政府は28日付で、2026年春の褒章受章者603人(うち女性137人)と28団体を発表した。29日に発令される。
学術研究や芸術、スポーツなどの分野で活躍した人に贈られる紫綬褒章には、ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートのペアで日本勢初の金メダルを獲得した三浦璃来(りく)選手(24)と木原龍一選手(33)、俳優の吉田鋼太郎さん(67)ら26人(同7人)が選ばれた。
各職業分野で一筋に励んだ人が対象の黄綬褒章は、195人(同18人)、福祉や教育など公益に尽くした人への藍綬褒章は373人(同104人)が受章した。社会奉仕活動に貢献した緑綬褒章は9人(同8人)と28団体だった。人命救助に力を尽くした紅綬褒章の受章者はいなかった。
「あなたのために滑る」に奮起
2月のミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートで、ペアとして日本勢初の金メダルに輝いた。ショートプログラムはリフトが崩れて5位と出遅れ、「もう終わった」と落ち込む木原さんを、三浦さんが「積み重ねてきたものがある」「私はあなたのために滑る」と励まし、フリーで逆転。その絆が感動を呼んだ。
2019年にペアを結成し、カナダを拠点に鍛錬を重ねて世界トップに上り詰めた。受章について2人は「大変光栄に存じます。パートナーとともに歩んできた日々、そして多くの方々の支えがあってこそ、今の私たちがあります」とコメントした。
今後はプロとして活動し、後進の育成にも携わる予定で、「もっとフィギュアのペアを知っていただけるように、様々な活動に2人で挑戦したい」と木原さん。「りくりゅう」の歩みは続く。
点数出ない仕事に合格点もらったよう
「点数の出ない仕事。大丈夫だよという点数をもらったよう。背筋を伸ばし、邁進していこうという勇気をもらえた」と喜びを語る。
大学在学中の18歳の時にシェークスピア劇を始めて、50年。近年は映画、ドラマでも高い評価を受けているが、演出家の蜷川幸雄、出口典雄の薫陶を受けた生粋のシェークスピア俳優だ。演出も多く手がけている。
現在は、5月にさいたま市で開幕する主演舞台「リア王」の稽古中。老境の王を演じるが、「感情の振幅がとてつもなく大きい。体力、精神力、知力がいる」と難役ゆえの魅力を語る。
師匠の蜷川と同じく、「シェークスピアと言えどエンターテインメント。知性を大事にしつつ、涙と笑いと感動がないとやる意味がない」を持論としている。そして、今後の目標も定まった。「リア王を80代でやりたい。やれるもんなら90代、100歳でも」
芸術の枠超えた多角的な視点
「受章の知らせに驚きました。音楽評論家になるつもりはなく、ただ好きな音楽について書きたい一心でやってきただけですから」と驚きを隠さない。
中学生の頃から伊福部昭など近現代の日本の作曲家を好んで聴いていた。「最初は刹那的に耳の刺激を楽しんでいたのが、やがて音楽の形式などに関心を持つようになり、聴く音楽の幅が広がった」と振り返る。
慶応大教授として政治思想史を教えるかたわら、雑誌や新聞で音楽批評や時事コラムなどを担当。歴史的背景や社会情勢などを踏まえた多角的な評論は、ジャンルを超えた博覧強記に支えられ、クラシック音楽評論に新風を吹き込んだ。
音楽を芸術の枠を超えた大きな視点で捉えることで、「これまでなおざりにされていたマイナーな作曲家や作品に新しい光を当てたい。まだまだやるべきことはあります」と話す。
紫綬褒章受章者(敬称略、年齢は発令日の29日現在)
東北大教授 北澤春樹(63)▽音楽評論家 片山杜秀(62)▽東大名誉教授 高薮縁(67)▽東大名誉教授 相澤清晴(66)▽東大名誉教授 荒木尚志(66)▽日本舞踊家 中村梅彌(68)▽東大教授 今橋映子(64)▽フィギュアスケート選手 木原龍一(33)▽スノーボード選手 木村葵来(21)▽映画美術監督 上條安里(64)▽スノーボード選手 戸塚優斗(24)▽KDDI総合研究所会長 中村元(60)▽東大教授 東山哲也(54)▽スノーボード選手 深田茉莉(19)▽フィギュアスケート選手 三浦璃来(24)▽スノーボード選手 村瀬心椛(21)▽小説家 宮部みゆき(65)▽俳優 吉田鋼太郎(67)▽元森永乳業常務執行役員研究本部長 阿部文明(64)▽東京理科大教授 工藤昭彦(65)▽元情報通信研究機構副研究開発推進センター長 隅田英一郎(70)▽京大教授 原田博司(56)▽京大名誉教授 金光義彦(68)▽広島大教授 二川浩樹(64)▽熊本大名誉教授 荒木栄一(68)▽京大名誉教授 松田祐司(66)