幼稚園児が万引き、買取額が不満で暴れる女性…古本屋店主が嘆くモンスター客

本を買える古本屋は、買取金額もそれに応じて安い。そして中には、買取額を適当につける古本屋もあるそうだ。

「ウチが買取金額を安く、適当につける理由は、一部の悪質な客のせいです」

こう話すのは、古本屋を経営している中村誠さん(仮名・42歳)。中村さんの経営する古本屋はチェーン店ではあるものの、かなり小さい店舗だという。

「自分は本や漫画が大好きで、古本屋を経営することは昔からの夢でした。小さい店だからこそ、地域の住民に親しまれるような店を目指していましたね」

しかし、その幻想はすぐに打ち砕かれることとなる。

「まず、万引きが当たり前のように毎日発生するんですよ。一番小さい子は、幼稚園児でした。買取も、高価買取リストの人気漫画を、封も開けていない状態で、何冊も小・中学生が持ってくることがあるんです。あからさまに万引きで入手したであろう商品でした。18歳未満は、親の同伴がなければ絶対に買取不可にせざるを得ませんでしたね」

幼稚園児までもが万引きしているという現実に驚愕するが、買取の商品までもが万引きで入手した商品となると、凄まじい話だ。「買取しろ」とごねる子どもの保護者に電話連絡をしたところ、中にはとんでもないモンスターペアレントもいたという。

「『うちの子が古本屋なんかで買取希望をするぐらい困っているなら、あんたがお小遣いをあげなさい!』と、まったく意味のわからないキレ方をされたこともありました。ときには親のほうから店に来て、『あの子が売った物は、あの子の妹の物だから妹がかわいそう。なんで買い取ったの!?』と……これが毒親っていうのかな、と思い知らされました」

これらの出来事でわかるように、買取で厄介なのは、一部の18歳未満の客よりも、その親だったり、同じく一部の、いい歳をした客なのだそうだ。

「多いのが、明らかにゴミ捨て場から拾ってきたような、ボロボロで汚いうえに、なんの価値もない本を買取させようとする人たちです。買取するまで、ずっと店内に居座りますからね。言いたくないのですが、いるだけでほかのお客さんが出ていってしまうような見た目や臭いの人もいますから……ゴミにしかならない本に、泣く泣く数十円支払って帰ってもらっています」

◆発売日と見た目だけで査定する日々

なんともひどい話だが、実はこうした、ある意味“わかりやすい人”はまだマシだった。

「今まで買取をしてきて一番びっくりしたのが、20代前半ぐらいの大人しそうな女性の一件です。女性が大量に持ってきた本は、値段が高くつけられるような物は1つもなかったんですよね。それでも他店よりは高いであろう買取金額を伝えたら、最初は静かに『大切にしてきた本ばかりなので、なんだかショックです』と言われたんです。

では、金額がある程度つく本だけの買取にしましょうかと提案したのですが……そうしたら女性は、鬼のような形相に変わり、『私は○○(男性名)に捨てられたから、大切な物も全部処分しないといけないの!! あんたに私の気持ちがわかるの!?』と言って、暴れ出したんです。さすがに警察を呼ぶしかありませんでした」

自分の店が泥棒市場状態になっていることに嫌気のさした中村さんは、1冊1冊をていねいに査定して買取すること自体がイヤになってしまった。今は高価買取リスト以外の商品は、発売日と見た目だけで査定しているという。

「以前は、どんなに古くてボロボロな本だとしても、価値があればそれ相応の値段をつけていたんですけどね……そのことをわかって、『中村さんのお店だからこそ買取してもらいたい』と言ってくれているお客さんたちもいました。それが今では、店の商品をAmazonに出品して、売れた本の梱包と発送ばかりをしています」

自分の理想の古本屋とは大きく違う店になってしまいました、と寂しそうに笑う中村さん。時代の変化とともに、ネットでの売買が中心となることは仕方がないことなのかもしれない。しかしながら、商品の価値がわかる人が経営する店舗が、一部の悪質な客のせいで機械的な査定方法しかできなくなるというのは、なんとも残念な話である。<取材・文/関圭一>

―[店員が語る困ったモンスター客]―