滋賀県日野町で1984年、酒店経営の女性が殺害された「日野町事件」で、強盗殺人罪で無期懲役が確定し、服役中に75歳で病死した阪原弘(ひろむ)さんの再審請求審で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は24日付の決定で、再審開始を認めた大阪高裁決定を支持し、検察側の特別抗告を棄却した。大津地裁で裁判がやり直され、無罪が言い渡される公算が大きくなった。
死刑や無期懲役が確定した戦後の事件で「死後再審」が始まるのは初めて。再審制度を巡っては、政府が刑事訴訟法改正案を特別国会に提出する方針を示している。再審開始決定に対する検察の不服申し立てを禁じるかなど今後の国会での議論に影響する可能性がある。
決定は「高裁に誤りがあるとは認められない」とするだけで、詳しい理由は示さなかった。第2小法廷は裁判官4人で通常審理されるが、元大阪高検検事長の三浦守裁判官は審理から外れ、残る3人全員一致の判断。
酒店の常連だった阪原さんは店主の女性(当時69歳)の首を絞めて殺害し、金庫を奪ったとして88年3月に逮捕された。捜査段階で「自白」したものの他に直接証拠はなく、公判でアリバイを訴えるなどして無罪主張に転じた。しかし、1審・大津地裁、2審・大阪高裁は無期懲役とし、2000年に最高裁で確定。翌01年に再審請求した阪原さんは11年に亡くなった。
遺族が12年に起こした第2次再審請求では、自白やアリバイの信用性が争点となった。確定判決は遺体と金庫の遺棄現場で阪原さんが警察官を自ら案内したと認定したが、審理の中でこうした警察の「引き当て捜査」の状況を示す写真のネガフィルムが新たに検察側から開示された。
大津地裁決定(18年7月)は、開示されたネガに基づいて、阪原さんが自発的に遺体や金庫の遺棄現場を案内したのではなく、警察官が誘導した可能性があると認定。「確定判決の事実認定に合理的な疑いが生じた」として再審開始を決めた。大阪高裁決定(23年2月)は遺体遺棄現場のみ警察官の誘導の可能性を認めた。他に阪原さんのアリバイを否定していた知人が、再審請求審の段階でアリバイに沿った証言に変遷した点も無罪方向の新証拠に当たるとして再審開始を支持した。
最高検は「特別抗告が棄却されたことは遺憾であるが、大津地検において、あらためて証拠関係を精査し、再審公判に適切に対応するものと承知している」とのコメントを出した。【三上健太郎】