高市早苗首相誕生までの激動の17日間 「初の女性総理」への意外な思い

自民党の高市早苗総裁(64)は21日、衆院本会議の首相指名選挙で第104代首相に選出された。衆院の1回目投票で過半数を超える237票を積み上げ、決選投票を待たずして首相の座をゲット。日本憲政史上初めてとなる女性首相が誕生した。同日中に組閣に着手。夜に会見し「日本の国益を守り抜く」などと語った。
「高市早苗君を、衆院規則第18条第2項により、本院において内閣総理大臣に指名することに決まりました」。額賀福志郎衆院議長による結果報告が場内に響きわたると、高市新首相は万雷の拍手の中、深々とお辞儀した。この日は総裁選期間中によく着用していた鮮やかなブルーではなく、地味なダークブルーのスーツ。落ち着いた様子でかすかな笑みを浮かべ、再びの拍手を浴びながらさっそうと議場を後にした。
高市氏は皇居での首相任命式と閣僚認証式を経て、午後10時から官邸で記者会見を行った。まず「新内閣が成立するまで時間を要したことに、国民に心よりおわび申し上げる」と政治空白が長期化したことを陳謝し、「国家国民のため全力で変化をおそれず、果敢に働いて参ります。そのための内閣を本日、作り上げます。結果を出して、強い日本を作るため、絶対にあきらめない」と宣言。「強い日本経済を作り上げ、外交安全保障で日本の国益を守り抜く」と語った。新内閣については「決断と前進の内閣」と説明した。
初の女性首相に向けては、まさにイバラの道だった。今月4日に自民党総裁選を勝ち抜き、同党初の総裁に就任。だが、直後に四半世紀にわたるパートナーだった公明党が連立を離脱した。窮地で現れたのが維新だった。16日に連立に向けた政策協議を行うとの発表を受け、高市氏は20日までのわずか4日間で維新との協議をまとめ上げた。
激動の17日間を経てつかんだ日本初の女性首相の座。一方で高市氏は決して「女性」にこだわっていたわけではなかった。総裁選で高市陣営だった女性議員は「彼女を最初応援する際に『初の女性総理という意識を必ず持ってください』と言ったら『自分が一番最初になりたいというものではない。そういうのは、周りが言ってくれるだけのことだから』と返されました」と打ち明ける。
学生時代はヘビメタバンドのドラマーを務め、今の愛車はトヨタのスポーツカー「スープラ」。女性らしさにこだわり過ぎずに政界の道を進んだ結果が、女性首相という歴史的な瞬間を生んだ。(樋口 智城)