人口減により経営が厳しさを増している市町村の上下水道事業について、国土交通省は複数の自治体による統合・広域化を国主導で進める方針を固めた。来年度、新たな補助制度を創設し、数十万人規模や県単位での統合・広域化を促す。施設の統廃合や一元管理によりコストを削減し、管路などの老朽化対策を進めるとともに、さらなる人口減を見据え経営基盤の強化を図る。
上下水道は原則、各自治体が整備・経営しており、上水道(簡易水道を含む)の事業者は約3500、下水道は約1500ある。
国交省によると、全国各地で管路の老朽化が進みつつあるが、人口減による利用料収入の減少に、資材費や人件費の高騰が重なり、管路の更新が滞っている自治体も出始めている。更新を計画通り進めるため、利用料を大幅に引き上げる動きも各地で相次いでいる。小規模自治体では専門の技術職員も不足しており、単独での経営がより難しくなっている。
新たな補助制度は、統合・広域化に伴う浄水場や下水処理場などの建て替え・新設や、自治体間の管路の連結などが対象で、支給割合は上水道が3分の1程度、下水道が2分の1程度となる見通し。支給要件は「統合・広域化による域内人口が10万人以上」などとする方向で検討している。
国交省は、統合・広域化により〈1〉施設の統廃合による維持・管理費の削減〈2〉管路の更新・修繕の共同発注による経費削減〈3〉不足する技術職員らの確保〈4〉上下水道料金の抑制――などが期待できるとしている。
同省によると、複数の自治体による統合・広域化は、上水道では財政難を背景に過去10年で群馬県や香川県などで約10件あるが、下水道は例がないという。
同省幹部は「将来的には人口減がさらに進み、更新が必要な管路も増える。複数自治体での統合・広域化に加え、民間業者への業務委託や、過疎地での浄化槽の普及なども進めていく必要がある」としている。
政府は、新設する補助金の関連費用を来年度当初予算案に盛り込む方針。
モバイルオーダーで商品詐取=偽情報送信し不正発注―容疑で無職男再逮捕・警視庁
パソコンやスマートフォンで商品を事前に注文し決済する「モバイルオーダー」を悪用し、弁当をだまし取ったなどとして、警視庁が私電磁的記録不正作出・同供用と詐欺容疑などで、無職加藤嵩大容疑者(23)=東京都国分寺市泉町=を再逮捕したことが13日、捜査関係者への取材で分かった。容疑を認め、「外食したいと思ったがお金がなかった」と話しているという。
捜査関係者によると、同容疑者は決済が正常に行われたとする虚偽情報をサーバーに送信する手口で不正発注を繰り返していたとみられ、同庁サイバー犯罪対策課が詳しく調べている。
再逮捕容疑は6月11~18日、モバイルオーダーのサーバーに虚偽の決済完了情報を送信。5回にわたって国分寺市や立川市にある飲食店の弁当など184点(販売価格計2万8400円)をだまし取ったほか、店舗に商品を受け取りに現れなかったものの、弁当など65点(販売価格計1万260円)を不正に発注した疑い。
同容疑者は、モバイルオーダーで商品の価格を通常より大幅に安く改ざんして購入したなどとして、10月に同容疑などで逮捕された。
モバイルオーダーは店舗の人手不足解消などを目的に5年ほど前から普及し始めたとみられ、若年層を中心に利用されている。 [時事通信社]
メールからみえる山上被告の“恨み” 母親が法廷で初証言「子どもたちの将来より献金」なぜ
安倍元総理を銃撃し殺害した罪などに問われている山上徹也被告の裁判員裁判で、初めて山上被告の母親が証言しました。いわゆる“統一教会”を信仰する母親は、「子どもたちの将来よりも献金が大事だと思った」と語りました。
山上被告の母親
「本来は事件が起きた時にすぐ謝罪すべきだと思っていた。だけど、なかなかできなかった」
山上徹也被告は、3年前に奈良市で選挙の応援演説中だった安倍晋三元総理を銃撃し殺害した罪などに問われています。
13日の裁判では山上被告の母親が証人として出廷。事件後、母親が公の場で発言するのは初めてです。パーティションで仕切られた状況の中で語られたのは、声をつまらせながらの謝罪の言葉でした。
山上被告の母親
「今、安倍元総理がここにいるかもしれませんが、徹也が大変な事件を起こしたことを申し訳なく思います」
弁護側
「今、信仰している宗教は」
山上被告の母親
「世界平和統一家庭連合です」
弁護側
「それは旧統一教会ですか」
山上被告の母親
「はい、そうです」
大きな争点は母親のいわゆる“統一教会”への「多額の献金」が事件にどう影響したかです。
逮捕後の調べに対し、山上被告は「母親が旧統一教会に入信し1億円以上献金をして家庭が崩壊し恨みがあった」「安倍元総理が教会の関係者に寄せたメッセージを見て殺害を決意した」と供述したといいます。
母親は山上被告が小学生のころ、いわゆる“統一教会”に入信。きっかけは夫の死と長男の病気でした。なぜ多額の献金をしたのか、次のように話しました。
山上被告の母親
「自分自身もイライラして子どもにつらくあたっていた。そのころから浄財というのをするようになった」
献金の理由について問われると――
山上被告の母親
「非常に心を痛めていたからです」
献金の元手については――
山上被告の母親
「夫の生命保険金です」
弁護側
「いくらあった」
山上被告の母親
「6000万円だったと思います」
そして、当時、多額の献金をしていた心情については――
山上被告の母親
「自分の子どもたちの将来よりも献金が大事だと思った」
この間、山上被告はうつむき加減で表情を変えずに聞いていました。
山上被告は、母親の献金により生活は困窮し、自殺をはかったこともあったということです。法廷では、弁護人から山上被告と母親とみられる過去のメールのやり取りが読み上げられました。
山上被告→母親とみられるメール
「まともな親の顔をしているのはおかしい」
「なんならあなたを殺して保険金をもらおうか」
「(教会に対して)年金をこれからも使うつもりなのか」
「俺をまきこむつもりか」
「年金なら完全にあなたの自由になるわけではない」
メールのやり取りからうかがえる強い恨み。さらに…
山上被告→母親とみられるメール
「俺をどう扱ったか忘れない」
「俺はお前をおとしめ後悔させてやる」
また、法廷では母親から安倍元総理の妻・昭恵さんに対する言葉も出ました。
山上被告の母親
「安倍昭恵さんにもおわびしたい」
母親の証言の前には、検察官により昭恵さんの上申書が読み上げられました。
安倍昭恵さんの上申書
「いつも通りの朝でした、午前8時に夫が出るのを見送りました。あまりにも衝撃で理解が追いつきませんでした。晋ちゃん、晋ちゃんと名前を呼びました。まだまだ私の中で夫を失った悲しみが昇華することはございません。あれこれ思いを巡らせても、本当は、私は、ただ夫に生きていてほしかった、夫に長生きしてもらいたかったのです」
母親の証人尋問は、18日にも行われる予定です。
(11月13日放送『news zero』より)
自民重鎮「あいつら最初は議員定数削減なんて言ってなかった」…自維連立、もう崩壊危機! 公明幹部「民主主義の破壊だ」壮絶チキンレースの行方
自民党と日本維新の会が連立政権の条件として合意した「議員定数の削減」をめぐって、両党の温度差が目立ちはじめた。公明党との連立解消後、藁を掴むように維新との連立に無理やりこぎつけた高市自民だが、やはり無理やりすぎた。連立崩壊か、やけくそ衆院解散か。12月の会期末に向けて緊張感が高まりそうだ。ジャーナリストの長島重治氏が解説していく。
【画像】進むも地獄、引くも地獄「定数削減政局」の行方
1カ月足らずで早くも両党に温度差
「議員定数の議員立法を争点に解散するということは普通、考えにくい」
10日の衆院予算委員会。野党の質問に高市総理は一瞬、笑顔を見せ、「議員立法」という部分を強調して否定した。
この発言には前段がある。維新の藤田文武・共同代表が8日のテレビ出演で「(定数削減の法案)提出は両党の合意だけでできるので、やらなかったらだめだ。理不尽に潰されるなら衆院を解散したらいい」と言い放っていた。
とはいえ衆院解散は「総理の専権事項」だ。与党入りしたとはいえ、他党の代表が言及するのは異例ともいえる。だがその後、高市総理は国会の場で、維新の共同代表の発言をあっさり打ち消した。
議員定数削減は吉村洋文代表が「改革のセンターピン」と定義づけていて、最終的には連立合意の絶対条件だった。連立合意から1カ月足らずで早くも両党に温度差が出ており、今後の関係に影を落としている。
自民重鎮「あいつら最初は議員定数削減なんて言ってなかった」
そもそも論として、議員定数削減が埋め込まれた経緯には維新側のご都合主義的な事情もあった。
もともと維新が自民に連立政権の条件として突きつけたのは「副首都」と「社会保障改革」の2本柱だった。
両党の連立交渉を裏方として支えた自民の萩生田光一幹事長代行は「だんだん、維新が要求をつり上げた。あいつらは最初は議員定数の削減なんて言っていなかった」と周囲に不満をぶつけているという。
萩生田氏は「議員定数削減は与党だけではなく、野党の幅広い合意が必要だ」というスタンスだ。そして、それは自民党内の世論を代弁している。
そんな維新が頼れるのは高市総理との「約束」しかない。10月10日に公明党が連立離脱を表明すると、高市氏は総理大臣のイスを目の前に衆参両院で圧倒的に少数与党に陥った。
それでも「何が何でも総理になってやる」と数あわせに奔走し、維新を取り込むべくスピード交渉に入り、わずか12日間で連立政権の合意をまとめ上げた。
企業団体献金禁止したら「高市降ろしの暴動が起こる」
その交渉過程で、吉村代表が掲げたのが「議員定数の削減」だった。もともと維新は「身を切る改革」を掲げて、大阪で定数削減や議員の給与カットで支持を得てきた。国政でも企業団体献金の全面禁止を掲げていた。
ただ、企業団体献金の禁止は自民が絶対に呑めない。全国の県議などが党支部を財布にして企業団体献金を受けていて「禁止なんてしたら地方から高市降ろしの暴動が起こる」(自民ベテラン)という。
そのため、「自民が呑めない企業団体献金に代わる改革ネタとして定数削減を掲げることにした」と馬場伸幸前代表がネット番組で説明している。
連立合意の最終過程では、高市氏と藤田氏が毎晩のように夜中まで政策のすりあわせをしていたが、連立政権の政策合意は欧州なら数カ月はかかるとされている。
かつて自民と公明の連立交渉は1年以上続いた。たった12日間程度のスピード決着になった自民と維新の交渉では、赤坂の議員宿舎の一室で吉田松陰を尊敬するという藤田氏が「高市さん、改革のためにどうか狂ってください」と迫り、高市氏が「分かった」と応じたと、後に藤田氏が周囲に語っている。
公明幹部は「民主主義の破壊だ」
維新が掲げる議員定数削減は、衆院の比例区のみだ。現在、衆院の定数は465、小選挙区289、比例区176。現職候補がそれぞれの政党にいる小選挙区を削減するには膨大な政治パワーと調整が必要だ。
比例区だけならば、法案を通しやすいという計算も維新にあるのだろう。ただ、比例だけで50削減は、中小政党に大打撃を与える。とくに公明や共産、れいわなどは当選者が一選挙区で一人になる小選挙区では議席の獲得が難しく、比例区頼みだ。
公明幹部は「比例だけで50削減を押し通すなら、それはもう民主主義の破壊だ。うちは自民と全面戦争に入る」と身構える。
地方では、創価学会の選挙担当が立憲民主党の候補者と接触するなどして、すでに自民側に圧力をかけている。小選挙区単位では一選挙区で創価学会票はそれぞれ1~3万票あるとみられている。
この票数が連立離脱で自民候補から離れるだけではなく、相手候補に流れたら2万~6万票の逆転になり、自民は壊滅的な打撃を受けることになる。
ある九州地方の自民議員は「無理やり自民と維新で議員定数削減を突っ走るなら、学会票は相手陣営に流れていくぞ、という脅しなんだろう」と頭を抱える。
鈴木幹事長「合意はあくまで『今国会の成立を目指す』ですから…」
実際に昨年の衆院選で落選した自民議員が党本部に集まった会合で、鈴木俊一幹事長は「定数削減を目指す維新との合意はあくまで『今国会の成立を目指す』ですから。『目指す』だけなのです」と説明したという。
鈴木幹事長は9日のBSテレ東の番組でも「(12月17日までの今国会中に)各会派の理解を得るための協議を終え、決めきるかというと、そうならないのではないか」と述べている。
自民党の幹事長、幹事長代行という実力者が公然と今国会で結論を出すことに極めて消極的だ。加えて、与野党超党派の議員連盟が6日、「定数削減と選挙制度は切り離せない」という申し入れを額賀福志郎衆院議長に渡した。
自民・古川禎久議連共同代表は「本流はこっち。政権党が決めたことが立法府のルールまで変えられるようにはなっていない。三権分立から違和感を感じる。勢いでルールを変えることがあってはならない」と、今国会での結論を迫る維新を全否定している。
実際に削減の方法や法案成立は来年秋以降に先送りしよう
こうした自民内の反発を感じ取って高市総理も直近の言動は極めて慎重姿勢に転じている。
7日の国会答弁では「連立合意書では秋の臨時国会での成立を目指す」と記したことを認めた上で「国勢調査の正式な数値は来年秋になる。(連立協議の際に)それらも見ながらどう削減するか詰めようという話を(維新とも連立交渉で)たしかにした」と振り返った。
つまり、維新に協力はするが、実際に削減の方法や法案成立は来年秋以降に先送りしようと約束していた、と暴露したといえる。
一方で、維新は吉村代表が10日も「自民と維新で法案をまとめ、この臨時国会で成立させるべきだ。ここでやらないでいつやるのか」と語っている。
連立政権前から維新で唯一、高市氏とつながりがあった連立のキーマンとされる遠藤敬総理補佐官は先月のネット番組で「定数削減法案が否決されたら衆院解散の大義だ」と言い切っている。
実際、維新には実績がある。2011年に大阪府議会では、定数削減を公約に掲げた大阪維新の会が過半数を獲得。当時の松井一郎氏らは、他会派が議場前にバリケードをはるのを突破して強行採決で当時の大阪府議会の定数2割削減を実現させた。
そこから維新は「身を切る改革」を掲げて府民の圧倒的支持をバックに選挙に連戦連勝した。そのときの「成功体験」が維新の原動力だ。
引くも地獄の「定数削減政局」が年末の日本列島を覆う
吉村氏は先月の維新の党員へのオンライン会議で「大阪では死に物狂いになって改革をやってきた。国会議員の定数削減は連立の今後、維新の将来に関わる勝負だ。狂気になってやり遂げたい」と熱く語るなど、一歩も譲る気はないようだ。
自民内の抵抗勢力も譲らないだろう。維新の狂気に高市自民はどう向き合うのか。連立解消か、狂気に付き合って衆院解散に打って出るのか。またはここまで大風呂敷を広げた吉村維新が高市総理の高支持率にひるんで「身を切る改革」の旗を降ろすのか。
高市総理と維新、どちらにとっても進むも地獄、引くも地獄の「定数削減政局」が年末の日本列島を覆うことになるだろう。
文/長島重治
母親が5歳長女を絞殺か、首に痕 自宅冷凍庫に遺体、静岡・掛川
静岡県掛川市の自宅で5歳長女を殺害した疑いで無職川口陽子容疑者(37)が逮捕された事件で、長女の首に絞められたような痕があることが14日、捜査関係者への取材で分かった。遺体は自宅冷凍庫内で見つかった。川口容疑者が長女を絞殺した後、遺棄した疑いがあり、県警は動機を慎重に調べている。
県警は同日、殺人容疑で川口容疑者を送検した。
捜査関係者などによると、長女は園児の晶子ちゃん。司法解剖などの結果、遺体に目立った外傷はなかったが、首に手や腕で絞められたような痕が確認されたという。窒息死だった。
県警は10月22日、死体遺棄容疑で川口容疑者を逮捕し、今月12日に殺人容疑で再逮捕した。
逮捕しても「第二の立花孝志」は必ず現れる…マスコミが目を背ける日本人が「NHKをぶっ壊す」を支持した理由
政治団体「NHKから国民を守る党」(以下、N国党)の立花孝志党首が名誉毀損の疑いで、兵庫県警に逮捕された。兵庫県知事をめぐる内部告発に関して、竹内英明前県議(今年1月に死去)の名誉を傷つけた容疑である。
立花氏の逮捕については、さまざまなメディアで議論が続いている。
11月10日放送のテレビ朝日系列「羽鳥慎一 モーニングショー」では、コメンテーターの玉川徹氏が「政治活動の自由、表現の自由は最大限守られなければならないというのは大前提」とした上で、「その過程で、誰かを傷つけたり、虚偽の犬笛を吹いて多くの人から攻撃をさせることをやった。そういうことがいいはずがない」と批判した。
他方で、身柄を拘束した点について堀江貴文氏が、「典型的な人質司法的な」案件であり、「『逮捕されたら犯罪者である』みたいな言動が行われている」とYouTubeで疑問を呈した。
逮捕が良いのか悪いのか。それだけでも見解は分かれているし、本稿執筆時点(2025年11月12日)では、起訴もされておらず、裁判になるかどうかもわからない。推定無罪の原則にもとづけば、兵庫県の斎藤元彦知事のように、「捜査中であり、コメントは差し控えさせていただく」とするのが妥当なのだろう。
私は、ここで、立花氏やN国党について、批判をしたいのでもなければ、逆に、擁護したいわけでもない。それよりも、あらためて「立花孝志」とは何なのか、を考えてみるきっかけにしたい。なぜ、私たちは、ここまで彼について語るのだろうか。
立花氏は、1967年、大阪府泉大津市に生まれ、府立信太高校を卒業後にNHKに入る。最初に世間に知られたのは、2005年、週刊文春での内部告発だった。「NHK現役経理職員立花孝志氏懺悔実名告白 私が手を染めた裏金作りを全てお話しします」(同誌2005年4月14日号)と題された記事は、いま立花氏のブログに転載されている。
当時、「紅白歌合戦」のプロデューサーだった人物による巨額の横領事件をはじめ、NHKの不祥事が相次いでいた。なかでも立花氏のこの告発は、同局の組織としての不健全さを明らかにし、大きなインパクトを与えた。
彼自身による「立花孝志の軌跡」(『NHKから国民を守る党 立花孝志かく闘えり』大洋図書、2020年)によれば、「スポーツ放映権料の秘密を公開したため懲戒停職1カ月」、そして、「オリンピックで裏金を作ったとして懲戒出勤停止7日間」の処分を受けたのちに、2005年7月末日で退職する。
内部告発に至る動機を、その著書のなかで、次のように述べている。
この「正義感」こそ、「立花孝志」とは何か? を考えるキーワードにほかならない。
NHKを退局してから「2ちゃんねらー」「パチプロ」「ジャーナリスト」「革命家」(自著による)として活動していた彼は、なぜ政治家になったのか。それは、当時の大阪市長・橋下徹氏の「一言」がきっかっけだったという。
「在日特権を許さない市民の会」の初代会長・桜井誠氏との公開対談での、橋下氏による「そんなに言うなら市民活動ではなくて自分で政党立ち上げてやれよ」との発言から、「なるほど」と立花氏は思う。
そして立花氏は、「無名の自称ジャーナリスト」として橋下市長の記者会見で質問したときに、「NHKの受信料問題に大阪市長として取り組むつもりはありません」との返答を受ける。この「一言」で、「政治家を志すことにしました。自分でやろう、と」と彼は自著に記している(前掲書、64ページ)。
橋下氏は、「大阪維新の会」をつくり、その後に国政政党「日本維新の会」につなげた。立花氏は、「NHKをぶっ壊す!」のワンイシューで、政党要件を満たすまでに勢力を広げた。そのあいだには、たしかに似ているところがあるのではないか。
選挙ウォッチャーちだい氏は、『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?[電子版]』(新評論、2023年)のなかで、「維新は『ホワイトカラーに狙いを定めたN国党』であり、N国党は『下層・旧中間層に狙いを定めた維新』であるとも言えそうだ」と指摘している。
同氏によれば、N国党の政治活動の本質は「ハラスメントの連鎖」だという。それは、「精神的暴力」であり、「暴力の連鎖」というのが、同氏の見解である。この点に同意するかどうかはともかくとして、同氏が「毎日のように駅頭に立ち続ける」立花氏の選挙手法を「典型的な『ドブ板選挙』」と見ているところには首肯する。
維新とN国党の類似点は、そのターゲットと、それに伴う選挙のやりかたにあるのではないか。そして、その類似性にこそ、あらためて着目しなければならない。なぜなら、そこには、一連の「立花孝志」をめぐる視点が集約されているからである。
問題は、維新とN国党、もしくは、「橋下徹」と「立花孝志」、それぞれの2つが似ているかどうか、ではない。それよりも、それぞれの方法の相似点=「ドブ板選挙」が、少なくない人の心をつかんできた。
それは、既製政党への忌避感であり、ここ数回の国政選挙での、参政党やれいわ新選組といった、「新しい」政党への支持にもつながる。たしかに、「毎日のように駅頭に立ち続ける」議員や候補者は、自民党や立憲民主党にもたくさんいる。
しかし、そうした大きな政党に所属している人たちは、たとえ実態がどうあれ、あくまでもイメージとして「既得権益」を持っているように見える。立花氏が標的としたNHKが典型であり、また、橋下氏が批判してきた大阪の自民党や民主党(当時)もまた同じである。
いかにも甘い汁を吸っていそうな人たちであり、さらには、情報を隠していそうな人たちである。
実際に、NHKは立花氏の内部告発により不正がただされ、そして、立花氏自身が処分された。大阪府と大阪市の「改革」については、賛否の声があるとはいえ、府立大学と市立大学の統合をはじめとして、「目に見える」かたちでの「成果」が出た。
その結果、2019年の参議院選挙でN国党は議席を獲得したし、2024年の衆議院選挙では、すべての小選挙区で、日本維新の会が議席を得た。もちろん、この2つの政党に投票したのは、大多数ではないし、また、依然として自民党が政権与党にいる。革命が起きたわけでも、政権交代が起きたわけでもない。
けれども、自民党は、発足以来はじめて、衆議院でも参議院でも過半数を割り込むところに追い込まれ、日本維新の会と連立を組まねばならなくなった。与党だった公明党は、比例代表での得票数を大きく減らし続けている。
こうした流れは、既得権益層(だと思われている政党や人たち)への憎しみと言えるほどの感情に基づいているのではないか。
立花氏をはじめとするN国党といえば、選挙ウォッチャーちだい氏の次の指摘が正鵠を得ていよう。
この点は、まさに、参政党にも通じるし、逆に、自民党や公明党、共産党といった古くからある政党が最も弱くなっているところである。そう考えると、仮に、今回、「立花孝志」を糾弾したり、罰したりしたところで、第二、第三の「立花孝志」が出てくるのではないか。いや、参政党の勢力拡大をみれば、すでに登場しているどころか、日本中に広がっているのではないか。
この点、つまり、「立花孝志」をどう見るのかは、私たちにとって「踏み絵」なのである。既得権を持っている層と、持たざる層を分ける「踏み絵」なのである。
言い換えれば、「立花孝志」を批判する人たちには、支持者が逆恨みしているというか狂信者のように見え、「立花孝志」を支持する人たちには、批判者が既得権益をむさぼっているように見える。既得権益を持つ層は情報を隠蔽しており、それに関して真実を教えてくれるのが「立花孝志」である、という構図があるのではないか。
私は、ここで、「踏み絵」だから踏むべきだ、とも、踏まないべきだ、とも、どちらも言いたいわけではない。そうではなく、なぜ、「踏み絵」になっているのか、そのきっかけをわかろうとしなければならない、と主張したいのである。
「ドブ板選挙」を徹底するN国党も、参政党も、どちらも、既得権益を持たない人たちの声を聞いてくれている、そう印象づけている。れいわ新撰組や、国民民主党の街頭演説もまた、聴衆にマイクを渡して、質問を受け付ける時間を多くとっている。
ただ「毎日のように駅頭に立ち続ける」だけではない。これまで聞いてもらえなかった声を、確実に聞いてもらえている、そう実感させるには、ポーズだけでは済まない。ときには罵声を浴びたり、ヤジで演説が掻き消されたりする。そんな場面をくぐり抜けて、「立花孝志」は活動してきた。
「なぜ『立花孝志』が求められたのか」を、NHKをはじめとするマスメディアは理解していないし、理解しようとすらしていないのではないか。だからこそ、今回の逮捕報道にあたっても、「立花孝志」が是なのか非なのか、その功罪というよりも「罪」が確定したかのように報じているのではないか。
だから、「立花孝志」が「踏み絵」である限りにおいて、踏む人たちと踏まない人たちのあいだの溝やズレは埋まらないどころか、広がるばかりなのである。私たちに求められるのは、「踏み絵」を避け、その理由を考えようとする謙虚な姿勢ではないのか。
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(神戸学院大学現代社会学部 准教授 鈴木 洋仁)
高市首相、電気ガス補助を増額=最低賃金目標明言せず―参院予算委
高市早苗首相は14日の参院予算委員会の総括質疑で、今冬の電気・ガス料金の補助について、夏より増額する方針を示した。最低賃金に関しては、石破茂前首相が掲げた「2020年代に全国平均1500円」の目標の堅持を明言しなかった。ともに立憲民主党の古賀之士氏への答弁。
政府は今年7~9月、標準的な家庭の電気・ガス料金の負担を計3000円程度抑制した。首相は「寒さの厳しい冬の間、深掘りした支援を行う。これまでよりちょっと金額を上げる」と語った。
古賀氏は20年代1500円の最低賃金目標を引き継ぐよう要求。首相は「今、必ずいつまでにいくらと申し上げるわけにはいかない。それは無責任だ」と拒否した。「結果的にこれまで示された目標よりも高くなる可能性もあるし、外的な要因で難しい場合もある。賃上げができる環境をつくる」と指摘した。古賀氏は「事実上の撤回だ」と批判した。
首相は企業が過度に現預金をため込むことや株主還元を重視し過ぎることを問題視。「賃上げを含む人への投資に(利益を)効果的に活用してほしい」と述べ、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を改訂し、経営資源の従業員らへの適切な配分を促す方針を示した。また、労働時間規制の緩和について「上限規制の範囲内でもっと働けるようにすべきだ。働き方改革のメッセージが強く効き過ぎ、企業が残業を過度に抑制しているという意見がある」と指摘した。国民民主党の川合孝典氏への答弁。
林芳正総務相は軽油引取税の暫定税率廃止に伴う地方自治体の減収への対応に関し「今後の税制改正などで安定財源の確保をしっかりやっていきたい」と述べた。自民党の小鑓隆史氏への答弁。
れいわ新選組の天畠大輔氏は、ハンセン病患者とされた男性が隔離施設の特別法廷で裁かれ、1962年に死刑を執行された「菊池事件」を取り上げた。首相は「尊厳を傷つけ筆舌に尽くしがたい苦しみを与えてしまった。深くおわびする」と陳謝した。
12日に始まった総括質疑は3日間の日程を終えた。 [時事通信社]
結核の集団感染を確認 20代男性が咳や発熱 名古屋市「早期発見のための胸部X線検査や、乳幼児の重症化予防としてワクチン接種を」
名古屋市は、市内で結核の集団感染が2年ぶりに確認されたと発表しました。 名古屋市によりますと、ことし7月市内に住む20代男性が、咳や発熱などの症状が出て病院を受診したところ、肺結核と診断されました。
市が男性と接触した26人を調べたところ、 同じ寮に住む住人や同僚など20代~50代の男女9人の感染が分かりました。 9人のうち発病したのは3人で、いずれも無症状だということです。 また、市中感染の恐れもないということです。
市は、早期発見のための胸部X線検査や、乳幼児の重症化予防としてワクチン接種を呼びかけています。
女「子育てに関する考えが嫌い」 動機捜査、名古屋主婦殺害
1999年に名古屋市西区のアパートで主婦高羽奈美子さん=当時(32)=を殺害した疑いで逮捕されたアルバイト安福久美子容疑者(69)が、奈美子さんの夫悟さん(69)について「子育てなどに関する考え方が嫌いだった」との趣旨の供述をしていることが14日、捜査関係者への取材で分かった。容疑者は悟さんと高校の同級生で、事件5カ月前に同窓会で再会していた。
奈美子さんを襲った動機としては不明瞭で、愛知県警西署捜査本部は同窓会で交わした会話内容を精査し、事件との関連があるか調べる。
悟さんによると、高校時代、容疑者は同じ部活で好意を告げられたことがあった。
生活保護申請者を市職員が隠し撮り、友人に送信
東京都小平市は13日、業務中に生活保護の申請者の写真を無断で撮影して友人に送信したとして、健康福祉部の20歳代の男性主事を停職2か月の懲戒処分にしたと発表した。
発表によると、主事は8月中旬、申請者の男性の自宅を別の職員とともに訪問。無断で申請者を私物のスマートフォンで隠し撮りし、メッセージアプリで友人に送信した。撮影されたことに気付いた申請者からの指摘を受け、その場で送信を取り消し、画像を削除したという。