東京都奥多摩町や青梅市など西多摩地域の山間部を中心に、このところクマの目撃が相次いでいる。23日には同町の大丹波川で渓流釣りをしていた男性が、クマに襲われてけがをする被害が発生した。27日も青梅市や日の出町で目撃された。各自治体は注意を呼びかけている。(鈴木章功)
奥多摩町によると、23日午後4時半頃、町外の50歳代男性が背後から襲われて負傷した。同町でクマによるとみられる人的被害が起きたのは、2019年以来だった。
男性が大丹波川沿いの「奥茶屋キャンプ場」から200メートルほど上流で渓流釣りをしていると、背後で落石のような音がした。振り向いた瞬間、額やまぶた、首、腕などをひっかかれて出血した。クマはその場から逃げていった。大きさなどから子グマとみられるという。
男性は自力で下流のキャンプ場まで下りて助けを求めた。キャンプ場関係者や客らが介抱し、119番通報。青梅市の病院に救急搬送され、その日のうちに帰宅したという。
町職員は被害を把握した直後から、地元猟友会、青梅署員らとともに現場周辺を巡回し、花火を鳴らして追い払った。また、防災行政無線の臨時放送で住民に注意を呼びかけた。
24日には現場周辺の林道や登山道をパトロールするとともに、捕獲用のおりを設置。猟友会が日々、捕獲確認と巡回を続けている。同町は専用アプリを使って町民などに害獣の発見情報を寄せてもらっており、昨年度は1年間で約130件だったクマの目撃が、今年度は4~7月ですでに約70件に上っている。
町観光産業課の大串清文課長は「今年は夏場からクマの目撃が目立っている。野菜くずなどの管理や、鈴を身に付けるなど対策を徹底してほしい」と話している。
同町と隣接する青梅市でも目撃が相次ぐ。20日には長淵の駐車場に現れた姿を防犯カメラが捉えていた。クマは止まっていた車の前方から現れ、丘を駆け上って姿を消した。
その際、駐車場そばで車を運転していた横浜市の電気工事業の男性(50)は「大型犬にがっちりと筋肉をつけたような姿で、一目でクマとわかった。かなりの速さだった」と振り返る。
東京都奥多摩町での人的被害以降、同市では少なくとも3件の目撃があった。27日未明にはJR青梅線の日向和田駅近くの青梅街道沿いで目撃され、市職員と地元猟友会が出動。付近にフンなどの痕跡はなかった。
ただ、隣接地の元店舗を改修中の男性(58)は21日朝、近くの竹やぶを子グマらしき動物が走り去るのを目撃し、青梅署に届け出ていた。男性によると、黒っぽい動物はサッと走り去り、男性は勢いに気おされて思わず後ずさったという。「尋常じゃない速さで、恐怖しかなかった」。男性の案内で猟友会が付近を調べ、ビワの木に爪痕を確認した。
27日に出動した猟友会の横山岩根さん(86)は「21日に見た動物がクマかどうか断定できないが、ここ(元店舗)は10年ほど前にクマが入り込んで駆除された」と説明した。
一方、日の出町でも27日午後1時40分頃、大久野の観光施設近くの道路で目撃された。同町は行政メールなどで「クマを見つけた際は決して近寄らず、警察まで連絡ください」と注意を呼びかけた。