宗教2世、山上被告に境遇重ね「思い交錯、苦しい」 元信者からは教団の責任問う声も

10月の初公判以降、15回にわたった審理で、山上徹也被告は安倍晋三元首相銃撃の目的を旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)の被害に対する「報復」などと語ってきた。18日の結審に際し、元信者や宗教2世らからは被告の境遇に自らを重ねた苦しみや、事件の背景にある教団の問題に言及する声が上がった。
裁判では、山上被告や家族の境遇が明らかとなり、量刑や解散命令に社会の関心が集まった。
「さまざまな人の思いが交錯し、苦しかった」。こう語るのは、元信者の30代女性。両親が旧統一教会の合同結婚式で結ばれて生まれた宗教2世だ。ほぼ無収入の状態でいまも信仰を続ける70代の両親と同居し、介護しながら月20万円弱の手取りの半分以上を高額献金に端を発する借金返済に充てている。
「山上被告の裁判や解散命令の可否を最後に、宗教2世問題が解決したかのように忘れ去られないか懸念している」
教団元幹部の男性(51)は「どんな理由も人を殺していい理由にはならない」と話す。その一方で犯行の背景に高額献金問題があることに触れ、「(教団は)こうした結果を生んだことの深い痛みと反省の思いを強く自覚しなければならない」と強調した。
裁判では、山上被告が「自暴自棄」に陥っていったかのような経緯も浮かび上がった。元信者のジャーナリスト、多田文明氏(60)は「一人で考えて一人で思いを募らせてしまったところが問題だった。社会にもっと声を上げられる環境があれば」と語り、山上被告の社会的孤立を悔やんだ。(長谷川毬子、永礼もも香)