「殺害されたお姉さんとみられる女性が部屋に出入りするのを2、3回見かけました。派手な女性ではなく、服装はむしろ地味だったかもしれません。おとなしそうな印象で年相応に見えましたよ」
三栖万莉菜(みす・まりな)さん(37)が暮らしていた千葉県松戸市小金きよしケ丘の賃貸アパート近くの女性住民はそう振り返る。
10か所以上も刺しながら「殺すつもりはなかった」
このアパートで姉の万莉菜さんを殺害したとして、千葉県警松戸東署は6月20日、弟で和歌山市在住の無職・三栖史靖(みす・ふみやす)容疑者(33)を逮捕した。
松戸東署によると、同日午前11時15分ごろ、室内で万莉菜さんの胸などを刃物のようなもので複数回、突き刺すなどして殺害した疑い。
犯行の約15分後、アパートから約300メートル離れた交番を訪れ「姉を殺しました」と自首。すぐに警察官が現場に駆けつけると室内で万莉菜さんが血を流して倒れており、意識不明の状態で搬送されたが、病院で死亡が確認された。
「刺し傷は胸や腹、背中など急所付近を中心に10か所以上に及び、心臓に達する深さの傷もありました。司法解剖の結果、死因は多発刺切創による循環血液量減少の疑いがあります。いわゆる出血性ショックです。
自首した際は刃物を所持しておらず、現場から凶器とみられる刃物を押収しています。もともと部屋にあったものか、あるいは容疑者が準備したものか捜査中です」(捜査関係者)
史靖容疑者は取り調べに対し、「刺したことは間違いないですが、殺すつもりはありませんでした」などと容疑を一部否認している。
10か所以上も刺しながら、そんな言い訳が通るだろうか。
近隣住民らによると、万莉菜さんはひとり暮らしだったとみられる。間取りは1Kで家賃は月3万円程度。和歌山の実家を離れ、仕事をしながら自立生活を送っていたようだ。
姉の部屋の窓ガラスを割って無理やり入った弟
そんな万莉菜さんを事件当日に訪ねたとみられる史靖容疑者の次のような奇異な行動をキャッチした。
「ちょうど犯行時刻のころ、万莉菜さんの部屋から“ガチャン、ガチャン”とガラスの割れる音が2回、聞こえてきたんです。ガッチャーンと大きく響く音ではなかったのが逆に気になりました。
私は編み物をしていた手を止め、外に出て音の正体を確かめようとしました。でも、そのあとは何の音もせず、人の声も聞こえてきませんでした。どうやら弟さんは窓ガラスを割って室内に無理やり押し入ったみたいなんです」(アパート近くに住む80代女性)
実際、部屋の窓ガラスは割られていた。史靖容疑者はここから室内に強行突入した可能性があるとみて警察は調べている。
万莉菜さんが玄関ドアを開けなかったのか、容疑者は最初から窓を破って侵入するつもりだったのか、いずれにせよ緊迫した姉弟関係がうかがえる。
「事件の数日前、ゴミ出しするときにお姉さんとみられる女性が後ろで待っていて会釈したんです。さみしそうな表情でした」(同・女性)
史靖容疑者は上京するにあたり「新幹線に乗ってきた」と話しているという。それでも片道5時間以上はかかる。
「足取りや交通費をどう捻出したのかなど裏付け捜査をしなければいけません。なぜ、お姉さんを殺害したのか、犯行動機についても慎重に取り調べを進めています」(前出の捜査関係者)
どれほど関係がこじれようと、過去には姉を慕い、弟としてかわいがられたころがあっただろう。凶行に走る前に思いとどまれなかったか。