大分市のマンション階段で2014年、管理人(当時62)が知的障害のある男性(同42)に突き飛ばされ死亡する事件があった。 遺族は、男性の両親に約5400万円を求めて提訴。しかし、大分地裁は今年8月22日、両親の監督義務違反を認めず、請求を棄却した。 この事件で、男性は傷害致死容疑で書類送検されているが不起訴となっている。すでに亡くなっているそうだ。 ●事案の持つ複雑な課題 知的障害の重さによっては本人の責任を問えないことがある。両親に責任を負わせるのも酷な部分はあるだろう。常に世話をすることはできないし、本人の自立を阻害することにもなりかねない。 一方でネットでは判決に批判的な声もあがっている。誰の責任も問えないなら被害者側は報われないではないか、という疑問があるようだ。 ただ、そもそも論を言えば、遺族側が勝訴したとしても、賠償金を受け取れないリスクはある。相手に資力がなければどうしようもないからだ。 被害者側の補償に実効性がなければ、社会は加害者の属性を遠ざける方向に向かってしまう恐れがある。どんな制度が必要なのか。犯罪被害者支援に取り組む宇田幸生弁護士に意見を聞いた。 ●犯罪被害への給付金がある ーー「犯罪被害者等給付金(犯給金)」という制度がありますが、今回は被疑者(知的障害のある男性)が「不起訴」になっています。被害者の補償はどうなるんでしょうか? 「殺人等の故意の犯罪行為によって不慮の死を遂げられた被害者のご遺族や、重傷病を負ったり、障害が残ったりした被害者の方は、一定の要件の下、犯給金の支給を受けることができます(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律)。 今回のように、傷害致死事件で加害者が不起訴になったからといって、給付金の受給が受けられなくなる訳ではありません。 法律上も、心神喪失者が加害者である等、刑事責任を問えない場合であっても、同制度の給付対象となる『犯罪行為』に該当する旨が明記されているからです(同法1条)」 ●平均は614万円 ーー金額はいくらぐらいになるのでしょうか? 「今回の事件の詳細は必ずしも明らかではありませんが、給付金を受領できる可能性が高いといえるでしょう。 被害者が亡くなられ、ご遺族に対して遺族給付金が支給される場合には、320万円~2964万5000円の範囲で具体的な支給額が決められることになります(2018年3月31日以前発生の事件の場合)。
大分市のマンション階段で2014年、管理人(当時62)が知的障害のある男性(同42)に突き飛ばされ死亡する事件があった。
遺族は、男性の両親に約5400万円を求めて提訴。しかし、大分地裁は今年8月22日、両親の監督義務違反を認めず、請求を棄却した。
この事件で、男性は傷害致死容疑で書類送検されているが不起訴となっている。すでに亡くなっているそうだ。
知的障害の重さによっては本人の責任を問えないことがある。両親に責任を負わせるのも酷な部分はあるだろう。常に世話をすることはできないし、本人の自立を阻害することにもなりかねない。
一方でネットでは判決に批判的な声もあがっている。誰の責任も問えないなら被害者側は報われないではないか、という疑問があるようだ。
ただ、そもそも論を言えば、遺族側が勝訴したとしても、賠償金を受け取れないリスクはある。相手に資力がなければどうしようもないからだ。
被害者側の補償に実効性がなければ、社会は加害者の属性を遠ざける方向に向かってしまう恐れがある。どんな制度が必要なのか。犯罪被害者支援に取り組む宇田幸生弁護士に意見を聞いた。
ーー「犯罪被害者等給付金(犯給金)」という制度がありますが、今回は被疑者(知的障害のある男性)が「不起訴」になっています。被害者の補償はどうなるんでしょうか?
「殺人等の故意の犯罪行為によって不慮の死を遂げられた被害者のご遺族や、重傷病を負ったり、障害が残ったりした被害者の方は、一定の要件の下、犯給金の支給を受けることができます(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律)。
今回のように、傷害致死事件で加害者が不起訴になったからといって、給付金の受給が受けられなくなる訳ではありません。
法律上も、心神喪失者が加害者である等、刑事責任を問えない場合であっても、同制度の給付対象となる『犯罪行為』に該当する旨が明記されているからです(同法1条)」
ーー金額はいくらぐらいになるのでしょうか?
「今回の事件の詳細は必ずしも明らかではありませんが、給付金を受領できる可能性が高いといえるでしょう。
被害者が亡くなられ、ご遺族に対して遺族給付金が支給される場合には、320万円~2964万5000円の範囲で具体的な支給額が決められることになります(2018年3月31日以前発生の事件の場合)。