「あなたは事件の容疑者になっている」急増のニセ警察官詐欺…実は多い若い世代の被害【Nスタ解説】

警察官を名乗って金銭をだまし取る詐欺事件の被害が去年から急増しています。しかも、この詐欺に比較的若い世代がだまされているというのです。「ニセ警察官」詐欺の手口と対策を掘り下げます。
画面越しだと動揺し気づけない?コスプレ「ニセ警察官」
日比麻音子キャスター: 特殊詐欺の都内の被害額は過去最悪を更新しています。
警視庁によると、ここ数年は100億円以下が続いていましたが、2024年は153.1億円ということで過去最悪でした。ただ、2025年は上半期だけでも、なんとすでに150億円を超えてしまっています。
なかでも多いというのが「ニセ警察官」詐欺で、約65%(97.5億円)と、もう100億円近い被害になっているわけです。おそらく、2025年は過去最悪をさらに更新してしまう可能性が高いとみていいと思います。
TBS報道局社会部 井上淳司記者: 「ニセ警察官」被害者の年代別割合(警視庁による)をまとめました。
●20代以下:17.8% ●30代:21.3% ●40代:16.0% ●50代:19.2% ●60代:19.0% ●70代以上:6.8%
一番多いのが30代で、全体としては20代・30代・40代が半分以上を占めています。そのポイントは「スマホ」です。
日比キャスター: スマホを使い慣れている20代や30代だからこそ、気をつけなければいけないそうですね。
南波雅俊キャスター: スマートフォンは当たり前に使っているので、もし自分が実際「ニセ警察官」をビデオ通話で見たら、そんなことはないと思いつつも、相当ドキッとしてしまったり、焦ってしまったりするのは想像できます。
日比キャスター: まさに、「まさか」と思っているからこそ危ないということですよね。
「ニセ警察官」詐欺の主な手口は、まず自動音声や警察官を装ってスマホに電話してきます。
そして「あなたは事件の容疑者になっている」などと言ってビデオ通話に誘導し、オンラインで“事情聴取”なるものをしてくるということです。犯人側も顔を出してきます。
実際に、鹿児島県警を装った手口があったということですが…。
TBS報道局社会部 井上淳司記者: 鹿児島県警の警察の方に問い合わせたところ、ビデオ通話の映像を一般の方が見ると「警察官だな」と思うかもしれませんが、プロが見ると「ちょっと違う」ということです。
映像では後ろに制服のようなものがかかっており、右胸に警察官の階級を表す階級章がついていますが、本当は右胸ではなく左胸につくものだといいます。
また、お腹のあたりに金色のボタンがありますが、こちらも実際にはないものだということです。
日比キャスター: つまり、完全に警察官のコスプレということになるわけですね。しかし、これが画面に突然出てくると、どうしても動揺してしまうと。
TBS報道局社会部 井上淳司記者: このあと「あなたの容疑を晴らすためにはお金が必要だ」というような話をされ、お金を振り込んでしまう形になっています。
南波キャスター: 目の前で対面だったら「ちょっとおかしいな」と思うかもしれませんが、画面を通すと、気づけない部分や本物だと思ってしまうような恐さがあると感じました。
日比キャスター: 画面と画面だと、かなり近い距離感でもあるわけですものね。
そもそも、捜査対象になっていると電話で伝えることはなく、個人のスマートフォンで突然ビデオ通話になることもないわけです。
新聞やテレビを見ず、詐欺の手口を知らない若者が増加?
日比キャスター: 大阪地検を名乗ってきたという「ニセ検事」のビデオ通話の例もあるので紹介します。
ニセ検事 「ご本人様にお間違いなかったですかね」
被害者 「はい」
ニセ検事 「ありがとうございます。私のほうは大阪地検特捜部検事の石野と申します。(身分証明書らしきものを見せ)こちら、もしピントが合ってない等ございましたらおっしゃっていただけますか」
被害者 「確認できました、ありがとうございます」
ニセ検事 「ではえー、ご不明な点等がございましたらお答えのほうさせていただきますがよろしいですかね」
被害者 「はい、大丈夫です」
日比キャスター: 身元がわかるようなものを、ビデオ通話で見せてくるというのはありえないことですよね。
TBS報道局社会部 井上淳司記者: そもそも、ビデオ通話で被疑者対象と何かするというのは、もうあり得ないことだと思っていただいて結構です。
日比キャスター: シチュエーションとしてあり得ないのに、なぜ若者は騙されてしまうのでしょうか?
TBS報道局社会部 井上淳司記者: 今の30代以下にとってはスマホが当たり前の時代で、ビデオ通話も簡単にできます。そのため「もしかしたら警察はオンライン捜査も行っているのではないか」と思ってしまうことが、被害者になる理由の一つに挙げられます。
また、スマホで自分の好きなことだけ調べればいい時代になってしまい、新聞やテレビを見ない人が多く、「ニセ警察官」の手口を知らないという背景もあります。
犯罪心理に詳しい立正大学の西田公昭教授によると、騙される人は「警察など、権威ある人物を前にして無意識に指示通りに行動してしまう心理状態」のようです。
日比キャスター: 確かに働き世代というか現役世代は、ビデオ通話にリモートワークなどで慣れているからこそ気づきにくいところもあるかもしれません。
では、騙されないためにはどうすればいいのでしょうか。
そもそも、電話やビデオ通話などで、お金や個人情報の話をするということはあり得ません。こういった話が出た時点で「おかしいな」「詐欺だな」と思ってください。
そして電話を一度切り、自分で調べた番号や、近くの交番の正しい番号にかけなおしましょう。
また、警察への相談専用電話として「#9110」という番号があるので、こちらにも相談してみてもらいたいと思います。
南波キャスター: 一つ気になるのは、これだけ詐欺が増えているということは、関わっている人数や組織も多くなっているということでしょうか?
TBS報道局社会部 井上淳司記者: 今は海外を拠点にして、闇バイト的に人をどんどん連れ込むのが多くなってきています。このような詐欺は、どこでもできてしまうということです。
日比キャスター: 最近は「+」から始まる、知らない国際電話番号からかかってくるケースも多いようですので、そちらにかけなおさないということにも気をつけたいですね。
========== 〈プロフィール〉 井上淳司 TBS報道局社会部警視庁担当 捜査二課を取材警察取材は常に緊張