福島の「静岡おでん」再出発 放火事件で店舗焼失 常連客らに励まされ

福島市陣場町で8月に起きた放火事件に巻き込まれ、店舗を失った飲食店「しぞ~かおでん お茶の間」が、営業再開に向けて準備を進めている。失意の中、常連客らに励まされた店主、長谷川秀樹さん(45)は「多くの人に支えられ、温かさが身にしみた。楽しみにしてくれるお客さんのためにも、以前と同じ店づくりをしたい」と話している。【磯貝映奈】
同市中心部で21日に開かれたイベント会場に、おいしそうなだしの香りが漂った。「お茶の間」が、看板メニュー「静岡おでん」を事件後初めて仕込んで出店した屋台。独特の色の濃い汁に浮かぶ大根や卵は、使えるようになったばかりの新しい厨房で仕込んだ。
「元気そうでよかった」「新店舗が楽しみ」。常連客や放火事件を知る人が訪れ、久しぶりの味を楽しんだ。屋台には、焼け跡から消防隊が見つけ出してくれた木製の看板も掲げた。
長谷川さんの母親が静岡県出身で、本格的な静岡おでんを味わえる同店はカウンター席中心のアットホームな雰囲気だった。だが8月29日午後、隣のスナック兼住宅から出火し、棟続きの長谷川さんの店も焼失。スナック経営者の男が非現住建造物等放火の疑いで現行犯逮捕された。
事件当日の午後1時ごろ、仕込み中の長谷川さんが店の近くで慌ただしく動いていた警察官に気づき、尋ねると「(容疑者が)ガソリンのようなものをまいている。避難して」と言われた。外へ出ると、隣の店から煙が見えた。もう一度、自分の店に戻ろうとしたが、知人に「危ない」と止められた直後、隣から爆発音がして燃え広がったという。

取りに戻ろうとしたのは開店以来13年間、継ぎ足しながら守ってきた「秘伝のだし」。「危険な状況にもう少し早く気付けば、持ち出せたかも」と悔しさは残る。それでも再出発を決めたのは、常連客の励ましや友人の助けがあったからだ。電話やインターネットで「また、おいしいおでんが食べたい。頑張れ」といった激励が多く寄せられ奮起した。
事件当日、長谷川さんと仕込みをしていた妻文絵さん(38)も「多くの人が心配して声をかけてくれました。大変だけど前向きに頑張りたい」と話した。
新店舗の場所は友人が前の店舗の近くに見つけてくれて、11月中旬に再開予定という。