「どうしようもないけん…」「眠れない」 大分火災、疲弊する避難者

大分市佐賀関で住宅170棟以上を焼いた火災。一夜明けた19日、被害状況が明らかになるにつれ、住民らは一層不安を募らせた。
「もう全滅。でもどうしようもないけん。母親もいるからすぐには移動もできない」。19日午後、火災現場に自宅の様子を見に来た60代の男性はため息を漏らした。高齢の母親と暮らしていた自宅は前日の夜の火災で焼け、何も持たずに避難した。今は親類の家に身を寄せる。
大勢の住民が避難する佐賀関市民センターの公民館には19日午後、大分市の足立信也市長が訪問。床にマットや簡易ベッドを敷いて寝泊まりする状況を確認し、市の火災への対応状況や鎮火の見通しなどについて説明した。足立市長は避難が長期化する被災者らを公営住宅などで受け入れる意向を示し、「それほど住宅不足という感じにはならないと思う」と述べた。
一方、避難生活の改善は喫緊の課題だ。18日夜をセンターで過ごした70代の女性は、集会室の物音が気になり、室外のソファをベッドの代わりにした。車中泊をする人もおり、女性は「みんな同じだと思うが、夜もただ目をつぶるだけで眠れない」と疲労をにじませた。
佐藤樹一郎知事は19日、県庁で取材に応じ、「全力で消火活動を進め、引き続き企業・団体と連携して被災者支援に全力で取り組む」と述べたうえで、今後について「(国へ)必要な支援を要望していく」とした。【岡田愛梨、李英浩、山口泰輝、井土映美】
郵貯の引き出し、本人確認で可に
日本郵政グループは19日、大分市佐賀関の大規模火災の被災者を対象に、通帳や印鑑を紛失しても本人確認ができれば貯金の払い戻しに応じるなどの対応を始めた。12月18日まで。また、大分市は20日から、市役所本庁舎などに募金箱を設置し、被災者支援に充てる義援金の募集を始める。市役所本庁舎1階案内所のほか、佐賀関支所を除く各支所で受け付ける。12月19日まで。
佐賀関大規模火災の経過
<18日>
午後5時43分 大分市佐賀関の住宅街で「家が燃えている」と119番
午後7時30分 佐賀関市民センターの公民館に避難所開設
午後8時 延焼が拡大し、市が災害警戒連絡室を設置
午後11時まで 延焼が少なくとも20棟に拡大。住民男性(76)と連絡が取れなくなっていることが判明。山林への延焼拡大の恐れがあるとして、県と市が災害対策本部設置。住民121世帯の180人が避難。約350戸が停電
<19日>
午前0時30分 自衛隊の災害派遣の調整開始
午前3時 県が災害救助法の適用決定
午前4時まで 少なくとも170棟が延焼
午前7時ごろ 大分、熊本両県の防災ヘリが活動開始
午前9時 県が自衛隊に災害派遣要請
午後0時10分 連絡が取れなくなっていた男性宅の焼け跡から性別不明1人が心肺停止状態で見つかり、その後死亡が確認される