参議院選挙が3日、公示されました。日本テレビでは、投票前に考える「政党フカボリ」と題して、投票の参考になるよう各政党の現状や課題について、シリーズでお伝えしていきます。3日は国民民主党をフカボリします。現役世代を中心に急上昇した人気が参院選の直前で急落しています。どう支持を挽回するのか? 国民民主党の「守り」と「攻め」の戦略とは。
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国民民主党・玉木代表
「日本の政治を変える夏にしていきたい」
「手取りを増やす」をスローガンに、政治を変えると訴える玉木代表。しかしいま、変化を求められているのは、その国民民主党です。
NNNと読売新聞の世論調査で、今年1月と4月に過去最高の13%あった支持率が先月下旬、5%に急落。このピンチをどう打開するのか。玉木代表は――
国民民主党・玉木代表
「原点回帰で。原則はやっぱり、現役世代から豊かになろうということ」
反転攻勢のターゲットに挙げたのは「現役世代」からの支持。去年、国民民主党が衆院選で躍進する原動力となったのが、この20代、30代を中心とする「現役世代」でした。
まず、従来の支持という「守り」を固める戦略を選んだ玉木氏。密着取材で具体策が見えてきました。
演説を終えると、写真撮影に応じます。
会社員(42)
「撮ってもらいました! 一緒に2ショット。みんなに自慢します」
その場で写真をSNSにアップする人も。
――写真撮影の狙いは?
国民民主党・玉木代表
「政治に関心がない方でも、(友達から)送られてくるのが一番身近に政治を感じてもらえるきっかけになるかなと」
玉木氏が支持拡大に効果があると重視するのが、こうしたユーザーからユーザーへのSNS上での写真や動画の拡散です。
さらに、いま力を入れるもう1つのSNS戦略が。
国民民主党・玉木代表
「いまXをチェックして…」
フォロワー数およそ74万人という“拡散力”を使って始めたのが――
国民民主党・玉木代表
「1万3000人の方に同接いただいておりますけども」
一度に多くの人が視聴できるライブ配信です。
国民民主党・玉木代表
「就職氷河期世代対策、国民民主党だけが期待です、希望ですと言ってくれた人もいましたよ」
移動の車の中でも、SNS上での有権者との接触機会を増やす“ネットどぶ板選挙”を展開しています。
国民民主党・玉木代表
「リアルとネットをうまく組み合わせて、シナジー効果を出していくことが非常に重要だなと」
さらに、国民民主党は新たな支持層を獲得する「攻め」の戦略にも取り組んでいます。
広報戦略を担う、伊藤孝恵議員が明かしたターゲットとは――
国民民主党・伊藤広報委員長
「女性ですよね。いままで、男性が興味のあるといわれる分野に強い政党だったんですけど」
男性の支持が強かった一方で、弱点とされてきた女性の支持拡大を狙うというものです。
国民民主党・伊藤広報委員長
「政策・効果実感を重ねていく先にしか改善は見込めない」
国民民主党を取材する記者は――
国民民主党担当記者・中田早紀
「刺さる言葉・映える映像など、SNS上での拡散で支持拡大に成功してきた国民民主党。ただ、ネット上の支持は移ろいやすく、離れるのも早いと危機感を持っています。具体的で責任ある政策を打ち出し、リアルとネットの支持をどう固めていくか、戦略が問われています」
投稿者「F.Krueger」のアーカイブ
「生き残り懸けた選挙」=社民・福島党首―東京【25参院選】
社民党の福島瑞穂党首は東京・新宿のJR新宿駅南口で第一声。政党要件の維持を掲げ、「生き残りを懸けた選挙だ。社民党を躍進させてください」と声を張り上げた。青いジャケット姿で車の上に立ち、食料品の消費税ゼロや防衛予算削減などを訴え、自民党の農業施策などへの批判を繰り広げると、聴衆から拍手が起きた。
演説を聴きに来た東京都港区の無職女性(75)は、各党の公約について「与野党とも消費税や給付金の話ばかり」と批判。「生活に負けず劣らず大切な平和の問題にもきちんと向き合う政党に期待したい」と話した。 [時事通信社]
スキージャンプ・坂野旭飛さん死去 19歳 24年2月にW杯初出場
雪印メグミルクスキー部は3日、ノルディックスキー・ジャンプ男子の坂野旭飛さん(19)が1日未明に札幌市中央区のビルから転落し、亡くなったことを明らかにした。
札幌市出身の坂野さんは、元スキージャンプ選手で雪印メグミルクスキー部前監督の父・幸夫氏の影響で競技を始めた。下川商2年時に全国高校スキーを制し、世界ジュニアには22年から4大会連続で出場。24年2月にはW杯初出場。24年4月雪印メグミルクに入社し、将来の活躍を期待されていた。
入社後も着実に経験を重ね、今年2月27日から3月2日に行われた第96回宮様スキー大会国際競技会ノーマルヒルで5位、ラージヒルで9位。第26回伊藤杯シーズンファイナル大倉山ナイタージャンプ大会で5位に入ったのが最後の大会出場となった。
維新・吉村洋文代表、自公への対決姿勢鮮明「買収じゃないですか」2万円給付を痛烈批判…参院選第一声
第27回参院選(20日投開票)が3日、公示され、日本維新の会・吉村洋文代表=大阪府知事=が大阪・ミナミの「なんば広場」で大阪選挙区の公認候補2人とともに第一声を挙げた。
吉村代表はまず、大阪・関西万博、IR、うめきたの整備、市営地下鉄民営化など、大阪維新の会からスタートした維新15年の改革の成果を強調。続いて大きく2つの公約を掲げた。
1つめは、社会保険料を下げる改革。「所得が350万円の人、所得税は7万円ですけれど、天引きされる社会保険料はなんと50万円。同じ金額を会社、事業主も負担しています。(社会保険料減は)人口減少高齢化社会の中で絶対に必要な本質的な問題」と恒久的な“手取りアップ”と事業主の負担減を訴えた。
2つめは、大阪・関西を副首都として、首都圏をバックアップする経済圏を構築すること。「世界を見渡して、一極集中の国はほとんどない。米国もワシントンに全てが集まっているわけではない。カリフォルニア州は(2024年に)1つの州で日本のGDPを超えた。若い世代が頑張ったら夢をかなえるエリアをつくっていく」と大阪・関西が日本経済をけん引する仕組みをつくり出すとした。
さらに自公政権への対決姿勢を鮮明にした。「選挙前だからって『2万円の現金配ります。皆さんよろしく』って買収じゃないですか!」「『目の前でバラマキます』って違うやろ」と自公の現金2万円を給付するという公約を一時しのぎだと批判した。また、訪日観光客の消費税免除廃止も訴えた。
演説を終えると「吉村さ~ん!」という聴衆の声援に手を振って応えた。「万博また行くでぇ」と声を上げた男性にはサムアップで応じていた。
トカラ列島近海の地震、累計1000回超え…今朝も鹿児島県十島村の悪石島で震度4
鹿児島県・トカラ列島近海を震源とする地震は、3日も相次いだ。気象庁によると、震度1以上を観測する地震が正午までに29回起き、6月21日以降の累計は1001回に達した。
3日午前6時51分頃には、同県十島村の悪石島で震度4を記録した。同庁によると、震源の深さは約20キロ、地震の規模を示すマグニチュードは4・4と推定される。
一連の地震では、今月2日までに震度5弱を計3回観測するなど、約2週間にわたって活発化している。揺れの強かった地域では落石や崖崩れの危険もあるといい、同庁は震度5強程度の揺れを伴う地震に備えるよう呼びかけている。
それでも自公与党は減税しないのか…24年度の税収75兆円また過去最高更新、物価高反映し5年総額4.2兆円の上振れ
明らかに庶民から取り過ぎだ。財務省は2日、2024年度の国の一般会計税収が75兆2320億円になると発表した。5年連続で過去最高を更新。昨年11月の補正予算編成時の見込み額から約1.8兆円、年度頭の当初予算の見込み額からは約5.6兆円も上振れした。
法人税収は企業業績の好調を受け、前年度比2兆円増の約18兆円。大手メディアはバブル期の1990年度(約18.4兆円)以来の水準と大ハシャギだが、今や国の税収の根幹を成すのは庶民が買い物のたびに負担する消費税なのである。
24年度の消費税収は前年度比1.9兆円増の約25兆円。法人税収とは約7兆円もの開きがある。それこそバブル期の90年度に消費税収(税率3%)は4.6兆円に過ぎなかったが、増税に次ぐ増税で実に5倍以上にも跳ね上がっているのだ。しかも21年後半から物価高騰が始まって以来、消費税収はうなぎ上りである。消費税率は19年10月に10%へアップ。税収は翌20年度の約21兆円からグングン上昇し、5年間で4兆円も増加している。
「これだけ値上げラッシュが相次げば、消費税収が伸びるのは当然です。増えるいっぽうの消費税収には、物価高に苦しむ庶民の暮らしが反映されています。法人税にはさまざまな租税特別措置が用意され、大企業の税負担を優遇している。過去に年間売り上げ上位20社の法人3税の負担率を調べたところ、優遇措置により実効税率30%の半分程度しか納めていなかった。なぜ自公政権は大企業を助けるのに、庶民生活を苦しめる消費税を減税しないのか。巨額の献金を受け取る大企業しか優遇されない税制としか思えません」(立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏=税法)
20年度から24年度までの間に、消費税収は一貫して見込み額よりも上振れし続けている。この間の上振れ分の総額は計約4.2兆円に達する。
「その上、24年度に計上しながら全く使わなかった予算は約4.3兆円にも上りました。これでは、減税しない理屈は立ちません。財源が問題なら法人税の累進税率を強化したり、所得税の最高税率を引き上げればいいのです」(浦野広明氏)
減税できない自公与党は庶民の敵。ますます参院選で窮地に立つのは間違いない。
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「公明新聞」が異例すぎる選挙分析…なんと公明党候補“全員落選”危機だとか。関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。
世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」
今月3日に公示、20日に投開票される参院選を前に古希を迎える有名人らの出馬表明が続いている。
ミュージシャンの世良公則氏(69)は1日、大阪選挙区に無所属で立候補するとして会見を行った。ライブで一番訪れる大阪を拠点に「オーバーツーリズム」問題などに取り組みたいとし、さらに「次の世代によりよい日本を残すために、この国を動かしていく」と語った。
世良氏はデビューから48年。「あんたのバラード」や「燃えろいい女」などのヒット曲で知られるが、「近年はⅩでも政治的意見を発信していましたから、関心は高かったのでしょう。過去に自民党の高市早苗氏がツーショット写真をあげていたり、投稿内容から自国への想いの強さもうかがえますから、無所属には驚きつつ、当選した後の動向も話題になっています」(音楽業界関係者)という。
同じく、芸能人ではタレントのラサール石井氏(69)が先月30日、社民党から比例代表で立候補することを会見で表明。「黙って見ているのをやめた」と話している。またテレビ番組のコメンテーターや最近はYouTubeでも社会問題を積極的も発信する弁護士の北村晴男氏(69)も、日本保守党から比例代表で立候補することを明らかに。
■「若い世代のため」にしては……?
揃って70歳を前に出馬表明。芸能界や弁護士として、知名度も立場も確立してきた。もっとも、3者ともこれまで社会問題を発信してきた顔ぶれで、政治家転身は不思議ではない。だが、順番からいけば「若い世代のため」に動くのは40~50代の役目だろう。近年は70~80代の議員がゴロゴロいて、高齢化が問題に。定年制さえ求める声もあがるなか、古希で立ち上がるタレントが続くのは違和感もある。
「本人たちは今さら、お金や名誉のためではないでしょう。3者とも歌手やタレント、マルチに活動する弁護士と表舞台に出続けていたタイプで、芸能界で居場所を失ったから『政治家』を志したケースとも異なる。これは政党や担ぎ出す周囲の都合でしょう。確実に投票に行く高齢者層の不満の受け皿になる世代で、後年を見据えても元気に発言できるのが70歳前後。タレント出身の若い候補に比べて、長年大きなスキャンダルがなく、芸能界を生き抜いてきたのもプラスに働きます。もちろん、高齢者代表として持ち上げられるのは、本人たちにとっても悪い話ではないですからね」(政治ジャーナリスト)
人生100年時代……か。
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タレント出身の女性たちは目も当てられないが…?●【こちらも読む】山尾志桜里氏は出馬会見翌日に公認取り消し…今井絵理子、生稲晃子…“芸能界出身”女性政治家の醜聞と凄まじい嫌われぶり…に詳しい。
病院や施設の面会制限、まだ必要? ペットはOKなのに孫はNG、コロナ5類から2年の現在地
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になってから5月で2年がたったが、病院や介護施設の多くでまだ面会制限が続けられている。「親の死に目に会えなかった」「ペットは面会OKなのに、孫はダメと言われた」。愛する家族に最後に会えなかった人たちは、納得できない思いや心の傷を抱え続けている。「『おかしい』と声を上げよう」。医師や学者たちがそう呼びかけている。(共同通信=市川亨)
▽感染リスクは同じなのに「一時外出したらOK」
妻(左)の母親が亡くなった病院の面会制限について話す感染症内科医の須賀祐介さん(仮名)=4月
「まだこんな厳しい面会制限をしているのかと、びっくりしました」 首都圏の医師、須賀祐介さん(36)=仮名=は自身の体験をそう話す。 須賀さんは感染症内科医。コロナ禍の際は東京都内の総合病院で対応に当たった経験がある。「内科医の端くれ」と名乗り、SNSで医療情報や自身の意見を積極的に発信している。
須賀さんは、妻の母親が今年1月からがんで秋田県内の病院に入院。4月中旬に亡くなったが、面会は当初「登録した家族2人だけ」と言われ、実の娘である妻も会えなかった。 義母は3月に緩和ケア病棟に移り、面会制限が緩和されたため、自分たちの幼い子どもを連れて秋田へ。「これが最後かもしれないので、孫に会わせてやりたい」と病院にかけ合ったが、「子どもは感染リスクが高いのでダメ。ルールはルール」と許可されなかった。 ところが、粘っていると「一時外出したら、誰とでも会っていい」と言われ、急きょ介護タクシーを手配して義母の実家へ。孫や友人とも面会がかなった。
▽厚労省は明確な規定を設けていない
厚生労働省が入る合同庁舎=5月、東京都千代田区
ただ、須賀さんは釈然としない。「『感染リスクがある』と言うのなら、病院の中と外どちらで会おうが、同じだ。意味が分からない」 しかもペットの面会は可能で「犬や猫が会えるのに、孫が会えないというのは何なのか」と首をひねる。 「現場にしてみると『面会はない方が楽』という面もあるのだと思う。でも、療養中の高齢者にとって、子どもや孫に会えるかどうかは生活の質に関わる」。そう指摘する。
そもそも、面会について国で決まりなどは定めていないのか。2023年5月にコロナが5類になった後の同年10月、厚生労働省は医療機関向けに次のような見解を示している。 「面会の重要性と感染対策の両方に留意し、患者及び面会者の交流の機会を可能な範囲で確保するよう、各医療機関で検討をお願いします」 面会を促してはいるものの、要するに「具体的なことはそれぞれで決めてください」ということだ。
▽子どもの年齢は線引きがバラバラ
面会制限について知らせる病院のホームページ=6月9日
医師らでつくる「コロナ後の医療・福祉・社会を考える会」が昨年秋、全国の大学病院と赤十字病院の状況を調べたところ、ほとんどが「面会は15分まで」「2人まで」などと何らかの制限を設定。「面会禁止」の例もまだあった。 今年5月1日の状況を再調査すると、ある程度は緩和されていたが、それでもまだ数カ所、面会禁止が残っていた。子どもに関しては依然「面会不可」の病院が多い。ただ、その対象は「小学生以下」「中学生以下」などとバラバラだ。
考える会の共同代表で精神科医の高木俊介さんはこう指摘する。「年齢の線引きが統一されていないことが、いかに科学的根拠がないかを表している。病院が恣意的に決めているのが実情だ」
▽医療のルールが社会の道徳になっている
面会制限についてのシンポジウムで話す「コロナ後の医療・福祉・社会を考える会」の共同代表で医師の高木俊介さん=5月24日
考える会は5月下旬、面会制限について考えるシンポジウムを京都市で開いた。冒頭の須賀さんも登壇し、「面会制限が厳しいほど、患者のその後の状態が悪化することが、これまでの研究で示唆されている」と話した。 海外の状況も発表。欧米の主要な病院では人数制限はあるものの、時間や子どもについては制限していないことを報告した。「患者にとって重要だとして、むしろ面会を勧めている」と、日本の対策が過剰であることを訴えた。
「コロナ後の医療・福祉・社会を考える会」共同代表で医師の岩井一也さん
考える会のもう一人の共同代表で医師の岩井一也さんは、自身が感染管理室長を務める静岡市立静岡病院の対応を紹介。コロナ禍の時から、ごく一時期を除いて面会制限はしていなかったという。マスク着用も求めていないが、他の病院と比べて感染状況に差はないと説明した。 岩井さんは指摘する。「入院中の患者が大切な人と面会するのは重要な権利だ。ただ、患者や家族は『お世話になっている』という気持ちがあり、言いにくい」 制限は徐々に緩和されてはいるが、「病院側の裁量による緩和だと、感染状況などによってまた厳しい形に戻ってしまう恐れがある。国民が声を上げるべきだ」と話している。
シンポに招かれて講演した人類学者の磯野真穂さんは、こう話した。 「コロナ禍でマスクの装着が道徳心の象徴になったように、医療のルールが社会の道徳になってしまった。その結果、『医師や病院が決めたルールは、根拠が不明確でも従うべきだ』という考え方が知らず知らずのうちに浸透している。面会制限は社会の慣習行動になりかけている」 その上で問いかけた。「身体を伴う出会いは私たちの基本的な人権です。終末期だけ会わせればいい、という話ではない。そういう文化を未来に残したいですか」
▽取材後記
私はコロナ禍真っ最中の時から厳しい面会制限に違和感があった。対面での面会を貫く老人ホームの話を記事にするなど、疑問を投げかけてきた。短時間の面会にそれほど感染リスクがあるだろうか。そもそも、感染者を責める風潮もおかしいと思っていた。 実は私も今年2月、冒頭の須賀さんと同じような体験をした。妻の母が老人保健施設で亡くなったのだが、最期の瞬間はおろか約4カ月間、一人娘である妻も私たちの子どもも会わせてもらえなかった。 最期も面会不可だった理由は義母が発熱していたから。「妻たちが」ではない。須賀さんは自身の経験について「意味が分からない」と言ったが、私もやはり意味が分からなかった。
建設工事中に2.8メートル転落 70歳男性が意識不明 救護の72歳男性も土砂に巻き込まれけが 沖縄・南風原町
2日午前9時45分ごろ、沖縄県南風原町本部の建設工事現場で作業していた同町の男性(70)が高さ約2.8メートルの場所から転落してけがを負い、意識不明の状態で病院に搬送された。基礎工事で掘った穴に落ちたとみられる。
また、男性を救護しようとした同町の男性(72)が頭上から崩落した土砂に巻き込まれて負傷した。与那原署が事故の原因や当時の安全対策を調査している。
脱走後も怯える日々…「電話をかけるだけで1日50万円」に騙され”闇バイト”に手を染めた50代の証言
日本から遠く離れたミャンマーにある特殊詐欺の拠点から、日本にうその電話をかけて現金をだまし取ったとして2025年5月、名古屋市の高校生の少年(16)が詐欺容疑で逮捕されました。
少年はインターネットで知り合った人から「海外で特技を生かせる仕事がある」と誘われて渡航、詐欺の片棒を担がされていました。いわゆる「闇バイト」に安易に応じたがための暗転です。
闇バイトとは、SNSやインターネット掲示板などで「楽なお仕事で高額報酬」と好条件で働き手を募り、応じると特殊詐欺や強盗などの犯罪の使い走りをさせられるアルバイトのことです。
私は特殊詐欺の取材を長く続けています。関与した当事者多数からも話を聞いてきました。
高校生と同じように儲け話にほいほい乗って海外に渡り、だまし電話をかける愚か者は以前からいました。元暴力団組員ら犯罪にさほど抵抗を感じない人たちが多かったのですが、SNSの爆発的な普及で最近は詐欺に加担する層が広がり、この高校生のように子どもが加害者になるケースが増えています。
警察庁によると、全国の警察は2024年に2274人を特殊詐欺への関与容疑で摘発しました。このうち少年は416人で、全体の18.3%を占めます。暴力団組員(準構成員含む)の436人に迫る勢いです。
捜査関係者によると、少年が闇バイトに応募し、犯罪に加担するまでの流れには基本的なパターンがあるようです。
裏社会に通じたワルの先達は、自らの経験を踏まえて「未来ある少年少女が闇バイトに手を出すと確実に人生が終わる」と口を揃えます。
その証言に耳を傾けます。
東京で出会った男性は複数の暴力団を渡り歩いていました。組織内で幹部にのし上がる気はさらさらなく、「○○組」という看板があれば金儲けに有利と思い込んで所属する組織を転々としていたのです。
上昇志向の強い「同僚」は、覚醒剤や大麻などの違法薬物をせっせと売ったり、賭博開帳に励んだりして金を集め、それを上部に納めています。「上納金」です。
薬物や賭博は暴力団の伝統的な資金集めで、警察に目を付けられやすく摘発されるリスクが高い。薬物の仕入れにはそれなりの元手がかかる。
だから男性はこうした暴力団本来の活動に力を入れず、債券回収代行やみかじめ料(飲食業者などに「トラブル発生の折には解決任せろ」と言って定期的に数万円を支払わせる用心棒代)集めを細々と続けていました。
こんな日々を送っていたら組の中で居場所がなくなり、男性は組を抜けました。年齢は50歳代、定職に就いた経験はなくまっとうに働くつもりもない。でもカネはほしい。
ある日、知り合いの組員から「怠け者のおまえにぴったりの仕事がある」と連絡がありました。
冷暖房完備の中国のマンションから電話をかけるだけで、日に50万円を稼げる。3食付きで渡航費もただとの条件です。迷わず話に乗って中国へ渡りました。
南部の都市で待ち受ける案内役の中国人に連れて行かれたのは高層マンションの一室でした。6畳ほどの部屋がいくつもあり、どの部屋にも電話が10台以上あります。
男性と同じように勧誘されてやってきた日本人が数十人いました。「どう見ても未成年の若者もいた」と男性は明かします。
日本語を上手に操る中国人から名簿とマニュアルを渡されました。名簿は日本に住む高齢者リストです。「情報屋」と呼ばれる人たちが調達し、犯罪組織に売りさばいています。氏名、住所、年齢、家族構成が事細かく書かれていて末尾に電話番号が載っています。
マニュアルはドラマの台本のようでした。文言の上に「警察官」や「弁護士」、「銀行員」などの役名が記され、それぞれ台詞がありました。
ここでの男性の仕事は、これらを使って日本にひたすら電話をかけ、お年寄りからお金をだまし取ることでした。「特殊詐欺」です。
「自分の親と近い年齢の人をだますのはいやだな」と一瞬思ったそうですが、監視役の中国人からせっつかれて日に50件以上電話をかけました。「あなたの口座が犯罪に使われている。このままではあなたが逮捕される。そうならないための方法を教えます」とかなんとか出まかせをしゃべっていると、相手は術中にはまります。
だましたお年寄りの名前を監視役に伝えると監視役はどこかに連絡、日本での詐取金受け取りの段取りを整えていました。中国と日本の犯罪組織がタッグを組んでいると知りました。
待遇は事前に示された条件とは大違いで、ひどかったようです。
食事は拠点近くの汚い食堂限定で、「中身が何だかわからないモノを薄汚れた鍋で調理していて、ろくに食べられなかった」と言います。
行動は常に監視され、外出は部屋の鍵を持つ中国人の許可を得なければならない。
夜は6畳ほどの部屋で数人が雑魚寝していました。詐欺の成功回数が減ると、指示役に脅される。男性は数日で嫌気がさし、脱走しました。
伝手を頼って何とか帰国したものの「報復を受けるかも」と怯えています。旅券や運転免許証のコピーは犯行グループが押さえていて、住所や電話番号も知られているからです。
捜査関係者によると、中国当局はこうした詐欺拠点について当初は摘発に消極的だったようです。ところが中国人がだまされる「電信詐騙」事件が続発したため取り締まりを強化したそうです。
そうなると詐欺組織はさっさと中国から撤退し、当局による取り締まりの緩い地域に拠点を求めます。最近よく報じられるフィリピンやタイ、ミャンマーなどの拠点がそれです。
やはり東京で会った男性です。元暴力団組員ですが証言1の男性と同様、所属していた組織への忠誠心など皆無です。カネになるなら敵対していた組織の組員や海外の犯罪組織メンバーとも結託、違法薬物売買やオンラインカジノなどを手広くやっています。
中でもひとりだませば数百万円以上の大金が手に入る特殊詐欺に傾倒しています。
「特殊詐欺はピラミッド型の組織でやる。頂点にはヤクザや海外の犯罪組織がどんと居座っていて下に指示を出す。電話をかける『架け子』や詐取金回収役の『受け子』はピラミッドの末端で、ネットなどで釣り上げる」と話します。
闇バイト募集に応じて採用された末端役は組織のことも上層部の名前も知りません。だから架け子らが逮捕されても上層部に捜査が及ぶことがありません。
「そいつらは使い捨て。逮捕されても組織は痛くもかゆくもない。募集すればどんどん集まる」と男は言います。
最近はボスから末端まですべてアルバイト上がりという組織もあるそうです。いわば素人の詐欺集団です。「こっちは奴らの素性をすべて知っている。少し調べれば拠点もわかる。そこに乗り込んで詐取金を強奪する」
奪われたお金は犯罪で得た収益です。警察に被害を届けることはない。そこが狙い目というのです。
関東の暴力団組長は他人の運転免許証を持っていました。
免許証は運転の際に不可欠だし、重要な身分証明書でもあります。これがないと名義人はさぞ困るでしょうに。
組長の手元にある理由を聞くと「まあ、いろいろとあるので」と口を濁します。
食い下がってあれこれ聞くと、ぼんやりと理由がわかりました。犯罪にいったん引きずり込んだ人間をずっと今後も活用するため、ということのようです。
闇バイトに応じ、詐欺に加担した少年が身分証明書の画像をSNSにさらされたこともあります。犯行グループから離脱したことへの制裁とみられます。
暴走族リーダーから暴力団組員になり、その後暴力団を離脱して、現在は関東で飲食店を営む男性に話を聞きました。
最近、特殊詐欺にかかわって逮捕された少年と会ったといいます。ごく普通の若者ですが、ネットで「簡単なアルバイトがある」と誘われて応じたら、海外の拠点から日本に電話をかける詐欺グループの末端として使われ、詐取金回収役を担ったと。約束のアルバイト報酬は受け取っていないそうです。
男性には海外の詐欺拠点を仕切る知り合いがいます。海外にいる理由を聞くとその知り合いは「日本では取り締まりが厳しいから」と答えたそうです。
男性はいま闇バイトや特殊詐欺に興味を持ったり、関与したりした少年の相談に乗っています。これらで身を持ち崩す実態をたくさん見てきたから、救いたいと考えてのことです。必ず「闇バイトにワンチャンは絶対にない」と説いているそうです。
ワンチャンはない、すなわち「そんなうまいことはあり得ないよ」との説得です。裏社会の冷酷さ、狡猾さを知り尽くしている男性の助言が若い衆に届くことを願っています。
証言1の男性が言います。
「あまりの重労働と、ほんの少し残っている良心の呵責に耐えかねて私は途中で脱走したが、若い人は電話でお年寄りをだますことをゲームのように楽しんでいた」
どの口が言うのか、と言いたいところですが趣旨はわかります。自分は長く裏社会にいて半分犯罪者だが、将来ある若者がそれでいいのかとの思いでしょう。
目先のお金欲しさで誘いに乗って海外に渡り、おじいちゃんやおばあちゃんら人生の先達が懸命に貯めたお金をだまし取る。背後に犯罪組織がいることの想像すらできない。そんな少年が増えているのが現実のようです。
特殊詐欺の被害は増加の一途です。警察庁が2025年5月に公表した「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況について(確定版)」によると、2024年には2万1043件発生し、被害額は718億8000万円です。前年より266億円増えました。1日に1億9693万円もの大切なお金がだまし取られています。
被害者の65%は65歳以上の高齢者です。警察が「電話でお金云々はすべて詐欺」と繰り返し注意を呼び掛けているのに止まりません。
闇バイトや特殊詐欺に少しでもかかわって困っている少年や保護者のみなさん、いますぐ警察の相談窓口に電話をしましょう。♯9110です。発信地を管轄する警察本部の窓口につながります。
もうひとつ警察の電話を伝えます。「匿名通報ダイヤル」(0120-924-839)です。犯罪組織の捜査に役立つ情報の提供窓口です。闇バイトや特殊詐欺にはいま暴力団以外に「匿名・流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)」が関与している、と警察は見ています。
その実態をつかむのに警察は難渋していて、広く情報を募っているのです。通報者の秘密は守られ、捜査に役立った情報の提供主には最高10万円が支払われます。さらに犯罪組織壊滅につながったと判断されれば最高100万円を得られます。
闇バイトや特殊詐欺なんぞに引っ掛かってびくびくするより、見たこと聞いたこと(間接的でもOK)を警察に知らせればワンチャン、きれいなお金を手にできるかもしれません。
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(元朝日新聞編集委員 緒方 健二)