千曲川が市中心部を流れる長野県千曲市は、台風19号による氾濫で、長野市に次ぐ甚大な被害を受けた。29日に開かれた定例記者会見で、台風19号の被害状況を発表。避難所になっていた更埴文化会館「あんずホール」は大量の土砂が流れ込み閉鎖に追い込まれた。岡田昭雄市長は「周辺市町村への避難も検証が必要かと思う」と述べ、市外に避難する「広域避難」を検討していることを明らかにした。
市内にある杭瀬下水位観測所は台風が上陸した12日午後9時50分、千曲川の氾濫危険水位(5メートル)を1メートル以上超える6メートル40センチを観測した。市は、市街地が浸水した最大の原因は市街地にある「霞堤(かすみてい)」と分析している。増水した川の水をあえて遊水地に逃がして洪水のリスクを下げる堤防に、設計の限界を超える水が流入したため、220ヘクタール以上が浸水した。
床上・床下浸水した家屋は計1677棟に上り、県内では長野市に次いで多かった。田畑や公共施設なども浸水し、避難所には12日には最大で4840人が避難したという。
市が避難所に指定しているあんずホールにも多くの住民らが避難していた。だが、千曲川から約400メートルの距離にあるホールにも大量の土砂が流れ込み、地下にあった配電盤などの設備や機器が浸水して使えなくなり、停電になった。トイレも使えなくなり、市は13日早朝に用意したボートで避難者らを別の場所に移したという。
市によると、市内にある約7割の指定避難所がハザードマップの浸水区域にある。岡田市長は「(避難所は)地震には強いけど、水害には弱かった」と振り返り、さらに「増水すると、平らな所は全て水没する。山手に避難をしたら土砂災害が心配。広域避難を検討しないといけない時代に来ていると思っている」と述べ、広域避難の具体的な方法について検討するという。【坂根真理】