厚生労働省は、指定難病の患者が障害福祉サービスや就職支援を受ける際に使える「登録者証」(仮称)を発行する方針を固めた。重症度にかかわらず取得でき、対象は少なくとも100万人を超える見込みだ。患者にとっては各種手続きの度に診断書を用意する手間が省ける。登録者証発行をきっかけに患者情報を国のデータベースに集め、治療開発に生かす狙いもある。
厚労省は、登録者証の制度化を、次期国会への提出を目指す難病法改正案に盛り込む方針だ。2024年度にも発行したい考えだ。
登録者証は、潰瘍性大腸炎や筋
萎縮
(いしゅく)性側索硬化症(ALS)、全身性エリテマトーデスなど、国の指定難病の患者が、氏名や病状などの情報を記載した文書を都道府県や政令市に提出したうえで取得する。薄い手帳型が想定される。
現状では、難病患者が在宅介護などの福祉サービスや就職支援を受けようとすると、市町村やハローワークなどで手続きする度に、難病の証明として診断書を提出している。
登録者証があれば、診断書を入手するために医療機関に行く必要がなくなり、当事者の手間や費用負担を大幅に軽減できる。
登録者証を発行する際に、患者から提出された病状などの情報を、本人の同意を得て、厚労省はデータベースに蓄積する。診療履歴などの情報が入った別のデータベースと連結させ、病態解明や治療法開発の研究に活用する計画もある。
これまでも、重症者の情報は医療費助成の手続きを通じ、国のデータベースに蓄積されているが、助成対象外の軽症者は十分に把握できていない。現在助成を受ける患者は約100万人だが、登録者証の対象は大幅に広がるとみられる。
日本難病・疾病団体協議会の辻邦夫常務理事は「従来は重症度次第で支援の対象から外れる人がいたが、登録者証により難病患者全体の利便性が高まるのはありがたい。官民の様々なサービスに使えるようにしてもらうほか、根本治療や重症化を防ぐ治療の開発促進も期待したい」と話す。
◆指定難病=発病の仕組みが明らかでなく、治療法が確立していない長期療養が必要な病気で、国が難病法に基づき指定するもの。診断基準があり、患者数が人口の1000分の1程度を下回ることが指定の条件。338疾病に上る。重症度が一定程度以上の場合、医療費助成の対象となる。