北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故で、海上保安庁や海上自衛隊に加えて、道警の「海のスペシャリスト」も捜索にあたった。事故後、最前線に派遣された道警の警備艇「そうや」(21トン、全長約18メートル)の指揮をとったのが久保田真二船長(39)だ。乗客乗員26人のうち死亡が確認された14人のほかはいまだ行方不明のまま。第1管区海上保安本部は1日に道警への捜査協力要請を打ち切った。「行方不明者の発見に向けて全力を尽くす」と誓った久保田船長は無念さを感じている。【加藤佑輔】
久保田船長は、赤平市出身。旧国立小樽海上技術学校を卒業後、稚内市の船舶会社に就職した。港や海上で働く中、パトロールで海の治安を維持する警察の警備艇の姿に魅力を感じた。「得意な船の操縦技術で人の役に立ちたい」と29歳の時、道警に技術職員として入庁した異色の経歴を持つ。
「そうや」の乗組員は6人。4月23日に発生した事故の翌日からほぼ毎日のように捜索を続けた。午前6時から夕方にかけて、カズワンの船体が海底に沈んだ知床半島西側から東側の羅臼沖までを見回り、肉眼や双眼鏡を用いて海面や沿岸部をつぶさに確認した。警備艇はソナー(水中音波探知機)を備えており、行方不明者につながる手がかりがないか海中も探った。
知床半島沖は事故後、強風が吹き荒れ、捜索が困難を極めたという。日によっては山から風速20メートル前後の強風が吹き付け、「海上に白波が立って漂流物の視認が難しくなった」ことも多かった。1カ月超に及んだ捜索で、警備艇による捜索で行方不明者につながる手がかりを見つけられなかったことについて、久保田船長は「残念だ」と悔しさをにじませる。
事故の発生から1カ月超。4月28日を最後に乗客乗員の発見が途絶え、捜索は長期化する見通しだ。久保田船長は「乗組員一同、乗客の家族のためにも、必ず手がかりを見つけるつもりでいた。今後も機会があれば、全力で捜索に当たりたい」と意気込んだ。