茨城県古河市の介護老人保健施設での殺人事件は、入所者2人の死亡から5年以上が経過した10日、裁判員裁判初公判が水戸地裁で開かれた。殺人などの罪に問われた元職員、赤間恵美被告(39)は捜査段階では黙秘していたとされるが、初公判では「殺害しておりません」とはっきりした口調で述べ、起訴内容を否認した。
弁護人に向け笑顔も
赤間被告は午前10時の初公判開始前、押送(おうそう)職員に付き添われ、しっかりとした足取りで入廷した。黒い上下のスーツ姿でマスクを着用し、やや硬い表情だったが、弁護人には一瞬笑顔も見せた。
男性入所者2人をシリンジ(注射筒)による空気注入で殺害したとする検察側の起訴状朗読中、証言台の赤間被告は前を見据え、直立不動で聞き入った。罪状認否では「私は空気を注入してません。殺害しておりません」と言い切った。
疲れた様子なく
続いて検察側が冒頭陳述メモを読み上げた。令和2年7月6日に入所者の吉田節次さん=当時(76)=が亡くなった後、所持品検査で赤間被告のトートバッグの中から犯行に使ったとされるシリンジ2本が見つかったことなどが明らかにされたが、被告の表情に変化はなかった。
公判は休憩を挟みながら断続的に夕方まで続いたが、赤間被告は閉廷まで特に疲れたような様子は見せなかった。
この日は傍聴券を求めて報道陣を含む99人が訪れ、抽選を経て17人が入廷した。午前8時過ぎから並び傍聴券を手にした水戸市の男性(82)は「2人が病気以外の原因で亡くなったということを検察側が証明するのはなかなか大変。難しい裁判になるのではないか」と感想を語った。(三浦馨)