自民党の河井克行前法相(56)=衆院広島3区=の妻で同党の河井案里参院議員(46)=広島選挙区=の陣営が、初当選した2019年参院選で車上運動員に違法な報酬を支払ったとされる事件で、広島地検は3日午前、公職選挙法違反(運動員買収)の疑いで案里氏の公設第2秘書、立道浩容疑者(54)=広島市安佐南区=ら3人を逮捕した。地検は同日、夫妻の議員会館(東京)の事務所へ捜索に入った。地検は夫妻の関与の有無についても慎重に調べる。
他に逮捕されたのは、克行氏の政策秘書、高谷真介(43)=東京都葛飾区▽案里氏陣営幹部、脇雄吾(71)=広島市西区――の2容疑者。逮捕容疑は、立道容疑者らは参院選の選挙期間中の19年7月19~23日、選挙カーに乗ってアナウンスする車上運動員13人に対し、14回にわたり公選法が定める日当(上限1万5000円)を超える報酬として計204万円を支払ったとしている。
地検は1月15日以降、広島市内にある立道容疑者の自宅や夫妻の事務所などを捜索。選挙に関する資料や携帯電話、パソコンなどを押収し、陣営内でのやり取りなどを調べてきた。
立道容疑者は以前、克行氏の秘書だったほか、夫妻の後援会や政治団体の会計責任者を務めた時期もある。参院選では運動員との連絡や報酬の支払いを担当し、案里氏の初当選後に公設秘書に就いた。関係者によると、地検の任意の聴取に対し、違法な報酬の支払いについて自身の関与を認め、違法性の認識があったと説明したという。
一方、車上運動員らは地検の任意聴取に、1日あたり3万円の報酬を受け取ったことを認め、「車上運動員報酬」1万5000円分と「人件費」1万5000円分の日付が異なる2枚の領収書にサインを求められたと説明しているという。法定内の金額を支払ったと偽装するためだったとみられる。
案里氏の陣営の選挙違反疑惑は19年10月に週刊誌が報じ、克行氏は法相を辞任した。夫妻は以降2カ月半にわたって公の場に姿を見せなかったが、地検の捜索を受けた1月15日の深夜、東京都内で別々に記者団の取材に応じ、謝罪したうえで議員辞職する考えがないことを強調した。しかし、捜査中であることなどを理由に、疑惑については十分な説明をしていない。
公選法は選挙運動の総括主宰者や出納責任者らの有罪が確定した場合、候補者の当選が無効になる「連座制」を定めており、今回の事件で案里氏に適用されるかが焦点となる。【賀有勇、中島昭浩】
運動員買収
選挙運動の対価として運動員に金銭や物品などを渡す行為。総務省によると、選挙運動は各陣営の資金力の差が影響しないように自発的に無報酬で行うのが原則になっており、受け取った側も処罰される。例外として、選挙カーで候補者の名前を連呼する車上運動員や手話通訳者、要約筆記者には上限1万5000円、事務所で接客や宛名書きなどをする事務員には上限1万円の日当を支払うことが認められている。法定刑は4年以下の懲役か禁錮、または100万円以下の罰金。
連座制
候補者の関係者が選挙違反で有罪になった場合、連帯責任で候補者の当選が無効になり、同一選挙区での立候補が5年間禁止される制度。①選挙運動の総括主宰者や出納責任者らの罰金以上の刑②秘書や父母、配偶者、兄弟姉妹などの親族、選挙運動の計画立案や調整をする組織的選挙運動管理者らの禁錮以上の刑――が確定すると適用される。①の場合は候補者が不服訴訟を起こすことができ、②の場合は当選無効を求めて検察官が起こす行政訴訟を経て効力が発生する。2012年衆院選を巡る医療法人「徳洲会」グループの公選法違反事件では、グループ幹部の有罪が確定し、自民公認で当選した徳田毅氏(鹿児島2区)に適用された。