兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑を調べた第三者委員会が知事のパワハラを認定し、知事の疑惑を告発した元県幹部を県が特定し処分したことを「違法」と断定した問題。斎藤知事は委員会の調査結果公表から1週間たった3月26日、パワハラの指摘は受け入れると表明した。しかし計11件のパワハラに関する自身へのおとがめはしないとし、告発者つぶしの違法指摘は「さまざまな意見がある」として聞き入れない姿勢を明確にした。
〈画像〉記者会見でパワハラについてお詫びし頭を下げる斎藤元彦知事
「知事がお詫びを口にしたのは初めて」
第三者委は3月19日に、職員を叱りつけたりした10件をパワハラと認めた報告書を公表している。さらにパワハラを含め7項目の知事や側近らの疑惑を昨年3月に外部に文書で告発した後、自死した元西播磨県民局長・Aさん(享年60)を斎藤知事が昨年3月の会見で「公務員失格」「八百」と非難したこともパワハラにあたると指摘。
斎藤知事が側近らに指示して匿名で疑惑を知らせたAさんを、告発者と特定し処分したことは、公益通報者保護法違反だと断定している。
兵庫県議会最終日だった3月26日の正午まえ、浜田知昭議長が閉会のあいさつでこのことに言及し、斎藤知事に対し、同じくパワハラなどを問題視した県議会調査特別委員会(百条委)の調査報告と第三者委の報告について「内容を重く受け止め、それぞれの指摘に対して真摯に向かい合い早急にご自身の言葉で説明責任を果たされることを望みます」と異例の要求をした。
これを受けた斎藤知事は最後のあいさつで、
「政策を前に進めるために一心不乱にこの3年間力を尽くしたとはいえ、その過程において至らない点があったということも事実でございます。とりわけ職員の皆様には不快な思いや負担をかけてしまったことを心からお詫びをします」
と言って頭を下げた。
「斎藤知事が一連の疑惑の一部でも認めてお詫びを口にしたのは初めて」(県職員)。だが、その範囲はパワハラ問題だけに限定されたもので、公益通報者保護法に違反するとの指摘について言及はない。
「斎藤知事は第三者委の報告から1週間、『内容を精査する』と言って、受け止めを公にすることを避け続けてきました。結局議会の終了を待ち、同日午後に会見で考えを述べることになりました」(地元記者)
その会見の冒頭発言で斎藤知事はまず、Aさんが挙げた7項目の疑惑のうち6つについて、第三者委員会が事実とは認められなかったと指摘したことを強調。
その6項目の内容と第三者委の評価を順番に読み上げ、Aさんの告発文書で疑惑の当事者として県幹部や県内企業の実名を書いたことを挙げて「実名を挙げられた職員や企業、団体の名誉が回復され、良かったというふうに受け止めております」と繰り返した。
そして話が7番目のパワハラに差し掛かると、
「知事就任後、県政改革やより良い県政運営を追求していきたいという高い要求水準を有していました。そのため職員に対して厳しい言葉などで必要と考える注意や指導などを行ってきたということです。
しかし今回、第三者委員会としてのパワハラに該当するという指摘については、私自身も真摯に受け止めたいというふうに考えております。不快な思い、そして負担に思われた職員に対しましては、改めてお詫びと謝罪を申し上げたいと思います」
と述べた。
指摘を真摯に受け止めるとは、結局パワハラをしたと認めるのか、と聞かれると、
「その第三者委員会としてのパワハラの、やっぱり認定については認めていきたいという風に思ってます」
と応じ、職員を叱責するなどした10件とAさんを会見で非難したことの計11件について、パワハラを行なったと明確に認めた。これまで「業務上、必要な指導はした」と繰り返してきた主張を撤回した形だ。
通報者つぶしは認めると法的責任が
いっぽう斎藤知事は、Aさんの調査や処分は「問題はなかった」と従来の主張を維持し、告発者つぶしの「違法」だと指弾した第三者委員会の判断を突っぱねる姿勢を明確にした。
斎藤知事は冒頭発言の最後として公益通報者保護法違反問題に差し掛かると、
「(違法かどうかの)主要論点については、第三者委員会の調査や視点からの指摘は尊重させていただきたいという風に思っております」と切り出しながら、「一方で、各論点については、司法専門家などによってもさまざまな考え方や意見があるというものです」と続け、違法だとする委員会の主張をひとつひとつ挙げて反論。
その上で、
「今回の初動の対応は、確かに後から見ればさまざまな課題は指摘されているというふうにしても、当時の判断としてはやむを得ない適切な対応だったという風に考えています。
懲戒処分という人事上最も重い行政行為について、県としては弁護士の助言ももらいながら手続き、内容ともに適切に進めてきたというもので、県としては適切だったというふうに考えております」と断言した。
「第三者委のパワハラ指摘は、違法かどうかまで踏み込んでおらず、『ごめんなさい。今後は気をつけます』と言えばそれ以上は突っ込みにくい。ところが通報者つぶしは“違法”とまで言われているので、認めると法的責任が生じるとみて、徹底的に認めない、という態度をとった形です。斎藤知事が最小限のお詫びをしながらこの危機を切り抜けるにはこの方法しかないだろうと思われていた、その通りの戦術ですね」(県職員)
「ハラスメント研修を定期的に受講する」
斎藤知事は3月4日に公表された百条委の報告書を「一つの見解」と述べて一蹴し、県議会が9か月間かけた調査を軽視しているとの批判を浴びた。「今回は第三者委員会の違法指摘を“さまざまな考え方”の一つだとして自分は採用しないと主張しています。言い方が変わっただけです」(同県職員)
こうしてパワハラだけに絞って問題があったと認めた斎藤知事だが、これに関しても自身への処分はしない姿勢だ。自身の身の処し方について斎藤知事は、
「アンガーマネージメントを含むハラスメント研修を定期的に受講するとともに、ハラスメントのない風通しの良い職場づくり、再発防止に向けまして取り組んでいきたいというふうに考えております」
とだけ表明。これには「公務員が11件のパワハラを認定されたら処分なしではすまない。知事は別というのでしょうか」(県職員)と怒りの声も出ている。
記者会見では「一連の報告書を受け自身への処分は検討しないのか」との質問も飛んだが、これにも斎藤知事は「やっぱり襟を正して仕事をしっかりしていくということが大事だと思います。反省すべきところは反省して、改めるべきところは改めていきながら仕事を前に進めていくという態度を示させていただくことが自分の身の処し方、責任の取り方だという風に思ってます」と応答。
「第三者委員会は裁判官経験者も含めた弁護士らで構成されています。会見の最後には『あなたのやってることは違法行為だ』と裁判官経験者から言われた公職者が、辞職以外の身の処し方があるのか、との質問まで出ましたが、斎藤知事は『まあ、そういったご指摘は真摯に受け止めます』とだけ答えました。自分への処分は一切しないとの宣言ですね、呆れますわ」(別の県職員)
自らが設置した第三者委員会の指摘を斎藤知事が受け入れなかったことで、兵庫県政の混迷はさらに深まっている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
また“不審火” 深夜に集合住宅の駐車場で「バーンという音が…」 今月20日の夜にも同じ場所で…名古屋・東区
26日の夜、名古屋市東区の集合住宅の駐車場で自転車が燃える不審火がありました。数日前にも同じ場所で不審火があり、警察が関連を調べています。
火事があったのは、名古屋市東区出来町2丁目にある集合住宅です。警察によりますと、26日の午後11時半ごろ、通りかかった女性が「バーンという音を聞いて近づいたら燃えていた」と110番通報しました。
火はこの建物の住人らが消火器を使うなどして、すぐに消し止められましたが、この火事で、5階建て集合住宅の1階部分の駐車場にとめてあった自転車1台の一部が焼けました。けが人はいませんでした。警察によりますと今月20日の夜にも、同じ場所で車椅子1台が燃える不審火があり、警察が関連を調べています。
悠仁さま、卒業式後はクラスメートと2時間以上の名残惜しい“お別れタイム” 宮内庁発表の「卒業文書」に詰め込まれた“こだわり”
「先生や友人たちをはじめとするお世話になった方々に、深く感謝申し上げます。忘れられない友達を作ることができたと思います」
3月18日に筑波大学附属高校を卒業された悠仁さまは、記者からの問いかけに、充実した3年間をそう振り返られた。卒業式には秋篠宮ご夫妻がご出席。式は正午までに終わったが、悠仁さまが学校を出られたのは午後2時頃だった。
「教室や中庭などで、クラスメートや先生、後輩たちと談笑したり、写真撮影をされていたそうです。2時間以上、名残惜しい『お別れタイム』を過ごされたのでしょう」(皇室記者)
卒業に際し、宮内庁は悠仁さまのバドミントン部での練習風景の写真を公開した。左手にラケットを持ち、スマッシュを打とうとされる躍動感あるショットだ。
「筑附高の先生が撮影したものの中から、悠仁さまご自身で公開する写真を選ばれたそうです。そこは年頃の男子ですから、きっとご自身がいちばん“カッコよく”写っているものを選択されたのでしょう。
ただ、悠仁さまの学校生活の一端が見られる写真だけに、“なぜこのタイミングだったのか”という点には疑問も浮かびます。悠仁さまがバドミントン部を引退されたのはもう10か月ほど前。リアルタイムで悠仁さまのご様子を国民に伝えた方がご成長を見守る形になり、親近感が湧いたでしょう」(前出・皇室記者)
同時に、宮内庁は卒業に合わせた文書を発表した。文化祭やスポーツ大会の思い出、大学受験に臨まれた際の心境や合格時の喜びについて綴られたその文書の主体は、「宮内庁皇嗣職」となっている。
「慣例的に皇嗣職の文書として出されますが、もちろん作成には悠仁さまが大きくかかわられ、こだわりが詰め込まれています。発表前には、秋篠宮ご夫妻にも確認をいただいているでしょう。ただ、これまで悠仁さまの教育に心を砕かれてきた紀子さまの“ご意見”は、そこまで反映されていないと聞いています。母親の助けを借りなくてもいい年齢に、悠仁さまも達せられたということなのでしょう」(別の皇室記者)
4月になれば、悠仁さまのキャンパスライフが始まる。茨城県つくば市にある筑波大学までは、秋篠宮邸からは車で片道約2時間。時間を浪費してしまうのはもちろん、警備や交通の安全面からも「毎日通学」は現実的ではない。
「そこで、宮内庁は水面下で、つくば市内に新たに住居を設けようとしています。市内にいい物件はないか、調査しているそうです。授業やサークル活動で早朝に大学に行ったり、逆に帰宅が深夜になったりすることが予想されるからです。ただゆくゆくは、スケジュールとは無関係に、月曜から金曜までそこで暮らし、週末だけ赤坂御用地の秋篠宮邸に“帰邸”される生活になると目されています」(前出・別の皇室記者)
悠仁さまの姉である佳子さまは、秋篠宮邸分室で生活されている。秋篠宮邸と隣接しているとはいえ、“ひとり暮らし”をされる佳子さまから、悠仁さまはいい点も悪い点もお聞きになっていることだろう。
「いずれ悠仁さまは結婚され、新たな宮家の当主になられます。早い段階で母離れを加速されることは、悠仁さまの将来を見据える上でも重要です」(前出・別の皇室記者)
春は門出の季節なのだ。
※女性セブン2025年4月10日号
定員割れ加速の私立大、「淘汰政策」に悲痛 「事実上の倒産必至」
大学など高等教育機関の修学支援制度や私学助成金の交付などに定員充足率の要件があることについて、私立大から不満の声が上がっている。私立大の定員割れは地方を中心に6割近くに上っており、日本私立大学教職員組合連合(私大教連)は私立大に定員減と撤退を迫る「淘汰(とうた)政策」をしているとして、文部科学省に要件の撤廃を求めている。
私大教連は1月、全国で私大などを設置する学校法人の理事長・学長に対し、修学支援制度のほか、私学助成金の交付、新学部設置・改編の際、定員充足率が一定の基準を下回ると対象外や不交付となることについて尋ねた。理事長・学長から計197件の回答が寄せられた。
授業料・入学金の減免や給付型奨学金の支給といった修学支援制度についての近い考え方は「学生に対する支援であるから、機関要件は廃止すべきだ」が59・9%で最も多かった。2020年度に始まった修学支援制度は24年度に定員充足率が厳格化され、3年度連続で8割未満の場合は対象から原則外されることになった。ただ、これにより対象機関の取り消しが急増したため、25年度は緩和することにしている。
定員充足率が9割を切ると減額が始まり、5割以下になると不交付となる私学助成金については「定員よりも減少している学生数と在籍する教職員数に基づいた減額にとどめるべきだ」との回答が83・8%に上った。
定員充足率が5割以下の学部が一つでもあれば学部の設置認可申請ができない制度についても「定員割れ解消のための自主的な改善努力を妨げる措置であり、廃止すべきだ」が86・7%に達した。
自由記述欄には「急激な少子化により八方ふさがり」「事実上の大学廃止(倒産)が必至」など悲痛な声が寄せられた。千葉県内の看護大の理事長は、国公立の看護学部が周辺になく、卒業生の多くが地域医療に従事しているとし「都市部でいくら看護師を養成しても地方、過疎地域の病院には就職しない。ただ定員充足率のみで地方の私大助成をうんぬんすることは全く理解できないし、医療崩壊に直結する」と記した。
中国・四国地域の学長は「修学支援制度が利用できない場合、大学の存続は望めない。募集停止する大学が増えれば、地方で進学できる大学(分野)の選択肢が減少し、若者の県外進学(就職)が加速され、地方の人口減少が一層進む」と指摘した。
日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)によると、24年度に定員充足率が100%未満の定員割れとなったのは私立大で59・2%、短期大では91・5%に上る。私大教連は文科省に私大振興を進めることを求めており、角岡賢一・中央執行委員長は記者会見で「私立学校法人を国として支える姿勢を示してほしい」と述べた。【井川加菜美】
日ブラジル会談、中国依存への歯止め狙う…発言力増す新興国の雄に関係強化呼びかけ
石破首相が26日の首脳会談でブラジルとの関係強化を呼びかけたのは、新興・途上国「グローバル・サウス」のリーダー格として同国の発言力が増していることが背景にある。同国が重視する気候変動などでの支援を通じて、中国への傾斜に歯止めをかけたい考えだ。
ブラジルのルラ・ダシルバ大統領は今回、日本として最も手厚い接遇を行う国賓として来日した。首相は26日の会談冒頭、「戦略的なグローバルパートナーとして、関係を一層強化したい」と力を込めた。
両首脳が採択したアクションプラン(行動計画)には、首脳往来の定例化が盛り込まれた。ルラ氏は会談で、「非常に重要なことだ。個人的な関係性が築かれていないと国家間の関係が難しくなる」と意義を強調した。
ブラジルは、中南米最大の人口と経済力を持つ「世界の大国」(首相)として存在感を増している。家畜の飼料であるトウモロコシや大豆を多く生産し、工業に必要な鉄鉱石の供給国でもあり、外務省幹部は「日本にとって経済安全保障の要」と位置づける。
ブラジルは中国やロシアなどと構成するBRICSのメンバーでもある。中国と貿易面で結びつきが強い一方、途上国支援に否定的なトランプ米政権はグローバル・サウスとの距離を広げつつある。
トランプ米大統領による関税措置も対立の火種となっている。ルラ氏は会談で、米国を念頭に「保護主義がいくつかの重要な国で議論されている」と不快感を隠さなかった。日本としては米国の穴を埋めて、ブラジルを引きつけたい意向だ。
ブラジルではアマゾン地域が干ばつに見舞われるなど気候変動の影響が顕著で、行動計画には自然災害対策などでの協力も明記した。日本政府関係者からは「ブラジルが議長国を務める今年の国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に首相が出席し、関係をさらに深めるべきだ」との意見も出ている。
兵庫県議会各会派から知事に注文「何らかの処分科すべき」 再度の不信任決議には慎重姿勢
自身の疑惑告発文書問題を巡り、兵庫県の斎藤元彦知事が会見で初めてパワハラ行為を認め謝罪したことについて、知事の責任を追及してきた議会側からは一定評価する声が上がった。告発者対応についてはこれまで通り非を認めず、疑問視する県議もいたが、再度の不信任決議など進退に関わる動きには慎重姿勢が目立った。
斎藤氏は、第三者委員会に先立ち、今月4日に公表された県議会調査特別委員会(百条委員会)の報告書について「一つの見解」と表現、一部議員から「議会軽視」との批判も出ていた。
百条委の委員長を務めた奥谷謙一県議は、この日の斎藤氏の会見について「評価したい」とコメント。一方で公益通報者保護法違反の指摘を認めなかったことは「残念で、議会として対応を検討していく必要がある」とした。
県議会最大会派である自由民主党の北野実幹事長は斎藤氏が告発文書について「誹謗中傷性が高い」とする認識を変えなかったことに「改めてほしい」と要請。「議会に対する説明責任をしっかり果たしてほしい」と語った。
第2会派の日本維新の会の門隆志幹事長は昨年9月に続く再度の不信任決議の提出は「全く考えていない」とする一方、「(パワハラ行為をした場合)職員なら懲戒処分の対象となる。何らかの形で自分への処分を科すべきだ」と求めた。
公明党の越田浩矢幹事長は「第三者委が指摘した違法性を認めなかった部分は、恣意(しい)的な結論の取捨選択ではないか」と疑問視。「知事と対話しながら、混乱をどう収束させるかの議論が必要だ」とした。
立憲民主党の議員らでつくる「ひょうご県民連合」の迎山志保政調会長は「法の支配を否定しているかのようで為政者としてあるまじき対応」と厳しく非難。ただ現時点での再度の不信任決議案の提出は否定し、「会派を超えて今後の対応を考えていく」と述べるにとどめた。
取材中も80代男性が線路を横切り…人身事故を誘発、JR呉線「勝手踏切」の危険な実態
広島市安芸区のJR呉線で3月10日、小6男児が快速電車にはねられ、死亡する痛ましい事故が起きた。その現場を訪ねると、歩道と線路を隔てる柵などがなく、事故後にもかかわらず、地元住民らが日常的に線路上を行き来する姿が目に飛び込んできた。記者が後を追って声を掛けると…。
誰でも入れてしまう
事故があった呉線海田市-矢野間の踏切付近。記者が足を運んだ同月17日、こんな看板が立てかけられていた。
《大変危険です。立ち入らないでください》
JR矢野駅から海田市駅へと国道31号沿いの歩道を徒歩で5分程度。約100メートルにわたって枯れ草に覆われたり、家庭菜園のような小さな畑が広がったりしている。ここには、歩道と線路を隔てる障害物がない。つまり、入ろうと思えば、誰でも入れてしまうのだ。
ちなみに、畑はJR用地を住民らが有償で借り受けたものらしく、作物が育てられている。この日も近くに住む80代男性が土をいじっていた。
線路の両脇には、バラストと呼ばれる石が一定の高さで敷かれているが、人がよく線路を横断するとみられる箇所だけはその高さがない。線路に立ち入るまでの〝道〟もできてしまっている。
住民らが日々の暮らしの中で慣例的に使う「勝手踏切」にほかならない。
数百メートルの距離を迂回(うかい)して国道とは反対側の住宅街へ回った。ある民家の敷地奥には、《キケン!!ですから注意してください》と表示した看板があった。
民家の男性(77)は「『渡るなら気を付けて渡れ』ぐらいの意味ではないか」。男性によると、看板の設置場所自体はJR用地だが、男性方の敷地と接しており、線路を渡るとなれば、一時的とはいえ、この敷地に足を踏み入れることになる。
そんな人はほぼいないが、「ゼロでもない」(男性)。会話を続けていると、広島方面に向かう電車が目の前を通過した。警報機の音は聞こえず、近くに電車が来ているのも分からなかった。
こうした上り電車の場合、矢野駅を出発してしばらくして、左にそれるカーブに差し掛かる。線路を渡る人にしてみれば、突然、電車が視界に現れる形だろうか。男性いわく「気付いたときにはもう遅いわけだ」。
男性方と至近の民間作業場の敷地奥にも線路につながる木製の板がかかっており、日頃から線路を横断している様子がうかがえる。
2時間で2人立ち入り
現場で取材を続けていると、強い雨が降ってきた。間もなく畑で作業していた80代男性がバケツを両手に、線路内に立ち入ろうとしているのが見えた。左右を確認し、実際に立ち入った。
事なきを得たが、つまずくなどする間に電車が接近すれば、最悪の事態を招きかねない。80代男性に立ち入った理由を確かめようと記者の身分を明かした上で声を掛けたが、「もうええ!」と語気強く返され、引き下がることにした。
この80代男性の後にも、記者は別の男性が線路を横切るのを目撃した。取材を始めた約2時間で少なくとも計2人が立ち入ったことになる。
近隣住民によると、80代男性が線路を横切る姿はよく見かけるという。民家の敷地を素通りし、自宅と畑を行き来するらしい。そうすれば、遠回りしなくて済む。とはいえ、やはり危険がつきまとう。立ち入りは禁止されていないのか。
封鎖に向けた動きなく
JR西日本中国統括本部に聞いた。《(略)注意してください》の看板は「注意して渡って構わないという意味では決してない」(担当者)。電車が目の前を通るため、接触事故などの注意をうながす意味合いのものだという。
当然正式な踏切ではないため、渡れば鉄道営業法違反に問われる可能性がある。車両の改良や木製と比べて耐久性が高いコンクリート製の枕木を使うことに伴い、線路内でも電車が接近する音に気付きづらいとされる。
ダイヤの乱れで思わぬタイミングで電車が通過するケースもあり、担当者は「正式な踏切以外から線路内に立ち入るのは絶対に止めてほしい」と語気を強めた。
では、なぜ柵などがないのか。担当者は「呉線の当該現場がそうかどうかは分からない」としつつ、明治期以前から住民らの生活道路として利用されていた「里道」に、レールが敷かれた可能性に言及する。
里道は道路法が適用されない法定外公共物。JR用地であっても、勝手に封鎖はできない。自治体との協議が求められ、住民の同意も不可欠だ。
現在、この現場で封鎖に向けた動きはない。もっとも、看板の表記から、住民らが意味を取り違える可能性も捨てきれず、対応を検討するという。(矢田幸己)
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勝手踏切 踏切が設置されていない線路を住民らが日常的に通り道のように使っている場所。鉄道事業者は踏切として認めていない。広島市のJR可部線で昨年、勝手踏切での事故が相次ぎ、関係者間で再発防止に向けた協議が進む。
今治の山火事5日目鎮圧のめど立たず 住宅など11棟全焼 市内全域で停電する可能性も
愛媛県今治市での山火事は発生から5日目を迎えました。きょうも消火作業が続けられていますが、鎮圧のめどは立っていません。
23日夕方に発生した山火事ですが、きのう午後2時の時点でおよそ417ヘクタールの山林が焼失し更に延焼中です。
山火事からの飛び火で建物にも被害が拡大し、これまでに住宅9棟、倉庫2棟のあわせて11棟が全焼しています。
けさも県や自衛隊のヘリによる空からの消火作業が始まっています。陸上からも地元の消防団や広島や香川などの緊急消防援助隊も加わって、消火活動にあたることになっています。
今治市ではきょう雨が降る見込みですが、火災現場では依然、煙がたちのぼっているのが確認され、いまのところ鎮圧のめどは立っていません。
今治市と西条市であわせて3848世帯7494人に避難指示が発令されています。
また四国電力送配電は延焼が拡大した場合、今治市全域で停電する可能性があるとして、懐中電灯の手配や携帯電話の充電などの備えを呼びかけています。
ベトナム人ら技能実習生逃亡、留学除籍、偽装結婚…令和6年の在留資格取り消し1184件
令和6年に外国人の在留資格が取り消された件数は1184件だったことが、出入国在留管理庁のまとめでわかった。前年に比べ56件(4・5%)減った。国籍・地域別では、ベトナムが784件(66%)で最多。中国、ネパールが続いた。
在留資格別では、「技能実習」が710件(60%)と最も多く、「留学」312件(26%)、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」69件(6%)が続いた。
取り消しの理由で最も多かったのは、技能実習生が実習先から失踪したり、留学生が学校を除籍されたりした後、3カ月以上国内に在留するなどしていたケースで、761件と全体の64%を占めた。
また、留学生が学校を除籍後にアルバイトしたり、技能実習生が失踪後、他の会社で働いたりするなどしていた場合が303件(26%)あったほか、「日本人の配偶者等」の在留資格を得るため日本人と偽装結婚するなどのケースが72件(6%)あった。
【国籍・地域別の在留資格取り消し件数】
(1)ベトナム 784人(技能実習、留学など)
(2)中国 109人(技能実習、技人国、留学など)
(3)ネパール 60人(留学、技人国など)
(4)インドネシア 49人(技能実習、留学など)
(5)カンボジア 33人(すべて技能実習)
(5)スリランカ 33人(技人国、留学など)
(7)ウズベキスタン 32人(留学、技能実習など)
オウムを封じ込めた滋賀県警のお手柄 押収名簿に警視庁巡査長の名も…長官銃撃捜査は迷走
30年前の一連のオウム真理教事件の際、警察庁や警視庁の関係者が口をそろえて「助けられた」と感謝したのが、滋賀県警のお手柄だった。県警はカーチェイスの末に逮捕した信者が所持していた光ディスクなどを懸命に解析し、信者の名簿やサリンプラントの設計図など大量の「宝の山」を警察当局にもたらした。一方、その信者名簿に名前があった警視庁巡査長が国松孝次警察庁長官銃撃事件の犯行を「自供」した後、捜査は迷走し、真相が分からないまま時効となった。
2時間のカーチェイス
当時、オウムの封じ込めを図る警察庁は職務質問の徹底を全国の警察に指示していた。特に教団施設のある「山梨」のナンバーの車は、県外では必ずといっていいほど停止を求められた。
地下鉄サリン事件から3日後の平成7年3月23日早朝。滋賀県安土町(現・近江八幡市)のファミリーレストラン駐車場で、県警機動捜査隊の覆面パトカーが山梨ナンバーの不審な赤い車を発見した。
車内をのぞき込むと、医薬品と書かれた段ボール箱や防毒マスクのようなものがあり、運転席に男が乗っていた。無線で応援を呼んだ後、「すみません」と声を掛けると、男は車を急発進して逃げた。
県警はパトカーを総動員して追ったが、いったん見失った。2時間後、彦根市内で建物にぶつかったところを、信号無視の道路交通法違反容疑で現行犯逮捕。翌日に公務執行妨害容疑で再逮捕した。男は重要資料を隠すよう命じられていたオウム信者だった。
3600人の信者名簿
車の中から光ディスク4枚やフロッピーディスク56枚などが見つかった。パソコンが一般的ではなかった時代。県警職員に加え、近畿管区警察局情報通信部なども加わり、パスワードを見破るなど懸命の解析作業を行った。
どうしても分からない暗号があったが、またも滋賀県警が活躍した。3月30日に大津市内で道路交通法違反容疑で摘発した信者の車から大量のフロッピーディスクを押収。その中に暗号を解く乱数が記録されていたのだ。
解析した情報には3600人以上の信者の名簿や、自動小銃やサリンプラントの設計図のほか、三菱重工業から盗み出したウラン濃縮技術の研究データなどもあり、オウムの捜査が大きく進展した。
大量の情報は解析される度にプリントアウトされ、県警の捜査員が新幹線で東京の警察庁に運んだ。捜査を指揮する警察庁捜査1課長、中島勝利はこの年の1月まで滋賀県警本部長だった。中島はキャリア官僚ではなく、高校卒業後に新潟県警巡査となり、その後警察庁に入った「推薦組」で人情派。「ありがとう。よくやった」と、かつての部下たちの努力をねぎらった。
長官銃撃「自供」を隠す
滋賀県警が解析した信者名簿に10人前後の警察官が含まれていることが早い段階で分かった。驚くべきことに、そのうちの警視庁本富士署巡査長は地下鉄サリン事件を捜査する築地書捜査本部に派遣されていた。
警視庁が巡査長(後に懲戒免職)を事実上の監視下に置き事情を聴いたところ、3月30日の国松孝次警察庁長官銃撃事件について「自分が撃った」と供述。それを警察庁に報告しなかったことが「隠蔽」と批判され、公安部長の桜井勝が更迭され、警視総監の井上幸彦も引責辞任した。
発生から9年たった16年、警視庁は元巡査長や元教団幹部の計4人を殺人未遂容疑などで逮捕したが、容疑を裏付けられず全員が不起訴となった。その後、現金輸送車襲撃事件などで服役していた教団と無関係の男が事件への関与を供述したものの、立件に至らなかった。
22年、事件は時効を迎えた。公安部長の青木五郎は記者会見で「オウム真理教による組織的テロ」とする捜査結果を公表。時効が成立した事件で犯行グループを名指しするのは異例だった。警視庁はオウム後継団体から名誉毀損で提訴され敗訴した。
滋賀県警のお手柄とは裏腹の警視庁の失態だった。
=敬称・呼称略(渡辺浩)