「あまりにも理不尽で…」安倍元首相見送りに大勢の人 献花や記帳も

安倍晋三元首相の葬儀が営まれた東京都港区の増上寺周辺は12日午後、最後に見送りたいと集った大勢の人であふれ、同千代田区の自民党本部前でも献花や記帳に訪れた人々で500メートルを超える列ができた。葬儀後に安倍氏のひつぎを乗せた車が巡った沿道では、涙を流したり、感謝の言葉を口にしたりする人たちの姿がみられた。
警備関係者によると、増上寺では12日早朝から想定を超える人が詰めかけたため、献花の受け付けを早めに打ち切らざるを得なくなった。それでも、多くの人が隣接する公園などから葬儀を見守った。神奈川県のパート従業員、鈴木きよみさん(55)もその一人。「日本に大きな功績を残された方なので、人ごとじゃないという思いで来た。ありがとうございました、と伝えたい」。人の多さに驚いて足を止めたという千代田区の大学生、大森蒼(そう)さん(20)はつぶやいた。「安倍さんってこんなに人気があったんだ……」
安倍氏のひつぎを乗せた霊きゅう車は葬儀後の午後2時40分ごろ、同寺を出発した。その際、位牌(いはい)を抱えた安倍氏の妻昭恵さんは助手席から沿道に向かって何度も頭を下げた。15分ほどで車が永田町の自民党本部前に差し掛かると、献花のため列を作っていた人たちから拍手が起きた。安倍氏の地元・山口県から駆けつけたという自営業、菅原修さん(42)は「いつも地元のことを考えてくれていた。突然のことで無念だったろうなと思い、『安らかにお休みください』との気持ちで見送りました」と目を潤ませた。
車は国会議事堂のそばを通って首相官邸前に。沿道にいた若い女性が「ありがとう」と何度も叫んだ。官邸前で「感謝」の花言葉があるカスミソウの花束を抱えていた東京都渋谷区の視能訓練士、白石由美子さん(57)は「事件があまりに理不尽で、いたたまれなくなって来ました。私も安倍さんと同じで子どもがおらず、夫婦2人暮らし。昭恵さんはおさびしいと思う。その気持ちを思うと……」と目を赤くしていた。【北村秀徳、大場弘行】