「替え玉受験」横行する中で…京大卒・関西電力エリート会社員が目をつけられた理由

就職活動中の学生に成り済まし、「ウェブテスト」を替え玉受験したとして、関西電力社員の田中信人容疑者(28)が警視庁サイバー犯罪対策課に逮捕された事件。どうやら背景には学生の間で“替え玉不正”が広がり、罪の意識が欠けている実態もあるようだ。
就職情報会社「ディスコ」が昨年7月、大学生1200人を対象にした調査によると、8.4%が「不正の経験がある」と回答。「周りがやっているのを知っている」と答えたのは30.2%に上る。大手ウェブテスト会社の試験ともなると、年間で延べ200万人以上の学生が受験するという。
田中容疑者は自身のツイッターで「京都大大学院卒/元外コン勤務/ウェブテスト請負経験約4年、1人で計4000件以上、通過率95%以上」とうたい、替え玉受験の希望者を募集。通過実績のある企業として、外資系コンサル会社や大手総合商社の企業名を挙げていた。1科目2000円で代行を請け負い、今年だけで約400万円の報酬を得ていた。
ウェブテストを巡る替え玉受験の摘発は全国初のこと。田中容疑者は今年7月の任意の聴取に、「ネットで調べてウェブテストの代行は犯罪となった事例はないと把握していた」と供述するなど、パクられないと高をくくっていたとみられる。
京大大学院生だった4年前から代行業者のテスト員として、代行に関わり、今年に入って独立した。受験用のIDやパスワードを入力して本人に成り済ますほか、Zoom画面の共有や出張サービスも行っていた。田中容疑者に代行を依頼した女子大生は髪の毛で隠したワイヤレスイヤホンを通じて、遠隔でテスト内容の画面を見た田中容疑者から解答を伝えられていた。
今年1月の「大学入学共通テスト」でも、大阪の女子受験者がスカイプでテスト問題を流出させ、スマホに有線でつないだイヤホンで解答を聞き取るなど、この手の犯罪が後を絶たない。
今回、たまたまサイバーパトロールで犯行が発覚したものの、ネット上には「ウェブテスト代行」を請け負うアカウントが多数存在。不正が横行しているという。
替え玉受験が横行しているのに、なぜ田中容疑者は逮捕されたのか。
「不正を防止したい企業は、学生に試験会場まで足を運ばせたり、AIで監視するなど対策を練っていますが、田中容疑者はツイッターに〈監視型のテストにも抜け穴ある〉と投稿していました。田中容疑者の場合、自己アピールが目立ち、かなりの実績を上げ、派手にやり過ぎていたため、目をつけられたようです」(捜査事情通)
■費用も安く「#リポート」感覚で代行を依頼
依頼する学生も「周囲が同じことをやっているから」と、罪の意識が希薄なのだという。リポート作成を依頼する「#リポート」がネット上にあふれ、それと同じ感覚で“替え玉受験”を利用している。しかも1科目2000円と、代行費用も安く、気軽に頼みやすい。試験対策に時間を費やす分、面接対策に回すなど、「やらないと、逆に損をする」と思い込む学生もいるのだという。
今回の摘発が「氷山の一角」だとしたら、ズルして一流企業に入社した学生は相当いるはずだ。