菅首相にバイデン大統領と米メディア“塩対応”…五輪は「開催努力」支持どまり

対面会談一番乗りを勝ち取り、意気揚々と訪米した菅首相の最大の目的は、バイデン米大統領に東京五輪・パラリンピックへの“前向き”なメッセージをもらうことだった。米国選手団の派遣や、大統領自身の出席を口にしてくれれば言うことなしで、訪米前、政権内では「大統領の出席を確約してもらって開催機運を高める」と意気込んでいた。

しかし、バイデン大統領は想像以上に冷ややかだった。16日午後(日本時間17日未明)の共同記者会見では、男子ゴルフのマスターズ・トーナメントで優勝した松山英樹には触れながら、ゴルフも五輪種目なのに、五輪についての言及は一切なし。結局、最後までバイデンの口から“オリンピック”という単語は出てこなかった。ひとり菅首相が、「世界の団結の象徴として開催する決意を伝えた。大統領から支持を改めて表明してもらった」と語っただけだった。

そのうえ、会見後に発表された共同声明に記されていたのは、「安全・安心な五輪・パラリンピックを開催するための首相の努力を支持する」。支持は支持でも、「開催を支持」ではなく「開催のための努力を支持」に過ぎなかったのだ。

バイデン大統領は、首脳会談中もマスクの2枚重ねを日本側に要求するほど新型コロナ感染を警戒している。第4波拡大中で、ワクチン接種率がいまだ1%未満の日本での五輪を、支持できるはずはない。

質問スルーは国外では通用しない

米メディアはさらに冷淡だ。

日米の共同会見にもかかわらず、質問した2人の米記者はバイデン大統領に対し内政問題を聞いただけ。米国内の銃規制への本気度と対イラン政策について尋ねた。一方で、菅首相は五輪について質問したが、「公衆衛生の観点から開催を推進するのは無責任ではないか」と批判的なもの。菅首相はこの質問をスルーして答えなかった。

菅首相の訪米でハッキリわかったのは、バイデン大統領も米国メディアも、東京五輪の開催を期待していないということだ。

米AP通信は16日、東京五輪について「開催される、ただし名ばかりで」と題したコラムを掲載。コロナの逆風の中でも大会は実施されるが、選手同士の交流が制限される「名ばかり五輪」になると辛辣だ。米紙ニューヨーク・タイムズも「一大感染イベント」と書いていた。これが米国内世論の空気なのだろう。

元外務省国際情報局長の孫崎享氏が言う。

「米国内もコロナ感染者が再び増加傾向です。そんな状況に加え、米国内世論も五輪開催に懐疑的なのに、バイデン大統領が五輪に前向きな発言などできるわけがありません。菅首相が米記者の質問を無視したことは、違和感を持って受け止められたでしょう。都合の悪い質問には答えない、いつもの対応なのでしょうが、それが通用するのは国内だけです」

開催機運を高めるにはほど遠い訪米だったのは間違いない。