石破茂首相(68)の後任を選ぶ自民党総裁選が4日、都内で投開票され、高市早苗前経済安全保障担当相(64)が第29代総裁に選出された。自民党初の女性総裁。決選投票で本命視されていた小泉進次郎農相(44)を下す大逆転勝利。15日召集予定の臨時国会で、日本初の女性首相が誕生する公算が大きい。
投票結果の発表を受け、拍手の中前に壇上に進んだ高市氏は「自民党の新しい時代を刻みます。ありがとうございました」とあいさつし深々と一礼。その後「みなさまとともに自民党を多くの方の不安を希望に変える党にする」と言い切った。
高市氏が、3度目の総裁選挑戦で悲願を達成した。前回の2024年総裁選は、決選投票の末に石破茂首相に敗北。あと一歩だった史上初女性首相は夢と消えた。その後、石破氏から打診された総務会長の就任も固辞。党三役の重職を蹴ってまで石破氏と距離を置き、この日のために爪を研いできた。
高市氏は党内有数の保守派。先月22日の所信表明演説では、奈良の鹿にまつわる和歌を朗々と詠み上げたあと「そんな奈良の鹿を外国から観光に来て蹴り上げるとんでもない人がいます」と唐突に外国人問題に言及。SNSなどで論争の的となった。高市氏の陣営関係者は「世間的な評価は別にして、党員票は増えたと思う」。4候補が党内融和を考えて突出した政策を打ち出さない中、自民保守層に刺さる発言で議員票の不足を補った。
あこがれは英国の「鉄の女」サッチャー元首相。13年には自民党女性初の政調会長に就任するなど、ガラスの天井を打ち破ってきた。
高市氏といえば「議員の飲み会に参加せず、党内外の友人が少ない」とやゆされ続けてきたことで有名。この飲み会の少なさも、当時の男性優位の永田町の状況がそうさせたものだった。かつてスポーツ報知の取材に「男性議員にお酌をさせられるだけで、意味がない。その時間を勉強に使った方がいい」と告白。高市氏と同じく女性で総裁選出馬経験がある野田聖子氏も、かつて「昔はセクハラが当たり前。国会内でおしりを触られたりもしょっちゅう」と証言したことがあった。
ただ、最近は高市氏自身も軟化。「ここ1年で飲み会にも参加するようになって、あの議員はこんな人なんやとか、いろいろな気づきがあった」と話す。男性社会と戦い、ときには融和することも辞さない柔軟さが、初の女性総裁につながった。
今後の焦点は野党連立の動き。野党連合は事実上消滅しており、少数与党のために自公以外の野党の協力が不可欠だ。取り沙汰されるパートナー候補は日本維新の会、国民民主党など。国民の玉木雄一郎代表は選挙期間中、「維新は連立まっしぐらですからね…」とけん制しながら「政権と協力できることはする」と連立入りの可能性もほのめかした。