「歴史的判決」目を赤くした住民 鬼怒川氾濫、国の管理不備認定

2015年9月の関東・東北豪雨で浸水被害を受けた茨城県常総市の住民ら31人と1法人が、鬼怒川が氾濫したのは国の河川管理に不備があったためだとして、国に総額約3億5870万円の損害賠償を求めた訴訟で、水戸地裁は22日、国の責任を一部認め、9人に計約3927万円を支払うよう命じた。

「歴史的な判決だ」――。2015年9月の関東・東北豪雨での鬼怒川氾濫を巡り、茨城県常総市の住民らが国に損害賠償を求めた訴訟。河川管理の不備を認めた22日の水戸地裁判決に、地裁前では原告や支持者らの拍手が鳴り響いた。
「確信していた国の責任が認められた」。集まった報道陣などの前に掲げられた「勝訴」と書いた紙の脇で、原告で同市若宮戸地区に住む園芸農家、高橋敏明さん(68)は目を赤くしていた。
水害で自宅は床上浸水し半壊した。家財道具は使い物にならなくなり、怒りを支えに提訴から4年間、訴訟を戦い続けてきた。21年夏には、訴訟を担当する阿部雅彦裁判長らが被災地を視察。22日は、判決言い渡しに耳を傾けながら当時を思い出し、判決後に「『現地を見て分かってくれたんだ』と、胸がいっぱいになった」と振り返った。
水害訴訟は、大阪府大東市の浸水被害を巡る「大東水害訴訟」の最高裁判決(1984年)を契機に大きな曲がり角を迎えた。同判決では行政の責任を限定的に解釈し、これが行政の瑕疵(かし)の基準となり、被災した住民側に不利な司法判断が続く流れとなっていた。
そうした中で出された今回の判決は、国の河川管理の不備を明確に認めた。弁護団の只野靖弁護士は「他の水害においても、それぞれの河川管理のまずさを指摘できる可能性がある。この判決は全国(の水害被災者)に勇気を与える」と述べた。
25人が控訴の意向
しかし敗訴部分もあり、主張を一部認められた原告も含め、既に25人が控訴の意向を示しているという。
「苦しみながら亡くなった女房のことを考えると、これで終わりにはできない」。主張が認められなかった常総市水海道地区の赤羽武義さん(82)も控訴する意向だ。水害から5カ月後に死亡した妻芳子さん(当時75歳)が災害関連死に認定された。「妻が水害で亡くなったことに対する国の責任を認めてほしい。このままでは女房に申し訳ない」と、訴訟続行に向けた決意を口にした。【宮崎隆、森永亨、宮田哲、長屋美乃里】