪少年に占める再非行少年の割合は、ここ20年ほど3割前後で推移し、高止まりの状態だ。
喫緊の課題である少年の再非行防止に向けて、兵庫県加古川市の少年院「加古川学園」では3年前から、公文式教室を運営する公文教育研究会(大阪市淀川区)の教材を使い、希望する少年に約半年間、外部講師による学習指導を週に1回実施している。
科目は「国語」と「算数・数学」で、学力や目標に合わせて個別に学習計画を作成。少年は指導を受けつつ、自習時間などに宿題に取り組む。算数は全員が小学校低学年用の教材プリントから始まるが、中には高校の数学に到達し、大学受験を志す在院生もいるという。
これまでに約70人が受講。「忍耐力が身についた」「自ら進んで物事に取り組み、コツコツと丁寧にやる大切さを学んだ。仕事でもこの気づきを生かしたい」。3月下旬、学習を終えた17~20歳の9人が、修了式でそれぞれの成長を発表した。
仕事が続かない
取り組みの発案者は、少年の社会復帰をサポートする「日本財団職親プロジェクト」に参加する、カンサイ建装工業(本店・大阪市淀川区)の社長、草刈健太郎さん(52)。
草刈さんは、出院後、四則計算や読み書きができず仕事が続かなかったり、楽に稼ごうとしてだまされたりする少年を見てきた。家庭環境に問題を抱え、保護者によるフォローも期待できないケースが多く、出院前に基礎学力を身につけさせる必要があると感じた。
そこで、法務省の出院者向け学習フォロー事業を担った実績がある公文教育研究会と、関西の少年院を管轄する近畿矯正管区に少年院内での学習指導を提案。令和4年度から加古川学園で実現し、5年度からは同様の取り組みが大阪府阪南市の少年院「和泉学園」にも広がった。
内面にもプラス
加古川学園などによると、学習指導の効果は、在院中の内定率の向上につながったほか、少年らの内面にもプラスの変化となって表れた。限られた時間で宿題をこなすため、集中力が身につくほか、自らスケジュールを立て遂行することで自信がつき、態度が落ち着いてくるという。
こうした現状を受け、法務省矯正局は医療少年院を除く近畿矯正管区内すべての少年院での学習指導の実施を決め、今年度予算に3年間の事業費として約7千万円を計上。事業者は入札で決める。草刈さんは「学力は更生の基盤になる。ここからさらに広まれば」と期待する。
一方で、効果的な取り組みとなるには講師側の指導力も問われそうだ。加古川学園の法務教官、榎本康人さんによると、講師は勉強に集中できない少年に対し、雑談を交えながらやる気を引き出すなど工夫を重ねており、他の少年院で取り組む際には「こうしたノウハウを共有する必要がある」と指摘。「法務教官と講師が一緒になって、その少年院、目の前の在院生に合った教室を作ることが重要だ」と話した。
基礎学力課題
非行をした少年の更生を図り、円滑な社会復帰につなげる少年院。犯罪白書によると、全国に43施設(令和6年4月1日現在、分院含む)あり、おおむね12~20歳が在院している。
少年院では個々の特性に応じた「矯正教育」が行われている。生活や教科指導のほか、自動車整備や介護などの技能・資格の取得に向けた職業指導もあるが、再非行少年率の大幅な減少にはつながっていない。
令和元年の少年院の出院者のうち、5年以内に罪を犯して再入院、または刑務所に入ったケースは21・2%。この30年間、少年院に入る少年の人数は平成12年をピークに減少傾向が続いていたが、令和5年は前年より約2割多い1632人(男子1498人、女子134人)で、約半数が高校中退者だった。
5年の犯罪白書によると、少年院在院者に中学2年の頃の授業の理解度について質問したところ「分からなかった」と答えた割合は約7割に上ったといい、基礎学力の習得は課題となっている。(藤井沙織)
元法務技官で立命館大教授 宮口幸治氏(児童青年精神医学)
少年院には小学校の勉強で挫折してしまった少年も多い。失敗経験を重ねると無気力になってしまうが、少年院にいる間に、それぞれの学力に合わせたペースで指導を受けながら勉強できるのであれば、よい効果が期待できるのではないか。
少年らには「やってみたらできた」という経験が大切だ。自信をつけることは確実に再非行や成人後の犯罪の防止につながる。刑務所でもこの取り組みを実施できたらすばらしい。
ただ、中には境界知能(知的障害とはされないIQ70以上85未満の状態)などで、見る力や聞く力といった認知機能が弱く、学習指導をする以前の「困りごと」を抱えた少年もいる。そうした少年への支援方法も合わせて考えなければならない。
基本的な学力の習得は人生の財産だ。勉強でつまずき、自信を喪失した少年は周囲の好意を受け止められず、さびしさから悪い仲間とつながる恐れもある。それぞれの学力に合わせた丁寧な学習指導は今の教育現場でも必要だろう。(聞き手 藤井沙織)
転覆、マンションに衝突、107人死亡 JR福知山線脱線事故とは
兵庫県尼崎市で20年前、JR福知山線の快速電車が脱線する事故では、乗客106人と運転士1人の計107人が死亡した。
2005年4月25日、宝塚発同志社前行きの快速(7両)は定刻から15秒遅れた午前9時4分、宝塚を出発した。伊丹で所定の停止位置から72メートルを行き過ぎるトラブルがあり、1分20秒遅れで出発した。
塚口を通過すると、半径304メートルの急カーブに差し掛かった。時速70キロの制限速度(事故後60キロに変更)に対し、約116キロでカーブに進入。午前9時18分、脱線・転覆して線路脇のマンションに衝突した。
1両目はマンションの駐車場内に入り込み、2両目は外壁にぶつかった衝撃で「く」の字にひしゃげた。国の航空・鉄道事故調査委員会(事故調、当時)の報告書によると、乗客の死者は1両目42人▽2両目57人▽3両目3人▽不明4人――だった。負傷者は562人に上った。
事故後、JR西日本がミスをした運転士らに対する懲罰的な再教育「日勤教育」を実施していたことが問題視された。事故調は事故原因について「厳しい運転士管理方法が関与した可能性がある」と指摘。快速の運転士も事故前に3回、日勤教育を受けていた。
事故を巡っては、急カーブができた当時の鉄道本部長だった山崎正夫氏が業務上過失致死傷罪に問われたが、無罪が確定。井手正敬氏ら歴代3社長は検察審査会による起訴議決を経て強制起訴されたが、いずれも無罪が確定した。
事故後、JR西はカーブに対応したATS(自動列車停止装置)の設置など安全対策を進めた。企業風土も改め、悪質なケースを除き人為的なミスを懲戒処分の対象としない制度を始めるなどした。
現場のマンションを一部保存した慰霊施設は18年に完成。事故車両についての保存施設が25年末に完成する見込みとなっている。【稲田佳代】
「架空口座」捜査に導入へ=通信履歴、保存義務化も―SNS詐欺防止で政府対策
SNSを悪用した特殊詐欺被害の多発を受け、政府は22日、犯罪対策閣僚会議を開き、警察が管理する架空名義の金融口座を犯罪グループに使わせて金の流れを監視する「架空名義口座捜査」の導入を目指すなどの緊急対策をまとめた。容疑者特定に向け、通信事業者に通信履歴の保存を義務付けるよう検討することなども盛り込んだ。
警察庁によると、2024年の特殊詐欺と「SNS型投資・ロマンス詐欺」の被害額は暫定値で計約2000億円に上り、闇バイトによる強盗事件も相次いだ。犯罪グループはSNSなどで売買される他人名義の口座を、詐取した金や強盗実行役が盗んだ金の受け皿として用いるケースが多い。
このため、金融機関の協力で警察が実在しない人物名義の口座を開設。口座売却を求める投稿に捜査員が身元を隠して応じ、その口座からの資金の流れを追い、犯罪グループ中枢の摘発につなげる考えだ。警察の口座を紛れ込ませることで、不正な買い取りをけん制する効果も見込む。
犯罪収益移転防止法は、口座の売買や本人名義以外での開設を禁じており、導入には法改正が必要とみられる。警察庁は関係省庁や有識者と協議を進めるほか、口座売買の厳罰化も検討する。 [時事通信社]
他人のクレカでライブ配信「投げ銭」、4600万円分を不正決済か…46歳の男を容疑で再逮捕
他人のクレジットカード情報を使い、動画の配信者に送金する「投げ銭」用のコインを購入したとして、京都府警は21日、東京都世田谷区、自称自営業の男の被告(46)(起訴済み)を電子計算機使用詐欺の疑いで再逮捕した。
発表では、被告は昨年10月27日と11月1日、DeNAが運営するライブ配信サービス「Pococha(ポコチャ)」で、他人のカード情報4件を使って41回にわたって不正決済し、「投げ銭」用コイン計約132万円分を購入した疑い。「弁護士に相談する。今は話せない」と供述している。
被告は、カード情報の不正利用について情報交換するSNSのグループに加入していたという。京都府警は被告のスマートフォンなどを押収。「投げ銭」目的での不正決済は、昨年5~11月で計約4600万円分に上るとみている。
【速報】超党派の国会議員70人超が靖国神社参拝
けさ、東京・九段北の靖国神社の春の例大祭に合わせて、超党派の国会議員およそ70人が一斉に参拝しました。
きょう午前8時ごろ、靖国神社の春の例大祭に合わせて超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバー72人が一斉に参拝しました。
超党派議連 逢沢一郎副会長 「今年はご承知のようにあの先の大戦が終わりまして、ちょうど80年という大きな節目の年でございます。時と共に、戦争の歴史その記憶や記録がややもすれば風化をしているのではないか、そのような指摘もございます。しかし決してそのようなことがあってはならない」
また、石破総理はきのう「真榊」と呼ばれる供え物を奉納していますが、靖国神社への参拝は見送る方針です。
「社会が動く高揚感を」「短期間ならではの挑戦も」大阪・関西万博は、未来の社会に何をもたらすのか 建築家、経済効果、警備、輸送、数学研究者…5人に聞いた
大阪・関西万博が4月13日に幕を開けた。10月13日までの184日間にどんな出会いが生まれ、未来に何をもたらすのか。専門家や関係者に聞いた。(共同通信=大阪・関西万博取材班)
▽「そこにある強さ感じて」―建築家の永山祐子さん
インタビューに答える建築家の永山祐子さん=2025年2月26日
万博は、技術革新を見せる場から「出会いによって未来を創る場」へと意味合いが変化している。国を挙げて盛り上げる機会は、万博とオリンピックくらいしかない。政府も民間も、国際イベントの開催地として与えられたチャンスを生かしてほしい。
万博は理想と現実のはざまだ。既存の法規制では難しいようなことも、半年の短期間イベントだからこそ挑戦できる。新しかったり、浸透していなかったりする考え方や技術を面白がって実験し、社会へのメッセージとなれば、将来的に実装されるかもしれない。 前回のドバイ万博で使用した建材を大阪・関西万博でリユースできたのも、仮設だったからだ。建築が時と場所を超えて動き、建つ場所に合わせて変化する。次はどこで、どこまでつなげられるか。「限られた資源の中で、どう循環を考えるか」が当たり前になる未来へと向かえたらいい。
永山祐子さん
建築家がベテランから若手まで集まり、他国の建築家や建造物に触れる。日本の建築業界にも、これまでになかった気づきが生まれるだろう。実際に開幕前の会場を歩いて回るだけで「こういう物を造るんだ」「これは面白いな」と楽しい。建築に興味がなかった人にも面白いと思ってもらえる建造物ばかりだ。
現地での体験こそが、何よりも意味を持つ。街と同様、いろいろな人がいろいろな思いやコンセプトを込めて設計した「エキスポシティ」が広がっている。足を運び「そこにあるということの強さ」を感じてほしい。 そして日常生活で建築を見る目が変わったり、「自分にも造れるのではないか」と建築家になるきっかけになったり。特に子どもや次世代が感じて、明るい未来を見据えて前向きに進んでくれたらいい。 × × ながやま・ゆうこ 1975年生まれ。東京都出身。1級建築士。東急歌舞伎町タワー外装などを手がけた。ドバイ万博で日本館、大阪・関西万博ではパナソニック館とウーマンズパビリオンの設計を担当。
▽消費1兆円、ホテルが鍵―りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員
インタビューに答えるりそな総合研究所主席研究員の荒木秀之さん=2025年2月26日
りそな総合研究所は大阪・関西万博の開催効果として消費額が1兆円に達すると試算した。日本国際博覧会協会(万博協会)が見込む来場者数2820万人を基に、チケット代や交通費、会場内外の消費を合計した。訪日客による会場外消費が3割を占めると推計している。ホテル需要への対応が、経済効果の増減に直結する。 万博協会は訪日客の来場者数を350万人と想定する。全体の1割強だが、1人当たりの消費額は日本人より大きい。大阪・ミナミの繁華街や京都、奈良といった人気観光地との相乗効果も期待できる。会場外消費は2930億円に上ると見込んだ。
課題は急増するホテル需要への対応だ。大阪では新型コロナウイルス禍後に観光業が回復し、人手不足で満室稼働が難しい施設も少なくない。万博は来場者だけでなく警備関係者ら運営側も多数宿泊する。供給不足に陥った場合、訪日客を中心に観光が難しくなる。 対策として稼働率が比較的低い近隣県のホテルを活用するほか、民泊にも期待がかかる。民泊の供給状況をコロナ前と比べると、南関東は1・5倍に増えたが、関西は今も下回っている。訪日客の利用も比較的少なく、大阪の民泊を活用できれば半年間で36万人程度の受け皿になり得る。
大阪・関西万博会場。大屋根リングや周囲に立ち並ぶパビリオンに明かりがともり、きらびやかな景色が広がっていた=2025年4月11日午後
万博は後半になるほど混雑するのが通例だ。せっかく盛り上がってきてもホテルが取れなかったり高騰したりすると来場意欲が失われ、経済効果も低減してしまう。 宿泊の問題を前もって話し合っていれば「法人関係はこの県に」などと調整できたかもしれない。コロナ禍で前回ドバイ万博が延期し準備期間が短くなる誤算もあったが、パビリオン建設や入場券販売に関心が集中してしまい、開幕後に起こり得る課題の議論まで十分に行き届かなかった印象だ。 × × あらき・ひでゆき 1974年生まれ、兵庫県出身。2002年大和銀総合研究所(現りそな総合研究所)。関西のマクロ経済分析や経済効果の推計を担当。
▽「空白」生まない警備を―大阪府警本部長の岩下剛さん
インタビューに答える大阪府警本部長の岩下剛さん=2025年3月13日、大阪府警本部
関西・大阪万博の警備面の大きな特徴は、その実施期間の長さにある。4月13日の開幕日から184日間に、約2800万人の来場者に加えて、国内外から多くの要人が大阪に集まることが予想されている。これほど長く、大規模な警備は他になく、安全確保の難易度はかなり高い。 この長期間を、少数の指揮官で乗り切ることは不可能。万が一、テロなどが発生した場合、誰が指揮官になっても適切に初動対応できるようにしなければならない。そのためには想定できる脅威を事前に抽出し、具体的な対処方法をあらかじめ考え、警備訓練などを通して警察組織や関係機関と共有していく必要がある。
また警備に充てられる人員、いわゆる「リソース」を根拠として態勢を組んでしまうと、警備の隙間が生じる可能性がある。他にどのような任務があったとしても、リスクを個別に丁寧に検討し、それを防ぐための警備計画を、その都度、考えていくことが重要だ。
岩下剛さん
2005年の愛知万博とは情勢が大きく異なっており、今回はさらにドローンを使った攻撃やサイバー攻撃にも備えなければならない。単独でテロなどを計画し実行する「ローンオフェンダー」への対応も求められる。 警備対象は会場やその周辺だけではなく、大阪全体に及ぶ。多くの来場者が訪れるため、府内各地の繁華街対策もある。66の警察署と府警本部が一丸となって取り組み、総合力を発揮する必要がある。
私自身、2002年のサッカーワールドカップ(W杯)日韓共催や2008年の北海道洞爺湖サミット、2021年の東京五輪・パラリンピックなどの警備を経験したが、万博対応は初めて。夏には参院選も控えている。これまで培ってきた経験を生かして、「警戒の空白」を生まぬよう、万全を期したい。 × × いわした・つよし 1968年大分市生まれ。1992年警察庁。警備局警備課警護室長、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会警備局長、警視庁警備部長などを歴任。
▽将来の課題、前倒しで挑む―淡中泰雄万博協会交通部長
インタビューに答える万博協会交通部長の淡中泰雄さん=2025年2月26日、大阪市
鉄道から自転車まであらゆる手段を使い、1日22万人超の来場者を安全に会場へ運ぶ計画を担う。万博のコンセプト「未来社会の実験場」からは自動運転のような明るい未来を連想するかもしれない。だが、輸送力に負荷がかかる万博の機会を活用して、私たちが近い将来直面する課題に前倒しで挑む側面もある。
輸送計画は昨年末に完成した。駐車場などのインフラも整い、人手不足の中でシャトルバスの運転手も確保した。ただ、基盤が整ったに過ぎない。会期前半の来場者の動向を観察し、計画通りに進まないならすぐに手を打つ必要がある。 主要ルートは①大阪メトロ中央線②主要駅からのシャトルバス③会場周辺3カ所の駐車場に自家用車を止め、シャトルバスに乗る「パーク・アンド・ライド(P&R)」の三つ。ライドシェア、船舶なども加わる。一元的に束ねる仕事は類がなく、壮大な実証実験だ。
淡中泰雄さん
費用を積算し、多くの関係者の意見を聞いて調整し、皆で同じベクトルを向いて仕事を進める。1997年の建設省(現・国土交通省)入省以来、四半世紀に及ぶ公務員人生の卒業試験を受けている気分だ。将来の社会に残るダイナミックな仕事はしんどいけれど、人生としては楽しい。
円滑な移動の妨げとなる大型スーツケースなどの対策として、預かり・配送サービスを導入する。鉄道や道路の混雑回避には、時差出勤や配送ルートの変更などを呼びかける「交通需要マネジメント(TDM)」を取り入れる。 走行経路や利用時間帯によって価格が異なるP&R駐車場は、電子入場券と連動した事前予約制だ。過渡期の今は「手続きが複雑」との批判もあるが「タイパ(タイムパフォーマンス)」重視の社会の潮流に合わせたつもりだ。大型荷物は既に日常の社会課題として顕在化しており、万博でのこうした取り組みがレガシーとなればうれしい。 × × たんなか・やすお 1971年名古屋市生まれ。国交省道路局室長などを経て、2022年から現職。
▽「ゆらぎ」ある遊び場に―数学研究者中島さち子さん
クラゲポーズで写真に納まる、パビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」を手がけた中島さち子さん=2025年2月20日、大阪市
万博には莫大(ばくだい)な可能性がある。約160の国と地域が集まり、多様な人々が出会って「いのち」について考える。好奇心や試行錯誤に年齢は関係ない。0~120歳の「子どもたち」がアイデアを出し合い、未来を思い描く共創の場をつくる。レガシー(遺産)として残したいのは、社会を変えるために動き出したくなるような思想だ。 科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)の頭文字から取ったSTEAM教育を推奨している。異なる分野を統合的に学び、新たな解決策を導くことが求められている。
正しいことを学ぶのが勉強だと思われがちだが、学問とは答えがあるようでないもの。マニュアル通りではなく、模索する中で自分なりの答えを創造していくのがSTEAMの考え方だ。 私が手がけたパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」は、答えのない状況で生まれてくる何かを尊重するような「ゆらぎ」のある遊びを提供する場にしたい。クラゲはゆらぎの象徴だ。創造の多様性を引き出し、STEAM教育を実践する機会になるだろう。
中島さち子さん
ジェンダーや人種差別、戦争といった社会課題も学問と同様、終わりが見えない。万博は、学校や企業、家庭といった狭いコミュニティーから出て多様な人々と出会える場だ。他人とかき混ぜられた結果、複雑な問題へのヒントが生まれるかもしれない。
参加して「世の中が変わったな」「何かやってみようかな」と感じた人が増えれば、それはきっと万博の効果だ。業績評価だけを求めるのであれば万博なんてやる意味がない。時代が動く、社会が動くという高揚感が会場内にあふれれば、それがレガシーになるはず。日本の鬱屈(うっくつ)している部分が変わるきっかけになってほしい。 × × なかじま・さちこ 1979年大阪府生まれ。数学研究者でジャズアーティスト。 (聞き手は広根結樹、松田大樹、石田桃子、丸田晋司、仲野智揮)
愛媛山林火災1カ月 専門家が指摘する“新たなリスク”土砂崩れ
23日で発生から1カ月となる愛媛県今治市と西条市で起きた山林火災。14日に鎮火が発表されたが、4月初めに現場を訪れた土砂災害研究が専門の木村誇(たかし)・愛媛大大学院農学研究科准教授(砂防学)は、山林が焼失したことで土砂崩れ発生のリスクが高まっていると指摘する。木村氏は「樹木や落ち葉が燃え尽きた灰が一面にあり、地中に雨水が染み込まず、土石流になる可能性がある」と警鐘を鳴らす。
木村氏は今回の火災による土砂災害への影響を調査するため、さまざまな衛星データを活用し、延焼範囲内の燃焼度をレベル別に色分けして解析。そのデータに基づき、燃焼が強かったエリアを確認するため鎮圧後の4月1、3両日に2回にわたって現場を歩いた。
木村氏によると、既に熱さはなかったが、焦げた臭いは充満していた。広葉樹などの林だったと推測されるエリアでは、大きい木は焼け焦げながらも形は残っていたが、枝や葉は完全に焼け落ちていた。落ち葉や背丈の低い木などは燃え尽き、地表には木々の燃えかすや灰が3~5センチほど積もった状態だった。
焼けた斜面で土砂災害が発生する恐れがあるのはなぜなのか。木村氏は「雨水の地表への到達や地中への浸透が変化してしまうことが予想される」と説明。通常の斜面では、樹木の枝葉が傘の役割を果たし、雨水の一部が蒸発する「樹冠(じゅかん)遮断」という現象で地表に到達する水量が調節される。地表に降り注いだ雨水も落ち葉や土にゆっくり浸透し、あふれることはない。だが、焼失によって樹木がなくなった状態では、全ての雨水が地表に降り注ぐ。積もった灰は粒子が細かいため、雨水が浸透しにくい。雨水は斜面に沿ってそのまま流れ、地表が削られ、さらに灰や倒流木などを取り込んだ流水が沢を下り、土石流が発生する場合もあるという。
木村氏によると、山火事が多発する国では土石流の発生が多く報告されているが、国内ではこれまで山火事やそれに伴う土砂災害の発生が少なかったため、山火事後の土砂災害の危険性については不明な点が多いという。米国では山火事の被災地は雨による警戒避難基準を引き下げるなどしており、木村氏は「火災が雨による土砂災害に強い影響を与えると認識されている」と指摘する。
特に危険なのは水が集まる谷で、「森林の燃焼面積の割合が高い谷ほど火災後の変化が大きいのでは」(木村氏)。今回の山火事の延焼範囲には小さな谷がいくつも含まれ、衛星画像の解析で森林の燃焼面積の割合が高かったのは、今治市長沢地区や亘地区などの上流域だったという。
どうすれば災害被害を防げるのか。木村氏は「1、2カ月後には降雨量が多くなるので、土のうなどの応急処置を取るべきだ」としたうえで、「元の状態に戻るのには時間がかかる。今後は土砂流出などの危険性が高いエリアを調査し、砂防ダムの整備など恒久的対策を検討していく必要がある」と述べている。【広瀬晃子】
“かぜ”症状の患者の定点観測 結果を初公表 1医療機関あたり「49.38人」新たな感染症を早期把握へ
新たな感染症の流行を早期に把握するため、せきやのどの痛みなどの、いわゆる“かぜ”の症状がある患者数の観測が今月から始まり、きょう、初めて公表されました。
国立健康危機管理研究機構によりますと、今月13日までの1週間に全国3000の医療機関から報告された「急性呼吸器感染症」、いわゆる“かぜ”の1医療機関あたりの患者数は「49.38人」でした。
この調査は今月から始まったもので、あらかじめ指定された医療機関から報告された、せきやのどの痛みなど“かぜ”の症状がある患者の数を取りまとめるほか、一部の医療機関からは検体の提出を受けて分析を行います。
これまでは新型コロナやインフルエンザなど病原体ごとの報告でしたが、「急性呼吸器感染症」の全体を把握することで新たな感染症の発生を早期に把握し、迅速な対応につなげる狙いがあるということです。
福岡厚生労働大臣は「国民や医療関係者への感染症への注意喚起を早期に行いたい」と話しました。
さいたま市で死亡ひき逃げ、全裸の男関与か…学習塾侵入容疑で現行犯逮捕・同時間帯にタクシー強盗
21日午後8時50分頃、さいたま市緑区大間木で、「バイクの運転手が倒れている」と110番があった。警察官が駆けつけると、車にはねられたとみられる男性が倒れており、埼玉県川口市戸塚、会社員吉田光暢さん(46)が搬送先の病院で死亡し、別の会社員男性(45)が腹などに大けがを負った。埼玉県警はひき逃げ事件として調べている。
県警によると、同時間帯には川口市内で「全裸の男に車を盗まれた」といった通報があったほか、乗客が乗ったタクシーが奪われる事件が起きており、関連を調べている。
同日午後9時40分頃には、ひき逃げ現場から約6キロ離れた同県草加市原町の学習塾敷地内に侵入したとして、県警は住居、職業不詳西村大輔容疑者(48)を建造物侵入の疑いで現行犯逮捕した。西村容疑者は当時、全裸だった。
県警は現場の状況などから、西村容疑者が死亡ひき逃げ事件などにも関与した可能性もあるとみて慎重に調べている。
万博会場で警備員が来場者に土下座か、SNSで映像広がる 協会「詳細は事実確認中」
大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催中の2025年大阪・関西万博の会場入り口付近で、来場者とみられる人物の前に警備員がひざまずいて土下座をしている映像が民放テレビ局に報じられ、交流サイト(SNS)上で広がっていることを受け、万博を運営する日本国際博覧会協会は22日、事実関係の確認を進めていることを明らかにした。
この日午前の報道陣の取材に対し、協会側の担当者は「SNSについては確認をしているが、詳細については事実確認中」とした。
映像によると、現場は万博会場の西ゲート付近。ほかの来場者が行き交う中、ピンク色のバッグを抱えながら腕を組んで立つ人物の前で、制服を着用した警備員が土下座する様子が撮影されていた。