黄川田仁志アイヌ施策担当相は28日、英ロンドンの自然史博物館が保管するアイヌ民族の遺骨5体が日本に返還されると発表した。2026年度の受け取りに向けて英側と協議する。このうち4体は、幕末に英国領事館員による盗掘によって持ち去られた遺骨とみられ、約160年ぶりに返還されることになった。
返還が決まった遺骨のうち、収集された地域がわかっている4体については、引き取りを希望するアイヌ関係団体からの申請を12月1日から半年間受け付ける。申請がない場合、北海道白老町の国立施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」にある慰霊施設で保管されるという。
内閣官房アイヌ総合政策室によると、遺骨のうち3体は1865年に道南部の落部(おとしべ)村(現八雲町)で、1体は森村(現森町)で収集された。英自然史博物館には翌66年に、当時の英国の箱館(現在の函館)領事ハワード・バイスと商人アルフレッド・ハウエルから寄贈を受けた記録があるという。もう1体の遺骨は収集地域が不明で、1900年に「アイヌ」の遺骨として寄贈された記録が残されていたという。
1865年の箱館では、英国領事館員らによるアイヌ墓地の盗掘が発覚し、外交問題に発展した歴史がある。館員らは近郊の森村で4人、落部村で13人の墓を暴いて頭骨などを持ち去ったとされ、アイヌ側が箱館奉行所に訴えた。その後、バイス領事が解任されるなど関係者が処罰され、賠償金も支払われた。
盗まれた17人のものとされる「遺骨」も返還され、墓が建てられたが、当時から真偽が疑われていたという。アイヌ総合政策室は今回返還される4体について「盗掘事件との関連はわからない」としている。
研究目的で収集された先住民の遺骨について、保管する博物館や大学から返還される動きは世界で広がっている。海外に保管されているアイヌ遺骨をめぐっては、外交ルートで交渉が行われており、2017年にドイツ、23年にオーストラリアから返還され、24年5月には英エディンバラ大から3体が返還されている。【三股智子】