京都市営地下鉄、車両内の防犯カメラ設置ゼロ コロナで資金不足

事件の抑止やテロ対策などを目的に車両内の防犯カメラ設置が鉄道各社で進む中、京都市営地下鉄が1台も導入できずにいる。来春に投入予定の新型車両も、防犯カメラの設置はゼロ。導入を阻む原因をたどると、コロナ禍による観光客の急減という京都ならではの事情につながる。
京都市営地下鉄には現在、烏丸線と東西線の2路線があり、計37編成(1編成6両)で運行されている。ただ、どの車両にも防犯カメラは付いておらず、現時点で導入される予定もない。烏丸線の9編成は老朽化に伴い、来春から2025年度までに順次、新型車両「20系」に更新される予定だが、いずれもカメラが付かない設計で契約を済ませており、設計の変更予定もない。
市交通局によると、コロナ禍前はインバウンド(訪日外国人)など観光客の増加を背景に、地下鉄の利用客数は年々増加傾向にあった。19年度決算でも、地下鉄事業は23億円と5年連続での黒字を確保していた。
ところが、20年春から本格化したコロナ禍により状況は一変した。1日当たりの利用客数は19年度の40万人から、20年度は26万7000人と33・2%の大幅減。運賃収入も19年度の257億7800万円から、20年度は169億4200万円と88億3600万円(34・3%)の大幅なマイナスとなった。
その結果、地下鉄事業は20年度決算で、深刻な資金不足を示す「経営健全化団体」にまで転落。市交通局の担当者は「防犯カメラの有効性は承知しているが、設置にはかなり費用がかかるうえ、ランニングコストも大きい」と打ち明ける。
鉄道車両内の防犯カメラは、15年に起きた東海道新幹線放火事件など乗客が被害に遭う事件の発生に加え、16年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や東京五輪・パラリンピックでの安全対策などとして、各社で進められてきた。関西の鉄道会社でも、京阪電鉄が21年春から導入した車両にカメラを設置したほか、大阪メトロも御堂筋線に18年から投入した車両にカメラを付けている。
乗客が襲われる事件はここ最近でも相次いでおり、8月には東京都内を走る小田急線の車内で乗客10人が刃物で襲われる事件が発生。10月にも、都内を走る京王線の車内で乗客17人が襲撃された。
事件を受け、国交省は12月3日、鉄道会社との意見交換を踏まえ、新たに導入する車両に防犯カメラを設置するよう義務付ける検討を進めるとした再発防止策を発表。早ければ22年度にも国交省令を改正し、防犯カメラの設置場所などの基準を盛り込みたい考えだ。
同省の担当者は「来春から走る車両が、義務化の対象になる可能性は低い」として、来春に投入される分の「20系」には適用されないとの見通しを示す。そのうえで「ただ、方針を出したのは設置を進めてほしいからだ」と設置に理解を求める。
京都市交通局も一連の事件を受け、駅構内や車内の巡視を強化したほか、車内アナウンスを増やすなどソフト面での安全対策を進めている。担当者は「防犯カメラを付ける場合、録画データの取り扱いなども問題になる。国から詳細が示されるのを待ちつつ、導入の是非について検討したい」としている。【添島香苗】