深刻な「教師不足」に歯止めがかからない。文科省は手当の増額や校務DXなどの対策を提示するが、「ピントがずれている」と筆者は考える。
【画像】「間違ってはないが、これで教員志願者が増えるのか?」と筆者が疑問詞する、文科省の教員不足への方策
教師の精神疾患による病気休職者数は高止まりしており、その要因の多くは「児童・生徒への指導」や「職場の対人関係」にある。教師が自信を持って指導できず、心身ともに削られている現場の疲弊は明らかだ。
教職の魅力を取り戻すには、小手先の改善ではなく、教師の権限や働き方に大胆なメスを入れることが不可欠ではないか。教職の授業を担当する筆者が、現実的な改革案を提示する。
■ピントがずれている文科省の姿勢
文部科学省が「令和7年度『教師不足』に関する実態調査」を行っている。その中で、全国で慢性的な教師不足がより明確になり、教員志願者を確保する対応策を打ち出した。
例えば、「教師を取り巻く環境を整備し、教職の魅力を向上」するとして、教職調整額の10%までの段階的な引き上げ、効率的な業務遂行を実現するための校務DXの推進などの具体策を提起している。
「教職の魅力に関する全国的な広報」戦略では、教師を目指す学生等へ教職の魅力を積極的に発信するとしている。
いずれも間違った方策ではない。ただ、こんなことで教員志願者が増えるだろうか。2024年度実施の教員採用試験は、小学校で2.0倍、中学校で3.6倍と、過去最低の倍率である。
対して、校務DXなど存在せず、教職調整額は4%だと信じて疑わなかった2000年代前半。小学校教員の倍率は12.5倍、中学校では17.9倍と過去最高値を記録していた。
つまり、環境整備をしたり、教職の魅力を発信したりしなくても「先生になりたい」という若者は引きも切らなかったのである。それなのに、こんなピントがずれた分析や取り組みにはあきれるばかりだ。
■なぜ教員志願者が減ったのか?
文科省が24年度に実施した「公立学校教職員の人事行政状況調査」の結果を見てみよう。
24年度の教育職員の精神疾患による病気休職者数は7087人。23年度の7119人からやや減少したものの、7000人という大台を超えたままである。
その病気休職の要因を見てみよう。上位2項目は「児童・生徒に対する指導」「職場の対人関係」となっている。教師は児童・生徒に対する指導で疲弊し、職場の対人関係に問題を抱えることで心を病んでしまう――。