「私のせいで…自責の念堪えない」安倍氏の応援演説受けた佐藤議員が証人出廷 銃撃裁判

令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の第2回公判が29日、奈良地裁で開かれ、検察側の証拠調べに続いて証人尋問が行われた。1人目の証人として、当時参院選の候補者として安倍氏の応援演説を受けていた佐藤啓参院議員(46)が出廷。「言論を封殺する行為で、許されない」と述べた。
事件は、投開票日を2日後に控えた4年7月8日午前11時半ごろ、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で発生。証人尋問によると、佐藤氏は安倍氏の応援演説をすぐ近くで聴いていた。
演説中、「体験したことがない、大きな爆発音が2回した」。前へ誘導され、振り返ると安倍氏が倒れていた。
「総理!総理!」と声かけたが…
一見して厳しい状況と悟った。「総理!総理!」と声を掛けたが反応はない。「なんでこんなことをするんだ」。怒りと悲しみが入り交じり、涙が流れた。
搬送先の病院で、安倍氏の妻、昭恵さんとともに遺体と対面した。昭恵さんは憔悴(しょうすい)しているように見えた。「私のせいで命を失ってしまったという自責の念が堪えない」という。
検察側から「選挙の応援演説中に事件が起きたことをどう思うか」と問われると、「選挙は民主主義の根幹。現職国会議員の言論を暴力で封殺し、民主主義に対する挑戦で、許すことはできない」と訴えた。
この検察側の質問に対し、弁護側は「関連性がない」と異議を申し立てたが、裁判所は退けた。弁護側は冒頭陳述で今回の事件を「政治的な意図に基づくものではなく、ひとえに旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)に対する復讐(ふくしゅう)」と位置付けている。
起訴状によると、山上被告は4年7月8日、奈良市で参院選の応援演説中の安倍氏を手製のパイプ銃で撃ち、殺害したなどとしている。
山上被告は初公判で「全て事実。私がしたことに間違いない」と述べ、殺人罪の起訴内容を認めた。最大の争点は量刑で、旧統一教会が事件に与えた影響をいかに評価するかが焦点となる。