クマに顔引き裂かれ、神経・筋肉失い手術5回…後遺症に苦しむ男性「駆除しないと」「かわいそうとは思わないよ」

2年前、クマに顔を切り裂かれて重傷を負った富山市の農業岡上隆さん(74)は、傷の後遺症に今も苦しんでいる。手術を繰り返し、今月上旬にも退院したばかりだ。左目は使えなくなった。「クマの動きは素早く、とても対抗できなかった。人里に出てきたクマは駆除するしかない」と警鐘を鳴らしている。(鶴田晃大)

「大きな口を目の前で見て、ここで死ぬんだと思った」。クマに押し倒された日のことを岡上さんは、そう振り返る。
岡上さんが襲われたのは2023年11月16日午前9時頃のことだった。この日は、岡上さん夫妻と近所の親戚ら5人で、同市上今町の親戚宅の庭の柿を収穫していた。クマを寄せ付けないためだった。
親戚宅は、田んぼに囲まれた見通しのよい場所。明るい時間帯の複数人での作業で、「まさかクマは出ないだろう」と思っていた。
軽トラックの荷台に柿を積み込んでいると、いつの間にか体長1メートルほどのクマが目の前にいた。岡上さんはとっさに「逃げろ」と、妻の美智子さん(71)に声をかけ、高枝切りバサミを手に身構えたが、飛びかかってきたクマの速さに、なすすべがなかった。頭から顔の左側にかけて前脚でひっかかれ、あおむけに倒された。
倒れた岡上さんにクマは馬乗りになり、鋭い牙で顔にかみつこうとした。近くにいた親戚の男性が「コラッ」と大声を出して、注意を引くと、クマはその男性の左足にかみついた後、走って逃げた。
岡上さんは「クマは素早い。気づいたら吹っ飛ばされていた。出会ってしまったら対策をとるのはとても難しい」と振り返る。

眼鏡で眼球は守られたが、顔面を骨折し、額や左まぶたを引き裂かれ、神経や筋肉を失った。当時は全治2か月と発表されたが、手術で20日間入院し、その後も病院通いは2年続いた。顔の機能を取り戻すため計5回の手術を繰り返したが、今も左のまぶたが開かず、右目だけでの生活を強いられている。
先月も、太ももの筋膜を顔に移植する手術をうけ、今月上旬に退院した。医師からはさらなる治療を勧められるが、迷っている。
「ここまでひどくなるとは思わなかった。クマを甘く見てはいけない」と力を込める。

クマを警戒しながらの農作業は難しく、今年の収穫をもって、親から引き継いだ田んぼを手放した。趣味のゴルフは続けるが、人数分のクマ撃退スプレーの携帯など対策は怠らない。岡上さんは「人里に出たクマは駆除しないと。かわいそうとは思わないよ」とかみしめるように話した。
背を向けず後退、刺激避けて

クマの生態に詳しい立山カルデラ砂防博物館(富山県立山町)の白石俊明主任学芸員に、クマに遭遇した際の注意点について聞いた。

誰もがクマ被害に遭う危険性があり、当事者意識をもってほしい。クマが冬眠する12月中旬頃まで警戒が必要だ。
意識してほしいのは〈1〉クマに背を向けて逃げない〈2〉ヘルメット、リュックなどを身につける〈3〉大声や車のクラクションで刺激しない――の3点だ。
〈1〉では、クマは時速40~50キロほどで走れるため、陸上の短距離選手でも逃げ切れない。ただ、クマは目があまり良くない。クマに背を向けずに後退し、電柱や木の陰に隠れ、車や建物に入ることが有効だ。
〈2〉では、身につけたリュックやヘルメットでクマの攻撃から体を守ることが大切だ。また、傘があれば、広げて大きな動物だと思わせ、襲われる危険性を減らすことができる。襲われたら、うつぶせに地面に伏せて両手で首を守ることで、致命傷となる腹部や首のケガを防げる。
〈3〉では、クマを音で脅してはいけない。車に乗っているからといって、クラクションを鳴らしたり、建物の中から大声で追い払おうとしたりすると、クマが興奮し、逃げた先で人を襲う可能性があるからだ。被害を広げないよう、むやみにクマを刺激してはいけない。

高さ14mから車道に転落…高速道路の高架下で足場解体中の作業員が死亡 揺れてバランスを崩したか

14日遅く、愛知県小牧市で、高速道路の高架下の足場を解体していた作業員の男性が足場から転落し、死亡しました。 警察によりますと、14日午後11時半ごろ、小牧市小木東の名古屋高速道路の高架下で、「解体作業中の足場、高さ14メートルから落下した」と119番通報がありました。 転落したのは30代くらいの作業員の男性で、病院に搬送されましたが、およそ2時間後に死亡が確認されました。 警察によりますと、男性は他の作業員と何人かで足場の解体作業をしていたところ、乗っていた足場が揺れてバランスを崩しおよそ14メートル下の車道に落下したとみられています。 警察は男性の身元の確認を急ぐとともに、当時の詳しい状況を調べています。

〈“ボッタクリ葬儀”が多発〉「40万円のはずが170万円に!?」ドライアイスなし、供え物は使い回し、死化粧は手抜き…悪質業者のえげつない手口

「こんな額とは聞いてない!」葬儀費用が広告と違いすぎて最愛の家族を見送った後に困惑し、心をかき乱される人が増えている。コロナ禍を境に家族葬など小さな葬儀を選ぶ人が増え、葬儀単価が下がった業界だが、「料金を吹っ掛けるやり方がよりえげつなくなっている」と専門家は指摘する。嫌な思いをしないためにはどうするべきか。
【画像】えげつなくなっている“ボッタクリ葬儀”の手口
「“市民葬儀”といいながら100万円を請求された」ボッタクリ事例も
家族を亡くしたAさんは最低価格40万円からプランがあるとうたう葬儀業者のホームページを見て、「最低限のものでいい」とその額のプランを選んだ。
ところが、説明を聞くとプランには飾りの花もなく、故人の着物は浴衣みたいな簡素なもの。「これはあまりにも…」とオプションを追加していくと費用は全部で約170万円に跳ね上がり、仕方なく分割で支払った――。
消費生活に関するさまざまな相談を受け付ける「国民生活センター」には、葬儀に絡む苦情や相談が相次いでいる。
同センターの資料には「見積もりも出さない葬儀社でほこりまみれの倉庫のような斎場をあてがわれ、“市民葬儀”といいながら100万円を請求された」とのボッタクリ事例も載っている。
同センターの葬儀分野担当者は「葬儀の準備はどうしても時間に追われてしまうところがあるので、一番大事なことはもしもの時に備え、葬儀の希望やイメージを考え、事前に業者について情報収集しておくことです」と準備の大切さを語る。
葬儀絡みで寄せられた相談は2024年度には978件と統計を取り始めてから最多件数を記録した。コロナ禍が始まった19年度は632件だったのが22年度には951件にまで増え、以降高止まりしている。同センター担当者も「コロナ禍を挟んで相談は増えました」と話す。
なぜトラブルは増えているのか。消費者はどう対処すればいいのか。葬儀業の経験を基に「愛が伝わる葬儀」の普及を目指し、助言をする葬儀相談員・松瀬教一氏に聞いてみた。
「コロナ禍で人を集めたお葬式ができず、家族葬など小さな葬儀が増えたんです。その経験から、コロナ禍後も『(故人の知人を)呼ばなくていいじゃん』という考えが強まり、式の規模は小さくなっています。
この影響で売り上げは減り、いっぽうで人件費は高騰しています。それで葬儀の“押し売り”が増えているんです」(松瀬氏、以下同)
最近目立つ強引な手法の例としては、事前に聞いていた葬儀内容や額が違うため遺族が業者を代えようとすると50万円のキャンセル料を請求されたケースがあるという。
その他にも、本来は長期間安置しない限り不必要なご遺体の消毒、防腐処理、修復、死化粧など、衛生的に保全する「エンバーミング」などを基本料金に入れたりすることがあったという。
「遺族の心理として『遺体が傷むのも心配なんでエンバーミングやります』と言われると断りづらいですよね」
ただ、苦情が増えているのは新しい手口の登場以上に「昔ながらのやり方がよりえげつなくなっている」ためだという。
「悪質な例では、約束したサービスをやらないことがあります。例えば、式での対面は一瞬だからとご遺体のメイクをせず、遺族が不審がると『死化粧なんで薄化粧です』『火葬の時間です』と言って、すぐ火葬しようとする業者もいます。
さらに祭壇の供え物の果物を見切り品でそろえたり、『お線香の香りがついて食べられませんから処分しときます』と言って家族に渡さず使い回したり、ということもあります」
そして葬儀費用に絡んでは、依頼者が払う額が最終的にいくらになるのかを事前にきちんと伝える業者は「1割」ほどしかないと松瀬氏は言う。
費用トラブルを回避する非常に単純な方法
多くの業者で葬儀前に総額の目安を言わないパターンのひとつは、冒頭のAさんが経験した「プラン」による営業だ。
「例えば、家族葬のプランを50万円から用意していますと広告していても、プランはあくまで基本料金で、オプションなしには葬儀自体ができないほど必要なものを欠いているケースが圧倒的に多いです。ホームページにはすごく小さい字で『別途料金がかかる場合があります』と書かれていたりします。
私が口あんぐりになったのはドライアイスも基本プランに含まないものです。ご遺体を冷蔵できる安置室があるならまだしも、普通はあり得ません。その業者は『使いたかったら(ドライアイスを)お売りします』と答えました」
もうひとつ葬儀費用について忘れてはならないのは葬儀業者以外にも支払先があることだ。
「葬儀費用は葬儀業者だけでなく火葬場や食事を出す料理店さん、香典返し業者さんなどに別に支払うことがあります。その場合、葬儀業者は自分の売り上げにはならないため、別の支出があることを最初に言いません。
これは利用者の方も葬儀全体で何にお金がかかるのか分からず『とにかく葬儀屋さんに言えば全部そろうんでしょ』と思っている人が多いことも背景にあります。費用の全体の仕組みをちゃんと説明してくれる葬儀屋さんであればいいけど、それは1割くらいです」
ただ、その1割に運よく当たらなくてもトラブルを回避する術はある。
「防ぐ方法は非常に単純で、葬儀業者から見積もりをもらったら『この他に支払うものはないですか?』と確認をとることです。
そして、この作業は絶対に誰かが亡くなる前にやった方がいい。葬儀の見積もり相談は普通2時間以上かかります。『これ以上払うものはありませんね』と念押しをする交渉を数社と行なって相見積もりを取るのは、亡くなった後では時間的に現実的ではありません。そして電話ではなく直接会った方がいいです」
他方、このように価格が前面に出るのは「量産型」の葬儀業者を選んだ場合で、これとは別に生前の本人や遺族の希望を式の内容に反映させる「提案型」の葬儀を行なう業者もあるという。
「故人の希望がちゃんと反映されたその人らしい葬儀で、故人と一緒に過ごせる時間を体感できたという遺族は、やってよかったという実感を持つので料金の高いか安いかでは判断しないですね」
日本の死亡者数は昨年初めて年間160万人を超えた。多くの人が葬儀で見送られる日本では、葬儀トラブルは誰にとっても他人事ではない。自分や愛する人の別れの場をどうするか、事前に考えておくに越したことはなさそうだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

「お金ばっかり貰いやがって」ハンター出動”拒否”問題の顛末「誰にものを言ってるのよ?」トラブル発端の副議長が直接謝罪 約1か月半にわたる騒動

クマの駆除をめぐる副議長の発言トラブルで、猟友会が活動を休止していた問題。北海道積丹町の猟友会が約1か月半ぶりに活動を再開しました。
「誰にものを言ってるのよ?」副議長の発言でトラブルに
積丹町では9月27日、体長約2メートル、体重284キロのオスのクマが箱わなにかかりました。
クマが箱わなにかかった場所は、積丹町議会の副議長の私有地で、ハンター9人と役場職員3人が現場に駆けつけ、安全確保のため、副議長に離れるように伝えました。
すると、副議長は「誰にものを言ってるのよ?お前俺のこと知らねえのか?」などと威圧的な発言をしたといいます。
「お金ばっかり貰いやがって」副議長の発言続く
ハンターたちは箱わなにかかったクマを駆除しましたが、副議長は猟友会に「どうしてこんなに人数がいるんだ」「お金ばっかり貰いやがって」などと言ったということです。
猟友会によりますと、ハンターは200キロを超えるクマを駆除するためには人手がかかると説明し、「ヒグマを引っ張ってみませんか」と話すと、副議長は激怒。
「俺にそんなことさせるなら駆除もさせないようにするし、議会で予算も減らすからな」「辞めさせてやる」と発言したということですが、副議長自身はこの発言を否定しています。
猟友会が”出動拒否” 異常事態に発展
副議長の一連の言動に、地元猟友会は出動を拒否することを決めました。
異常事態を受けて、町は猟友会と今後の対応について協議を始め、クマの駆除に関する「対応マニュアル」を作成することで一致。
駆除の現場に第三者がいる場合は、町の職員が立ち入らないように指導するなどルールを定めました。
トラブルから約1か月半が経過した11月11日、副議長は猟友会の支部長に対して、直接謝罪。猟友会は11月13日、活動を再開しています。
《ハンター出動拒否 いったい何が?》経過を見る
▼9月27日 副議長の私有地に設置した箱わなでヒグマ1頭が捕獲され、駆除活動を巡って猟友会と口論に
▼9月29日 猟友会が積丹町に活動休止を通告
▼10月9日 副町長らと猟友会が今後の対応について協議
▼10月10日 町長と副議長が面談
▼10月22日 道内メディアが報道
▼10月31日 猟友会と町が協議⇒対応マニュアル作成へ
▼11月11日 副議長が猟友会の支部長に対して直接謝罪
▼11月12日 町と猟友会が対応マニュアルを作成
▼11月13日 猟友会が活動再開

安倍元首相銃殺事件、山上被告の母親が初証言「子どもの将来より献金が大事だった」旧統一協会への“揺るぎない信仰”明かす

「(被告人の)徹也は私の次男です」。13日に開かれた奈良地裁(田中伸一裁判長)の安倍晋三元首相銃殺事件第7回公判で、山上徹也被告の母親(72)が証言した。事件後、母親が公開の場で、事件について語るのは初めてだった。この日の傍聴席には、「検察庁」と書いた腕章をまいた検察官3人が特別傍聴席にいた。また、午前8時半から9時半まで、地裁から約1キロの春日公園でリストバンド形式で配った傍聴券希望者は341人だった。一般傍聴席は33。約11倍の競争率だった。第6回公判(11月6日)は143人が傍聴を希望していた。一般傍聴席にはこれまでの公判では見ない人たちがいた。統一協会関係者と見られ、熱心にメモをとる人もいた。午後4時12分、米田京花・左陪席裁判官が傍聴席のすぐ前に立ち、裁判所職員が傍聴席から姿が見えないように、パーテーションを3重に立て、17分に母親が入廷し、衝立に囲まれて5時6分まで証言した。◆「被告は私の次男」「国民に謝罪したい」と母親証言母親はまず、真実を述べると宣誓書を読み上げた後、しっかりした口調で名を名乗った。主尋問を担当した松本恒平弁護士が、「尋問の前に言いたいことがあると……」と述べたのを受け、被害者らへの謝罪を表明した。「次男が大変な事件を起こした後、すぐに謝罪をしたかったが、かなわず、法的な場でのお詫びとなった」、「次男が大変重大な罪を犯し、安倍元総理、安倍元総理の夫人、ご遺族の皆様に心よりお詫びしたい。安倍元総理を応援していた人も多い。国民の皆様にもお詫び申し上げる。本当に申し訳ございませんでした」。時折、言葉に詰まり、涙声も混じった。「今日、ここに安倍元総理が来ているかもしれない」という発言もあった。母親は山上被告が収容されている大阪拘置所に行き数回、面会を求めたが断られている。山上被告は事件後初めて会う母親の入廷に際し、ずっと机の上の資料に目を落としていた。14日の新聞各紙には「ため息の被告 頭抱え」(東京新聞)、「みけんにしわを寄せ、証言台のほうへ鋭い視線を向けた」(朝日新聞)という記述があった。しかし、被告は母親の証言の間、動揺はなく、メガネをかけ直すことはあったが、平静を保っていた。退廷の時もこれまでの6回の公判と変わらなかった。別世界にいる母親を突き放しているように感じた。◆今も旧統一協会への信仰を続けている弁護側の尋問で、松本恒平弁護士が最初に「今、信仰している宗教はあるか」と聞くと、「世界平和統一家庭連合とはっきり答えた。「旧統一協会のことですね」との問いに「はい、そうです」と応じた。

後部ドア開けたまま消防指揮車が出動、白バイの制止まで5km緊急走行…走行中にひしゃく2本紛失か

三重県の松阪地区広域消防組合(松阪市)は14日、組合の指揮車が8月、後部ドアを開けたまま消防署から現場に向かい、県警の白バイに制止されるまで約5キロにわたってサイレンを鳴らして緊急走行したと明らかにした。
同組合によると、指揮車はバンタイプで、8月31日午前に機材の点検中、明和町の枯れ草火災現場へ出動。後部ドアが閉まっているか確認しないまま出動した。走行中にひしゃく2本を紛失した可能性があるという。
同組合は関係する消防士ら4人を消防長文書注意とした。

差別的コラムはなぜ掲載されたのか、無意識に広がる排外主義にあらがう作家 「週刊誌ですから」では許されない、うろたえる日本社会

「週刊新潮」に、作家の高山正之さんが外国にルーツがある人に「日本名を使うな」などとする差別的な内容のコラムを発表し、批判を受けて連載が打ち切られた。さらに、コラムで名指しされた作家の深沢潮さんが、新潮社との出版契約を解消する事態に発展している。 多くの人の目に触れる雑誌に、問題のコラムはなぜ掲載されたのか。出版契約解消を決めた理由はなんだったのか。また、社会やメディアは、差別的な表現にどう向き合い、対処すべきなのか。深沢さんと、メディアの現場に詳しい2人に話を聞いた。(共同通信=佐藤大介)
インタビューに答える作家の深沢潮さん
▽本質向き合わぬ姿勢に失望―作家の深沢潮さん
―新潮社からは、デビュー作「ハンサラン愛する人びと」(後に「縁を結うひと」に改題)などを出版していました。 「お世話になった出版界の老舗だけに、残念な気持ちです。しかし、問題が起きてから約2カ月のやりとりで、心身が消耗してしまいました」 「対外的には謝罪を表明しても、差別や人権侵害への認識についての見解は示さず、嵐が過ぎ去るのを待つような対応でした。本質的な部分に向き合おうとしない姿勢には、失望させられました」 ―問題となったコラムは連載終了となりました。 「なぜ終了したのか、誌面で読者に説明しなかったことで、あたかも私が圧力をかけたかのような印象を人々に与えました。判断の理由を示さなければ、攻撃の矢が私に向くことは容易に想像できたはずです。実際に『言論弾圧だ』と言われ、二次被害を受けた気持ちです」 「本来は、自分たちで問題の検証に当たるべきはずなのに、それをしようとしない。出版社としての責任を放棄しています」 ―コラムの内容に抗議し、記者会見を開きました。 「気に入らない人物を『外国人だ』として排除しようとする感覚は、差別が無意識のうちに社会へ広がっていることの表れです。差別がカジュアル化してしまっているのです。だからこそ黙ってはいられないと、記者会見することを決意しました」 「新たな攻撃を受ける心配もありましたが、作家など40人ほどの人たちが共感のコメントを寄せてくれたことは、とても大きな励みになりました。声を上げることで、問題を社会に投げかけることができたとも思います」

―コラムは交流サイト(SNS)で拡散されました。 「紙媒体しかない時代だったら、ここまで問題が大きくならなかったかもしれません。SNSが差別を助長するという問題もありますが、差別を可視化する役割があることにも気づかされました。それだけに、使い手のリテラシーが求められていると実感します」 ―今後の創作活動への影響は。 「今回の件で、作家を続けられるかと悩むこともありましたが、社会に訴えたことは後悔していません。差別や排外主義が広がる社会の風潮にあらがうことは、生きづらさから一歩抜け出すという作家としてのテーマとも重なります。決して諦めずに書き続けていきたいと思います」
◎週刊新潮の差別コラム問題 7月31日号の「週刊新潮」に、外国人の日本国籍取得を巡り、朝鮮半島にルーツのある深沢潮さんらを「日本名を使うな」などと攻撃する作家の高山正之さんのコラムが掲載された。深沢さんは記者会見を開いて新潮社に謝罪を要求。新潮社は「出版社として自らの力量不足と責任を痛感しております」とするコメントを公式サイトに掲載した。高山さんのコラムは、8月28日号で連載が終了。深沢さんは9月30日、新潮社との出版契約を解消した。
インタビューに答える梶原麻衣子さん
▽事実誤認、読者に不親切―ライター・梶原麻衣子さん
問題となったコラムを執筆した作家の高山正之さんは、朝日新聞批判が一貫したテーマでした。その中で深沢潮さんの名前を出したとのことですが、事実誤認や論理の飛躍が見受けられます。 深沢さんは、朝鮮半島に自らのルーツがあることを隠していませんし、そもそも、日本国籍を取得しているのに「日本名を名乗るな」というのは暴論でしかありません。コラム前段の国籍要件を厳しくせよとの主張と、後段の日本国籍を取得した人が日本社会でどういった発言をするかは、関係のない話です。 深沢さんが日本社会を批判していたとも書いていますが、具体的なことは何も示されていません。読者に対しても、極めて不親切な内容でした。 今回の問題を通して表面化したのは、雑誌メディアの「読まれ方の違い」です。 普段から高山さんのコラムを紙で読んでいる読者は「いつもの内容」との受け止めだったかもしれませんが、交流サイト(SNS)で批判的に拡散されたことで、多くの人にとってはよりショッキングな内容として映りました。週刊新潮の編集部も、想定以上の事態に発展したと感じているのではないでしょうか。 週刊誌の社会的な位置づけは、この10年で大きく変わりました。 以前はゴシップ的なメディアという見方が主流でしたが、著名人や政治家のスキャンダルを暴き、社会正義の実現を担うような存在としても見られるようになりました。それが、特定の主張を扱う保守系雑誌とは大きく異なる点です。そうなると、今回のような問題が起きたときに「うちは週刊誌ですから」では許されなくなります。 今回の件で最も問題なのは、意見の異なる人でも理解できるような説明がなされていないことです。高山さんは騒動の顛末を保守系月刊誌に書いていますが、従来の見解を述べるだけで、意見の異なる人が読んでその意図を把握するのは困難です。本来なら騒動を経て何らかの教訓が生まれるはずなのに、このままでは空中に消えて終わりという感じで、後味の悪さしか残りません。 説明をしても、相手は許さず、もしかしたらより腹を立てるかもしれません。しかし、少なくとも相手の考えていることは見えてきます。表現の内容によって、書き手と書かれた方、読者の認識にずれが生じた時には、掲載した出版社以上に書き手には説明責任があると思います。言論を扱う立場として、そこは逃げてはいけないのではないでしょうか。 × × かじわら・まいこ 1980年埼玉県生まれ、中央大学卒業。保守系月刊誌「WiLL」「Hanada」の編集部に計13年勤務して独立。著書に「『“右翼”雑誌』の舞台裏」。
インタビューに答える安田浩一さん
▽リアルな状況に学ぶ機会―ノンフィクションライター・安田浩一さん
私の理解では、問題となったコラムで高山正之さんが書いたのは「外国にルーツがある人間は日本社会に口を出すな」ということです。誰かを排除することで社会は成り立つ―という排外的な論理に連なるものであり、非常に醜悪なものを見た気がしました。 コラムは外国にルーツがある人に「日本名を使うな」と告げています。在日コリアンの人の通称名を、あたかも格闘技のリングネームのように捉えているのではないか。いかに通称名にすがらざるを得なかったか、という心情や歴史的背景を理解しようとしないのか、想像すらできないのか。 名前とは、それぞれの人が生き方を託す大切なものです。在日コリアンの人たちが本名ではなく通称名を使わざるを得なかったのは、そんな社会をつくり出した側、つまり日本社会の問題です。 私は差別の現場を長く取材してきました。ヘイトデモが最も激しかったのは2013~14年ごろ。街頭で特定の国を挙げて「死ね」「殺せ」と叫ぶ演説に、100人も200人も集まっていた。 それは今、だいぶ小規模になりましたが、差別や偏見が減ったわけではありません。もはや街頭での激しい言葉を必要としないほど、人々の内面に偏見が定着してしまったのかもしれない。むしろ背筋がぞくっとするのは、例えばスーパー銭湯で隣り合った若者が、あるいは酒場の主人が、おもむろに外国人差別を口にするような瞬間です。 差別や偏見が潜在化したからこそ、表に出た言葉がすぐにはヘイトと気づかないほどに、社会もメディアも感性がすり減っているのではないか。今回のコラムが日本を代表する週刊誌に掲載され、深沢潮さんが声を上げるまで問題にされなかったことも、一つの表れではないでしょうか。 かつての週刊誌には「敵とするのは強い権威や権力」という、小さくないプライドがありました。高山さんと週刊新潮がやったことは、抗弁するすべを持たないマイノリティーを相手に選んだ「絶対に勝てるけんか」のようなもの。めちゃくちゃ格好悪い。 差別は被害者を傷つけるだけではなく、社会や地域をも破壊します。マイノリティーの人たちは日本にずっといました。日本社会は今、きちんと対峙してこなかった差別というものに直面し、うろたえているように見えます。差別や偏見のリアルな状況を前に学ぶ機会を与えられているとも言えます。 × × やすだ・こういち 1964年静岡県生まれ。「ネットと愛国」で講談社ノンフィクション賞。「ルポ 外国人『隷属』労働者」で大宅壮一ノンフィクション賞。「地震と虐殺 1923―2024」で毎日出版文化賞特別賞。

高市首相「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」どこへ? 中国、北朝鮮、ロシアからナメられっぱなしで早くもドン詰まり

懸念された外交デビューを無難にこなし、評価を上げたはずの高市首相の手腕はやっぱり不安だらけだ。政権発足から3週間が経過。首脳会談を持ちかけた北朝鮮には案の定無視され、中国とは舌禍でこじれた。ウクライナ侵攻に起因する経済制裁でへたるロシアからは入国禁止措置の追加を食らった。「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」は出足からどん詰まりだ。
高市首相の大風呂敷、相手は一癖ある面々だということを差し引いても、周辺国との関係はグチャグチャだ。拉致被害者の帰国を求める3日の「国民大集会」で、高市首相は「私は手段を選ぶつもりはありません」「北朝鮮側には首脳会談をしたい旨、伝えている」と発言。局面打開への期待は高まる一方だが、北朝鮮はその4日後、高市政権発足後2回目の弾道ミサイルを発射。現地メディアは高市発言に触れず、日本を「千年来の宿敵」などと糾弾する討論会が12日に行われたと報じている。手招きにホイホイ応じる様子はない。
高市首相の国会答弁で火がついた中国とのいさかいも収まる気配がない。台湾有事と集団的自衛権行使を結び付けた高市首相の軽率を棚に上げ、与党はX(旧ツイッター)に過激投稿(すでに削除)した中国の駐大阪総領事の国外退去処分を要求。中国外務省の副報道局長はきのう(13日)の会見で答弁撤回を求め、「日本が台湾海峡情勢に武力介入すれば侵略行為となる。中国は必ず真正面から痛撃を加える」と脅し、歴史問題をネチネチ蒸し返している。
転売ヤーが電子機器買い漁り
そこへ参戦した格好なのがロシアだ。ウクライナ侵攻をめぐる日本の対ロ制裁への対抗措置として、入国禁止第5弾を11日に発表し、30人を追加。日本の対ロ制裁強化は9月中旬だった。なぜ今なのか。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。
「米ロ首脳会談の頓挫からも分かるようにロシア外交は非常に混乱してはいるものの、新政権発足を待ち、効果的な牽制のタイミングを見定めて入国禁止を追加発表したのが見て取れます。中国とこじれてダメージを受ける高市氏にもう一発かましてやろうということでしょう。もっとも、ロシアからのインバウンドは急増し、年間10万人ほどに上る。ロシアで不足する電子機器を買い漁って持ち帰り、軍需工場に売り飛ばす転売ヤーが増えていると聞きます。ロシアの継戦能力を日本が支えている可能性もあるわけで、日本政府はきちんと精査した方がいい」
これじゃ「経済安保の高市」も名折れだ。
◇ ◇ ◇
中国との対立は日増しにエスカレート。落としどころはあるのか。●関連記事【もっと読む】『「存立危機事態」めぐり「台湾有事」に言及で日中対立激化…引くに引けない高市首相の自業自得』で詳報している。

田久保真紀氏の出直し選出馬に「市政混乱」の再び、未解決問題だらけの決断に市民紛糾

学歴詐称問題が取り沙汰され、2度の不信任決議により失職に至った田久保真紀・前伊東市長。田久保氏の失職に伴って12月に市長選がおこなわれることとなっているが、そこへ立候補する意思を固めたことがわかった。田久保氏は近日中に出馬会見を開く予定だという。
田久保氏を巡っては、“東洋大学法学部卒業”の経歴が誤りでじつは除籍処分となっていたことや、百条委員会への出頭を拒否したことなどが問題となり、市議会が全会一致で市長の不信任案を可決。議会解散となった後に、市議選を経て再度の不信任決議がなされ失職となった経緯がある。
「これ以上伊東市民や市議を混乱させるな」
「10月19日投開票の市議選で、定数20の内“田久保派”の当選はたった1人のみという結果になりました。今や伊東市は完全に田久保氏にとってアウェイとなっているわけです。そんな中で、再出馬を決めるというのは一体どういう心境なのか。なにか勝算があってのことなのか。彼女の“鬼メンタル”を考えると、勝算がなくても出馬しそうではありますが……」(地方紙記者)
田久保氏は11月11日にXを更新し、匿名で送られてきたハガキをアップ。ハガキには《布石の一手!!》とだけ大きく書かれており、田久保氏はそれに対して「ありがとうございます!」「押忍!!」と綴っている。
「田久保氏は出馬に際して、報道陣の取材に“支援者の考えを聞き、出馬を決めた。市の課題解決に向けてやらなければいけないことをしっかりしていく”と述べました。匿名で届けられたとされるハガキの差出人もそうだろうと思いますが、ある一定の支援者はいるようですね。彼女のXには、批判の声に混じって応援コメントも寄せられています」(前出・地方紙記者)
とはいえ、田久保前市長を取り巻く環境はかなり厳しいと言わざるを得ない。市議会で議長に“チラ見せ”した卒業証書は一体なんだったのか、地方自治法違反容疑で刑事告発されている件はどうなっているのかなど、解決していない問題が山積みなのだ。
彼女の出馬表明に、当然ネット上でも「刑事告発されてるのにまた出馬って大丈夫なの?一体どういう神経してるんだ?」「再出馬よりも、もっと先に説明するべきこととかあるだろうが」「なんで失職したか考えたら再出馬なんて普通できないよ。これ以上伊東市民や市議を混乱させるな」など、厳しい意見が続出している。
今回の市長選には、元市長の小野達也氏や前市議の杉本憲也氏など、すでに5人が出馬を表明している。誰が当選するかは現時点では推測しかできないが、市民は後ろ暗いところが無く、きちんと市政に向き合ってくれる人物であれと願うばかりだろう。

「子どもに殺される所を世に広める」両親を脅迫か 元妻にメッセージ送り、通報される 57歳男「両親が知ると思わなかった」

14日、57歳の自称無職の男が「子どもに殺される所を世に広める」「包丁も準備できたので」などと元妻を介して自身の両親を脅迫したとして、逮捕されました。
脅迫の疑いで逮捕されたのは、札幌市に住む自称・57歳の無職の男です。
男は15日午後0時すぎ、元妻に「子どもに殺される所を世に広める」「包丁も準備できたので」という旨のメッセージを送り、自身の両親を脅迫した疑いが持たれています。
警察によりますと、男は携帯電話で元妻に両親への脅迫メッセージを送りました。
元妻の女性は、メッセージを受け取ったあと、警察に通報し、事件が発覚しました。
その後、警察官が事実を両親に伝え、男は逮捕されました。
警察の取り調べに対し、男は「メッセージを送っているのが間違いないが、本当に殺そうと思っていない」「両親が知ると思わなかった」と容疑を一部否認しています。
警察は、男の動機などについて調べを進めています。